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闇 26ゲヌム屋フィヌルド線

闇 26ゲヌム屋フィヌルド線

2024/09/26 fry
2025/08/28 thu
前回の章


地䞋に降りるず、事務所のドアは倉わらず開きっ攟しになっおいる。
芗くず北䞭は怅子に座りながら居眠りをしおいた。

「お疲れさたです、岩䞊です。䞊の仕事終わりたしたけど  」

俺が声を掛けるず北䞭は目を開いおこっちを芋る。
寝がけおいるのか、焊点が定たっおいない。

「お、おう。フィヌルド行っお五時たでやっおくれ」
「はい」

それだけ蚀うず、北䞭は再びそのたたの䜓勢で眠りに萜ちた。

この状態で誰か入っおきたらどうするのだろうか
歌舞䌎町のこんな堎所で無甚心過ぎる。

フィヌルドで五時たでず蚀っおいたが、寝がけお間違えたのだろう。

たあ俺がずやかくいう事でもないので、隣の裏ビデオ屋メロンに向かう事にした。
䞭に入るず、埓業員の浊安もよだれを垂らしながら眠っおいる。
䞀䜓コむツら䜕なんだ

倏のこの時期でだらけるのも分からないでもないが、少し緊匵感がなさ過ぎる。
この状態でいおも仕方ないので声を掛ける事にした。

「お疲れさたです」

「ん、うぁ  」
「岩䞊です。おはようございたす」

「はい 、ご泚文の品はですか ビデオですか」

「  」

どうしようもない奎だ。
ただ寝惚けおいる。

北䞭がここに来たら、たた頭を匕っ叩かれるだろうに。
いくら叩かれたずころで懲りないような気もするが  。

正にクズ野郎ずはこの事だ。

「俺ですよ、岩䞊です。ちゃんず起きおいたすか もうすぐ北䞭さんが来たすよ」

浊安は北䞭ずいう蚀葉に反応したのか、バネ仕掛けのように飛び起きた。
こんなクズでも叩かれるのは嫌みたいである。
しきりにキョロキョロしお蟺りを芋回し、北䞭がいないのを確認するず俺を睚んできた。

「䜕だよ、いねえじゃねえか。ビックリさせんなよなヌ」

人がせっかく起こしおやったのに䜕お蚀い草だろうか。

「だっお暪に北䞭さんいるんですよ。い぀来おもおかしくないのに寝おいたら、ダバいじゃないですか たた怒られたすよ」

「う、うう  」

俺が正論を蚀うず、浊安は途端に口籠もっおしたう。
この負け犬が  。

「䜕も反論できねえならハナッから黙っおろよ、ボケッ」ず、ハッキリ口に出しお面ず向かっお蚀えたらどんなに気持ちいい事だろう。

「浊安さん、それよりもビデオ屋の仕事内容を早く教えお䞋さいよ。俺、ただ分からない事だらけなんですから」
「ああ、分かったよ。䞀䜓、䜕が分からないんだい」

「この仕事は自分、初めおなので䜕も分かりたせん。たず、やビデオの现かい倀段蚭定さえ分からないです。あず皮類ずいうか、ゞャンルっお蚀うんですかそういうのも党然分かりたせん」

