
となりのトップランカー #36 | 上司の車に逃げ込んだ、あの夜
「子どもたちと離れた分、もっと仕事を頑張る」
そう心に誓って家を出た後。
私はより一層力を尽くして、
仕事に精を出すことに決めました。
(※これは、私が風俗を始める前のお話です)
ただ一人の理解者
当時は、現在とは違う保険会社に勤めていました。
家を出て一人暮らしを始めたことは、
当時の直属の上司にもミーティングの場で
報告していました。
子どもたちのことや、
自分の精神的な不安定さによって、
もしかしたら仕事上でご迷惑を
おかけするかもしれない、
と思ったからです。
「家庭の事情で家を出ました。
その分も仕事はしっかりと頑張りたいと
思っておりますので、
今後ともよろしくお願いします」
月に一度の個人面談でそうお伝えすると、
上司は力強く頷いてくれました。
「わかった。話してくれてありがとう!
俺も精一杯サポートするから、一緒に頑張ろう!」
そう言っていただけて、
私は心の底から救われる思いがしました。
家出をしたものの、実家からは歓迎されず、
自分の居場所がどこにもない
不安定な状態だった私にとって、
日中の職場に「頼れる味方がいる」と思えることは、
何物にも代えがたい喜びでした。
当時、私の所属していた課は
社員同士の仲が非常に悪く、
私はこれ以上の揉め事に巻き込まれたくなくて、
同僚たちとは一歩引いて距離を置いていました。
仕事仲間の中にも、
気軽に話せる人は誰もいなかったのです。
そんな状況の中で、
仕事で成果を出すために
私が上司と同行する機会が増えたことは、
周囲の目には決して良くは映らなかったのでしょう。
同僚たちの視線は冷たくなり、
私は職場でさらに孤立していきました。
「頼れるのは、上司だけ」
私の世界は、急速に狭まっていったのです。
上司は、私よりも20歳年上の管理職でした。
全国転勤のある役職だったため、
その人も単身赴任で
こちらのエリアに来ていました。
遠く離れた自宅には奥様と、
すでに大学生になる2人のお子さんがいるとのこと。
当時の私は、上司をただの仕事上の関係としてしか
見ていませんでしたが、上司の方は、
最初から私のことを一人の女性として
気に留めていたようです。
慰労と称して飲みに連れて行ってもらった際に、
そう言われました。
「なんとも思ってなかったら、
こうしてサシで飲みに誘ったりしないよ。
今のご時勢、バレたら色々めんどくさいしさ」
よく面倒を見てくれるとは思っていましたが、
それはあくまで意欲的な部下に対する
指導の一環だと思い込んでいたのです。
私は上司を恋愛対象として見ていませんでしたし、
まさか相手からそんな目で見られているとは
露ほども思っていませんでした。
その日の帰り道、
抱きしめられそうになりましたが、
外でしたし、誰に見られているかも
分からない恐怖から、私は拒みました。
それでもまだ私は、
(酔った勢いでの冗談かもしれない)と、
上司の言動を本気には捉えていませんでした。
仕事を通して、二人の距離はじんわりと、
確実に縮まっていくのを感じていました。
人柄としては元々好きな方でしたし、
営業の世界を叩き上げてきた人なだけに、
実年齢よりも遥かに若々しい外見をしていました。
何より私には、
自分の現状を理解してくれて、
「子どもと離れてでも、
仕事を頑張って経済的に自立したい」という
私の気持ちを心から応援してくれる人が、
他にどこにもいなかったのです。
私の親は専業主婦でしたから、
「母親がそこまで働かなくてもいいじゃない」と、
私の選択を否定する人でした。
子どもと一緒にいることこそが、
何よりも母親としての第一の勤め。
それが、母の正義でした。
確かに、私が子どもの頃は
家に帰るといつも母がいて、
毎日お弁当を持たせてくれて、
夜には手料理の晩ごはんが出てくる。
それが当たり前の生活でした。
けれど、それは父が
そんな生活を維持できるだけの十分な生活費を
一人で稼いできてくれていたから、
できたことです。
私の夫は、そうではありません。
「生活を切り詰めれば、なんとかなるでしょ」
母からはそう言われましたが、
いくら家計を切り詰めたところで、
どうにかなるレベルの話ではありません。
寂しさゆえの、禁断の誘い
実家に帰ると母から小言を言われるため
どうしても帰りづらく、
ある日、私はせめて
母が寝静まってしまう時間まで
時間を潰したいと思い 、
とうとう、自分の方から
上司に連絡を入れてしまったのです。
「今から、一杯だけ
付き合ってもらえませんか?」
上司は、すぐに出て来てくれました。
もう自宅でお風呂に入り終えて
寛いでいた時間だったのに、
わざわざスーツを着直してまで。
連れて行ってもらった居酒屋で、
私たちはとても楽しくお酒を飲みました。
店の女将さんが気さくで、
よく話しかけて場を盛り上げてくれたこともあり、
私は久しぶりに心からたくさん笑いました。
(あぁ、今日はまっすぐ家に帰らなくて
本当によかった)
胸の奥が、じんわりと
温かくなるのを感じていました。
けれど上司は、
