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闇 28日本䞀汚い倉庫線

闇 28日本䞀汚い倉庫線

2024/09/28 sta
前回の章


翌日眠い目をこすりながら店に着くず、北䞭が散らかしたたたのテヌブルの䞊を掃陀する事から俺の仕事は始たる。
北䞭は掃陀ずいうものをたったくず蚀っおいいほどしない。
しかしこれが俺の珟状なのだ。

先の事を䜕も考えずに遊び惚け、あれほどあった金をただ目枛りさせただけの自分。
䞀からやり盎す為には、こうした䜜業も甘んじお受け、修行の䞀環ずしお頑匵らねばならない。

客のいない時間を利甚しお店のファむルを眺め、ビデオの皮類を芚えるよう心掛ける。
ビデオの仕事さえ芚えおしたえば、あずは俺のパ゜コンタむムだ。
昔のゲヌムを遊ぶだけでなく、色々な事をできるようになっおおきたい。

階段を降りる音が聞こえる。
客か。

俺は入口を芋るず、シンシンがメロンぞ入っおきた。
女性がここぞ来る事なんおたずないので驚く。
この裏ビデオ屋は、いわば女性が生理的に嫌悪する男だけの聖域に近いものがあった。

「岩䞊さん、お願いある。いいか」
「䜕でしょう」

シンシンはセカンドバックから封筒を出し、テヌブルの䞊に眮く。
䞭身を芋るず、婚姻届の保蚌人の名前を曞く曞類だった。

「パパず私、結婚する。でも保蚌人二人必芁。䞀人、岩䞊さん頌む。いいか」

「ちょ、ちょっずいきなり過ぎたすっお」
「倧䞈倫。この曞類、名前曞けばいいだけ」

「いや、そういう問題じゃなくおですね  」
「い぀になったら曞く」

䜕で保蚌人をお願いされおいるのに、こんな催促されるような蚀い方をされなきゃいけないのだ。

「埅っお䞋さいっお。少し考える時間を䞋さいよ」
「分かった。たた来る」

そう蚀っお圌女はメロンをあずにした。
シンシンずいう名前しか分からないのに、䜕で俺が保蚌人にならなきゃいけないんだ

新しい客が入っおくる。
俺は客の察応をしながら仕事をする事にした。

毎日こんな事をしおいるず、必然的にビデオの皮類を芚えおくるものである。
出前を頌み食事を枈たせるず、北䞭が店に来た。

「あの北䞭さん。先ほどシンシンさんが来たしお、結婚の保蚌人がどうずか  」
「ああ、あれか。じゃあ、名前曞いずけ」

䜕なんだ、この蚀いようは
自分たちの結婚なのに、䜕故俺が匕きずり蟌たれ、こんな蚀われ方をされるのか。
垞識がないにも皋がある。
それに北䞭自身の結婚に関する事を蚀っおいるのに、どこか面倒臭そうに感じた。

「今日から岩䞊は、倉庫ぞ行っおくれ」
「え、俺が倉庫ですか」

「たたには倉庫の野路さんをゆっくり食事でもさせおやるだよ」

野路ずいう名前なのか。
あの倉庫の無愛想な人は  。

「食事っお、䞀時的にっお事ですか」
「もちろんそうだよ。俺が店にいるから岩䞊は倉庫に行っお、その間野路さんを食事ぞ行かせるだけだよ」

「でも、倉庫の堎所 。自分は分からないですが  」
「ちょっず埅っおろ。今、野路さんに電話しおこっちに呌ぶから、倉庫の堎所を教えおもらえ」

頭の䞭で想像しおみた。

店だけで六癟皮類ぐらいのビデオやがあるのだ。
倉庫はストックもあるはずだから、二千本ぐらいビデオがズラッず䞊んでいるかもしれない。

もし俺が倉庫にいる時に電話があったずしお、泚文したビデオを探す事ができるだろうか
぀い、劙な䞍安をしおしたう。

「だ、倧䞈倫ですかね 自分なんかが倉庫で  」
「倧䞈倫だよ。野路さんにビデオの眮いおある堎所ずか説明させおから食事に行かせるから。なあに、簡単な仕事だ」

「はあ  」

階段を「はぁはぁ」ず野路が駆け䞋りおきた。

「野路さん、食事ゆっくりしおくればいいだよ。その間、岩䞊に倉庫をやっおもらう事にしたから。今日だけ岩䞊に、倉庫の仕事を教えおから食事に行っおくれ」
「ああ、そう」

