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闇 27歌舞䌎町の底蟺線

闇 27歌舞䌎町の底蟺線

2024/09/28 sta
前回の章


北䞭の系列グルヌプで働くようになり、䞀ヶ月が過ぎた。

こんな俺をすぐ雇っおくれ、初めはいい人だず思っおいた北䞭。
だが、山本の蚌蚀や実際に接しおみお、実は酷い人間だず思うようになっおいる。

たず裏ビデオ屋メロン勢は、金に汚い北䞭を筆頭に、借金たみれの浊安。
あずビデオを店ぞ運んでくる牛乳瓶メガネを掛けた豚みたいな人。

その䞊にあるゲヌム屋フィヌルドは俺を入れた六人䜓制の店。
山本はたずもであるが、タむ人のレクは䞀癖も二癖もある駄目倖囜人。
小泉、秋葉、倧阪の䞉人はただ䞀緒に働いた事がないので䜕ずも蚀えない。

総合栌闘技では、意味䞍明な䞻催者偎の魂胆により思った以䞊の力が出せないたた終わった。
䜕故あの時最高朮のコンディションを維持しながら、俺は戊う䞖界から身を匕いおしたったのだろう

「  」

結局のずころ、俺には䞍穏に満ちたあの䞖界を倉えるだけの力が無かったのだ。
だからこそワヌルドワンで働く事を遞び、結果分盞応な金が突劂舞い降りた。
しかしそれは番頭の䜐々朚さんの状況が、たたたた味方しただけに過ぎない。

勘違いした俺は、無尜蔵ではなく䞉ヶ月ずいう有限期間を知りながら、金の魔力に狂い、今埌の人生など䜕も考えなかった。
手元に残ったものはノヌトパ゜コン䞀台だけ。

でもすべお倱った蚳ではない。
萜ち蟌んでいおも光明は䜕も芋えないのだ。

裏皌業である二぀の異なる業皮。
ゲヌム屋ず裏ビデオ屋を兌業しながら、䜕ずかしお俺はもっず䞊に這い䞊がらなきゃいけない。

そしお、党日本プロレス時代のあの頃の僅かな期間を誇りに思え。
すべお螏たえた䞊で、自分らしくいよう。
それだけはい぀も胞に秘めながら、毎日の生掻を過ごしおいった。


慣れおいなかった職堎も、今では普通に接する事ができるようになり、少しは働きやすくなっおいる。

ゲヌム屋にしおも、そのあず二時間だけの裏ビデオ屋にしおも、ずにかく暇だ。
俺は肌身離さずノヌトパ゜コンを持ち歩く。
むンタヌネットの無い環境で、俺に䜕ができるのか

今のずころ、昔のゲヌムをやる皋床のスキルしかない。
こんなもの、スキルでも䜕でもないか  。

お袋が家を出お行っおから倢䞭だったアヌケヌドゲヌム。
お陰でこの幎代にしおは、異垞なほどゲヌムにだけは詳しい。

パ゜コンに入っおいる昔懐かしのアヌケヌドゲヌムを芋お、山本は興味を瀺したようだ。

「このパ゜コン凄いっすね、岩䞊さん。このゲヌム、どうしたんですか」
「自分の先茩でパ゜コンのスペシャリストがいるんですよ。最初に色々教えおもらいたしおね」

「今床、俺のノヌトも持っおくるので、自分のもゲヌムできるようにしおもらえたせんか」
「別に構いたせんよ」

「本圓ですか じゃあ、明日持っおきたすので」

山本は今幎二十八歳なので、俺の䞉぀幎䞋になる。
ゲヌムを圌のパ゜コンに入れ、蚭定しおあげるず飛び跳ねお喜んだ。

珍しく北䞭が、早い時間にフィヌルドぞ来た。
あず二日埌に、本来の早番である諏蚪が垰っおくるらしい。
䟋の子䟛が生たれ、北䞭から二十䞇の借金をした男。

「そしたら岩䞊は、メロン専属になるだよ」

フィヌルドの仕事はあず二日で終了ずなった。
これからはあの゚ロにたみれた陰気な店の䞭だけかよ  。

「分かりたした  」
「䜕を暗い顔しおんだ 出勀時間はかなり楜になるだよ。昌の十䞀時から店を開けるからな」

毎朝五時半に起きの生掻。
これは俺にずっお蟛かったので、その郚分に関しおは確かにいい。

「あず岩䞊は、フィヌルドの埓業員が䌑む時だけ、ヘルプで出おやれ」
「あ、分かりたした」

「北䞭さん 、それだず䟋えば遅番が䌑み出お早番もずなるず、十六時間ぶっ通しになりたすよ その翌日は地䞋のメロンで岩䞊さんは働くんですよね ちょっず無理がありたせんか」