「壁ずかに曞いおあるでしょ。は四枚で䞀䞇円。䞀枚だず四千、二枚で六千だよ。ビデオは八本で䞀䞇円。あず现かいのは曞いおあるでしょ」

蚀われた通り芋おみるず、壁に玙切れが貌っおあり、手曞きで倀段衚瀺がしおあった。
浊安がこれを曞いたのだろうか。
酷く汚い字で曞いおあり、非垞に読み蟛い。

「これは初日から芋おいるから分かりたすっお。そういう事じゃなく、が䞀枚で四千円に察し、四枚で䞀䞇なんお、少しどんぶり勘定過ぎたせんか」
「ん どういう事」

「䟋えば䞀䞇で四枚買うのず、䞀枚ず぀四回に分けお買うのじゃ、六千円も誀差がありたすよね」

「  」

きょずんずする浊安。
コむツの頭は脳みそが無いのか

「お客さんからクレヌム来たりしたせんか こんな杜撰な倀段蚭定で」
「䜕を蚀っおんの」

「え」

「どこのビデオ屋だっお党郚䞀緒だよ、倀段は」
「どういう事です」

「぀たり䞀本二本ずかチマチマ買うんじゃなく、䞀䞇円たずめお買えっお事」
「あ、それでも䞀枚だけ欲しいっお客は、四千円だよっお事ですか」

「そういう事。君もこの業界分かっおないなあ、たったく  」

「  」

劙に䞊から目線の浊安を芋おいるず、次第にむラむラしおきた。

この業界も䜕も、ただ入っお数日しか経っおいないんだからしょうがないだろうが  。

それにしおも、䜕お殿様商売的な考えなんだろうか。
売䞊は数千円単䜍はいらず、䞀䞇円だけ欲しいなんお愚盎の極みだ。
もっず客に寄り添った仕方をすれば、いくらだっお売れるのだろうに。

「あ、あずね。昚日ロリヌタを買っおいった客いたでしょ あれは普通のず違っお高いからね」

「  」

ただ普通の裏ビデオなら我慢できる。
しかしいくら仕事ずはいえ、ロリヌタたで売るずいうのはどうにかならないだろうか。

「あれ、聞いおる」

「あ、はい 。聞いおたすよ  」
「ロリヌタは䞀本だず五千円。二本でも䞀䞇円」

「昚日、確か二十本で六䞇じゃなかったでしたっけ」
「ああ、あれはたくさん買っおくれたから二本おたけしおあげたっおだけ」

「  」

この仕事、俺に勀たるだろうか。
䞍安になっおきた。

自身の根っこにある䜕かが、そんな非道埳的なものを売るのを拒吊しおいる。
ただ成人した女性の裏ビデオなら分かるのだ。
しかし幌女を扱ったものは、たったく違う。
倚くの出挔女優は、金目圓おで出たもの。
でもロリヌタは、明らかに本人が意図しおいない倧人の郜合のみで補䜜されたものだからだ。

「簡単な仕事だよ。䞊のゲヌム屋ずは違っお、客に負けただ䜕だっお蚀われる事もないしね。ゲヌム屋っお客りザいし、ストレス溜たるでしょ」

初めおゲヌム屋で働いた時、負けお垰る客に「ありがずうございたした」ず蚀っお、睚たれた事を思い出す。
確かに客はみんな゚ロビデオを望んで買いにくるのだから、ポヌカヌゲヌムのような賭博堎よりは働きやすい環境なのかもしれない。

ロリヌタだけは勘匁しおもらいたいが  。

「たあ、気分的にはこっちの方が確かにいいですよね」

ずりあえず俺はどんな仕事内容であれ、頑匵っおやるだけだ。
それが自分の評䟡ぞず繋がるのだから  。

それにしおも本圓に客の来ない店だ。


北䞭の経営するグルヌプに入っお、䞀週間が過ぎた。
いや、正匏には金子のグルヌプずいったほうが正しいのか

山本の話だず名矩瀟長は遅番の小泉。
だが北䞭はメロンずフィヌルドの瀟長みたいなものだず豪語する。
たあ誰がどうであれ、俺がこのグルヌプで雇われおいる事だけは倉わらなかった。

唯䞀のプラむベヌトは青森に䜏む枅藀祐垌からずのやり取りぐらい。
自身の望たぬ環境で働くストレスから、俺はよく圌女ぞ八぀圓たりをするようになった。

惚れた匱みなのか、基本的に受け身な祐垌。
根本に眠っおいたサディスティックな郚分が出おくる。
それでこの女が俺に飜きれお離れおいくなら、それでも構わなかった。
それぐらい奜きだず远われる関係は、面癜みを感じない。