オヌナヌである北䞭に察しおもタメ口の野路。
この人は蚀葉遣いずいうものを少しは勉匷したほうがいいのではないだろうか。

そんな蚳で俺は、これから野路ず倉庫ぞ向かう事になった。


ビデオ屋メロンを出お、花道通りを颚林䌚通方面ぞ向かっお真っ盎ぐ歩くず、䞀軒の叀いマンションがある。
䞀階は叀そうな造りのラヌメン屋。

倉庫はその四階の䞀宀にあった。
野路がドアを開けた瞬間、俺は目を䞞くした。

「  」

錻が曲がりそうな䜕ずもいえない腐った臭い。
口で吞っおも味がしそうな臭いである。
そんな悪臭が錻を぀く。

倉庫は玄関先から、ずお぀もなく散らかっおいた。

「早く䞊がりなよ」

入口で䞊がるのを躊躇っおいる俺に、野路は声を掛けおきた。
俺は䞀瞬だけ倖に出お、目䞀杯息を吞い蟌んだ。
こんな事をしおも、しばらく倉庫の䞭にいるようだから無意味なのは分かっおいたが、それでも新鮮な倖の空気を吞いたかった。

入っおすぐキッチンがある。
たずビックリしたのが、ガスコンロに出しっ攟しのフラむパン。
よく芋るず、ゎキブリの死骞が䜕匹かいた。

ゟゟッず鳥肌が立぀。

「䜕か飲むかい コヌヒヌなら冷蔵庫にあるから、勝手に飲んで」
「ありがずうございたす」

思ったより野路はいい人なのかもしれない。
喉の也きを芚えおいたので冷蔵庫を開けた。

「ゲッ  」

季節は冬。
この時期にゎキブリなど普通は出ない。

それが倉庫の冷蔵庫には、りゞャりゞャずゎキブリが埘埊しおいた。
猶コヌヒヌの口を぀けるタブのずころにも、構わず動き回っおいる。

さすがに氎で掗っおも口を぀ける気はしない  。

「遠慮しないで飲みなよ」

「あ、今、喉也いおないから倧䞈倫です  」

野路は䜕も気にせず、このコヌヒヌを飲んでいるのか
そういえばやビデオをメロンに持っおくる時、い぀も客甚に買っおあるコヌヒヌを持っおいく。

 ずいう事は、普通に飲んでいるずいう事なのだ。

倧䞈倫なのか、この人は  。

倉庫の郚屋は十畳䞀間で、壁に沿っお棚がズラッず眮いおある。
䞀぀䞀぀の棚には、各ゞャンル別にビデオが䞊べられおあった。

「䞀番右の棚から『和物』ね。タむトルで、あいうえお順に䞊んでいるから。次が『熟女』、『盗撮』、『』、『スカトロ』ね。『レむプ』は『和物』ず同じにしおある」

「  」

䜕を蚀っおいるのか、さっぱり分からない。
野路さんは構わず話を進め、「最埌が『掋物』だから」ず蚀っお食事ぞ行っおしたった。

郚屋の䞭にはテレビが二台ず、ビデオデッキが党郚で九台眮いおある。
ひょっずしおこんな小汚い環境で、あの裏ビデオのダビングでもしおいるのだろうか

それにしおも臭い郚屋だ。
ボロボロの絚毯の䞊には、ゎキブリが我が物顔で歩き回っおいる。

ずおもじゃないが、地面に腰掛ける気になれない。
かずいっおそのたた立っおいる蚳にもいかない。

郚屋に転がっおいるダンボヌルの䞀぀を朰し、座垃団代わりにしお腰掛けた。

携垯の電池が少なくなっおいたので充電をしようずビデオデッキで䞀杯の蛞足に、コンセントを挿そうずした時だった。
絚毯の汚れず思っおいた黒いものが、䞀斉にサササず動く。

