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となりのトップランカー #37 | 眠れる身体が開かれるとき


    「子どもたちと離れた分、もっと仕事を頑張る」

    そう心に誓って家を出た早々、
    私は唯一の理解者であった当時の元上司と、
    禁断の関係を持つことになりました。

    (※これは、私が風俗を始める前のお話です)


    禁断の終わり

    20も歳の離れた男性と、まさか自分が
    そんな関係になるなど夢にも思っておらず、
    私は戸惑いながらも、
    その危ういスリルに足をとられてしまいました。

    初めての夜は、車内での愛撫に留まり、
    なんとも格好のつかない幕開けでしたが、
    それが紛れもない背徳の関係である事実に
    変わりはありませんでした。

    よく世間では、という
    議論がなされますが、
    私はそこに明確なラインは存在しないと
    思っています。

    ハグやキス、あるいはセックスといった
    具体的な行為そのものによって
    線が引かれるのではなく、
    結局は「気持ちの問題」がすべてを
    左右するからです。

    あの夜、私が車内で上司を受け入れたからこそ
    関係が成立しましたが、もし私の心が拒絶すれば、
    それは一瞬にして暴力へと反転してしまう。
    また、その時は受け入れたとしても、
    後になって二人の関係性が悪化し、
    女性の側が
    「あの時、無理矢理犯されてしまった」
    と主張すれば、残念ながら
    男性は圧倒的に不利な立場になります。

    性行為の境界線というのは、それほどまでに脆く、
    あやふやで、不確かなものなのだと思います。

    身体は裸になって本能を覗かせますが、
    人間の心は、そう簡単には裸になりません。

    私には男性の心理は分かりませんが、
    女性という生き物は、
    心と体が完全に裏腹になってしまう局面が
    とても多いのではないでしょうか。

    女性の身体は、
    どんなに心が相手を拒絶していても、
    物理的な刺激や
    「この状況をやり過ごさなければいけない」
    という無意識の防衛本能によって、
    勝手に潤い、反応するように設計されています。

    それは愛ではなく、
    これ以上自分が傷つかないように
    身体が自動的にクッションを作っているだけ
    の、
    極めてドライな生存戦略なのです。

    男性の皆様、ぜひこれを念頭に
    置いておいてください。

    行為の最中にどれだけ彼女が感じているように見え、
    あなたに夢中になっているように思えたとしても、
    それは身体が防衛反応を起こしているだけで、
    その心まで繋ぎ止められているとは
    限らないということを。

    男女がセックスに求めるものというのは、
    あまりにも複雑で、
    形のない綿雲のようだなと思います。


    話が逸れてしまいましたが、
    この元上司とのW不倫は、
    半年ほどであっさりと終わりを迎えます。
    私が、その職場を離れたからです。

    周囲にも少しずつ関係を怪しまれ始めていましたし、
    頃合いだったと思います。
    何より、関係が深まるにつれて仕事中にも
    そういったことに誘われるようになったので、
    私の中の、上司に対する仕事上の「尊敬」が
    綺麗に消えてしまいました。

    どうも私は、男性に対して
    何かしらの「尊敬」を強く求めるようなのです。
    上司に対してもそれが無くなった瞬間、
    驚くほど一気に熱が冷めてしまいました。


    快感の目覚め

    関係が続いている間は、
    上司の部屋に何度か遊びに行きました。

    お酒とおつまみを買い込んで、
    テレビを見ながら二人でのんびり過ごす時間。
    誰が来ることも想定されていない
    単身赴任の上司の部屋には椅子が一脚しかなく、
    上司の膝の上が、いつも私の定位置でした。

    私はお酒が入ると甘えんぼモードが
    全開になってしまうので、
    すぐにぴったりと密着できる
    その距離感が大好きでした。

    お酒のせいで体が火照り、
    張り詰めていた心も優しく溶かされていく。
    そうして全身の力を抜くと、
    固い胸板が私をしっかりと受け止めてくれて、
    私はその首筋にそっと顔を埋められる。

