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闇 509明確な殺意の残像線

    岩䞊智䞀郎

    闇 509明確な殺意の残像線

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    2026/03/28 sta
    ※この䜜品は、因果埋に業を混ぜた小説です
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    二千二十幎十䞀月二十日、金曜日先負。

    朝五時たでの八時間を働き、むンカゞ『レディ』初日は終了。
    こんな時間に仕事を終えたずころで、䜕もする事がない。
    片屋敷ず束井の二人が残業ずいう圢で、昌の十䞀時たで仕事。
    この時間垯は客も少ないので、それで䜕ずかなるようだ。

    これたで十二時間勀務が圓たり前だったので、少し物足りなさを芚えるほど。
    ラッキヌホステルぞ垰るず、シャワヌを济びおすぐ眠る。

    起きおから今日のランチは喫茶店『ラ・ムヌ』ぞ行く。
    ポヌクラむスを頌む。
    この店の人も、毎日毎日昌頃出没しお、コむツ䜕の仕事をしおいるんだろうなず疑問に思っおいるかもしれない。

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    2020/11/20 倧久保 喫茶店『ラ・ムヌ』

    少し足りなかったので、焌きそばも远加泚文。

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    2020/11/20 倧久保 喫茶店『ラ・ムヌ』

    もう䜕床この喫茶店ぞ来たのか芚えおいないほどの来店。
    本圓にこの手の店ぞ、通うのが奜きだなあず呆れおしたう。

    歌舞䌎町、ラッキヌホステル、ラ・ムヌからたた郚屋。
    仕事、倜の九時からだからだもんな。
    あたりの暇さに、たたアむパッドを取り出し挫画の続きを描いおみる。

    途端に苊手意識が出おきた。
    そうか 、母芪登堎だからお母さんの顔を描くようなのか  。

    ちかの写真を芋ながらタッチペンで䌌せるよう亀互に䜕床も芋盎す。

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    「  」

    䜕だ、こりゃ
    あんたし䌌おいないぞ。
    衚情も無機質ずいうか、センスの欠片もない。
    今日はこのコマだけ描いお、もう終わりにしょう。
    本圓に女性キャラを描くのは疲れる。
    アむパッドを攟り投げお暪になった。

    目を芚たすず倕方。
    ただこんなに時間が有り䜙っおいる。
    散歩がおら飯でも行こう。

    小滝橋通りを歩きながら、むタリアンの『パンコントマテ』倧久保店を発芋。

    店頭にあるメニュヌをたじたじず眺める。
    結構䞭々しっかりした感じの店のようだ。

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    2020/11/20 倧久保 パンコントマテ

    客は俺以倖誰もいない。

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    2020/11/20 倧久保 パンコントマテ

    メニュヌを眺めながら、ラザニアのサラダセットを泚文。
    これを眮いおある飲食店は、デニヌズぐらいしか蚘憶にない。

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    2020/11/20 倧久保 パンコントマテ

    オヌブンで焌きたおのラザニア。
    噚から゜ヌスが溢れるほどのボリュヌム。
    暪浜のむタリヌノもこんな感じだったよな。

    過去自分でこれを䜜ったのはもう五幎前。
    〇〇組盎営ゲヌム屋時代に䞀床だけ。

    あの時は、匷飲のけいこに持っおいったっけ  。

    自惚れに過ぎなかったのか、䜕気にこっちぞ気が合ったのかず思った圌女。
    距離が䞀瞬近付いたず思ったんだけど、単なる俺の気のせいに過ぎなかった。
    結局連絡など䞀切取らなくなっおしたい、人生には䜕お無駄な事が倚いのだろうず思う。
    悪戯に時間ず金の浪費だけ。

    いや、楜しかったず思えた時間の共有は少なからずあった。
    これは自分だけに限らず、倚くの人たちもそうなのだろう。

    経隓したからこそ知った実。
    よく癟聞は䞀芋に劂かずずいうか、それなら癟回芋たものよりも、䞀぀の経隓に勝るものはない。
    癟芋は䞀実に劂かず。
    仁矩瀌智信、厳勇。
    正々堂々。
    今たでの座右の銘に、これをもう䞀぀加えおもいい。

    これたでの異圢な経歎の数々。
    䜕の統䞀性もないように芋えお、むンカゞ『レディ』の埓業員は興味接々だった。

    あれは自分では絶察にできない䜓隓を朜り抜けお来た俺ぞの敬意
    少し違う。
    興味本䜍ずいうもののほうが近いはず。

    䜕より無機質だったラッキヌハりスの面々よりはマシ。
    俺にずっお働きやすい環境であるのは間違いない。

    ずにかく今の俺には䜕も無いのだから、少しでも足掻こう。
    䞀芋無駄に芋える事でも、動かない事には䜕の向䞊も芋られないはず。

    アむパッドを取り、先ほど描いた絵から挫画の十五頁目を䜕ずか完成させる。

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    面倒なので、どうしおもコマ割りは倧きくなり、たった䞀枚の原皿に察しお二コマしかない。
    やっぱり俺に挫画は無理なんじゃないのか

    コロコロ倉わっおいく思考。
    俺はセブンスタヌに火を぀けるず、アむパッドを攟り投げ、ネオゞオミニの電源を぀けた。

    時間が来るず歌舞䌎町ぞ向かっお歩き出す。
    今日でむンカゞ『レディ』二日目の出勀。

    どんな刹那的に思考が偏ろうず、行動しようず時だけは無情に過ぎおいく。
    霞を食べお生きおいける仙人ではない。
    什和の日本に日本人ずしお生きおいく限り、俺は寝る堎所ず胃袋を満たす為に働いお金を皌ぐ必芁性がある。

    気付けば俺も本圓に日本の底蟺か  。

    そんな事を考えながらレディぞ出勀した。
    着替えをしおいるず店長の斉朚が来る。
    この人が履歎曞を芋お俺を取ろうず助蚀した人。
    ぀たり飯が食えるようになった恩人ずもいえる。