私と同じ気持ちではなかったようです。
小一時間ほど飲んでお店を出た後、
並んで歩きながら、上司はぽつりと呟きました。
「いい雰囲気になれなかったね」
私は単にお酒と会話を楽しんでしまいましたが、
上司の期待していた大人の夜の楽しみ方とは、
温度差があったようでした。
夜道を駅に向かって歩く途中で、
不意に手を握られました。
私は、それを
振りほどくことはしませんでした。
ただ、職場からも近い場所だったため、
誰かに見られることだけは避けたいとだけ思いました。
それは上司も同じだったのでしょう。
私たちは自然と、人家のない小道に入り込み、
そこで立ち止まり、唇を重ねました。
そっと唇が触れ合うだけの、
本当に軽いキスです。
それでも、上司と部下という関係を解くには
十分すぎるほどでした。
その夜、私たちは、
ただの男と女になりました。
お互いにまだ離れがたく、
駐車場に停めていた上司の車の中で
もう少し話そう、ということになりました。
助手席と運転席に座り、
他愛のない世間話を繰り返します。
けれど、繋いだ手だけは
一度も離れることはありませんでした。
時折、どちらからともなく指先をくすぐり合い、
またぎゅっと握りしめる。
何かのタイミングを測っているかのような、
だけどただ、このじれったい時間を
愉しんでいるだけのような。
お互いにいい大人なのだから、
この先に待ち受けていることを
何も予感していないとは、とても言えません。
ふとした拍子に会話が途切れ、
車内の音が消えた瞬間、
繋いでいた手が一層強く握りしめられました。
そして、二度目のキスをしました。
柔らかい唇が触れ合い、
何度かその感触を楽しんだ後、
もう一歩禁断の領域に踏み入れるように、
舌が触れ合いました。
私にとっては、夫以外の男性とする、
人生で初めてのキスでした。
夫を拒んでから久方ぶりの肉体的な触れ合いは、
あまりにも刺激的で、ひどく官能的で、
私の心を簡単に絡め取っていきました。
夫はキスが致命的に下手な人で、
舌を細く尖らせて、ドリルのように
こちらの口内に突き刺してくるという
不思議なスタイルだったため、
私はそれが昔から苦痛でしかありませんでした。
しかし、上司のキスは驚くほどに優しく、
まだ心の中に残る背徳感のせいか、
あえて深くは貪らない節度がありました。
それが余計に、私を芯からじんわりと熱く、
甘やかしていくのです。
わずかに残された理性が
必死に行く手を阻もうとしても、
もう遅い。
重なり合う舌と舌が湿り気を帯びて絡み合い、
やがてぴちゃぴちゃと淫らな音を立てて、
吐息が車内に漏れ出す。
関係が完全に男女のそれへと変貌した瞬間、
シートがバタンと大きな音を立てて
後ろへ倒されました。
私は驚いて声を上げましたが、
すぐにまた上司の唇に塞がれました。
身体ごと私に覆い被さってきて、
もうその重みから逃れることはできません。
さらに強く唇が押し付けられ、
お互いの唾液が混ざり合う深い口付けへと溺れていく。
上司は長身の男性でしたが、
助手席の狭いスペースに跪くように
器用に足を折りたたみ、
私の全身にその熱い体温を押し付けてきました。
ちょうど、私の太ももの辺りに、
ずっしりとした硬い質量が押し当てられます。
その男の猛りに気づいて私が身を捩らせると、
上司は耳元で囁きました。
「最近は年齢のせいか、
もうあんまり勃たなくなっちゃったんだけど……
反応しちゃった 」
その言葉の真意を疑ってしまうほど、
その時の彼は服の上からでも
はっきりと分かる強さで主張していました。
実際には年齢による衰えを
感じていたようですが、
久しぶりに男としての本能が
呼び覚まされたことが、
よほど嬉しかったのでしょう。
恍惚とした表情で、
気持ちよさそうに私の身体に擦り付けてきました。
***
私たちの秘密の関係は、
こうしてぎこちなく幕を開け、
そして静かに閉じていきました。
世間からすれば踏み誤った道でしたが、
それでも今にして思えば、
この経験も夜の華として咲く上で
必要なことだったのだと思います。
私はこの不器用な年上の愛人によって、
指で達する快感を初めて教え込まれ、
自分が何度でも絶頂に達することができる体質
なのだという、女性としての
新たな身体の可能性を知ることになるのです。
次回は、その身体の開発から、閉幕までを綴ります。
2026年7月15日
KANA
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成人向けの表現を含みます。
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狭い助手席で、
私に覆い被さった長身の体躯。
やがて、大きな手がスカートの裾から忍び込み 、
ストッキング越しに太ももの柔らかな肉を
愛撫し始めました。
少しの間、その弾力を弄ぶように撫で回した後、
指先はゆっくりと、
脚の間の境界線へと向かっていきます。
薄いナイロンの布地をなぞるようにして
指先が秘部に触れた瞬間、
その刺激に、
私の身体はビクンと跳ね上がりました。