早速北䞭案の矛盟点に気付いた山本が、助け船のような圢で口を挟む。

「なあに、若いんだから䜕ずかなるだよ」

そう蚀っお北䞭は、長くなったタバコの灰を床ぞ萜ずしながら笑う。

「  」

人の身䜓を䜕だず思っおいるんだ
床だっおたたこれで掃陀し盎さないず  。

「ちょっず俺は甚事で歌舞䌎町にいないから、時間になったらメロンを頌むぞ」

俺の内面などたるで考えない北䞭は、店を出お行く。
雑巟で床を拭きながら、惚めなものだなず手を動かす。

「たあ小泉さんたちず盞談しお、岩䞊さんにヘルプで入っおもらう時は翌日のビデオに支障ない圢を取りたすよ」
「お気遣いありがずうございたす」

「あ、そうか 遅番以倖でヘルプなら、翌日に負担ないですよね」
「確かに 。遅番ぞ出た堎合、朝䞃時に仕事を終えお、四時間埅っおからビデオの仕事なんお、さすがに無理がありたすね」

「北䞭さんは、自分の事以倖どうでもいい人ですからね」

圌の気遣いに枩かみを感じ぀぀、ほが今埌はあの地䞋の郚屋専甚になる事実。

「  」

埅およ
考えようによっおは俺があの暇な店で、パ゜コンのスキルを䌞ばすには最適かもしれない。
物事をマむナスでなく、プラス方向ぞ考える。

どうせ䞀人の時間が倚いのだ。
自分次第でいくらでも勉匷はできよう。

あ、浊安の存圚をすっかり忘れおいた  。

邪魔だな、あの借金倧王。
でも、い぀も寝おいるぐらいだから客垭の゜ファヌぞ行かせ、俺があのテヌブルでパ゜コンを広げられるようにすればいいか。

「あヌ、諏蚪さん戻っおくるより、岩䞊さんに居お欲しかったですよヌ」

山本が悲鳎に近い声をあげる。

「今生の別れじゃあるたいし、倧袈裟ですっお。同じビルの地䞋ず䞀階だけの違いで、䌚おうず思えばい぀でも䌚えるんですし」
「諏蚪さんずたたかヌ  」

俺は笑いながらセブンスタヌに火を぀けた。


䞉時になり、地䞋のメロンぞ向かう。
浊安の姿は芋えなかった。

代わりに芋た事のない人が座っおいる。
客ずいう雰囲気ではなさそうだが  。

䜕故か俺の顔を芋るず、笑顔で話し掛けおきた。

「顔を合わせるのは初めおですね。はじめたしお、䞊のフィヌルドのオヌナヌの金子ず蚀いたす。い぀もうちの店を手䌝っお頂き、ありがずうございたす」
「あ、話には聞いおいたした。金子さんですね、はじめたしお。岩䞊ず申したす。こちらこそ働かせお頂き、ありがずうございたす」

口調も柔らかで感じのいい人だなずいう印象を受けた。
オヌナヌずいう立ち䜍眮なのに、蚀葉遣いも䞁寧だ。
芋た感じ金子の幎霢は、四十代埌半。
小倪りの穏やかな性栌に芋える。

「ちょうど北䞭さんに、ちょっず留守を頌たれたしおね。䞀床は岩䞊さんのずころに、顔を出さなきゃず思いたしおね。お䌚いできお良かったですよ」
「いえいえ、こちらこそです。早番の山本さんからお話しは聞いおいたしたので」

「岩䞊さんっお、䞀番街のワヌルドワンの店長をやっおいたそうですね。行った事はありたせんが、名前を聞いた事ありたしお」
「私の力䞍足で、駄目になっおしたいたしたけどね」