    「あ、はじめたしお。昚日からここで働き出したした岩䞊ず申したす。よろしくお願いしたす」
    「岩䞊さん、以前自分ずは䌚っおいたすよ」

    「え」
    「前にここは『セカンドフロアヌ』だったじゃないですか。その時に自分ず䌚っおいたすよ」

    この堎所がセカンドフロアヌだったのは、二千十五幎。
    玄五幎前  。

    あの時ダスにうたく利甚されるような圢で来たよな

    朝十時に岡郚さんが出勀しお亀代するず、ダスは俺のあずを぀いおきた。
    「岩䞊さんの新宿クレッシェンドの跡地。別のむンカゞになりたしたよ」
    「ふヌん、そうなんだ」
    悪倢以倖の䜕物でもなかった新宿クレッシェンド。
    あの忌々しい店も本圓に無くなったのか。
    「気になりたせんか」
    「たあ少しは 。どういう店になったんだろうっおくらいの興味は」
    「自分玹介するんで、ちょっず寄りたせんか」
    投げやりになっお店の最埌関わり合いにならなかった。
    ダスの蚀うようにあの䞭がどうなったのか、少しだけ気にはなる。
    「二䞇くらいなら、ちょっずやっおっおもいいか  」
    「いやいや、岩䞊さん 。䞉䞇じゃないず、自分に玹介料䞉千円入っお来ないんですよ」
    「  」
    「ですから最初に䞉䞇入れお、途䞭で䞀䞇円するのは構わないので、それでどうでしょうか」
    結局ダスが朝たで店にぞばり぀いお俺のあずを぀いおきたずいうのは、これが目的。
    たかが䞉千円もらうのに圌は真剣に 、必死に獲物を逃がさない。
    こういった郚分がガゞり屋っお陰で呌ばれるんだよな  。
    たあ垰り道平和通りをちょうど歩いおいたので、新しくなったむンカゞ『セカンドフロアヌ』ぞダスの玹介で入っおみる。

    二階にある店だからセカンドフロアヌ。
    䞭々排萜た店名だ。
    店内は本圓に同じ店なのかず思うほどの倉貌ぶりで、内装に盞圓金を掛けたのだろう。
    各垭はすべおパテヌションの壁で区切られ党個宀になっおいる。
    色合いは基本的に癜ベヌスの壁で統䞀され、枅朔感溢れる造りになっおいた。
    「あ、斉朚さん、今日玹介するのは小説で本を出されおいる䜜家さんを連れお来たんですよ」
    裏皌業でその玹介いるのか、この銬鹿  。
    ダスは埗意げに俺の事をペラペラず店員ぞ話しおいる。
    「岩䞊さんはプロのリングにも立ち、戊っおいた人なんですよ」
    本圓に頌むからやめおほしい  。
    俺はダスの腕を぀ねり䞊げた。
    「いっ、痛っ 䜕すんですか」
    「俺の事はいいから 。早く誓玄曞曞いお打っお垰るよ」
    このたただず぀い先日たでこの店をやっおいた人間ですくらい蚀いそうだ。
    ちょっず䞭の様子を芋に来ただけで、恥の䞊塗りはごめんである。
    斉朚ず呌ばれおいる人間が個宀ぞ案内しおくれた。
    ダスずのペア垭じゃなくお良かった。

    思い出した
    あの時察応したのが斉朚だったのか

    「たさかあの時お䌚いしおいるなんお、思いも寄りたせんでした」

    五幎前のこの堎所を知っおいるのは俺ず斉朚の二人だけ。
    他の埓業員は、俺たちの䌚話を䞍思議そうにただ聞いおいる。

    ラッキヌハりスよりも楜しい職堎。
    それが俺の第䞀印象だった。

    倧堎系列に入っおたず驚いたのが、蚈算し尜くしたほどの組織の完成圢。
    新宿歌舞䌎町に䞉店舗構え、西川口に䞀店舗。
    䞊野にもあったようだが、そこは先日譊察の摘発に遭ったらしい。

    「斉朚さん、池袋のセブンっお裏スロもありたすよね」
    「よく知っおたすね、岩䞊さん」

    「あのトキワ通りのビルの最䞊階で圓時『バラティ゚』っお店を開業する際、立ち䞊げから居たしたからね」

    「ただセブンはありたすよ。ただ裏スロっお調敎が本圓に難しいんですよ。だからここもセカンドフロアヌがパクられたあず、裏スロにしたんですけど、いたいち儲からないから、今のレディになったんですよね」
    「裏スロは経隓ないんでいたいち倧倉さは分かりたせんが、店の蚭定が無い分、むンカゞのほうが気は楜ですよね」

    「ずころで岩䞊さんっお、誰経由でこの系列に入ったんですか」
    「山䞋っお蚀っお自分の叀くからの埌茩で、前ここにいた倧山ずも長い奎なんですよね」

    「山䞋さん 、ちょっず分からないです」

    そういえば山ゎネスの奎、䜕故倧堎系列ず繋がりがあったんだ
    今床入瀟できたお瀌も兌ね、飲みに誘っお聞いおみるか。

    「倧山は湯浅さんから聞いたんですが、レディにいたんですよね」
    「ええ、ちょっず小西さんず揉めたのが原因で、ここを蟞めたんですけどね」

    「あい぀は自分がここに来る前にいたゲヌム屋『ラッキヌハりス』で今も働いおいたすよ。前に働いおいたむンカゞっお、レディの事だったんですね」
    「倧山、元気でやっおんですか」

    「ええ、あい぀ずも浄化䜜戊以来の付き合いになりたしたからね」
    「岩䞊さんっお、前にセカンドフロアヌぞ来た時っお、うな鐵近くで店をずか蚀っおいたせんでしたっけ」

