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🚞『ホームに残る灯(あかり)』        第六話      



    🌙 シリーズ挨拶

    ――『ホームに残る灯(あかり)』より



    こんにちは。


    いつも読んでくださっている皆さま、

    本当にありがとうございます。



    💕柊紅葉です💕



    このシリーズ

    『ホームに残る灯(あかり)』 は、


    「駅」と「人生」を重ねながら、

    誰もが一度は経験する

    出会い・別れ・迷い・再出発 を

    物語にした連作短編です。


    昔は人であふれていた駅。

    売店のキオスクがあり、

    駅員さんの声が響いていた場所。


    けれど時代は変わり、
    利用者が減り、
    無人駅になっていく――。


    それでも、
    そこには確かに
    誰かの人生が刻まれている。


    そんな想いを込めて、

    一話ずつ、

    丁寧に書いています。

    もし、

    あなたにも


    ・通学した駅
    ・初恋をした駅
    ・泣いた夜の駅
    ・上京した朝の駅


    があるなら、

    この物語は
    きっとあなたの記憶にも
    そっと触れると思います。



    柊紅葉


    第六話

    『父が待っていたベンチ』

    その駅のベンチは、
    いつも同じ時間に
    同じ人が座っていた。

    無人駅。
    人影はほとんどない。

    —— 電車は一時間に一本。——

    仕事に追われ、
    実家に帰らなくなって
    三年。

    「忙しいから」

    そう言い訳して、
    帰省を
    後回しにしていた。

    母からの電話。

    「……お父さんね、
     最近、
     毎日駅に行ってるの」

    「……駅?」

    「同じ時間に、
     同じベンチ」

    「……誰か待ってるみたい」

    胸が、
    ざわっとした。


    久しぶりに
    降りた駅。

    変わらない風景。
    でも、
    少しだけ
    寂しくなっている。

    ——キオスクも、
    もうない。

    ホームの端。

    いた。

    父だ。

    背中が
    少し小さくなっている。

    私は、
    そっと近づいた。

    「……父さん」

    振り向いた瞬間、
    目が大きく開いた。

    「……お前?」

    「……なんで、
     ここに」

    「……母さんに聞いた」

    父は、
    少し困ったように
    笑った。

    「……毎日来てるって」

    私は、
    隣に座った。

    「……誰、
     待ってるの?」

    しばらく
    沈黙。

    電車の音だけが
    遠くから聞こえる。

    「……お前だ」

    低い声。

    「……え?」

    父は、
    目を伏せたまま言った。

    「……仕事、
     忙しいのは
     わかる」

    「……でもな」

    「……たまには、
     帰ってきて
     ほしかった」

    言葉が、
    詰まる。

    ——父は、
    そんなこと
    言わない人だった。

    「……母さんに
     心配かけたくなくて」

    「……でも、
     この駅に来ると」

    「……昔のこと
     思い出すんだ」


    小さい頃。

    この駅で、
    父と
    電車を待った。

    仕事帰りの父は、
    いつも
    疲れた顔。

    でも、
    私を見つけると
    少し笑った。

    「……おう」

    それだけで、
    嬉しかった。

    缶コーヒーを
    一本くれて、

    「……寒いから」

    それ以上、
    何も言わない。

    ——不器用な人。


    「……ここに座ってると」

    父は、
    ぽつりと続けた。

    「……あの頃の
     お前が来る気がしてな」

    「……ランドセル
     背負って」

    「……走ってくるんじゃ
     ないかって」

    私は、
    下を向いた。

    「……ごめん」

    「……連絡、
     あんまりしなくて」

    父は、
    小さく首を振った。

    「……いい」

    「……来てくれた」

    「……それで、
     いい」

    胸が、
    ぎゅっと
    締めつけられた。


    電車が
    入ってくる。

    「……乗らないの?」

    「……今日は、
     見送る側だ」

    父は、
    ゆっくり立ち上がる。

    私は、
    一緒に立つ。

    「……帰ろう」

    「……母さん、
     待ってる」

    父は、
    少し照れたように
    頷いた。


    改札を出るとき。

    私は、
    振り返った。

    あのベンチ。

    ——もう、

    一人じゃない。



    この駅がすきだ。

    待ってくれる人が

    いることを

    思い出させてくれた場所だから。



    第七話に続く。



    🚃あとがき🚃



    父という存在は、

    多くを語らず、

    大切なことほど

    言葉にしない人なのかもしれません。


    「元気か」も、

    「会いたい」も、

    その一言が言えない代わりに、


    同じ時間、同じ場所で
    ただ待ち続ける。


    この物語の父は、

    駅のベンチに座りながら、

    過去の息子と、

    今の息子の両方を


    静かに迎え入れていました。


    忙しさは、

    距離を生みます。



    けれど、

    待つという行為は、

    距離を越える力を持っている。


    帰れなかった時間も、

    連絡できなかった日々も、

    責める言葉は一つもなく、


    ただ

    「来てくれた。それでいい」


    その一言に、

    親の愛はすべて詰まっているように思います。


    もしあなたにも、

    つい後回しにしてしまっている

    「帰る場所」があるなら。


    それはきっと、

    今もどこかで、

    変わらず待ってくれている。


    この駅のベンチのように。


    🚃 次回のご案内

    次回は――

    第七話

    『制服のままの下校』

    いじめから逃げるように
    毎日早く帰っていた中学生。

    無人駅で出会った
    見知らぬ女性の一言が、
    人生を変える——。


    最後まで読んでくださり、
    ありがとうございました。



    あなたの

    想い出の駅にも、

    今もきっと

    灯りが残っていますように。



    💖柊紅葉でした💖




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    いつも大変お世話になっております。
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    お元気ですか。 柊紅葉です💕 主に, 短編小説等を書いています。 私の作品の根底にあるのは、[作品の核となる感情や問い」です。 特に【作品名やシリーズ名】は、【具体的な描写や読後感】に、小さな変化が起こることを願って書きました。 是非、気軽にページを開いてみてください。

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