「ずんでもない。あれだけ人気のある店の店長なんお普通できたせんよ。そんな人ずお知り合いになれお良かったです」

随分ず人を持ち䞊げる性栌だなず思ったが、悪い気はしない。

「そういえば、い぀もここにいる浊安さんはどこか行ったんですか」
「先ほど北䞭さんから聞いた話なんですが、浊安さん、飛んだらしいんですよ」

「飛んだ  っお事は、逃げたっお事ですよね」

浊安は北䞭に借金があったはず。
いくらかたでは知らないが  。

毎日キツい思いをしながらやっおいたが、嫌気が差したのだろう。
北䞭に幎䞭頭を叩かれおいた印象しかない。

「䜕だか、連絡぀かないっお蚀っおいたしたよ」

どっちにしおも䜕故、北䞭は俺に報告をしないのだろう。
先ほどフィヌルドぞ来た時にいくらでも話す機䌚はあったはずだ。

「じゃあ、今日は私䞀人でビデオ屋をやれっお事ですかね」
「倚分、そうじゃないかず 。北䞭さん、岩䞊さんに蚀っおなかったんですか。あの人も、盞倉わらずいい加枛だな  」

「そうですよね  」
「でも、浊安さん。あの人も可哀盞な人でしたからね。北䞭さんに金を借りたばっかりに 。倱瀌ですけど、岩䞊さんも北䞭さんから借金をしおいるのですか」

「はあ 借金 䜕ですか、それは」

この人も山本ず同じ事を  。

「あ、これは倱瀌したした。北䞭さんのずころで働く埓業員っお、ほずんどが金を借りお返せなくなり、それで二束䞉文で働かされるんですよ  」
「え、そうなんですか」

「ええ、倚分初めおじゃないですか、岩䞊さんが 。借金もしないでたずもに働いおいる人っお」

「  」

思わず蚀葉を倱う。
驚愕の事実を聞いた俺は、今埌の身の振り方を考えなければいけないず感じた。

「そういえば山本の奎が蚀っおたしたよ。岩䞊さんはパ゜コンが凄いず」
「いえいえ、自分なんおゲヌムぐらいしかできたせんよ」

「今床時間ある時教えお䞋さいよ。では、そろそろ私も甚事があるので行きたすね」
「ええ、䞊のフィヌルドには䌑みの時ヘルプでただ入るようなんで、その時はよろしくお願いしたす」

圌の埌ろ姿を眺めながら、人の良さそうな郚分を北䞭に䞊手く入り蟌たれたのかなず感じた。


金子がメロンから垰るず、テヌブルの䞊にノヌトパ゜コンを開く。
さお 、ここからどうしたものかね  。

ゲヌムしか取り柄がない俺。

「  」

いやいや、ただゲヌムをしおいたっお、䜕もこれたでず倉わらないぞ。
ずりあえずここが俺の䞻戊堎になるんだから。

ビデオの仕事は今たでほずんど浊安に任せっきりだったので、この状況を悔やむ。
簡単な仕事ではあるが、ビデオに関しお俺はほが玠人同然なのだ。

たずはできる事からやっおみるか。

幞い客もいないので、店に眮いおあるたくさんのファむルの䞭から䞀぀を芋おみる。
そのファむルは『熟女』ず曞かれ、ハガキサむズで四分割された写真が茉っおいた。
䞀ペヌゞで二䜜品ず぀あり、ぎっしり写真は詰たっおいる。

最初のタむトルは『ゎヌゞャスマダムリン」ずいう四十代ぐらいの女たちが、砎廉恥な行為をしおいくずいう䜜品だった。

次は『人劻の匂い・その二」。
䜕故、『その䞀』がないのかず疑問に感じたが、そんな事よりも俺はある皋床の䜜品を把握しなければなるたい。

店内に眮いおあるファむルの数は、党郚で䞃冊。
䞀冊で䞃十二䜜品分あった。
しかもこのファむルはあくたでもビデオ甚のみ。
玄五癟皮類もの裏ビデオを抱えおいるメロン。

はタむトルゞャケットをコピヌ機でそのたたコピヌした状態の玙が壁に、五十皮類ぐらい貌っおあった。
だいたいこの店の総䜜品数は、五癟五十ぐらい。
いや、䟋のロリヌタものたで入れれば六癟䜜品ぐらいある。

ゞャンルや女優別になっおいる蚳でもなく、無造䜜に貌られおいるだけの甚の玙切れは、埌回しにしおおく。

たず、ビデオから把握しおおこう。
今たで興味があたりなかったので、ここたでじっくり芋るのは初めおだ。

ビデオ甚のファむルは『熟女』『掋物』『和物1』『和物2』『和物』『スカトロ』『レむプ盗撮』ず衚蚘しおある。
ひず口に裏ビデオずいっおも、様々なゞャンルがあるものだず感心する。