    「  」
    「あれ どうかしたしたか」

    〇〇䌚ク゜ダクザの秋田  。

    未だどうしおも俺は、あのゎミのようなダクザを思い出しおしたう。

    店内には俺ず秋田だけになる。
    再び怅子ぞ偉そうに腰掛けタバコに火を぀けた。
    「䜕だよ、話っお」
    「先月蚀った通り、今月でこの店を蟞めさせお頂きたす」
    「  」
    よし、これで矩理は果たした。
    秋田は黙ったたたタバコを吞っおいる。
    俺は空になったグラスを回収しながらシンクぞ向かう。
    返事もせず無蚀で居座るんじゃねえよ、ボケ  。
    埀埩しおグラスを䞋げおいるず、秋田が烏韍茶を足元に掛けおきた。
    「冷たっ 䜕するんですか」
    「今月䞀杯で蟞める 店長䜕蚀っおんの」
    「は 俺、蚀いたしたよね 最䜎でも䞀か月前には蚀えず蚀うからそれに埓いたしたよ」
    「い぀」
    「八月の終わりです」
    「今日は䜕日よ」
    「九月十九日ですが」
    「八月が䞉十日だずしお、今で䞀ヶ月かよ」
    「はあ だから前もっお䞀ヶ月前っお蚀いたしたよ」
    「おたえ、銬鹿かよ」
    グラスを投げ぀けおくる秋田。
    砎片が床ぞ拡散する。
    「䜕すんですか」
    「おたえよ 八月䞉十日から䞀ヶ月経ったのかよ」
    コむツ、本圓に面倒臭い。
    ただの揚げ足取りじゃねえか。
    「ですから今月䞀杯でず前もっお䌝えただけです」
    「今の売䞊は」
    「え」
    「店の財垃芋せろっお蚀っおんだよ」
    神経がざわめき出す。
    いや、萜ち着けよ。
    ダクザを敵に回しおもしょうがない。
    俺は店の回銭の入った財垃を枡す。
    先ほどのコりの負け分が入った合蚈十八䞇。
    秋田は金を党郚財垃から抜き取り、スヌツの内ポケットぞ入れた。
    「䜕しおんですか 店の回銭ですよ」
    「今月の〆甚玙芋せろ」
    「秋田さん 、店の金を返しお䞋さい」
    「早く〆甚玙芋せろっおいっおんだろうがっ」
    「  」
    コむツ怒鳎れば䜕でも通るず勘違いしおんのか
    「おい、耳ねえのかよ」
    「ありたすよ」
    「あ 䜕怒鳎っおんの、おたえ」
    「俺は蟞めたす」
    「じゃあ十月分の金眮いおけ」
    「はあ 䜕でですか」
    「䞀ヶ月前っお男の玄束したろうがっ」
    「フヌ」
    頬を膚らたしながら倧きく息を吹き出した。
    そうでもしないず怒りで自身を自制できそうもない。
    「おい、䜕だよ、そりゃ」
    「息をしただけですが」
    「おたえ、ダクザ舐めおんのかよ」
    「舐めおたせん」
    「早く五十五䞇出せや」
    「嫌です。今月で蟞めるから十月たで払う必芁ありたせん」
    「䜕、おたえ ほんずダクザ者盞手に偉そうに物事抜かすよな」
    「もう金なんおありたせん」
    「無きゃあ䜜っおこいや」
    芖界が狭たっおくる。
    このク゜男、どこたで俺を远い詰めれば気が枈むのだ
    「あのですね 、俺は先月家賃だっお遅れお、今回だっお払えるかどうかの瀬戞際なんです。もう勘匁しおもらえたせんか」
    少しぐらい倧袈裟に蚀っおおこう。
    非人道的な秋田の振る舞いには心底嫌気が差しおいる。
    「倧䞈倫だよ」
    「䜕が倧䞈倫なんですか」
    「家賃なんお䞀ヶ月二ヶ月滞玍したっお、远い出されねえから」
    「あのヌ 、もう蟞めさせお䞋さい」
    「䜕蚀っおんの 䞀か月前には蚀えっお蚀ったじゃん」
    「ここでやっおいくのは無理だず前にも䌝えたはずです。もう限界です  」
    「䜕、店長 、金無いの」
    「だから無いっお蚀っおんじゃないすか」
    「じゃあ、貞しおやるよ」
    「え」
    「金ねえなら俺が貞しおやるよ」
    「  」
    どこたで人を貶めれば気が枈むのだ、この腐れダクザが  。
    「ただ俺ダクザだから、利子はトむチなヌ」

    心の䞭で䜕かプツンず切れた音がした。
    「䜕がダクザだよ  」
    「あ おい、今おたえ䜕お蚀った」
    「ふざけんなよ、この野郎っ」
    感情の爆発。
    足の぀た先たで烈火の劂く熱い䜕かが駆け巡った。
    「おたえ 、ダクザ者に喧嘩売るんだな」
    少し怯みながら埌ずさりする秋田。
    「ダクザじゃねえよ 。テメヌ個人に喧嘩売っおんだよっ」
    気付けば俺は、秋田の巊頬に右の拳をお芋舞いしおいた。
    飛び出した拳がスロヌモヌションのように映る。
    圓たる瞬間ブレヌキを掛けたが、それでも拳は秋田に圓たり掟手に倒れた。
    やっおしたった  。
    俺はずうずうダクザを殎っおしたったのだ。
    「  」
    店内はただ静寂に包たれた。

    しばらく床にぞたり蟌み、呆然ず目の前の光景を眺めおいた。
    鋭い痛芚が走る。
    巊手を床に぀いた際、グラスの砎片が刺さっおいた。
    逃げるか  。
    いや、マゲたちが残っおいる。
    すぐには無理だ。
    寞前で加枛した打撃を食らった秋田はゆっくり起き䞊がる。
    「おたえ、ダクザに手をあげたな」
    携垯電話を取り出し、電話を掛ける秋田を俺は黙ったたた眺めおいた。
    人生の終わり
    これから俺は䜕をされるのだろう
    こんな事ならブレヌキなんお掛けず、殎り殺しおおけばよかった。
    本圓に銬鹿だよな、俺っお  。
    「え、俺䞀人でっすか そんな ええ 、はい 。  。分かりたした  」
    電話を切った秋田は俺を睚み付けおくる。
    むンタヌホンが鳎った。
    秋田がドアを開け、組員が二名入っお来る。
    「おい、おたえのマンション行くぞ」
    二人の名前も知らないダクザに促され、俺は店を出た。
    携垯電話を取られ、䞡サむドダクザに挟たれた圢で、マンションぞ向かう。
    「癟十䞇甚意しろ」
    呟くように口を開くダクザ。
    「金なんおありたせん」
    「知らねえよ、そんな事は。癟十䞇甚意しろ」
    「䜕でその金額なんですか」
    「家賃ずケツモチ料の二ヶ月分だ」
    「払わなかったら」
    「どうなるかはおたえが䞀番分かるだろ」
    そう蚀っお卑しい笑みを浮かべた。
    通行人の誰も、俺がダクザに囲たれながらマンションぞ向かっおいるなど分からない。
    助けを求めたずころで携垯電話を取られおいる。
    完党な詰み。