「うわっ」

思わず出る叫び声。
黒い汚れ  。

それはゎキブリの塊だった。
蛞足のコンセントに籠もった熱で、枩たっおいたのだろう。

野路ずいう人間は、どんな生掻をしおいるのか  。

尿意を感じトむレぞ向かう。

床にゎキブリがいないか泚意しながら、垞に慎重に䞀歩䞀歩進む。
トむレの䞭ぞ入るず、思わず錻を抌さえおしたう。
ムワッずする物凄い臭いだった。

手探りで電気を぀ける。

「ゲッ  」

䞭はナニットバスになっおおり、巊手にトむレ、右手が济槜になっおいた。
手を掗うはずの掗面噚の䞊は、挫画本が積み重ねられおいる。

異臭を攟぀元は䟿噚だった。
氎の溜たる郚分はこげ茶色に染たり、掃陀をたったくしおいないのか䟿が固たっお぀いたたたである。

そしお尻を぀く郚分のカバヌの片偎は、䜕故かガムテヌプでグルグルに巻かれおいる。
カバヌが折れるなんお聞いた事もないが、実際に折れたからこその凊眮なんだろう。

济槜を芗いおみるず、普段䜿っおいるずいう気配がない。
底は黒い现かいものがたばらにある。
ひょっずしおゎキブリの糞だろうか

駄目だ  。

これ以䞊、ここにいるず気が狂う  。

俺は䞀床倉庫から出る事にした。
ドアを開けた瞬間、心地良い新鮮な空気が錻に飛び蟌んでくる。

空気がこんな矎味くものだなんお、生たれお初めお感じた。
歌舞䌎町で空気がこんなに矎味く感じるなんお初めおの経隓である。


倉庫の倖でタバコを吞っおいるず、野路が垰っおきた。

「おたえ、䜕をしおんの」

「あ、タバコ、䞭で吞っちゃいけなかったかなず思いたしお  」

適圓に蚀い蚳をでっち䞊げた。

「そんなのは党然構わないよ。倖にいちゃ寒いだろ。䞭に入りなよ」

久しぶりにゆっくりできたのがそんなに嬉しかったのか、野路は䞊機嫌だった。
笑顔でドアを開け䞭ぞ入っおいく。
俺はタバコを消し、あずに続いた。

たたあの臭いを嗅がなくおはならないのか  。

「北䞭さんから電話は」
「特にないです」

「盞倉わらず暇だな。たあいいや。ずりあえず倉庫でやっおもらいたい仕事ね。電話来たら店にビデオを運ぶっおいうのが第䞀だけど、いる間は少なくなったビデオのダビングをやっおほしいんだよね」

「はあ  」

野路はダビングに぀いお色々䜕かを話しおいたが、そんな事ぐらい聞かなくおも分かる。
圌の蚀葉は俺の右耳から巊耳ぞそのたた通過した。

そんな事よりも、これからこの倉庫ぞ毎日来るようなのである。
この臭さをどう察凊したらいいか。
そんな事ばかり考えおいた。

「野路さん、俺、倉庫にはだいたいどのくらいいればいいんですか」
「俺が飯に行く間だけだから、䞀時間から二時間ぐらいだろ」
「そうですか」

少しだけホッずする。
ここ専門になったら、俺は窒息死しおしたう。

「明日も出勀だろ」
「いえ、明日はお䌑みなんですよ。ではそろそろ俺、メロンに戻りたすね」

「もうちょっずゆっくりしおいけばいいじゃんか」

芪切心で蚀っおくれるのは充分分かるが、ノヌサンキュヌである。
䞀刻も早くこの堎所から逃げ出したかった。

「いえ、北䞭さんが䞀人で店番をしおるでしょうし  」
「倉庫にさ、人が来たなんお久しぶりだよ」

野路は俺の台詞など聞いおないかのように喋り出しおいる。

暪にあるテヌブルの䞊を䞀匹のゎキブリが走り出す姿が芋えた。
野路は普通に話しながら玠手でゎキブリを朰し、ゎミ箱ぞ攟り蟌む。
芋おいお吐きそうになった。

「  。久しぶりっお、前にいた浊安さんは来おなかったんですか」
「あい぀はいい加枛だろ だいたいうちで働く人間っお北䞭さんから金を借りお返せなくなり、その肩代わりに安い金で働かせられるだけだからさ。倉庫はビデオ屋にずっお呜綱だし、そうそう簡単に教えられるもんじゃないんだよ」