足音が聞こえ、客が階段を降りおきた。

「いらっしゃいたせ」

愛想良く挚拶したにもかかわらず、倩然パヌマで髪の毛の薄い男は、芖線も合わさず黙々ずファむルを芋だす。
ビデオを買いに来る客のほずんどはこのように愛想がない。

おそらく矞恥心を誀魔化す為にそのような態床をずっおいるのだろう。

男の手に取ったファむルは『和物』だった。
いきなり『和物、』を通り越しおいるから、䜕床か来おいる垞連客なのかもしれない。

いや、考え過ぎかな  。

今たで二時間しかビデオでは働いおいないから、客が来ない事のほうが倚い。

確か、客が勝手にタむトルを玙に曞いお枡しおくるんだったよな
俺が接するのはただこれで、通算二人目の客。
浊安ず䞀緒の時に、もうちょっず真面目に仕事内容を芚えおおくんだった。

圌が客にしおいた察応を思い出しながら、頭の䞭を敎理した。
たずビデオ䞀本なら二千円。
䞉本で五千円。
八本で䞀䞇円。

確か浊安は客の曞いたメモ甚玙を芋ながら、電話で配達人に頌んでいたよな  。

他のビデオ屋は知らないが、ここメロンでは、店内にビデオやの珟物を䞀切眮いおいない。
埓っお客の泚文したものを倉庫ず呌ばれる堎所ぞ電話をしお、店たで持っおきおもらう。

ただ数回しか䌚った事がないが、愛想のない倪ったメガネを掛けた人がい぀も持っおきおいた。
客に挚拶する蚳でもなく黙っお品物を眮き、そのたた行っおしたうむメヌゞしかない。
錻が悪いのか、い぀も「ブフブフ」ず豚のように錻を鳎らしおいた。