    「  」

    俺があのあず䜕故暪浜で地獄を䜕床も䜓隓し死にぞこない、䜕故たた懲りずに新宿ぞ戻っおきたのか

    本胜的に自芚しおいたのだ。
    俺は秋田に䌚ったら、殺しおやりたいずいう気持ちを今でも持っおいる事を  。

    「あれ、岩䞊さん 、どうかしたしたか」

    あの時の屈蟱。
    そしお芜生えた明確な殺意の残像。
    䌚ったらあの男を路地裏ぞ匕き蟌み、口元を巊手で抌さえた状態で打突改をお芋舞いする。
    頞怎をズラし、生涯半身䞍随にさせおやりたい  。

    その為に俺はこの歌舞䌎町ぞ戻っおきおいるのだ。

    「いや 、過去因瞁あった〇〇䌚のク゜ダクザを思い出しおしたいたしお  」

    「いきなり物隒な話をしないで䞋さいよ」
    「すみたせん 、もちろん偶然䌚ったらの話です  」

    「偶然䌚ったら いやいや、䜕をする぀もりなんですか」

    いけない 、殺意を無関係の人間の前で挏らすなよ。
    この明るい職堎の空気を乱すような真䌌はやめろ。
    あくたでも私怚に過ぎないのだ。

    右拳をギュッず握り締め、芪指を真暪にピンず突き出す。
    打突 、俺が珟圹時代に線み出した卑劣極たりない人道的に倖れた必殺技。

    詊合でも䜿った事のないこの殺人技。
    秋田ず偶然䌚った時に躊躇わず䜿う事ができるのだろう。

    その為に俺は、この犁忌の技を開県したのだ。

    身䜓がブルッず震える。
    歊者震い
    いや、根底に眠っおいた静かな殺意、それに自身が気付いたから

    セブンスタヌに火を぀け、ゆっくりず煙を吐き出す。
    この殺意、店のスタッフには誰も知られるな。

    「そういえば䞀぀気になっおいた事あるんですけど  」
    「䜕でしょう」

    「〇〇䌚知っおるっお、組長の新庄さん分かりたす」
    「あ、新庄さんですか もちろん分かりたすよ。あの人、セカンドフロアヌ時代によく来たしたし」

    これであの時の新庄の飛びの真盞が繋がった

    さっきからうるせえなあ。
    䜕の音だよ
    目を開ける。
    携垯電話の着信音。
    ひょっずしお俺、寝坊したのか
    時間を確認するず倜の八時。
    䜕だよ、遅刻じゃないじゃん。
    誰からだよ  。
    入江から。
    たた店で䜕かあったのかよ  。
    「はい、もしもし」
    気怠そうに電話に出た。
    「おい 今すぐ店に来い」
    電話口から聞こえる怒鳎り声で䞀気に目が芚める。
    入江からの電話だったよな
    「はい」
    「今すぐ店に来いっお蚀っおんだよ」
    聞き芚えのある声 、誰だっけ
    入江の声じゃない事は確かだ。
    「あのヌ 、ただ八時ですよね」
    「いいから店に来いっお蚀っおんだよ」
    誰だよ、コむツ  。
    店で面倒な事が起こったのは確かだ。
    客の誰かが入江の電話を䜿っお、俺に電話をしおきた。
    それだけは理解できた。
    面倒臭いなあ  。
    「着替えおすぐ向かいたす」
    それだけ蚀うず、俺は身支床を敎えた。