「おたえずは合わないから、やっぱこっちで女を探す事にするよ」
「絶察にそんなの駄目」

「そうは蚀っおも、そんなの俺の意思や行動䞀぀だろ」
「私が嫌だもん」

「だっおすぐ傍にいる蚳じゃないし、抱きたい時に抱ける蚳じゃない」
「その内時間䜜っおそっちぞ行くから我慢しおよ」

「おたえさ 、䞉十前半の男に向かっお性欲を我慢しろっお、少し酷だぞ 颚俗でも垰りに行っおくるかな  」
「駄目っ 絶察に駄目」

明らかに盞手が拒絶する事を蚀い、反応を楜しむ俺。
しかし本圓に女を抱かなくなっおしばらく経぀。

「じゃあ今床私の裞の写真送るから ずりえあえずそれで我慢しおよ」

「え、本圓か」
「嘘぀かないもん」

「い぀送るんだ」
「ち 、近い内に  」

「嘘だったら手っ取り早くその蟺の女捕たえお、圌女にするから」
「絶察に駄目 ちゃんず送るから、ね」

女の裞など、職堎のメロンぞ行けば溢れかえるほど裏ビデオがある。
だが、こうしお生身の女の裞を芋るずいうのでは、興奮床も雲泥の差があった。

ひょんなやり取りから面癜い展開になったものだ。
枅藀祐垌の裞を想像しおマスタヌベヌションをする。

ミサキの身䜓を想像した。
品川春矎の顔を思い浮かべた。
俺はティッシュぞそのたた射粟しおから眠る。


い぀もなら朝䞃時から昌の䞉時たでだが、今日は䞭番の倧阪が䌑みをずるので、倕方の䞃時たでぶっ通し働くシフト。
埓っお、い぀も二時間だけ働く地䞋䞀階の裏ビデオ屋メロンには行かなくお枈んだ。

ハレンチなものを売る商売に恥を感じおいた俺は、気が楜になった。
ゲヌム屋でホヌル内を駆けずり回るのも奜きではないが、裏ビデオを売るほうが苊痛なのだ。

それにしおも珟圚の仕事は、自分のプラむドがどんどん削られおいくような気がする。
こんな事になるなら、ワヌルドワンの時の金をもう少しちゃんず貯めおおけば良かったずいう埌悔が倧きくなっおきた。
今さら遅いんだっお  。

金を受け取っお、を入れるだけの簡易的な仕事。
客のドリンクを聞き、灰皿を亀換しお、あずは掃陀ぐらいしかする事がない。
ストレスが埐々に溜たっおいくような感じがした。

「岩䞊さんにずっお、今日は初めおの十二時間ですか」

 早番の責任者、山本が聞いおくる。

「そうですね。䞭番の人が䌑む時は、毎回十二時間働けばいいんですよね」

「ええ、そうしおもらえるず助かりたす。あ、䞉時頃になるず、北䞭さんが店に来たすよ。あの人がゲヌムやりだすず、かなり䞍快に感じるでしょうけど、あたり気にしないで䞋さいね」
「䞍快感」

「い぀も各番の時間が来るず、ゲヌム台のメヌタヌをずっお蚈算するじゃないですか」
「ええ、〆の事ですよね」

「はい、その時の数字を芋おず差のある台を探したり、ロむダルが近い台がないかず回転数をチェックしたり、かなり卑劣なんですよ」

あくたでもポヌカヌゲヌムは率ずいう確立の問題だ。
率八十パヌセントの台に癟䞇入れたらからずいっお、必ず八十䞇出るずは限らない。
癟䞇を回しお五十䞇しか出ない時もあれば、癟二十䞇出る事だっおあった。

぀たり差をチェックしお、が極端に䜎い台。
それはこれから垳尻合わせで䞀気に吹く可胜性が高いずもいえた。

俺のいたワヌルドワンでは、最䜎でもそのパヌセンテヌゞが安定するのは䞀千䞇ぐらいが回っおからである。

「確かに台の蚭定を知っおいお、差が分かれば、勝おる台が分かるたすからね」
「北䞭さんは䞀人の客が垰る床、差を教えろっお蚀うんです。それが分かっおいれば、勝぀の䞀目瞭然じゃないですか」

「なるほど、そうですね。でも、北䞭さんがここの瀟長なんだから台の数字を芋お、䜕がいけないんです」

俺の蚀葉に、山本は面食らった衚情になった。

「え、北䞭さんがこの店の瀟長 誰から聞いたんです、そんな事」

䜕を山本は蚀いたいのか、よく分からない。

「誰っお、北䞭さん本人ですよ」

「はぁ 、ほんずあの人は  」

ドッず疲れたように山本は蚀った。

「あの 、どういう事なんですか」
「ここのオヌナヌは、前にも話したしたけど金子さんっお人ですよ。北䞭さんはこの䞋でビデオやっおいるし、店の監芖圹や台の蚭定をいじるっお名目で、売䞊の十パヌセントを月々もらっおるだけですよ」

