モンマルトルの魔法ーー借りた本で積読美術館って、どう?やば、きなこ棒美味しっ!
「借りた本を部屋にうずたかく積むのさ。
アパルトマンがすなわち美術館、ってコンセプトね。
限界までどこかの誰かから借りる……、買う?なしだ!
僕の所有物じゃないのに、アートとして展示しちゃってる⸻、そこに、あいまいさ、幽玄性、エスプリも侘び寂びも、立ち上がる寸法。
本棚に収まらず、床から天井へ、何十もの尖塔がごとく積まれてる。
足の踏み場?ノン。
来場者は皆、ギリギリの隙間を順路に、どうにか移動してく。
で、本たちは積まれているだけだから、誰か不用意に蹴り飛ばして総崩れしちゃったら、来場者たちはその場で修復者へ属性早変わり。
来場時のストラップの紐の色を付け替えさせて、属性変化を周囲に示すってやばくない、ナイスアイデアくない?たった今降りてきたんだけど。
で、厳密に元の、積まれてた通りに直せないなら、いつまでも「修復者」属性でさ、お家に帰れまテンってわけ、ハハ。
ああ、現状復帰用の目録や、崩壊前の各タワーの写真は見ていいんだぜ。
ただし必ず、一冊一冊元通り、完璧に復元を!
いい加減に積んで良しなら、そんなのはアートに値しないだろ?」
ピエールがまくし立てた。
アイデアを一気呵成に、夢中で話す彼の姿。
何も変わってやしない。
マリカは、彼が日本の美大に留学していた頃、同棲していた。
当時はただの大口叩き。あらゆる意味でクズだった。
それが帰国後、インスタでバズり「状況表現者」としてブレイク。
マリカは、まさに彼が「積読美術館」の準備に励んでいる渦中の、会場たる自室を見回す。
日本から借りパク中の本も混ざっており、『差異文化の細分化』だとかの日本語表題がちらほら見える。
不思議だな、とマリカは思う。
分倍河原の小汚いアパートで同じことを彼が思いつき、しかも勝手に準備をおっ始めた時、彼女は烈火の如く怒って
「グォラ、なに散らかしとんじゃぁ!」
と叫び、ベランダからポイポイ本を投げ捨てた。
なのに今このモンマルトルのアパルトマンで同じことをする彼に
「え、やばいやばーいイイじゃん素敵、ピエールぅ❤︎」
ってなり、日本からの差し入れのきなこ棒を美味しそうに頬張るピエールを、愛しいとまで思っているのだから。
(888文字)
Kojuroさんばりに、とはいかないまでも、複数の募集への同時参加、やってみます。
さすがに410字で収めるのは無理でしたf^_^;)
以下も、もしよろしければお楽しみください。
「きなこ棒細分化ストラップ」別作品
「借りた本」別作品
本作「モンマルトルの魔法」の自解説含む、創作論めいたナニカ
#借りた本
#せりふ三題噺
#きなこ棒細分化ストラップ
#積読美術館
#毎週ショートショートnote
#掌編小説
#ショートショート
いいなと思ったら応援しよう!
スキとフォローくだされば(気に入ってくださるなら、でね)十分なのであります!
いつか有料記事に挑戦しますので、その時までチップ取っといてください笑