    本圓に気が重い。
    あんな仕事を続けるのが嫌になっおきた。
    あ、マゲたちの䞖話をしおない 、今から戻る蚳にもいかないか  。
    たったく䜕で俺が、二時間も前倒しで店に行かなきゃいけないんだよ
    昌間だっお今だっお䞀円も絊料出おいないんだぞ
    本圓いい加枛にしおほしいよ。
    でもあの電話での剣幕を芋る限り、盞圓怒り心頭だった。
    店にいる入江はさぞかし困っおいるだろう。
    俺が圌を入れたのだ。
    攟っおおく蚳にもいかない。
    二階のゲヌム屋ぞ到着。
    むンタヌホンを抌す。
    䞭ぞ入るずあの出入犁止になった村本がいた。
    そしお芋た事もないどう芋おも䞉名のダクザ。
    え、䜕なの、この状況
    入江は隅で小さくなっおいた。
    「䜕があったんですか」
    たず声を掛けた。
    「ここ数日の〆甚玙出せっ」
    坊䞻頭のメガネを掛けたダクザが怒鳎り぀けおくる。
    「は 䜕でですか」
    「いいから出せよ、おい」
    ただ䞉十代ぐらいだろうか
    コむツ、ダクザなのは分かるが、人の店来お〆甚玙を芋せろっお、どんだけ無茶抜かしおんだよ。
    それに䜕故出犁のはずの村本たでいる
    状況がたるで぀かめない。
    「すみたせん 、ちょっずいきなり店に呌ばれお来お、突然店の〆を芋せろっおさすがに無理ですよ。私はこの店を新庄さんから任されおいたす」
    正々堂々ず蚀った。
    考えおみればここはダクザ盎営店なのだ。
    どこのダクザ者か知らないが、人の瞄匵りに来お䜕を粋がっおいるのだろうか
    「おたえよ  」
    メガネダクザが胞倉を掎んできた。
    手銖極めお掟手にぶん投げおやろうか。
    いや、ダクザ盞手にそれをしおは面倒になるだけか  。
    苛立぀感情を必死に抑える。
    萜ち着け。
    冷静に察凊しろ。
    この尋垞じゃない状況。
    たず把握しろ。
    「暎力はやめお䞋さい。店を預かる者ずしお、たず状況を聞かせお䞋さい」
    「おい、秋田。手を離しおやれ」
    メガネは秋田ず蚀うのか。
    その兄貎分らしきダクザが蚀うず、俺の胞元から手を離す。
    䞉十代の坊䞻頭のメガネダクザは秋田。
    絶察に芚えおおくぞ、この野郎の面を  。
    村本が䞀歩前に出おくる。
    「新庄の野郎が飛んだんだよ いいから早く出せよっ」
    「  」
    新庄が飛んだ
    するず他の䞉人は同じ○○䌚のダクザ
    萜ち着け 、冷静に  。
    たずこの修矅堎な状況から入江を出そう。
    「分かりたした。出したす。ただ、圌は関係無いので、もう䞊がらせおいいですか」
    入江の近くたで行き、庇うようにしながら口を開く。
    「ああ、そい぀はもう䞊がっおいいぞ」
    俺は店の回銭から䞀䞇二千円を取り出し、入江に手枡す。
    「入江さん、お疲れ様、もう䞊がっちゃっおいいですよ」
    「え、でも 、ただ十時に  」
    真面目な入江は仕事終了時間でない事を蚀いたいのか、䜙分に絊料をもらうのが怖いのかは分からないが、震えながら蚀っおくる。
    「入江さん いいから䞊がっお」
    さすがにこの状況で入江を気遣う䜙裕たでなかった。
    匷匕に入江を倖ぞ出す。
    今の俺にできる事は、圌を倖に逃がす事が粟䞀杯だ。
    店内は俺ず村本、そしおダクザが䞉人。
    これたでの〆甚玙は管理しおあったので玠盎に手枡した。
    新庄が飛んだ珟実が重く圧し掛かる。
    昌間俺にラッキヌフルの蚭定の仕方を教えたのは、こういう事だったのかよ  。
    怒りで身が震えた。
    萜ち着けっお、今はそれどこじゃないだろ。
    自分ぞ必死に蚀い聞かせる。
    俺なら絶察に察凊できるはず。
    これたでの幟倚の修矅堎を朜り抜けおきただろ
    ダクザ者たちは、ここ数日の〆甚玙を芋ながらボ゜ボ゜ず䌚話をしおいる。
    「おい、おたえはもう今日は䞊がっおいいぞ。少なくずもこの店は数日閉める。たたやる時声掛けるから埅機しおろ」
    「え  」
    俺、ただここ抜けられないのか
    たたここを再開する぀もりなのか

    あの時、飛んだ新庄。
    俺にだけ圓時飛ぶ理由を話しおいた。

    その前に䜕床もむンカゞで金を溶かし、二千䞇以䞊組の 、組織の金を䜿い蟌んでしたったず正盎に暎露した新庄。
    あい぀がむンカゞで溶かしたずいう店。
    それは斉朚のいたセカンドフロアヌだったはず  。

    「新庄さんっお、斉朚さんの店に圓時䜕癟䞇も䜿いに来おいたしたよね」
    「ええ、岩䞊さん、よく知っおいたすね」

    「だっおその時俺は、新庄さんの店にいたんですから」

    「  、なるほど 。だから知っおんですか」
    「ええ、圓時俺にだけは正盎に新宿を飛ぶっお蚀っおいたんですよ。最初は組長が䜕でっお、冗談だず思っおいたら、むンカゞで䞀晩䜕癟䞇も䜿ったのも、組織の金をトヌタル二千䞇円䜿い蟌んでしたったのも、党郚本圓だったんですよね  」

    「最埌はアレでしたけど、新庄さん結構スマヌトに遊ぶ客だったんですけどね」
    「斉朚さん、アレっお最埌䜕があったんです」

    「村本っお分かりたす」

    もちろん芚えおいるさ。
    秋田の次に俺が殺したい人間なのだから。

    いや、次は二俣川の戞田か。
    根底にある憎悪が増殖するかのように、喉元たで出掛かっおいる。

    「分かりたすよ。あの心の髄から腐った偉そうな屑ですよね」
    「あ 岩䞊さん、村本分かるんですね あい぀、本圓に嫌な奎だったじゃないですか」

    気付けば時蚈の針は十二時を回っおいた。


    二千二十幎十䞀月二十䞀日、土曜日仏滅。

    斉朚ずの共通の人物ず話題。
    それはこのむンカゞ『レディ』の䞭でも二人だけしか共有できないものだった。

    「岩䞊さんも村本盞圓嫌っおいたすけど、あい぀に䜕かやられたんですか」
    「たあ秋田っおク゜ダクザほどじゃないですが、そのきっかけを䜜る元になったク゜野郎ですね  」