こんな汚い堎所がメロンの呜綱  。

「そういうもんなんですか」
「たあおたえは、北䞭さんから信頌されおいるんだろうな」

「どうなんでしょうね。ずりあえず今日は垰りたすね」
「明日もよろしくね」
「だから明日は䌑みですっお」

芖線をずっず䞋を向けたたた湿った床を歩く。
うっかりゎキブリを螏んでしたったじゃ、排萜にならない。


仕事垰り、ミサキぞ電話をしおみるが出なかった。
キャバクラぞ出勀しおいるのだろう。

仕方なく月に䞀床ぐらいの割合で行くスナックぞ飲みに行く。

本圓に暇な店で、二十五歳前埌の女が䞉人で働いおいる店。

「あ、岩䞊さん、いらっしゃい」
「おう、久しぶり」

「い぀もので、いいんでしょ」
「ああ」

「グランリベ  」
「グレンリベット。いい加枛、芚えろっお  」
「あヌ、ごめんごめん」

女の質は萜ちるが倉に気を䜿わないでいいので、俺は気に入っお通っおいた。

俺はグレンリベットの十二幎が倧奜きでたたらない。
目の前にこの酒を眮かれるだけで、ニコニコしおくるから䞍思議だ。

以前ホテルで働いおいた時の話だが、色々な酒を飲み、自分にあった酒を探しおいた時期があった。
䜕䞇皮類の酒を飲んだか分からないぐらい、様々な皮類の酒を飲んだ。

その時に俺はグレンリベットに出䌚った。

俺が䞀番、日本でこの酒を飲む。
みんなにそう思われるぐらい飲んだ。

この酒に出䌚っおからは、ずんか぀屋ぞ行こうが、焌肉屋に行こうが、行き぀けの店にはすべお、グレンリベット十二幎を眮かせおもらうように頌んだ。

店内は、盞倉わらず閑叀鳥が鳎いおいた。

俺が来た時点で、客が䞀人だけいた。
しかし䞉十分もするず垰っおしたい、ずうずう俺䞀人だけになる。

「ねえ、岩䞊さん」
「䜕」

「私たち、ビヌルもらっおもいい」
「はいはい、どうぞ」
「わヌい、ありがずう」

これで䌚蚈にビヌルが䞉杯分足される事になる。
䞉千円は掛かるずいう意味だ。

「いただきたヌす」

俺の持぀グラスより、女たちはグラスを䞊に高くした状態で也杯しおきた。

サヌビス業をやるなら、絶察にやっおはいけない行為である。
でも俺は䜕も蚀わず、笑顔で也杯した。

「それにしおも、本圓に暇な店だな」

無駄に広い店内をゆっくり芋枡す。
閑叀鳥が鳎いおいるずはこういう事を指すぐらい、暇な店である。

よくこんな状態で店がもっおいるものだ。
ある意味、感心する。

「ほんず、そうなんですよ。岩䞊さんっお、前にホテルでバヌテンダヌやっおたんでしょ 䜕か私たちにカクテル䜜っおよ」

「悪いけど仕事以倖じゃ、俺はシェヌカヌを振らない。それに今はバヌテンダヌじゃない」
「えヌ」

昔は違った。
ホテルで働き出した頃は、絊料が入るず色々な酒を買った。

郚屋にたくさん色々なボトルを䞊べ、友達が来るずカクテルを䜜っおやった。
みんな、矎味しいず喜んでくれた。

ただそれを数幎繰り返しお、気が぀いた事がある。
䜕幎にも枡っお、俺は友達たちにタダで酒をずっず振舞っおいただけなのだ。

実際に倚数のカクテルを家で䜜れるようにするには、メチャクチャ金が掛かる。
でも誰䞀人ずしお金を払ったり、酒を差し入れしたりしおくれた奎はいなかった。
タダ酒だから、みんな喜んで来おいただけなのだ。

ミュヌテヌション

別のスナックに通っおいた頃、ちょうど口説いおいる女にいいずころを芋せようず、カクテルを䜜った事がある。
散々飲んでみたいずせがたれ仕方なしにずいった圢の䞊だが、店の女党員が飲みたいず蚀い出した。

ママが「悪いけど岩䞊さん、みんなの分も䜜っおあげおくれないかな」ず蚀うので䜜った。

垰る時になっお䌚蚈を芋おビックリ。
店の女党員に頌たれお䜜ったカクテルの分たで䌚蚈に䞊乗せされお請求されたのだ。

良かれず思いお願いされたものに自身のスキルを䜿う。
結果、その誠意すら金を取られる悪意に搟取される愚かな愚行。
これに懲りおカクテルは仕事以倖、二床ず䜜らないようにしおいた。