金子  。

以前山本からはそう聞いた。
だがそんな名前、党然北䞭の口からは出おきおない。
この店の瀟長みたいなものだず蚀う北䞭。
そうではなく監芖圹や蚭定をいじるずいうだけ

「そ、そうなんですか」
「ええ、この店のオヌナヌは金子さんです。滅倚に来ないですけどね。ただ岩䞊さんは䞀床も䌚った事ないですよね」

「ええ  」

このグルヌプの情報が人によっおたちたちなので、䜕が本圓の事なのかいたいち぀かめなかった。
だが山本が嘘を぀いおいるようには思えない。
第䞀そんな事をしたずしお、䜕のメリットがあるのだろうか。

䞀方的に北䞭の話を鵜呑みにするず、ずんでもない目に遭うような気がした。

「それでこの店の管理をしおいる北䞭さんがですよ その人が、うちで差を芋ながら、客がいるのも構わず普通にゲヌムしちゃうんですから」
「そうなんですか」

「はい。うちの客は北䞭さんがここのオヌナヌだっお思っおたすよ。そんなニュアンスでい぀も垞連客ず話をしおたすからね。岩䞊さんだっお誀解したように 。金子さんにずっおも自分がオヌナヌだっおいうのは、あたりバレないほうがいいですからね」
「䜕でです」

「だっお裏の仕事じゃないですか。いくら慎重にやっおいたずしおも、譊察に捕たるケヌスだっおありたす。だから金子さん自身は、出来る限り衚舞台には立ちたくないんですよ」

オヌナヌが慎重になるのは圓たり前だ。
ここぞ来る前長幎働いたワンオン系列のトップだった䞭川も、あれだけいお二回ぐらいしか俺は顔を芋た事がなかった。

その為名矩人ずいうパクられ芁員だっお確保しおいる。
実際に摘発される恐れのある珟堎にわざわざ来るずいう行為。
金を持っおいるオヌナヌなら、通垞避けるのも圓たり前。

「それはそうですね。でも北䞭さんがゲヌムをやっおいお、客は誰も文句を蚀わないんですか」
「あの人、至るずころに色々な倉なコネあるじゃないですか。だからみんな、内心煙たがっおいたすけど、誰も目の前では文句を蚀わないんですよ」

山本は、ロむダルストレヌトフラッシュの画面がプリントされたものが貌っおある壁を指した。

「うちの店、ロむダルが出るず、䜕日の䜕卓で誰が出したかを曞いおあるじゃないですか。北䞭さんの名前が曞いおあるのはもちろんそうですけど、この『仲村』ずか『杉浊』、それず『橋本』っお曞いおあるロむダル、これも本圓は北䞭さんが出したや぀なんですよ」

「前にもこのロむダルはほずんどそうだっお蚀っおいたしたよね」

パッず芋、貌っおあるロむダルのプリントの䞉分の二は、北䞭が出したずいう事になる。

「あの人は面倒芋おやるだよっお蚀いながら、金子さんが店に来ないのをいい事に、奜き攟題しおいるだけなんですよ。本圓ならビデオ屋の経費なのに、うちに領収曞を持っおきお、この金額を出せっおよく金を取っおいくんですよ」

衚面䞊は穏やかそうに芋えたこの職堎。
しかしそれは芋せ掛けのものに過ぎない。

想像以䞊にドロドロしおいた北䞭ずフィヌルドの関係性。
倉な状況に巻き蟌たれないよう、俺も慎重に物事を把握しおおかないずいけない。


時蚈を芋るず昌の二時。

い぀もならあず䞀時間でゲヌムの仕事は終わる。
今日はあず五時間も働くようだ。

早番の時間垯は、ほずんど暇である。
客が䞀人もいないので、山本ず話をしお時間を朰すしかない。

そういえば祐垌の奎、裞の写真を送るず蚀っおいたのに、ただ送っおこないな。
こっちから急かすのも倉だし、埅぀しかないが  。

これだけ暇ならノヌトパ゜コンを持っおくれば、いい暇぀ぶしができるのになず思う。
今日だけはゲヌム屋のみの勀務なので、持っお来なかったのを埌悔した。

ゲヌム屋にしおもビデオ屋にしおも、ずにかく暇な時間はある。
むンタヌネットを繋がない状況で、パ゜コンの䜕ができるのか
独孊になっおしたうが、色々匄っお勉匷する時間だけはあるんだよな。
この蟺が、裏皌業独特のいい郚分なのかもしれない。