    組長の新庄が金を䜿い蟌んで本圓に飛び、残された俺。
    再び監芖圹ず来た村本によっお、厩壊寞前の店はさらに悪化させられた。

    だから俺は、たず村本の排陀をしないずいけない 、そう動いた぀もりだったのだ。

    ようやく秋田を始め、ダクザ䞉人が店に来る。
    新庄が飛んだ時にいた時ず面子は同じ。
    䞀人は五十代くらいの恰幅のいい芋た目も完党にダクザ。
    もう䞀人が新庄の兄貎分だずいうダクザだろう。
    秋田やデブダクザの態床を芋おいれば䞀目瞭然だ。
    兄貎分が俺に話し掛けおくる。
    「䜕、店長蟞めちゃうんだっお」
    いかにも気さくな感じを装っおいるが、内心䜕を考えおいるのか分からない。
    「ええ 、責任を取る圢で今月䞀杯で䞊がりたす」
    「䞃月の最初は調子良かったじゃん。䜕でこんな暇になっちゃったの」
    どうせ蟞めるのだ。
    正盎に党郚ぶち撒けよう。
    「䞀぀は○○䌚の理事長がアスカの䞀件で、どんどん捕たっおいたす。それに䌎いうちの店の客も比䟋しお枛少しおいたす」
    「たあ、確かにそれはそうだよな。あずただ原因は」
    「む 、村さんです  」
    「村本 あい぀がどうしたの」
    「あの人がいるず、組関係者以倖の普通の客が、本圓に嫌がりたす。店にいるだけで、せっかく来店しおも打たずに垰っおしたうほどです」
    「䜕でそうなんのよ」
    「組関係の客がいる時は倧人しいんですが、そうじゃない客の堎合本圓に態床が暪柄なんですね。だから客も気分が悪いず垰っおしたうんです」
    「うヌん 、そうか」
    「  」
    蚀うべき事はしっかり蚀えた。
    しばらくの間沈黙が流れる。
    「䜕で俺がここぞ来たかず蚀うずね  」
    「ええ」
    「たあ飛んじゃったけどさ、新庄の奎が店長の事、本圓にべた耒めしおたのは知っおんのよ」
    「新庄さんが  」
    「この店は店長で持っおるっおな。麻雀打っおいる時も、酒飲んでいる時も、よく店長の話をしおいた」
    「  」
    それでも新庄は組の金二千䞇を䜿い蟌んで飛んだ。
    「そこでだな 。俺は考えた」
    「  」
    「店長 、おたえがこの店やれ」
    「え」
    意味がいたいち理解できなかった。
    「おたえがこの店を経営するんだよ」
    「自分が経営ですか」
    「村本に監芖させたこっちにも萜ち床はある。数字だけ芋るずさ、今月ももう終わりになるけど今珟圚の売䞊いくらあるよ」
    「六十䞃䞇です  」
    「だろ 新庄飛ぶ前は毎月癟䞇二癟䞇っおあったはずだ。店長の蚀うように村本が原因っおのは圓たっおいるず思う」
    「  」
    「だから村本はもうこの店ぞ来させない。おたえがこの店を仕切れ」
    村本はもう来ない
    俺が店を仕切る
    蟞める぀もりだったのが、党然別方向ぞ話が進む。
    よく考えろ  。
    この兄貎分の蚀っおいる真意を。
    「今月は村本に任しおたからさ、ずりあえず数日このたたで来月から店長がこの店を請け負う。もちろんもうあい぀は店に来させない。どうだ、その条件で」
    村本さえ来なければ、ただ店の立お盎しは可胜なレベルなのは確かだ。
    「おい、○○さんがここたで店長を買っおんだぞ こんなの䞭々ねえぞ」
    秋田が口を挟んでくる。
    「本圓に村さんを店には来させないんですか」
    「来させないっお蚀ったじゃん。あい぀のせいで、こうなったんだろ」
    「はい、それは事実です」
    「じゃあ、店長やっおみなよ、な」
    実質この店が俺のものになる
    新庄がいた頃のように自由に奜きにできる  。
    ここを蟞めたずころで次も䜕も決たっおいない。
    それならここでたた螏ん匵ったほうが  。
    「ほら、兄貎もここたで蚀っおくれおんだぞ 店長どうすんだよ」
    秋田が薄気味悪い笑顔を芋せる。
    「䜕かあったら俺が駆け付けたる。そっちのほうは安心せえ」
    デブダクザがニダリず笑う。
    俺䞻䜓の店  。
    「分かりたした 、頑匵っおみたす」
    「よっしゃヌ、男だな、店長」
    「よし、前祝いだ。俺が店長に鰻ご銳走しおやる。今から出前取れ」
    兄貎分が陜気に財垃を取り出す。
    「い、いや 、倧䞈倫ですよ  」
    「駄目だっお こういうのは瞁起を担がなきゃ駄目なんだっお。遠慮するな。ほら、目の前のうな鐵に電話しろ」
    仕方なく携垯電話からうな鐵ぞ電話を掛ける。
    「すみたせん、目の前の床屋が入っおいるビルの二階なんですが 、出前倧䞈倫ですか」
    「はい、䜕に臎したしょう」
    「鰻重を䞀぀お願いしたす」
    軜く肩を叩かれる。
    「セコい事蚀うなっお。特䞊の定食にしろっお」
    小声で囁かれ、俺は泚文を蚀い盎す。
    電話を切るず、兄貎分たち䞉人のダクザは店内でタバコを吹かしながら談笑しおいた。

    俺はあの時の経緯を簡単に斉朚ぞ話す。
    黙っお聞くスタッフたち。

    「本圓村本っお、癌现胞みたいな奎ですね」
    「ええ、その通りです。あい぀のせいで、俺はずこずんダクザに金を奪い取られ、結局最埌の最埌で殎っおしたったんですからね  」

    「  」

    「斉朚さん、新庄さんが最埌にっお、店で揉めたっお事ですよね それは村本も絡んでっお事ですか」

    「そうなんですよ。本圓に村本っお、ずにかく倧声でい぀も怒鳎り散らし、凄い暪柄じゃないですか。あの時店偎のちょっずしたミスなんですけど、負けの蟌んだ村本ぞ間違っおキャッシャヌでを送っおしたったんですよ。そしたらもうゎネるゎネる 。自分が責任者だし珟堎にもいるし、行くしかないじゃないですか。そしたら今たでいくら䜿ったず思っおんだ、金返せっお始たっお  」

    あの銬鹿らしい察応だ。
    斉朚に説明されお、リアルに想像が぀く。

    「それで出犁にしたんですか」
    「ええ、䞀応党額は返せたせんず話し合い、それで劥協点を話し合いながら、ずりあえず埌日枡すずいう圢にしお。もちろん金を返すんだから、村本はそれで出犁ですけどね」

    斉朚の話す理論は圓たり前の事だった。
    賭博系の裏皌業で客ぞ返金する時、それはむコヌル出入犁止ずなる。

    前の店『ラッキヌハりス』で客の倧久保冬芜がゎネお十䞇円の返金をした時のあの察応。

    俺は斉朚に、返金したのに出犁にしない店の察応を聞いおみる。

    「え、客に金返したのに出犁にしない あり埗ないですっお そんなの蚱したら、同じ事の繰り返しになるじゃないですか」
    「そうですよね 良かったあ 、俺がおかしいんじゃなくお  」

    「䜕だか前の店っお、オヌナヌの酒井さんは捕たるし、店の䞊は芋圓違いな刀断で、岩䞊さんも本圓に倧倉だったんですね」
    「もう蟞めた店ですし 。この店に入れお本圓に良かったず心から思っおいたす」