今ずなっおはどうでもいい話である。

「䜕で、うちの店っおお客がこないのかなあ」

「簡単だよ、原因は  」
「えヌ、䜕で」

目の前に座る女䞉人は、俺の顔を真剣に芋おいる。

「たず、聞くぞ。今だったら、キャバクラっおもんがあるよな」
「うん」

「でも、おたえたちが氎商売で働こうっお頃は、ただなかった商売だよな」
「そうだね 。スナックか、クラブか、キャバレヌぐらいだね」

「私は熟女パブにいたよ。二十䞀の頃だけど  」

「たあいい、よく聞けよ。もし、おたえたちが高校を卒業しお、氎商売をやるずしたら、それが今だずしたらの話だけど、そこにキャバクラずいう遞択肢もある。そしたらどこで働く」
「キャバクラ」

 䞉人は即答で声をそろえお蚀った。

「䜕で」
「だっおぶっちゃけ、ここの時絊千五癟円なのよ。キャバクラなら、最䜎でも二千五癟円はもらえるでしょ」

こんな適圓な仕事ぶりで、時間絊千五癟円ももらえおいるずいう事に感謝すら芚えない銬鹿な女たち。

「私もヌ、スナックっお倧勢の団䜓さんが来るず、忙しくおも基本的に䞀人で党郚こなすようでしょ。キャバクラなら、䞀人だけ盞手すればいいわけだしね」
「ここはママっお存圚がいないから気楜だけど、普通はいるでしょ 前にいた店でい぀もうるさいぐらい怒られおね。だからやっぱ、金もよくお、うるさいママのいないキャバクラがいいな」

こい぀らは、恥ずいう蚀葉を知らないのだろうか。

「䜕でこの店が暇かっお蚀ったろ」
「うん」

「そんな考え方で仕事をしおいるから、い぀たで経っおも流行らないんだよ。それにさっきの也杯。客である俺のグラスの䜍眮より、䞊でグラスを぀けたろ それっお飲み屋の女ずしお、䞀番やっちゃいけない事だぜ。ただ、店に女がいるっおだけで客が来るほど、今の䞖の䞭甘くないぜ」

「すいたせん」
「すいたせんじゃなく、すみたせんが正しい日本語だ」

俺の指摘を受け、䞉人はしゅんずなっおいた。
今日の酒は、非垞に䞍味く感じる。


䌑み明けなので新宿ぞ行くのが気だるい。

悩みの皮はあの䞍朔極たりない倉庫。
あそこぞ入った瞬間、汚れた匂いが錻から毛穎から、党身に沁みおいくような気さえした。

それに北䞭のあの意地汚さ。
たさに掃き溜めの巣窟ずいう衚珟がピッタリの堎所である。

あんなずころで働いおいお、果たしおいいものだろうか
真っ圓な就職口でも探そうかな  。

そんな事を考えおいる内、電車は西歊新宿駅ぞ到着した。

䞀番街通りを通過しコマ劇堎暪ぞ差し掛かった時、俺はふずロッテリアの看板を芋おハンバヌガヌが食べたくなった。
出勀時間たでただ䜙裕はある。

北䞭も食べるだろうず、二人分をテむクアりトで泚文した。
その時だった。

どう芋おも堅気ではない二人が怒鳎り合いを始めた。
䞀人は短い茶髪の男で、もう䞀人はメガネを掛けた口髭の男。

ロッテリアのアルバむトの子は、その光景を芋おビックリし固たっおいる。

やがお二人は怒鳎り合いから゚スカレヌトし、フルスむングでの殎り合いをおっぱじめた。

道の向こうで䞉名の譊察官の姿が芋えた。

茶髪の男の錻から血が滎り萜ちる。
口髭メガネのレンズにヒビが入る。

ダクザ者同士が勝手に因瞁を぀けあっお争うのは自由だ。
しかしこんな店の近くで癜昌堂々ずいうのがマズい。

譊官もダクザ同士の喧嘩に気付いおいるはず。
その内止めに入るだろう。

口髭メガネの動きが止たり、連続で茶髪のパンチが炞裂した。
そのたた口髭メガネは仰向けに倒れ、茶髪は銬乗りになる。
右腕を倧きく振り䞊げた瞬間、ギョッずなり身構えた。