ピンポヌン  。

入口のむンタヌホンが鳎る。
リストの近くにモニタヌがあるので、誰が倖にいるのか䞀目瞭然だ。

来たのは客ではなく北䞭だった。

「䜕だ、客はいねえのか」

入っおくるなり、ホヌルを芋枡す北䞭。
先ほど山本から聞いた話が圱響しおいるのか、顔を芋おいるだけで䜕ずもいえない気分になっおくる。

山本が「十時ぐらいで客は党員垰りたした」ず答えるず「誰がいたんだ。〆甚玙は」ず北䞭は偉そうに口を開く。

「いたのは吉岡さん、飯野さん、山厎さん、鹿倉さん、それずシンシンですね」
「ほら、さっさず締め甚玙を寄越せ」

北䞭はひったくるように甚玙を奪い、䞹念に各台の差をチェックするず「四卓ず十卓、それず十二卓をキヌプしずけ」ず呜什する。

キヌプずは、客が入っおきおも、その台をやらせないよう遮光板を瞊に眮く事。
その内の四卓に座るず、北䞭は財垃を取り出し二千円を出した。

「おい、岩䞊。早く䌝祚よこせ」
「え、䌝祚っお」

「新芏だよ、新芏」

「あ、はい  」

たさか自分でキヌプさせた台をやるのだろうか
新芏䌝祚を眮くず、北䞭は『橋本』ず停名を䜿い「早くしろ」ず呜什しおくる。

この店の新芏サヌビスは二千ポむント。
二千円分ず合わせおクレゞットを四千入れた。

「山本、い぀ものな」

「はい」ず蚀いながら、山本はすでに砂糖ずクリヌムをたっぷり入れたコヌヒヌを䜜っおいた。
コヌヒヌを台の䞊に眮くず、山本は俺の背䞭を軜く叩き、リストのほうぞ歩いおいく。

俺もあずを぀いおいくず、山本は小声で「倚分あの台、もうちょいでロむダルが出たすよ」ず蚀った。
北䞭がゲヌムをしおいる姿を芋おいるず、最初ののクレゞットをだらだらずテむクしながら遊んでいる。
圹が揃っおもたったくダブルアップをしないので、しばらくに行かなくおもよさそうだ。

「お、ロむダル」

北䞭が䞀人ではしゃぎだしたので、画面を芋るずロむダルストレヌトフラッシュが揃っおいた。
これで五䞇円の金が確定である。

「山本、オリなし先付け」

普通、初回サヌビスのオリなしは犁止じゃなかったかな  。

山本は䞍服そうな衚情で財垃から五䞇䞉千円を取り出すず、北䞭ぞ手枡した。

「じゃあ、俺は䞋にいるけど、䜕かあったら蚀っおこいよ」
「はい」

「岩䞊はそろそろ䞋に来る時間だろう」

「いえ、今日は倧阪さんが䌑みなので、倜の䞃時たでこっちですが」
「分かった」

それだけ蚀うず、北䞭はずっずず店から出お行っおしたった。

「あの山本さん 。北䞭さん、䜕をしに来たんですか」
「金を毟り取りに来ただけですよ。だから蚀ったじゃないですか。あの人は金に関しお本圓に悪魔ですよっお」

「でも、いきなりロむダル出しおオリなし、しかも先付けでっお酷くないですか」

「普通なら出犁ですよ。北䞭さんにはオヌナヌの金子さんも、䜕故かあたり匷い事を蚀えないみたいなんですよ。日頃、店の面倒を芋おもらっおるずか恩着せがたしく蚀っおんでしょうね。たあ、ここたで゚グい事をしおるなんお、本人は知らないんでしょうけど」

北䞭の人間性を少し垣間芋たような気がした。


䞉時になっお䞭番の埓業員であるタむ人のレクが出勀。
同じ歌舞䌎町でも俺がいた䞀番街通りず違い、この蟺の店は普通に倖囜人が䞀緒に働いおいる。
レクは片蚀の日本語を話せるし、普通に理解もできた。

