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#創作大賞2026 #エンタメ原作部門 納豆チャンピオンへの道 第8章|How To Make Natto-Champion|第2Rの戦慄と深夜のノック

    当初の目標は第2ラウンドで料理を完成させることだった。

    もともと料理は得意ではなかったが、家族の協力もあり、なんとか目標を達成できたので、勝敗に関わらずとても満足だった。

    間もなく野口さんも料理を完成させるだろう、と思いつつ、調理台の上を後片付けをしていると、

    「はい!ここでタイムアーーーップ!
     終了です!」

    と、ジモンさんが叫んだ。
    顔を上げて、斜め向かいの調理台を見ると、野口さんはまだ完成していなかった。

    (え?時間切れ?まさか…)

    野口さんは手を止めて、呆然と立ち尽くした。

    (てことは、野口さんの反則負け?!)

    この瞬間ルールに従い、男性3人が自動的に決勝進出が確定した。

    しかし、ここでまたディレクターが現れた。

    「このままでは絵にならないので、
     野口さんは引き続き料理を完成させて下さい。
     野口さんには時間ペナルティの減点ありで審査対象とします!」

    (ここでも、また大人の事情か…)

    と、再びルール変更が行われた。
    野口さんはディレクターの指示に従い料理を再開し、10分後に完成させた。

    「おーーーっと!野口さんもギリギリ間に合ったーーー!」

    ジモンさんの迫力ある演技力で、再び戦場を盛り上げた。

    こうして完成した料理は別室に運ばれ、審査員の試食が終わるまで調理実習室で、スタッフが用意したロケ弁を食べた。

    さっきまでの熱気に溢れていた部屋の空気が、冷めきった空気にガラッと変わり、調理実習室に取り残された僕ら4人は何を話せばいいのか分からず、ただ沈黙だけが続いた。

    30分後審査員の試食が終わって、質疑応答の時間となり、最初に料理を完成させた高野さんが呼ばれ、別室に入った。10分後、高野さんが頭を掻きながら戻ってきた。

    「いやーーボロボロに言われちゃったよ」
    「え?全然褒められなかったの?」
    「僕たち料理のプロじゃないのに、容赦ないね」

    (え?三井田さんはプロじゃないの?
    素人なのに手打ちそばや鯛めしをいとも簡単に作っちゃうの?
    三井田さんっていったい何者?)

    続いて三井田さんが別室に向かい、10分後に三井田さんは肩を落として戻ってきた。

    「なんなの?!ほとんどダメ出しばっかり…」
    「でしょ?精神的にキツイよね」
    「三井田さんでもダメじゃ、僕はもっとダメだな」

    そして3番手で僕が別室に入った。

    審査員5人が横一列に並んでいた。
    4人は料理の専門家で、残り一人はフランス人留学生だった。

    男性の審査員が口火を切った。
    「この料理のテーマは?」
    「僕は岩手から来たので、東北の食材を中心に、納豆の魅力を最大限に引き出すことをテーマにしました」

    すると専門学校の校長で女性の審査員が首を傾げながら質問した。
    「なぜ中華を?」
    「えーーっと、中国にも豆鼓とうちという大豆を発酵させた調味料があり、中華のコクを生み出しています。
    同じ大豆発酵食品である納豆なら、中華の油や餡に負けない深い旨味を引き出せる、と思いました」
    意外な質問だったけど、納豆開発委員会で掻き集めた蘊蓄を活かして、なんとか凌いだ。

    「でも、この納豆かに玉丼、ただ納豆乗せただけでしょ?」
    と、もう一人の男性審査員がケチをつけてきた。

    「そうです。でも他にない創作料理ですよね」

    「なんか、パンチが足りないんだよね」
    さらに追い打ちをかけるように、もう一人の男性審査員が不満を漏らした。
    「……でも自分の家族には好評でした」
    と食い下がった。

    ただフランス人留学生の男性審査員は違った。
    「僕は中華まんの肉汁と生姜と納豆の風味がマッチして、とても美味しいと思いました」
    と流暢な日本語でコメントしてくれた。
    「ありがとうございます」
    やっと一人だけ理解者がいたことに、ホッとした。

