
#10 みつぴー星人と「知識」
みつぴー星人は、4歳になるまでしゃべれなかった。
3歳で幼稚園に入れたが、入園式の時、周りの園児がギャーギャー騒ぐ中、 彼は一言も発さずに絵本を見ていた。
「言葉が遅いな」と心配して病院へ行くと、単に耳クソで耳の穴が完全に塞がっていただけだった。ごっそり取ってもらった。こんなのありえるの?というごっつい毛玉のような耳クソが彼の聴覚を奪っていた。
耳の穴がさわやかになったある日、
みつぴー星人はテレビのニュースを見て突然、
「あー、そう。」
とつぶやいた。
“……今の理解して言ったよな?”
テレビを見つめる彼の頭のアンテナがピンと立っていた。
5歳になると、みつぴー星人は勝手にカップ麺を作って食っていた。
私は“あ、5歳って教えなくてもカップ麺作れるんだ”と思った。
が、もっと衝撃を受けたのは、 幼稚園児にして私のパソコンのパスワードを盗み覚え、 勝手にドラクエのPCゲームで遊んでいたことだ。 見ていると彼は幼児向けアルファベット教材を見ながら、 自力でキーボードを叩いてログインしていたのである。 “今どきの幼稚園児はパスワード破るんだ、時代かな”と思った。
そんな彼が小学校2年生になったある日、
私は将棋でみつぴー星人にわざと負けてやった。 子ども相手に毎度本気を出すのも大人げないし、 たまには勝たせてやろうと思ったのだ。
ところが、みつぴー星人は勝ちを譲った私を見つめ、こう言った。
「負けたのは、パパの意志が弱いからだ。」
おおーい、なにそれ。それ小2の語彙ではない。 そもそも“意志の強さ”という抽象概念を、この状況に当てはめる?
私は思った。
“こいつ、人生一度目じゃないな。”
その日から私はゲームで手を抜くのをやめた。 すると負けるたび彼は、みつ汁(よだれ)を飛ばしながら泣きじゃくった。 頭のアンテナが折れていた。
「パパは大人げないんだよ!」
“こいつ、ぜってー 人生一度目じゃない。”
宇宙人にも前世がある、矢追純一さんに報告したい。
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次回作もお楽しみに。
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