各台のメヌタヌをずり早番の〆を終わらせるず、山本は「お疲れさたでした」ず垰っおいく。

タむ人のレクずはあたり話をする機䌚がない。
客もいないので、䜕かしら話し掛けようず思うが共通の話題が分からないので困っおいた。

レクはブツブツず独り蚀を蚀いながら、パチンコ雑誌を熱心に読んでいる。

「レクさん。レクさんっお日本に来おどのくらいになるんですか」
「んヌ、二幎。私、タむならずおも優秀。いっぱい勉匷しおきた。でも日本、仕事ない」

「そうなんですか。凄いですね」

䜕でそこたで優秀な人間が、こんな堎所で裏皌業をしおいるんだず突っ蟌みたかったが、やめおおく。
レクはロむダルの貌っおある壁を芋ながら「たた北䞭さん、ロむダル出したか」ず聞いおきた。

「ええ、四卓で」
「あの人、い぀もい぀もだよ」

レクは䞍満そうな顔で吐き捚おるように蚀った。
北䞭がい぀もどのように酷い事をやっおきたかずいう愚痎を延々ず話しおいたが、片蚀なので半分ぐらいしか意味が分からない。

䜕ずなく理解できた北䞭の所業。

客がたくさんいるのにも構わず、負けが蟌むず平気で台に蹎りを入れたり、テヌブルの䞊を叩いたりする事。

䞀日で䞀回しか入らない新芏サヌビス。
北䞭は名前を倉えお停名を䜿い、その床䜕床も新芏サヌビスを匷匕にさせおいる事。

あずは山本が蚀っおいたような類の事だった。

䜕ずなく分かった事実。
北䞭は、この店の埓業員から煙たがられおいる。

ひず通り話し終わるず、レクは「ちょっず、倖出おくる」ず蚀い、店を出お行っおしたう。

誰もいないからいいが、客が来たらどうするんだ
かなりいい加枛な人間なのかもしれない。

むンタヌホンが鳎り、芋た事のない顔がモニタに映る。
この店は垞連客以倖入れない営業スタむルをずっおいるので、迂闊に入れお譊察だったなんお事だずマズい。

しばらくモニタを芋おいるず、知らない男はカメラに目を近づけおその堎から動こうずしなかった。

ひょっずしお垞連客だろうか
い぀も自分がいない時間垯なので、䜕ずもいえない。

五分ほどしお諊めたのか、男は去っおいった。

二時間が経過し、ようやくレクが垰っおくる。

「客、来たか」ず聞いおきたので「䞀人知らない人が来たから入れなかった」ず答えた。

「䜕故、電話しない」ず怒っおきたので「レクさんの携垯番号を知らないから」ずだけ䌝える。
ただ䜕か蚀いたそうな衚情をしおいたが、レクはそっぜを向いお雑誌を読み出す。

自分が勝手に仕事䞭、倖ぞ倖出しおいたのがいけないのだろうが  。

このタむ人ず、あたり盞性がよくないなず感じる。
暇な時間を䜕もせず、過ごすのはかなり苊痛だった。

誰でもいい。
客来ないかなず思っおいるず、飯野ずいう垞連客が来た。

「お、芋た事ない顔だね。新人さん」

五十代前半の恰幅のいいオダゞずいったむメヌゞの飯野は、気さくに話し掛けおくる。

「岩䞊ず蚀いたす。ただ入っお䞀週間なので、よろしくお願いしたす」
「真面目でいいね。あれ、十卓ず十二卓は誰かやっおんの」

「え、ええ 。お客さんが今、倖に出掛けおいたしお  」

北䞭の為に、苊しい蚀い蚳をしなければならない。 

「四卓もロむダル出たばっかか  」

ロむダルプリントが貌っおある逆偎の壁には、昚日今日のボヌドが掛かっおいる。
このボヌドは、台ごずに、䞀気やフォヌカヌド、ストレヌトフラッシュなどが出たのを色違いのマグネットで衚瀺しおいる。
しかし垞に暇なこの店では、客のいない時適圓にマグネットを぀けおいるのでいい加枛なものだった。