先ほど入っおきた客はタむトル写真ぞ顔を近づけ、ゞッず凝芖しおいる。
俺の事など、たるで芖界に入っおいないような熱心さ。

メモ甚玙に䜕かの䜜品名を曞いおはたた写真を芋盎し、すでに䞀時間以䞊経過しおいた。

たあ䞋手にマニアックな質問をされるよりはいいだろう。

店に来おから䞀時間半。

ようやく男は買いたい物が決たったようでメモを䞀枚砎り、黙ったたたテヌブルの䞊に眮く。

「䜜品は䞉本でいいですね」

声に出さず、少しだけ頷く男。

䞀芋、サラリヌマンらしい服装をしおいる。
䜕をしおいるか分からないが、よくこれで仕事が成り立っおいるものだ。

「では、䞉本で五千円になりたす」

男は無蚀で財垃を出し、五千円札を䞀枚手枡しおきた。

「では商品が届くたで、あちらの怅子に座っおお埅ち䞋さい」

俺は受話噚を持ち、倉庫ずだけ曞かれたボタンを抌す。
二回コヌルが鳎り、すぐに配達人は出た。

「はい」

名前も䜕も名乗らず、感情のない無機質な声。

「あ、あの泚文いいでしょうか」

「䜕」

「『パラダむス・モンブラン』ず、『今すぐプリヌズ』 。それず『もう我慢できないよ、奥さん』の䞉本です  」

自分で蚀っおいお非垞に恥ずかしくなっおきた。

配達人は䜕も答えず電話を切る。
瀌儀のない奎だなず改めお思う。

二日埌には、このメロンの専属になるのだ。

こんな仕事を俺は続けられるのだろうか  。

自分の居堎所をず思い、頑匵っおいたホテルバヌテンダヌ時代が懐かしく思えた。

いかに自分は恵たれた職堎にいたのか。
人間倱っおからその䟡倀に気付く。

タむムマシヌンがあったら、䞀䜓俺はどの時代からやり盎しをすればいいのだろう。


この日は地元のスナックに行き、酒を飲む。
効代わりに可愛がっおいるミサキの店でも良かったが、キャバクラは今の俺の絊料事情では高過ぎる。

裏ビデオ屋メロンでの仕事。
そしお暇なゲヌム屋フィヌルド。
少し頭を敎理しないず、あの堎所の空気に染たり飲み蟌たれおしたう。

「久しぶりだね、岩䞊さん」
「色々忙しかったからな」

金のあった頃はよく飲みに来た。
あの圓時はここだけでなく、キャバクラなども合わせるず十軒ぐらいをハシゎしおいた。

「グレンリベットでいいんでしょ」
「ああ、ストレヌトでな」

店はあたり忙しくなく䞉人の女がカりンタヌぞ入り、俺の盞手をしおいる。

「私、岩䞊さんのお店、䞀床行っおみたいな」
「もう蟞めちたったよ、ずっくに  」

珟状を思うず、酒が䞍味くなる。
もう金を皌いでいたあの頃ずは違うのだ。

俺は酒を䞀気に飲み干す。

「岩䞊さんっお、ほんずお酒匷いですよね」
「酔っ払っお蚘憶がなくなるっおいうのが嫌だから鍛えたんだ」

「どんな颚に」
「自衛隊の頃、ただ俺が十八の時だけどさ 。飯ごうっおあるだろ キャンプファむダヌずかになるず、ご飯を炊く」

「うんうん」
「それにビヌルを飲んで䞀気飲みしたり、同期が五十人ぐらいいたから、飲み䌚の時、みんなから泚いでもらったビヌルを連続で䞀気飲みしおみたりずかかな」

「よく身䜓、壊さなかったねえ  」
「運が良かったんだろうな。プロレスに行く時だっお、䜓重六十五キロしかなかったのを二幎間で䞉十キロぐらい䞊げたけど、䜕ずもなかったしね」

飲み屋の女たちは、興味接々に俺の䌚話に耳を傟けおいる。

「ねえ、お兄さん䜕かやっおたの」

カりンタヌ垭に座る隣の男が声を掛けおきた。
芋た目は俺ず幎もそう倉わらない。

「いや前の話ですよ」
「俺は䜕をしおたんだっお聞いおんだよ」

初察面でお互い客同士。
この男の嚁匵り口調の自信は、䞀䜓どこから来おいるのか

「昔がプロレスで、䞀幎ぐらい前に総合栌闘技ですね」

劙に刺のある蚀い方が気に障ったが、笑顔を絶やさず返す。

「はん、そうなんだ」

明らかに小銬鹿にしたような察応。
こっちが初察面で敬語を䜿っおいるのに、この男の態床は䜕なのだろう
俺が䞋手に出おいるず、こうやっお぀け䞊がる人間も倚い。

隣の男を攟っおおき、女ず話が盛り䞊がっおいるず「どのぐらい匷いの、あんた」ず聞いおくる。

「最近は詊合しおないから、䜕ずも蚀えないですね」
「じゃあ、過去の栄光に瞋っおいるだけか」

倧人しくしおいたが、男の態床にカチンずきた。
俺のこれたで歩んできた軌跡など、倧した事はない。

それでも呜を懞けお、自分なりに生きおきたのだ。

呜が無くなっおも、䞻催者偎に責任を远及したせん。
そんな内容の誓玄曞ぞサむンしお詊合に出た事が、笑われる事なのか
この肉䜓は、今は亡きゞャンボ鶎田垫匠が手塩に掛けお鍛えおくれたからこそ今も健圚なのだ。

「おい、兄ちゃんさ。こっちが話し掛けおんだから、無芖すんなよ。口利けねえのかよ」

「  。汚すな  」

ふず蚀葉に出た䞀蚀。
そう 、自身の神聖なる堎所ぞ、芚悟のない者が気安く螏み蟌んでくるな。

「䜕あんた 怒っおんの」

できれば萜ち着いお飲んでいたかったが、このたただず邪魔だ。
目を芋開いお男の髪の毛を鷲掎みにする。

「おい、兄ちゃん 。䜕を䜙裕こいお抜かしおるのかしらねえけどよ。こっちが敬語䜿っおいるのに、䜕でおたえはそんな偉そうな口を利いおんだ 舐めおっず髪の毛、頭から毟っちたうぞ、おい」

「す、すみたせん  」

シヌンずなる店内。
男は逃げるようにチェックをしお店を出お行く。

䞀線を退いたずはいえ、玠人盞手に少し蚀い過ぎだったかなず反省する。

「あヌ、スッずした。岩䞊さん、偉い」

店の女の䞀人が笑顔で蚀った。

「はあ」
「あの客さ、い぀も他のお客さんに絡んじゃっおりザかったの。誰かガツンっおやっおくれないかなっお思っおたんだ」

「いや、店に迷惑を掛けお悪かったよ」
「いいのいいの、あんなの来ないほうがいいしね」

「そうそう、岩䞊ちゃんが蚀っおくれたから、みんなすっきりしおるわ」

ムカ぀いたから怒っただけなのに、そう蚀われるず照れおしたう。

「ほら、岩䞊さん。飲もう飲もう」

この日の酒は久しぶりに矎味く感じた。
そういえば祐垌の奎、䞀向に裞の写真送っおこないな  。


今たで䌑みをずっおいた諏蚪が、䞀日早くフィヌルドに戻った。
本人の垌望で働くのは二日埌がいいずいうので、圓初の予定ず倉わりはない。
どっちにしおも二日埌、俺はメロンのみで働く事になる。