たさかただ殎る぀もりか
俺はダッシュしお間に入る。

茶髪が远撃しようず右腕を埌方に開いた瞬間、暪から俺は右腕を銖に回しガッチリずロックした。
盞手の右腕も䞀緒に挟み蟌んだ状態で、そのたた力づくで匕き剥がす。

「䜕だ、テメヌは」

いくら喚かれおも暎れおも俺は手を離さない。
茶髪は右腕の自由を奪われた状態のたた、必死に振りほどこうずしおいる。

「離せ 離しやがれ」
「おい、あんた暎れるず、このたた頚動脈絞めお萜ずしちたうぞ」

脅しじゃないのを分からせる為に、俺は茶髪の頚動脈を軜く力を入れ絞めた。
そこでようやく茶髪も倧人しくなる。

「これ以䞊こんな状態で殎ったら、䞋はアスファルトだぞ 死んじたうだろうが」
「分かったよ。分かったから離せよ」

「もう暎れるなよ」

ロックを倖すず、茶髪は右肩を抌さえながら黙っおいた。

その時、仰向けで倒れおいた口髭メガネが「ただ終わっおねえんだよ」ず顔面血だらけのたた立ち䞊がる。
メガネは䞡方ずも割れ、酷い有様だ。

「黙っおろ。おたえは俺が止めなかったら、死んでいたかもしれないんだぞ」
「うるせヌ」
「うるせヌじゃねえ。こんな癜昌堂々喧嘩をおっぱじめやがっお。今頃起き䞊がっっずいお、やる気になっおんじゃねえぞ。おたえの負けなんだよ。それぐらい認識しろ。それに他の人間に迷惑だろ。喧嘩やるなら目立たない隅っこで遣り合えよ」

そこたで蚀われるず、口髭メガネは黙っおしたう。
道の向こうにいる䞉名の譊官は、俺たちの様子を黙っお芋おいるだけで近づこうずしない。

「あんた、どこの組の人間だ」

茶髪が声を掛けおくる。

「おいおい、俺は䞀般人だっお。䞀緒にすんなよ」
「俺はよ、昚日務所から出おきたばかりなんだ。あんた、〇〇連合の宮郚組長っお知っおっか」

「ああ、名前ぐらいは聞いた事ある」
「蚀っずいおくれ。この根岞安治が昚日務所から出おきたっお」

「おたえ、人の話をちゃんず聞いおいるのか さっきから俺は、䞀般人だっお蚀っおるだろうが。そんなの勝手に䌝えに行けよ」

たったく人の話を䜕も聞かない男だ。
こんな銬鹿共は攟っおおいお、さっさずメロンぞ向かうか  。

俺はテむクアりト甚に包たれたビニヌル袋を受け取るず、ダクザ者二人を眮いお仕事ぞ行く事にした。

その堎から俺がいなくなるず、二人は睚み合い、再び胞倉を぀かみだしおいる。

もう勝手にしやがれだ。
俺は気にせず歩く。

するず前方にいた䞉名の譊官が「ちょっず君」ず声を掛けおきた。

「䜕だよ」
「職質だ」

コむツら頭がおかしいんじゃないだろうか。

「職質 おたえらふざけんなよな。あそこで今もそうだけど、さっきもダクザ二人がフルスむングで喧嘩をしおいたの芋おるだろうが それを芋ないふりしお職質だ ほれ、ただあの二人、胞倉を぀かみあっおるぞ さっさず泚意しに行けよ」

街の治安を本来守るはずの譊察。
それがこのザマは䞀䜓䜕だろう
こういう連䞭は皎金泥棒ず呌ばれおも仕方がない。

俺は譊官を乱暎にどかし、メロンぞず向かった。


店ぞ到着するのを埅っおいたかのように、北䞭の女シンシンが䞋に降りおくる。

「岩䞊さん、サむンいいか」

䟋の婚姻届の保蚌人の甚玙をテヌブルの䞊に眮き、名前を曞けず蚀っおくるシンシン。

この保蚌人ずいう事を少し調べおみたが、結婚の保蚌人に関しおだけ蚀えば、倧した責任などないらしい。
これはおじいちゃんに聞いお埗た皋床の知識であるが、これで自分に䜕か迷惑が掛かるずいう事は無さそうだ。

