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泪橋逢隈の出氎

     為氏ず䞉千代姫の仲睊たじい様子は、長いこず家䞭の評刀ずなっおいた。図曞亮ずりくもほが同時期に結ばれたのだが、安寧ず怠惰は玙䞀重である。りくのこずを可愛いず思い぀぀も、最近では時折、぀たらぬ蚀い争いをする事も出おきた。
     たずえば、汁物の味付けである。
     図曞亮が育った䞀色家では、宮内䞀色家は鎌倉にあったものの、本家は䞹埌で郜に近い。そのため、䞀色家の味付けは、京颚の玠材の味を掻かした薄味である。
     察しお、りくは生粋のみちのく育ちだ。そのため、京颚の薄味に銎れた図曞亮の舌には、りくの味付けは盞倉わらず蟛すぎるのだ。それを䜕床も申し出お薄味にしおくれるように頌むのだが、りくはなかなか改めおくれないのだ。
    「せっかくの朚の子の味が、殺されるじゃないか」
     今しがたも、図曞亮はりくに控えめに泚意したばかりである。話題になっおいるのは、秋の味芚である朚の子の汁だった。図曞亮は朚の子の旚味を味わいたいのだが、朚の子の出汁よりも味噌の颚味が勝っおいるのが、䜕ずなく気に入らない。だが、りくは図曞亮奜みの薄味を嫌う。
    「そんなに申されるのならば、癜湯でも啜っおいらっしゃればいいでしょう」
     りくは぀んず顎を䞊げおみせた。それをおろおろず芋おいるのは、間もなく嫁取りをする予定の忍藀兵衛だった。
    「図曞亮。お前、䜜っおもらえるだけ有り難いず思え」
    「だそうですよ。䞀色さた」
     藀兵衛の劻ずなる予定のはなが、笑いを噛み殺しながら藀兵衛の蚀葉に乗った。藀兵衛の家は、図曞亮倫劻の䜏む根岞から少し離れた、「宿」ずいう䞀颚倉わった名前のずころにある。
     秋の刈入れを前に、その手䌝いを頌むために二人揃っお遊びに来たのだった。
    「お䞻も、結婚しお䞀幎も過ぎればこうなるさ」
     悔し玛れに、図曞亮はそう蚀い捚おた。ずは蚀え、りくに察しおはちゃんず感謝の念を持ち続けおいる。
    「埡屋圢様だったら、きっず図曞亮さたのような意地悪は仰っしゃらないわ」
     りくは、じろりず図曞亮を睚んだ。
    「䜕を蚀う。埡台様は、埡屋圢様の意を先んじお察する賢さをお持ちだろう」
     負けじず、図曞亮も蚀い返す。
    「たあたあ」
     その垭で、唯䞀ただ連れ合いのいない倭文半内が、機先を制した。
    「独り者の俺からすれば、埡屋圢様たちもお䞻らも、矚たしい限りだ」
     半内の蚀葉に、䞀同はようやく笑みを取り戻した。
    「倭文様。぀けたしょうか」
     半内の蚀葉に気を取り盎したりくが、朚の子汁のおかわりをしおやろうず、手を出した。半内も、軜く頷いお碗を出す。りくがそれにたっぷりず汁を泚ぐず、湯気がふわりず挂った。
    「それにしおも、埡屋圢様ず埡台様のお仲は、盞倉わらずよろしいですよね」
     はなは、感嘆のため息を挏らした。はなも、りくず同じ様に岩間通に䌺候しおいるのである。圌女は、服郚氏の䞀族の嚘だった。服郚は、やはり須田氏の叀くからの家臣である。
    「垂之関通のお花芋の舞は、お二人ずも芋事だったのでしょう」
     あの日、心ならずも峯ヶ城に留め眮かれたりくは、埡台から図曞亮が䞋賜された山桜の枝に感じ入るずころがあったのだろう。しばらく倧切に掻けおいた。
    「確かに、倫婊の呌吞ずでもいうのかな。埡台様は䜐保姫が舞っおいるのかず思ったし、埡屋圢様は毘沙門倩のような凛々しさだった」
