
スキ警察に捕まるな!?③〜黒いフードとカモネギ女。〜
妄想物語「スキ警察」シリーズの③を書きました。①から、読んでもらえたら嬉しいです。
(*以下の物語は、noteで「スキ」を押しすぎると取締られる世界という妄想の中の話である。)
第一部
4、 ゲームをする資格
ある眠れぬ夜のことだった。
深夜のタイムラインは、昼とは別の顔をしている。
通知はほとんどなく、言葉は少しだけ本音に近い。
このまま、コーヒーを淹れていっそ起きてしまうか
それとももう一度布団に入るか迷っていると
突然赤い通知がついた。
黒いフードの男が声をかけてきたのだ。
「興味、ありますか」
「……何のですか」
「スキの“最適化”です」
私は身構える。
「違法ですか」
「まさか。合法ですよ」
彼は静かに笑った。
「ただし――勝ちにいく方法です」
差し出されたのは、データだった。
・投稿後30分以内の反応率
・滞在時間別エンゲージメント比較
・深夜帯分散押下の影響分析
・相互関係ネットワーク図
数字が、整然と並んでいる。
「あなた、目をつけられていますよね」
図星だった。
「効率ゴリゴリズムは、偏りを嫌う。
あなたの押し方は、感情に寄りすぎている」
「感情に寄るのは、いけませんか」
「非効率です」
その言葉は、刃物のように静かだった。
私は息を呑む。
よく見ると、彼はタイムラインで何度も見た顔だった。
フォロワ13万5000人。
有料記事ランキング常連。
アルゴリズム解説の第一人者。
「……あなた」
彼はうなずいた。
「アルゴリズムは敵ではありませんよ」
「敵では、ない?」
「使い方次第です」
タブレットの画面に、右肩上がりのグラフ。
「世界にはルールがある」
「ルール?」
「表示順位、滞在時間、再訪率。
みんな、それを理解した上でゲームをしている」
静かな声だった。
「ルールに沿わないなら、
ゲームをする資格はありません」
胸の奥が、少しざわつく。
「あなたは、優しい」
彼は続ける。
「でも市場は優しくない」
……。
「震えたら押す。
三行目で押す。
それは美しい」
「でも?」
「勝てません」
はっきりと言った。
「あなたの押し方は、愛らしい
……だが、
無防備だ……」
わずかな間。
「カモですね」
私は黙る。
彼は肩をすくめた。
「……いや、
ネギも持っている」
深夜のタイムラインが静まり返る。
「みんな、ルールを知った上で遊んでいる。
あなたはルールを知らずに飛び込んでいる」
「知らないわけじゃない」
「なら、なぜ従わないのです?」
「震えは、均せないからです」
彼は即答する。
「均せます。
内部で処理すればいい。
感情は、戦略に変換できる。」
「…………」
「モヤハルさん、
ぬくもりで、食べていけますか?」
その問いは、冷たくもなく、
ただただ正確で、
私は、完全に言葉を失った。
通知がひとつ、灯る。
新しい記事。
私は開く。
一行目。
二行目。
三行目。
——あ。
胸が、ふっと揺れる。
彼の視線が刺さる。
「分散、しますか?」
私は首を横に振る。
「いえ」
そして、押す。
静かな夜に、小さな赤いハートが灯る。
彼はそれを見つめ、言った。
「あなたは危ない」
「よく言われます」
「損をしますよ」
「損?」
「スキ損です!」
「はて……?」
「あなたが好きを押しても、
必ずしも相手が「スキ」を返してくれるとは限らない」
「だから?」
「無駄です」
「何をおっしゃるんですか?
2:1の法則を知らないんですか?」
「それは、聞いたことがありません。
モヤハルさん、詳しく教えてください」
「ふっ、でしょうね。
でも、この法則は単純です。
1の「スキ」を受け取ったら、
2の「スキ」を返すのです。
2倍の「スキ」です!」
私は、堂々と腕を組んだ。
「それでは、あなたが損をしてますよね?」
「なんの損ですか?」
「時間と、相手から「スキ」をもらえるだろう
という期待する感情の浪費です」
「何を言ってるんですか?
私は、得をしています。
それに、「スキ」はもらった相手だけじゃなくて、
他の人にあげてもいいんです」
「何だって?!」
「自分のスキが積み重なって、
世界の愛のコップは「スキ」で溢れ出すんですよ…?
想像しただけで、私は笑顔になる。
つまり、大儲けです」
「……くだらない。
だいたい、その法則の根拠は?統計は?」
「完全妄想オリジナルです!!」
「ふっ、バカな。
この効率の世界では、あなたのような人は生きづらい……」
私は、少しだけ笑う。
「でも……
心がまだ動くことを………
……………私自身も感じたいんです」
「あなたを見ていると、
昔の私を思い出してしまいますよ」
「………いつでも、こちら側に戻れますよ」
「…………」
彼は何も言わなかった。
ただ、右肩上がりのグラフだけが、静かに光っていた。
「では、私には、法則の続きがまだ残っているので……」
「モヤハルさん……
一つだけ忠告しておきます。
この世界では、「スキ」の押下だけではなく、
フォロー行為も“拡散影響力”として
監視対象となっていることを……」
「ありがとう。
でも、私は大丈夫。
…アディオス!!!」
(つづく)
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
みなさんに、きっといいことありますように♪
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