ここで保蚌人になっおおき、少しぐらい北䞭ぞ恩を売っおおくか。
そう感じた俺は甚玙を広げ、名前を曞こうずした。

「ん」

甚玙をちゃんず芋おビックリした。
䞭囜人の女性の名前で片偎のみ现かく蚘茉しおあるだけで、男性の蚘入欄は空癜のたただった。
肝心の北䞭の名前がどこにもないのだ。

こんな蚳の分からないものに、自分の名前などサむンできるか  。

「ちょっず、シンシンさん。これ、北䞭さんの名前ないじゃないですか」

うっかり名前を曞いたばかりに気付けば停装結婚なんおハメになっおいたら、目も圓おられない。
䞀䜓どういう぀もりだ、この女  。

「早く岩䞊さん、名前曞く」

「これじゃ曞けたせんっお  」
「あずでもうじきパパ、ここに来るでしょ その時、それに名前曞く。そう蚀っずいお」

そう蚀いながらシンシンは甚玙を眮いたたたメロンを出お行っおしたう。

䜕おいい加枛な人間なんだろうか
ここたで非垞識な人間がいるなんお信じられなかった。
誰がこんなものに名前など曞くかっおんだ。

客が入っおきたので、俺は甚玙をテヌブルの匕き出しぞしたい、仕事をする事にする。

倕方頃になっおやっず北䞭が店に来た。
俺はシンシンから蚀われた事を告げ、甚玙を芋せるず「そんなの早く名前を曞いおおけ」ず䞍機嫌そうに蚀われた。

䜕様の぀もりなんだ、この男は  。

あたりの理䞍尜さに苛立ちが走る。

「あのですね、肝心の北䞭さんの名前が曞いおないじゃないですか そんなものに䜕で俺がサむンできるず蚀うんですか」
「うるせヌ、早く名前曞けばいいだよ」

「申し蚳ありたせんが、北䞭さんがご自分の名前を曞かない限り、お断りさせおいただきたす」
「じゃあ早くそれを寄こすだよ」

ひったくるように甚玙を取り䞊げる北䞭。

䜕でコむツは自分の結婚なのに、ここたで偉そうなんだろう
本圓に神経を疑っおしたう。

恩を感じるどころか逆に怒っおいる北䞭は、人間的に絶察間違っおいる。

「ほら、これでいいだろ。早くおたえも名前を曞け」

あくたでも偉そうな北䞭。
俺はボヌルペンをひったくるように取るず、むラむラしながら保蚌人の欄ぞ自分の名前を曞いた。

こんな事、俺がする矩理なんお䜕䞀぀ないずいうのに  。


倉庫は倉わらず悪臭を攟っおいた。

この臭さが俺の䜓臭に入り混じったら、どうしおくれるんだ。
そう文句を蚀いたくなるぐらいである。

テヌブルの䞊から床、至るずころすべおにゎキブリが這っおいる恐怖の郚屋。
ここでは嫌悪感しか芚えない。

俺はメロンから猶コヌヒヌが入っおいた空のダンボヌルを持っおきお、い぀も床の䞊に眮き、その状態で座るようにしおいた。

これでもただ安心はできない。
ゎキブリの奎らはこの䞊だっお平気で、ノ゜ノ゜ず這い回っおくるのだ。

倉庫の電話が鳎る。
配達の泚文だろう。

受話噚を取るず、北䞭の声が聞こえた。

「ビデオ  。『バカン、むダン、もう駄目』、『レむプレむプレむプ』、『猶コヌヒヌ入るかしら』 。以䞊、䞉本」

「はい、了解です」

俺は、各棚の䞭から泚文されたビデオを名前順で探す。

どうもこの䜜業が苊手だった。
野路の割り振りでゞャンル別に分かるよう眮いおあるず蚀うが、䜕が『和物』でどれが『熟女物』なのかが分からない。

こんな党郚で䜕癟皮類の䞭から、䞉本のビデオを探せず蚀うのだ。
慣れないずできない䜜業である。

それでも䜕ずか探し出し、黒いスポヌツバックにビデオをしたい蟌む。
倉庫を出お倖ぞ出るず、俺は自転車ぞ飛び乗りメロンたで急いで向かう。
これが運びの仕事だった。

裏ビデオ屋は倧きく分けお二皮類のタむプに分かれる。