    質疑応答が終わり、調理実習室に戻った。

    「どうだった?」
    と高野さんが聞いてきた。
    「留学生の人にしか美味しいって言われなかった」
    「僕なんて誰も美味しいって言わなかったよ」

    (マジで?三井田さん料理美味しそうだったのに…)

    最後に野口さんが部屋に入ると、5分少々で戻ってきた。

    「みなさんと同じで、私も全然ダメでした」

    この勝負、一体何が正解なのか分からず、4人はモヤモヤした気分になった。そして5分後に全員一緒に別室に呼ばれた。

    そこには既にジモンさんが待機していた。

    「それでは、第2ラウンドの結果発表です!
     まずは高野くんの得点から見てみましょう。
     私が『せーの!』と言ったら一斉に点数の札を挙げて下さい。
     __せーの!」

    審査員が一斉に点数の札を挙げると、なんと10点満点が二人いて合計は45点だった。
    「高野くんの結果は45点!素晴らしい!!」
    と、ジモンさんが高野さんを褒め称えた。

    高野さんは自社の納豆をPRしつつ、会社が全面的にサポートした創作料理は、料理が苦手な彼でも簡単に作れる、既製品を上手く組み合わせた独創的なメニューだった。特にバナナと納豆を掛け合わせたバナ納豆シェイクや、納豆とレトルトカレーとチーズを乗せて焼いたナン等が、結果的に審査員のウケが良かったようだった。

    「次に三井田くんの成績はどうでしょう!
     せーの!」

    意外にも合計41点で10点満点を出した審査員は誰もいなかった。

    「えーーっ?!三井田くんは41点で、現在2位!!」
    ジモンさんも予想外の結果に一瞬戸惑っていたのが一目でわかった。

    三井田さんはそば粉にドライ納豆の粉末を練り合わせた手打ちそばと、鯛のアラとドライ納豆を一緒に炊き込んだ炊き込みご飯などだった。化学調味料を一切使わないこだわり抜いた懐石料理が逆効果だったらしく、点数が伸びなかった。

    「3番目は蒲生さんの中華納豆定食です!
     点数をお願いします!せーの!」

    10点満点を出してくれたのはフランス人留学生だけで、やはり他の点数は低かった。

    「合計点数は41点!三井田くんと同点!!」

    三井田さんは拍手しながら、僕の健闘を称えてくれた。
    しかし三井田さんのプロ顔負けの料理と僕の素人料理が同点とは、甚だ恐縮してしまった。

    そして最後にタイムオーバーとなった野口さんの順番になった。

    「最後に紅一点の野口さんの料理の出来栄えは!?
     せーの!」

    実際に何点減点されたかわからないけど、合計点数は39点で、僕たちの41点に届かなかった。

    「むむっ!女性の野口さん、
     ここで無念の敗退!
    」

    野口さんが作った料理はマグロ納豆ユッケ風と納豆がんもと納豆茶漬けのお袋の味を再現した。ただ結果的に手作りがんもでミスを犯し、作り直したのが致命傷になった。

    「決勝進出は高野くん、三井田くん、蒲生さんの3人となりました。
     決勝ラウンドも頑張って下さい!」

    と締めのコールに合わせて、僕ら男性3人が拳を挙げて、この日の撮影は全て終了した。
    気づけば時間は20時を過ぎていた。

    第1ラウンドで敗退した古本さんは飛行機の都合により、第2ラウンド途中で札幌へ戻っていた。

    番組スタッフから翌日の決勝ラウンドのスケジュールについて説明があり、東京住みの高野さんと敗退した野口さんは一緒に解散した。
    残された三井田さんと僕は、ロケバスに乗り、近くのビジネスホテルに案内され、それぞれの部屋にチェックインした。

    今日の戦いの疲れを取るため、翌日の決勝に向けて、早く寝ようとした時、

    コンコンコン___

    突然、ドアをノックする音がした。
    (こんな時間にいったい誰?)

    第7章  第9章

    第1章はこちらからどうぞ

    #創作大賞2026 #エンタメ原作部門 #ドラマ脚本 #TVチャンピオン #テレビ東京

     
     
    舘徹人(タチ テツト)のち望月成人(モチヅキ ナリト)、 ところにより一時熊猫ジィジ🐼(クマネコ ジィジ)です。 2026年6月に還暦になり、5人の孫を持つシングル爺さんが いろんなジャンルで創作活動してます。

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