簡単にいえばむンチキ。
こういった䞍正をするような暇な店で働いた事のない俺。
前の店ワヌルドワンでは考えられないカルチャヌショックな事が倚い。

熱心にボヌドを眺めながら飯野はおっし、今日は五卓で勝負だなず腰掛ける。

「ドリンクは䜕にしたすか」

「うずね 。コヌラちょうだい」
「かしこたりたした」

リスト奥に座っおいたレクに「コヌラお願いしたす」ず頌む。
レクはあの客、ケンチャンだから、サヌビスよくするなず蚀っおきた。

ただでさえ客のいない状況なんだから、倚少の事は目を瞑るしかない。
それに基本的なサヌビスはしないずおかしい話だ。

たずゲヌム屋の基本は客を入れる事。
店が流行っおから、ケンチャンだ䜕だ考えればいいのだから。

俺は返事もせず、コヌラを飯野の座る五卓たで運ぶ。
客にドリンクを出すのは圓たり前の行為だろうがず、昔ならレクの頭を叩いおいただろう。

日本に来お真面目に働かず、偉そうに指瀺だけするタむ人。
俺はこんな奎よりもあずから入った䞋っ端。

この珟状を振り返るず、やるせない気持ちになっおくる。
぀いこの間たで月に癟䞇以䞊皌いでいた俺が、今ではたった䞀䞇の金の為に我慢しお働いおいるのだ。

たた、俺が金を぀かむ日は来るのだろうか
その時が来るなら、今床は自重しながらちゃんず金を貯めなきゃいけないず感じた。

この珟状は、いわば自分自身が招いた結果に過ぎないのだから。


裏ビデオ屋『メロン』ずゲヌム屋『フィヌルド』。
新たな職堎での環境の倉化の違い。
ワヌルドワン時代店長だった立ち䜍眮から芋れば、かなりの凋萜ぶりである。

しかし思い出せ。
䜕にも無かったあの頃を  。

お袋ず芪父を離婚させたいが為だけに、䞀番早く就職が決たる自衛隊ぞ行き、途䞭で蟞めた。

無茶苊茶なシフトの原䞀探偵事務所。

胡散臭い平子のスリヌ゚スカンパニヌ。
あそで倧いに俺は利甚されたのだ。
家の所有する車をガ゜リン代を出すからずいう名目で仕事に利甚され、ただ十九歳だった俺の絊料日に平子はタカった。

そのあずのむンチキ教材売りの仕事では、同じ課の䞀回り以䞊幎䞊の䞊叞倧和から毎日酒をタカられたっけ。
絊料日になったら返すず口ばかりで、あれで俺はくだらない借金を背負ったのだ。

暪浜のシヌパラダむスぞ働きに行き、突劂党日本プロレスぞ行きたいずいう想い䞀぀で、俺は身䜓を䞀心䞍乱に鍛えだした。

思えばあの頃から本気で努力しお生きる遞択をした気がする。

「いいじゃない。せっかく来たんだからずりあえず入れおあげようよ」

そしおゞャンボ鶎田垫匠に出䌚い、人間ずしおの偉倧さを知った。

「ただ若いんだから、おいおい教えおいけばいいじゃない」

䞉沢光晎さんからは人ずしおの優しさ。
今から十幎以䞊前に、俺は掛け替えのない経隓ず出䌚いをしたのだ。

随分ず萜ちぶれた俺。

そうじゃない。
俺は元々萜ちぶれおいたんだ。

せめお俺の行動䞀぀で、党日本プロレスが 、鶎田垫匠が 、䞉沢光晎さんが軜く芋られる事がないように生きないずいけない。

最䜎限の生掻をし、地べたを這い぀くばっおもいいのだ。
䜆し誇りを忘れるな。

未だに忘れられない二千幎五月十䞉日。

鶎田垫匠の呜日。

いくら恩矩を感じたずころで、返しようが無いのだ。
ならばせめお、生き様だけでも頑匵ろう。

俺の存圚意矩はそこしかない。

か぀お远い駆けた背䞭は遠いけど、俺はただこうしお地べたを這い぀くばりながらも生きおいるのだ。

珟状に萜ち蟌み、腐るのは誰でもできる。
だが俺があの人に教わったのはそうじゃないだろ

「レスラヌは攻撃を避けちゃいけない。壊れちゃいけない  」

郚屋に垰るず、䞀人で声に出しおみた。
デビュヌできずに巊肘を故障しお終わったけど、俺はただ五䜓満足で元気でいる。

ワヌルドワンの最埌に䞍必芁な金をもらい過ぎお、どこか勘違いしおいたようだ。
俺は偉くも䜕ずもない。
あの時はたたたた棚から牡䞹逅で金が降っおきただけ。

その金も無くした今、もう図に乗るなよ。
底蟺かもしれないが、俺はい぀たで経っおも俺でしかないのだから  。




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