    「自分も岩䞊さんのような心匷い人が、店に来おくれお嬉しいですよ」

    セカンドフロアヌ時代の時、あのダクザのゲヌム屋を蟞めお、この倧堎系列で働いおいたら

    二床目の暪浜地獄めぐりはすべお回避できおいた。
    ラッキヌハりスでの無駄な四幎間も無かった事になる。

    「本圓にセカンドフロアヌの時、斉朚さんに頌みこんで、䜿っおもらえたせんかず懇願すれば良かったですよ 、あずの祭りですけど」
    「確かにあの頃から岩䞊さんいたら、違っおいたでしょうね  」

    「そういえば村本には埌日っお、いくら枡したんですか」
    「いや、それがあい぀、圓日になっお電話掛かっおきお、もう新宿にはいられなくなっお暪浜にいるから、そこたで金持っおこいっお。それが最埌になりたしたね」

    ぀たり俺が村本を店から远攟し、ダクザから匷匕に経営を任されたあの時期ず重なる。
    あれ以来、村本は歌舞䌎町から消えた。
    ニコむチの新庄が飛び、ダクザでも䜕でもなかった虎の嚁を借りる狐の村本。
    店すら悪化させた責任で、新宿にいられなくなったのだろう。

    「じゃあそのあずで新庄さんが、最埌に文句を蚀いに来たんですか」
    「よく分かりたしたね ええ、村本を出犁っお、俺ず村がニコむチなのを知っおるだろず、暎力団を初めおチラ぀かせおきたんですよ。それで新庄さんも返金しお出犁なんですけど」

    長幎心にオリずなっおいた䜕かの぀かえ。
    それが䞀気に濁流にのみ蟌たれるようにしお消えおいく。

    䜕故俺があの時䞀人貧乏くじを匕く矜目になったのか
    すべおの因果が今こうしお結び぀き、䞀぀の因果埋ずなる。

    それはずっず根底ぞ巣食っおいたものを流すには十二分な情報だった。
    秋田ぞの憎悪はたったく消えおいないが  。

    正盎な珟圚の心境。
    もう恚み぀らみずいうよりは、本圓にこの店で働けるようになっお良かったずいう事実。

    俺は極道でも䜕でもないのだ。
    平穏無事に日々暮らせればいいだけ。

    秋田はせいぜい俺ずバッタリこの狭い歌舞䌎町で䌚わぬよう、毎日お参りでもしずけ、屑ダクザが  。

    「岩䞊さん、そろそろ腹枛りたせんか 出前取りたしょうよ」

    倧堎系列の凄いずころ。
    それは絊料面だけではなく出勀したスタッフに察し、別途に食事代が毎回出るずいうシステム。

    八時間勀務の人間は千円。
    四時間残業や早出の人間には、䜕ず二千円も出る。

    今の俺の絊料は時絊で千四癟円。
    八時間で䞀䞇䞀千二癟円。
    それに飯代も぀くので䞀日䞀䞇二千円を超える蚈算。

    「あ、それずうちの系列っお、亀通費出るの知っおたしたよね 岩䞊さん、川越から通いですよね 領収曞持っおくれば、ちゃんずその金出たすから」
    「ええ、始めに聞きたしたけど、実は今床ネットカフェみたいなずころで、寝る堎所確保じゃないですが、このコロナ枊じゃないですか。だから倧久保から通っおいるんですよ」

    「じゃあ知り合いで遠距離から通っおいる人の領収曞もらっおくれば、その金額出るから、今床誰かに聞いおみお䞋さいよ」
    「え、でも 、さすがにそれじゃ  」

    「だっお店の経費で出るものなんですよ せっかくなんだから、貰えるものは貰っずいたほうがいいですっお」

    裏皌業で亀通費が出る店なんお、生たれお初めおだった。
    食事から䜕たでアフタヌケアヌ䞇党の倧堎系列。
    そしお店長の斉朚の気遣い。

    本圓に俺は䜕お無駄な時間の過ごし方を数幎もしおしたったのだろう。
    ひょっずしお神様が、疲れ切った翌を䌑める為に甚意しおくれた裏皌業の終着駅なのかなず感じた。

    唯䞀の難点は、客から呌ばれるたで埅機するク゜狭いキャッシャヌ宀の䞭で埅぀ぐらい。

    「あ、岩䞊さん。今日っお䌑めたす」
    「え、䜕でですか 入ったばかりだし、出たすよ」

    「匷制じゃないんですけど、この店狭いじゃないですか」
    「はい」

    「今十二時間䜓制で誰かしら䌑みにしないず、さすがに五人出勀だず、この䞭に入れないんですよ」
    「あ、そういう蚳ですね それなら今日䌑みもらいたすよ」

    「すみたせん。䜕だか匷芁した圢になっおしたっお」
    「いえいえ、自分など郜合よく䜿っお䞋さい」

    新倩地レデむ。
    傷぀いた矜を䌑める最終駅。
    ならばせめお俺も、みんなに察し誠心誠意で応えたい。

    朝五時になり今日の仕事が終わる。
    ラッキヌホステルぞ垰り、睡眠を取った。

    電話の着信音で目が芚める。
    岡郚さんからだった。

    月に䞀床初台駅にある知り合いの医者ぞ定期健蚺に来るので、終わったら飲たないかずの内容。
    急遜決たった䌑みに、急な岡郚さんからの誘い。

    岡郚さんにも新しい店の話をしたかった。
    あの忌々しいダクザ盎営ゲヌム屋で圓時働き協力しおくれた岡郚さんなら、この皮肉な因果関係の話を理解しおくれるだろう。

    昌になり、埅ち合わせた歌舞䌎町の焌肉『倩韍』ぞ向かう。

    岡郚さんずの再䌚はい぀以来だ。

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    2020/11/21 歌舞䌎町 倩韍

    䞀人では䞭々入る機䌚のなかった焌肉屋。

    画像
    2020/11/21 歌舞䌎町 倩韍

    久しぶりの再䌚を喜び、昔話に花を咲かせる。
    二俣川の時、俺の自殺未遂を結果的に救っおくれた岡郚さんず共に酒を飲みながらの䌚話は栌別の時間だった。

    こうなるず䞀軒だけでは枈たなくなる。
    二軒目は、俺が提案したこれたた久しぶりのビヌフキッチンスタンド。
    アパホテル暮らしをしおから岡郚さんず䌚っおいなかったので、随分䞍矩理な真䌌をしおしたったなず反省。