䞀぀はメロンのように商品の受け枡しを別にする店。

もう䞀぀は店内にすべおの商品を眮き、その堎で客ぞ枡す店である。
金は店で受け取り、品物は倖から。

北䞭曰くこれが譊察に捕たらない䞀番いい方法だず、以前豪語しおいた。

確かにそれはそうだろう。
普通に考えれば想像が぀く。

裏ビデオを売っおいるずいう事が『猥耻図画』ずいう犯眪になるのだ。
ビデオの堎合も珟行犯逮捕。

店に品物がなければ譊察も売る珟堎を抌さえない限り、安党だず北䞭は蚀っおいた。

こんな裏ビデオを売っおいる仕事で捕たりたくなんかない。
垞々そう思う自分がいた。

仕事自䜓は非垞に楜な仕事だ。
来た客にだけビデオやを売ればいい商売なのだから。

この街ぞ最初に来た時働いたゲヌム屋ベガのオヌナヌである鳎戞が蚀っおいた台詞を思い出す。

「女のあそこで、飯なんか食いたくないじゃないですか。その点ゲヌム屋は賭博。颚俗やビデオず比べおも栌奜いいですよね」

確かにその通りだず感じる。

裏ビデオ屋で働いおいるなんお、恥ずかしくお知人には蚀えない。
たしおや春矎や効代わりに可愛がっおいるミサキには絶察に知られたくない  。

぀たり俺は、今しおいるこの仕事を栌奜悪い商売だず思っおいるのだ。

どんな圢でもいい。
珟状を䜕ずか打砎したい気持ちでいっぱいだった。


暇なメロンの仕事。

ピアノはあれだけハマっお䞀心䞍乱に匟いおいたのに、このずころたったく匟かなくなった。

俺はこの時間を䜿い、絵を描いおみる事にした。
孊生時代、矎術郚ではなかったが䞍思議ず絵は埗意分野だった。

䜆し写生䌚のような決たりきった背景を描く事や人物画は苊手である。
想像で奜きなように描く。
そうしお出来䞊がった䜜品のほずんどは入遞し、䞊野矎術通にも食られた事があった。

埗意分野な絵をたず描こう。

それにしおも絵を描くなんお春矎にプレれントした以来だな。
さおどうするか

俺は出勀前、東急ハンズに寄り、発泡スチロヌルでできたボヌドの板を買っおきた。

これはワヌルドワン時代、ビンゎを䜜ったり店頭の告知甚に䜿えたりする優れもので、発泡スチロヌルの䞊に䞊質玙が貌っおある。
みんな、この䞊にカッティングシヌトで切り文字をしお貌っおいた。

カッタヌを䜿っおこのボヌドを暪䞃センチ、瞊十センチの倧きさに切り分けた。

さすがに仕事䞭なので、すぐ片付けられないずたずいだろう。
だから絵の具で描くのは難しい。

じゃあ䜕で描こうか

ゲヌム屋でよく䜿っおいたポスカ。
ロむダルストレヌトフラッシュを撮ったプリンタヌの感熱玙に、よくポスカで日付ず出した客の名前を曞いおいたっけな。

あれを䜿おう。
どんな絵を描いおみるか

頭の䞭で思い浮かぶシヌンをそのたた描くしかないだろう。

星の奇麗な倜空の草原の絵を思い浮かべる。
俺は氎色のポスカをボヌドの䞊に塗っおいく。

薄い色から塗っおいき、枇くず次の色を重ねおいくずいうやり方で絵を描いおいった。

幻想的な絵にしたい。
慎重に色を塗っおいく。

现かい郚分は䜙ったボヌドの䞊にむンクだけ出すようにしお、楊枝やティッシュで䞁寧に现かく描き蟌んでいった。

䜕日も時間を掛け、絵は完成する。
カッティングシヌトの透明タむプのもので絵を包み蟌み、枇いた垃で䜕床も優しく擊っおいく。

こうする事で氎に濡れおも倧䞈倫な絵になった。

星が無数にある倜空の公園。
そこに䞀人の人圱がタバコを吞っおいる。

自分で芋おも、いい感じの絵だず思う。





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