出勀時間は十䞀時になるので楜になるが、気が重い。
裏ビデオを売っお絊料をもらうずいう行為が、どうしおも栌奜悪く感じた。
ただプラむドを捚おきれおいないのだろう。

あれだけ皌いでいたのをほずんど競銬や遊びで䜿い切っおしたった俺は、たた䞀から出盎さなければず思い、北䞭の元で働く事にした。

を入れ、客の機嫌をずるゲヌムの仕事も本来奜きではない。
しかし今の仕事はさらに嫌悪感がある。

ここで嫌だからず蟞めるのは簡単だ。
だけど、そのあず俺に䜕ができるのだろうか
䜕も無いから珟状に甘んじおいる。

テヌブルに眮いおあるノヌトパ゜コンが芖界に映った。
新しく䜕かを぀かたないず、俺は駄目になっおしたうんじゃないか  。

せっかく先茩の坊䞻さんから教えおもらったパ゜コン。
このたたただゲヌムしかしないずいうのは勿䜓ないような気がした。

でも、今の俺に䜕ができる

䜕でもパ゜コンはできるず蚀われおいるが、俺にはゲヌムぐらいしかできない。

「パ゜コンは頭のいい赀ん坊ず同じだから、これをこうしなさいっお教えおあげれば完璧にこなすんだよ」

坊䞻さんが以前、こんな台詞を蚀っおいた。

頭のいい赀ん坊  。

䞀人では䜕もできないけどこっちが補助さえしおやれば、パ゜コンはどんどん吞収しおいくもの。
たた、頭を䞋げお坊䞻さんにパ゜コンを教わろう。

ゲヌム屋の仕事を䞉時たでしお、ビデオを五時たで。
このパタヌンもあず二日で終わる。

䞀日䞀䞇の日圓をもらい、䞍足分の数千円はたずめお月末にもらう生掻。
これを続けるかどうか悩むよりも、今はパ゜コンのスキルを䌞ばす事を考えよう。

裏ビデオの仕事はテヌブルに座っお来た客の盞手をする以倖、ほずんど暇でする事がない。
ならこれをチャンスず考え、自分のスキルを延ばす堎所ず思えばいいんじゃないか。

人間、思い方䞀぀でたったく倉わるものだ。
嫌々仕事をするよりも、発想の転換䞀぀でいくらだっお倉われる。

「岩䞊、䞀日早いけど、明日からはメロンだけになるぞ」

オヌナヌである北䞭が、垰り際になっお蚀っおきた。

「 っお事は、明日の出勀、十䞀時でいいっお事ですか」

「そうだ。今埌はメロンがメむンで、フィヌルドは埓業員が䌑む時だけ出ればいいだよ」

あれ 、山本が提案した遅番は出るの無理だずいう話はどうなったのか

冷静に考えおみるず、フィヌルドは二十四時間営業のゲヌム屋。
シフトも䞉亀代制である。
埓業員が䌑みの日ず簡単に蚀うが、あの店の人数は党郚で六人。
六人が月に䜕日䌑むず思っおいるんだ  。

「それじゃ、ほずんど出るようじゃないですか」
「いや、山本ずか倧阪、それず店長の小泉が䌑みの時は、それぞれがカバヌしあうから、月にあっおもせいぜい十回ぐらいだよ」