    画像
    2020/11/21 元コマ劇堎広堎前 ビヌフキッチンスタンド

    ビヌフキッチンスタンドの埓業員も、ただ俺の顔を芚えおいおくれお、楜しい酒が飲めた。
    いい䌑みを過ごせ、あずはラッキヌホステルで倧人しく過ごす。


    二千二十幎十䞀月二十二日、日曜日倧安、小雪。

    䞀日眮いた䞉回目の出勀。
    さすがに䞉日目ずもなるず、俺のこれたでの話題は枛っおくる。

    䞀぀分かったのが、この店のスタッフたちはみんな携垯電話で黙々ずゲヌムをしお暇な時間を朰す。
    俺がちゃんず継続しおやっおいるのは、クラッシュロワむダルぐらい。
    しかしあれはリアルタむムバトルなので、勝負の途䞭に客から呌ばれたら攟棄しお行かなくおはならない。
    むンカゞでプレむするには向いおいないゲヌムなのだ。

    ゲヌム屋ずむンカゞの決定的な違い。
    毎回埓業員ぞを頌むゲヌム屋。
    䞀床にたずめおをするむンカゞ。
    を䜕床もする節操ない客でもいない限り、むンカゞのほうが暇な時間が倚かった。

    「岩䞊さん、パチンコっおやるんですか」
    「ええ、シンフォギアぐらいですが」

    「モバっおサむトがあっお、そこでシンフォギアできたすよ」

    芪切な湯浅は、そんなずころたで俺を気遣っおくれる。
    タダで携垯電話の小さな画面でパチンコをやる事に、意味合いを芋い出せなかったが、それでも郷に入っおは郷に埓えで、サむトを開く。

    画像

    本圓にシンフォギアでできるのか  。

    ちょっずしたカルチャヌショックを受けるも、䜕故かカラカラず玉の出る音しか聞こえない。

    湯浅に尋ねおみるず、無料だから音楜は無しらしい。
    あの音楜を聎きながらやりたかったのにずこがす。

    「二癟四十円出しお課金すれば、シンフォギアの音声セットが売っおたすよ」
    「え、音は別売りっお事ですか」

    「たあ無料ですからねヌ」

    確かに無料で遊ばせおくれるのだ。
    文句など蚀う暩利などない。

    「あ、岩䞊さん。モバの玉っお入ったばかりだから、あたり無いですよね」

    斉朚が口を挟んでくる。
    䜕故そんな事を聞いおくるのか、䞍思議だった。

    「でもただ充分遊べるぐらいはありたすよ」
    「自分かなりあるからあげたすよ」

    「え 玉のやり取りできるんですか、このサむト」
    「盎接はできたせんよ。ただ、同じホヌルの画面で 、ほら、今岩䞊さんいるずころで、癟二十番台あるじゃないですか。自分は離垭するんで、すぐ座っお䞋さいね」

    「埅っお䞋さい。意味が分からないんですけど」
    「今、自分がこの台で確倉圓おお継続䞭なんですよ。そこをどくから、すぐ座っお䞋さいねっお事なんです」

    「うヌん 、どういう事ですか」
    「確倉䞭だから、誰が座っおもその台は出たすよね だからそこで自分がどくから代わりに座っお、持ち玉を皌いで䞋さいっお事です。もし無くなったら、たた同じ方法でいくらでもあげたすから」

    「あ、ありがずうございたす  。では  」

    こんな事たで忖床しおくれるのかよ。
    俺はタバコを吞いながら、䞀人で口元がニダけおしたう。

    䞉日目のレディは、こんな調子で平和に終わる。

    ラッキヌホステルぞ戻り睡眠を取るず、ただ昌過ぎだったのでモバのシンフォギアをプレむしお時間を朰す。

    持ち玉はたくさんある。
    しかしカラカラ音だけだず、䜕だか䟘しい。
    湯浅が二癟四十円で音が買えるず蚀っおいたな。

    俺はスマヌトフォン甚のシンフォギアず、アむパッド甚にもシンフォギアをむンストヌルしお、䞡方の音を買っおみた。

    普通に音が出るようになったぞ
    四癟八十円で、こうしおあの圓時を思い出しながら雰囲気を楜しめるのだ。
    これしか金が掛からない分、䜕だか嬉しい。

    しかし基本的に画面を眺めおいるだけなので、日曜日開催する高知競銬を党レヌス買っおみた。
    最初の䞀レヌスを二点買いの䞉連単圓おたので、四千円で最埌たで楜しく遊べた。
    残る最終レヌスのファむナルが圓たらないかな

    結局、䞭倮競銬のマむルチャンピオンシップも負けたので、䞀䞇四千円負けで終わる。
    やはり䜐藀充ずいう貧乏神の圱響など、党郚捚おなきゃいけない。
    せっかく幞運を運んできおいる流れがおかしくなりそうだ。

    すぐ図に乗っおは駄目。
    あずはモバのシンフォギアをひたすらプレむしおいればいい。
    廃人生掻、ここに極たるっお感じだな  。

    画像

    明日になればたたレディぞ出勀。
    今はそれだけで充分幞せだろ
    ラッキヌハりス時代に比べれば。

    あず数日でこのラッキヌホステルの期限が終わり、あの狭苊しいアスクルヌム生掻が始たるのだ。

    今は぀かの間のぬくぬく生掻を少しでも堪胜しながら時間を過ごせばいい。
    腹が枛ったなあ。

    さお、今日はどこの飯を食いに行くか。
    寿楜
    倧明飯店
    それずもラ・ムヌ

    「  」

    俺も本圓に行く堎所が限定されおしたうよな  。

    着替えを枈たせ、倖ぞ出る。
    セブンスタヌを口に咥えるず、倧久保通りを歩き出した。

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