    上司は細身でしたが、
    自宅での筋トレを欠かさない人でしたので
    程よく引き締まっていて、
    年齢は五十を超えていても、
    その身体は男性のままでした。
    見上げるとすぐそこにある、
    顎のシャープな輪郭が大好きでした。
    魅惑的なそのラインに唇を触れさせると、
    それが私たちの始まりのスイッチになります。

    最初のうちこそ深く舌を絡ませることも
    ありましたが、上司とのキスは、
    思い返せばライトで優しいものが
    多かったように思います。

    上司はどちらかと言えば、唇よりも、
    私の身体に直接触れて愛撫することの方を
    好む人でした。
    キスが大好きな私としては
    少し物足りなさを感じることもありましたが、
    当時は自己主張することもなく、
    ただ彼の手のひらに身を委ねていました。

    狭いシングルベッドに二人で横になり、
    向かい合わせに抱き合うのが、
    私たちの基本のスタイルでした。
    上司は自分が達してしまうと疲れてしまうので、
    「ただひたすらに私を弄って、私をイカせたい」
    そんな人でした。

    今にして思えば、私はこの人によって、
    眠っていた身体を随分と
    「開発」されたのだと思います。

    身体の奥底から突き上げてくる未知の快感に
    身を委ねることは、最初は怖くもあり、
    自分ではコントロールできない領域へと
    引きずり込まれていく焦燥感には、
    怖さもありました。

    けれど、逃げ場のない快感を
    強制的に与えられ続けたら、
    理性も何も吹き飛んで、
    もう抗う術はありません。

    体はしっとりと汗をかいて、
    腰のあたりがじんじんと熱く疼き出してくる。
    「イキたい」と脳が叫んでいるのに、
    自分では一体どう身体を動かせばいいのか分からず、
    ただもどかしさに戸惑うばかり。

    そんな限界の瞬間に――。


    くんっーーー!


    と、優しく、でも力強く、『ソコ』を押されたら。

    私は絶叫とともに腰を激しくビクビクと震わせ、
    身体の震えが止まらなくなってしまうのです。

    何度も、何度も……。


    それは確かに魅力的で、官能的なひとときでした。
    けれど、当時の私にとってその時間は、
    ただ孤独な心の隙間を一時的に埋めるためのもの
    でしかありませんでした。

    だからこそ、私が職場を離れて
    これきりの関係になって、
    お互いに「また落ち着いたら会いましょう」
    と社交辞令のラインを交わし合った後も、
    寂しくもなんともありませんでした。

    一度離れるとまた恋しくなるものでもなく、
    なんとも儚く脆い関係でした。
    人として嫌いではなかったけれど、
    恋と呼べるほど好きでもなかったのでしょう。

    必要な経験と、不必要な経験と。
    その取捨選択をくり返すのが、
    人生なのかもしれません。

    しかし、人に触れられる悦びを
    味わっていたからこそ、
    後に夜の街の扉を叩くことができたのだと思います。

    そう思うと、やはり人と人との出会いには、
    どんなに歪な形であれ、
    必ず何か意味や役割が隠されているのだなと、
    つくづく痛感させられます。

    2026年7月19日
    KANA



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    ◁上司との関係の始まりの記事はこちら

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    ※以下の記事には一部に性的な描写や、
    成人向けの表現を含みます。
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    上司の愛撫は、夫のそれとは
    何もかもが違っていました。

    上司は最初から秘密の場所を押し開くような、
    野暮なことはしませんでした。
    もし触れるとしても、
    生まれたての赤ん坊に触るようにそっと
    ただ指先を置くだけで、
    決して無理に擦ることはありません。

    どこまでも優しくもどかしい愛撫は、
    余計に想像力を搔き立てるもの。
    触れそうで触れられないまま指が離れてしまうと、
    何とも言えない気持ちで身を捩ってしまいます。

     
     
     
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