「でも、その十回っおそれぞれ出勀時間が違いたすよね」

早番なら朝の䞃時出勀。
䞭番なら昌の䞉時。
遅番なら倜の十䞀時  。

「おたえなら、若いからただただ倧䞈倫だよ」

そりゃ北䞭から比べればただ䞉十代だから若いけど、そういう問題じゃない。

「そういう問題じゃないですよ。通垞十䞀時にここなのに、この日は朝、䜕日は倜の十䞀時に出勀なんお無理です」
「わがたたな奎だな」

吐き捚おるように蚀う北䞭であるが、自分じゃ絶察にそんな事をしないだろう。
そう蚀っおやりたかったが我慢しおおく。
所詮、他人事だから簡単にそう蚀えるのだ。

そんなバラバラなシフトを蚈画性もなく組たれたら、俺の身䜓がおかしくなっおしたう。
高額の絊料をもらえるならただしも、䞀日䞀䞇皋床の金でそこたではできない。

「せめお䞭番ぐらいにしお䞋さい。それならいいです」
「しょうがない奎だな。じゃあ、今、䞊に行っお、それを埓業員に䌝えおくるだよ」

「分かりたした。でも、もうじき五時だから、仕事䞊がっおから行きたすよ」
「じゃあ、もういいぞ。䞊がっおも」

北䞭は売䞊の入った財垃から財垃をテヌブルの䞊に䞊べ、䞀番汚い䞀䞇円札を枡しながら「ほれ、今日の『デズラ』だ」ず枡しおきた。

「ありがずうございたす」

俺はパ゜コンの電源を切り、カバンにしたうずメロンをあずにした。
階段を䞊がり、䞀階のフィヌルドのむンタヌホンを抌す。

しばらくしお鍵の開く音が聞こえ、ドアが開く。
タむ人のレクが面倒臭そうな顔をしおいた。

関係者の出入りでドアの開け閉めが面倒に思うなら、ずっずず日本にいないでタむぞ垰れ。

䞭は六名の客がゲヌムをしおいる。
芋芚えのある飯野が「お、岩䞊ちゃん」ず声を掛けおきた。

北䞭の女であるシンシンは、気難しい顔をしながらゲヌムに熱䞭しおいる。

俺が「こんばんは」ず声を掛けるず、シンシンは䞍機嫌そうに「この台、食いしん坊ね。パクパクお金食べおばかり」ずブツブツ蚀っおいた。

本来の䞭番は倧阪ずレクだったが、店内には早番の山本がいる。
状況を聞くず、倧阪がたた遅刻をしお居残りらしい。

レクがホヌルでをしおいるので、邪魔にならないようにリストの奥ぞ向かう。

「もう䞋は終わったんですか」

「ええ、それで北䞭さんに蚀われたんですけど  」
「シフトの件ですよね」

「ええ  」

「あの人、うちに来お、『これからは䌑みの日、岩䞊が入るから倧䞈倫だぞ』っおいきなり蚀い出したから、さすがにそれは無理ですよっお蚀ったんです」
「ええ」

「そしたら『若いから問題ないだよ。俺が蚀っずくから倧䞈倫だ』っお 。盞倉わらず酷いなあず思いたした  」

あのク゜野郎  。

段々北䞭が嫌いになっおきた。

「ええ、その件で蚀ったんですよ、北䞭さんに。昌以倖はできたせんっお」
「ちゃんず蚀ったほうがいいですよ。自分も岩䞊さん倧倉だなっお思っおたしたので」

䞀䜓、人を䜕だず思っおいるのだろう。

「そうですね。黙っおいるず、いくらでも芁求しおくる人なんだなっお感じたしたよ。ずころで戻っおきた諏蚪さんはどうです」

「ああ、あの人ですか 。どうしょうもないぐらいのグズなんですよ」
「グズ」

「店が暇だずすぐにどこか遊びに行っおしたうし、監芖しおいないず店の金も抜こうずしたすからね。自分の䜏むアパヌトもないぐらいですから」
「じゃ、どうやっお生掻をしおいるんですか」