     藀兵衛もあの日、暫村らの䞋働きを手䌝いながら、遠目に姫の舞を芋おいたらしい。
    「図曞亮は、埡屋圢のために今様を詠じたんだっけ」
     半内は残念ながら、あの宎に䌺候出来なかったのだった。埌で他の者から花芋の宎の暡様を聞き、盞圓に悔しがったらしい。
    「矎濃守様が無茶を仰るから、肝が冷えた」
     あの時のこずを思い出すず、図曞亮もやや誇らしい気持ちになる。䞉千代姫の機転の利いた歌に察応させ、か぀圓䞖らしい歌を謳えず、なかなかの難題を吹っかけられたのだった。
    「䌯父䞊も、あれで図曞亮さたを芋盎されたようです」
     りくも、穏やかに埮笑んだ。図曞亮の鮮やかな切り返しは「箭郚の䞀族」ずしおも面目を保぀こずが出来お、錻の高い結果だったのだろう。
    「ふうん。戊ばかりが功を立おるずころではない、ずいうずころか」
     半内が、ごちた。圌は教逊よりも歊芞に力を入れおいるずころがあり、花芋の垭に呌ばれなかったのは、それもあるだろう。
    「それにしおも、埡台様が埡屋圢様に匕けを取らないずいうのは、どうなのでしょう」
     はなが、やや気遣わしげに藀兵衛に尋ねた。䞉千代姫が倫ず察等に枡り合える教逊を備えた姫であるのは確かだが、それが須賀川衆の増長を招いおいるずころもあるのだった。
     姫には䜕の眪もないずはいえ、須賀川衆が「姫を自慢する」のが、和田衆は䜕ずなく面癜くない。
    「難しいずころだな」
     藀兵衛も箞を止めおはなに答えおやる。図曞亮も、はなや藀兵衛の芋立おに賛成だった。
    「埡台は賢い。埡屋圢も、埡台のそのようなずころをお気に召しおいるのだろう。だが、賢すぎる女は時ずしお男からすれば目障りにもなる。埡屋圢様は、ただその蟺りの機埮をお分かりになっおおられない気がするんだよな」
     図曞亮は、それが気がかりだった。図曞亮ずりくも倫婊喧嘩をするこずはあるが、りくは決しお、図曞亮の教逊や仕事に口を挟むような真䌌はしない。だから、先皋のような喧嘩が生じたずしおも、それほど深刻にならずに枈んでいるのだ。
     だが、埡台は違う。倫の為氏ず趣味を分かち合い、同じ目線で物事を語るこずができる。為氏はそれを奜たしく感じおいるようだが、四倩王を始め、家臣の男たちは為氏ず同じ目線で物事を語る埡台に察し、埮劙な感情を抱いおいるのを、図曞亮はうっすらず感じおいた。
     䞭でも、矎濃守は衚面䞊は埡台に付き埓いながらも、時折䞻倫婊を芋守るその目には、耇雑な色合いが浮かんでいた。
    「女は、少々頭が空っぜの方がよろしいずいうこず」
     りくにしおは、やや意地の悪い蚀い方だ。図曞亮の物蚀いの癖が移っおきたのだろうか。
    「いや、そうではないがな  」
     蚀葉を濁す図曞亮に、半内が合いの手を入れた。
    「男の沜刞に関わる、ずいうこずか」
    「なるほどね」
     半内の蚀葉に合点がいったのか、りくが肯いた。
    「男の方々も、倧倉ですこず」
     くすりず、はなが笑う。男たち䞉人も、顔を芋合わせお苊笑するしかなかった。

    ©k.maru027.2023

    「逢隈の出氎」ぞ続く

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    k_maru027

     
     
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