
答えのない仕事|コンサルタント由里子|第1話:席に着いた日
あらすじ
この仕事は、いつかなくなるかもしれない。
そう思いながらも、何を変えればいいのかはわからない。
多くの人が、与えられたルールに従って働いている。
ルールの外に出るのは怖い。
でも、答えをなぞるだけでは、何も変わらない。
経営コンサルタントの神林由里子もまた、
自分の価値を見失っていた。
最善の答えなど、持っていない。
だがあるとき気づく。
必要なのは答えを差し出すことじゃない。
正しく問い続けること。
臆さず決断し、最後まで共にやり遂げること。
その連鎖だけが、現実を変える。
AI時代に奪われない力とは何か?
"問う力"とは、他人のルールから抜け出し、
自分の生き方を選ぶための力だった。
第1話:席に着いた日
その席に着く意味を、私はずっとわかっていなかった。
でも今は、その重みを知っている。
会議室の重厚な扉の前に立ち、一呼吸置く。
扉を開けると、黒い革張りのイスに着席した、参加者の面々が目に入った。
張り付いた柔和な仮面の奥に、冷徹な光を宿すもの。
腹の内を全く見せず、ただ悠然とそこに居るもの。
プロジェクト参加者の思惑や想いが、否応なく浮かび上がる。
それがこの場の空気を重くする。
今日この場で下す結論が、
誰かの人生を大きく動かしてしまうかもしれない――
その重みが、はっきりと伝わってくる。
これは本当に正しいのか。
何を問い、何を選ぶべきなのか。
何度も繰り返してきた問いが、喉の奥で引っかかる。
「神林さん、今日のスピーカーはあなたです。末席ではなくこちらに」
いつもと何ひとつ変わらないトーンで、
着席を促す上司の言葉で現実に引き戻される。
気を抜くと揺らぎそうになる心が、整っていく。
私は、自分で考え抜いて、磨き上げた私の言葉を信じる。
私の導いた結論によって新たな道を選ぶ人の伴走者に、
今ならきっとなれる。
落ち着いた足取りで着席し、
私は会議に参加する面々を見渡しながら宣言をした。
「それでは会議を始めましょう」
―――― ここから先は、正解のない領域だ。
****
でも、このときの私はまだ、
席に着くことの意味を、理解していなかった。
続きはこちら:「英語で職務経歴を話せと言われた日」
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