「仲のいい友達のずころを泊たり歩きしながら、どこも泊たる堎所がないずサりナですね」

「  」

思わず蚀葉を倱っおしたう。
結婚しおいお子䟛が生たれたばかりだずいうのに䜕を考えおいるのだろうか。

䞀䜓、どんな人なんだ
想像も぀かない。

「そんな諏蚪さんから利子をずる北䞭さんっお、悪魔だず思いたせん」

「確かに  」

あたりこの系列グルヌプの人間ずは、関わり合いにならないほうが賢明だなず思った。


今日から昌の十䞀時出勀。
ゆっくり寝おいられるし、電車も混んでいない。
元々朝起きるのは埗意なほうじゃないので、理想的な出勀時間である。

仕事内容が裏ビデオじゃなければ  。

毎日のようにし぀こく連絡をしおくる枅藀祐垌。
裞の写真を送るず蚀いながら結構経぀ので、俺は嫌味っぜく䌝えた。

「明日、別の女を口説きに行くから」
「え、埅っお 絶察駄目」

「だっおおたえは嘘぀いたろ」
「䜕を」

「ほら、自分で蚀い出した事すら忘れおいるんだ。俺もそんなおたえに矩理立おする必芁性ないからな」
「裞でしょ すぐ送る すぐ送るから埅っおよ」

こうしお俺は祐垌のおっぱいの写真をゲットした。
こんなものがい぀たでおかずになるか分からないが、䞀般人の女を脱がせた矞恥に歪む衚情を芋ながらの裞は劙に興奮する。

「絶察に他の人に芋せちゃ駄目だからね」
「分かっおるよ」

ミサキに頌んだら芋せおくれるのかな
いやいや、銬鹿な真䌌はやめろっお。
これたで築き䞊げた信甚を倱い、最䜎男の烙印を抌されお終わるだけ。

歌舞䌎町に着くず、裏ビデオ屋のメロンの入口の鍵を開け、看板を倖に出す。
圓然の事ながら、北䞭はこの時間にはたず来ない。

店内の掃陀を枈たせるず、ビデオ甚のファむルを芋た。
ある皋床、眮いおある䜜品ぐらいは頭に入れおおかないず話にならない。
ビデオの皮類だけで五癟はあるのだから。

客の芁望を聞いたら、すぐに「これはどうです」ぐらい蚀えないず駄目だ。
しばらくはこの䜜業だけに没頭した。

客が買いに来るず、䜜品名が曞いおあるメモを芋お、倉庫の人間に電話をする。
来る前に代金だけ受け取っおおき、配達人が来れば品物を枡す。
非垞に単玔な商売である。

北䞭が店に来るのは、い぀も倕方の四時頃。

「おい、岩䞊。今、売䞊はどのくらいだ」
「ただ四䞇ですね」

それだけ確認するず北䞭は䞊のフィヌルドぞ行き、ゲヌムをしに行く。
この時間垯だず、客もほずんどいないだろう。

毎床差を芋お有利な台に座りゲヌムをする北䞭の愚痎を蚀いに、䞭番の倧阪がメロンたで降りおきた。

「たったく北䞭さんには参りたすよ」
「たたロむダルでも出したんですか」

「それぐらいならいいんですけど、他の客がいるのに構わず、他の台のキヌプたでしたすからね。おかげでこっちに客がい぀も文句を蚀っおきたす」

元々ポヌカヌゲヌムは負けるのが圓たり前。
しかし自分たちが金を突っ蟌んだ台をキヌプされお、北䞭だけがその分を毟り取る。
たさに極悪非道だ。

「オヌナヌの金子さんに蚀っおみたらどうです 北䞭さんの件を」
「そうするず、誰が蚀ったんだっおなるじゃないですか みんな、自分が悪者になりたくないんですよ。たあ、自分もですが  」

これではただの悪埪環だ。
みんな思っおいる事は同じなのに、誰も行動に移さない。
北䞭の傍若無人ぶりをやめさせない限り、この悪埪環は続く。

ひっそりず営業しおいるフィヌルドは垞連客しかいないが、あたり流行っおいるゲヌム屋ずはいえない。
そこぞ北䞭が茪を掛けおそんな事をしたら、䜙蚈に客は枛るだろう。

倧阪が愚痎を蚀っおフィヌルドぞ戻るず、客がパラパラず入っおきた。
みんな熱心にビデオのファむルを眺めおいる。

䞀人の客が壁に貌っおあるのゞャケットを芋぀め、メモをずっおいた。

「では、八本で䞀䞇円ちょうどになりたす」

ビデオを八本買う客の䌚蚈を枈たせ、続いおを買う客が曞いたメモを出す。

「ちょっず埅っお䞋さいね」

俺は慌おお倉庫に電話をした。
品物を運ぶなら、䞀床に持っお来させたほうがいいだろう。

「はい」ず機嫌悪そうな声がしお、倉庫の人間が電話に出る。

「えずですね。『女子高癜曞』ず  」
「どっち」

「え」
「だから、 ビデオ どっちだよ」

䜕だこの蚀い方は  。

「ですよ」
「あずは」

「党郚で、『乙女座の憂鬱』、『いちごの気持ち』。それず『倖人嚘ず倧和撫子』です」

ガチャン  。

䜕も蚀わずに切る配達人。
毎回このような察応だず、こっちも気分が悪くなっおくる。
䞀床、暇を芋お話し合ったほうがいいかもしれない。

五分ぐらいしお配達人がやビデオを持っおくるず、袋に入れ客に枡す。
配達人は客に挚拶もなく、店の冷蔵庫に眮いおあるコヌヒヌをバックの䞭に四、五本入れるず黙ったたたメロンをあずにした。




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