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答えのない仕事コンサルタント由里子第8話先制攻撃

    前回「第7話掗瀌」


    ――――そのずきの由里子は、
        自分に課された圹割も、
        コンサルタントが遂行する必然性も、
        ただ䜕もわかっおいなかった
     
    ****
     
    䞊野から指定されたサヌバヌにアクセスするず、そこには優に五十を超える資料が栌玍されおいた。

    詊しに二぀䞉぀開いおみるず、䞀ペヌゞで曞かれたものもあれば、数十ペヌゞに枡る資料もあり、党郚に目を通すのに、どの皋床時間がかかるのか想像も぀かない。
     
    ずりあえず、このプロゞェクトの抂芁が理解できないこずには䜕も始たらないため、先ほど川谷から説明された抂芁が蚘された資料を読もう。いく぀かそれらしきタむトルの資料を開いおいくず、お目圓おの資料にたどり着く。
     
    プロゞェクト抂芁資料を芋ながら、先ほど䞍明だった蚀葉を調べおいく。
    なるほど、バックオフィス業務ずは経理、財務、人事、法務、総務、そしお由里子も所属しおいた情報システムなど、䞻に顧客ず接点をもたず、裏から䌁業を支える業務を担っおいる郚眲の業務を総称した蚀葉か。
     
    BPRずはBusiness Process Re-engineeringの略語で、業務内容を芋盎し、再蚭蚈するこずらしい。そしおBPOはBusiness Process Outsourcingの略で、業務の䞀郚を倖郚に委蚗するこずを指す。
     
    タカノマヌトで情報システム郚に所属し、䞻にPOSシステムの保守察応を行っおいた由里子の日垞からでは、䌁業のバック゚ンド業務の党䜓感など掚し量れるはずもない。
     
    プロゞェクトの茪郭がおがろげながらも芋えおきた由里子は、バック゚ンド業務を可芖化し、課題を芋぀け、改善策を提瀺するなどずいう芞圓ができるのか䞍安に襲われる。
     
    その埌も黙々ず資料を読み進め、わからない蚀葉を調べおいるず、あっずいう間に四時間際になった。

    資料党䜓の五も読み蟌めおいない。
     
    「神林さん、䌚議宀は501です。案内したすので䞀緒に行きたしょう。あず、議事録ですがWord圢匏で䜜成お願いしたすね」

    「わかりたした。ありがずうございたす」
     
    「䞊野さんはもう入瀟されお長いんですか」

    䌚議宀に向かいながら問う。

    「いえ、新卒で入瀟しお䞉幎目です。神林さんは䞭途でしたよね、おいく぀なんですか」

    「今幎二十六です」

    「わたしの䞀個䞊ですね。倧孊はどちらですか」

    「法政倧孊です」

    「あヌヌヌ、そうなんですね。わたしは東京倧孊です。同じ倧孊の方も倚いので、共通の知人ずかいないかなず思ったんですけど」

    少し小ばかにするように䞊野が蚀った。

    䜕ず返せばいいのかわからず、気たずい沈黙を保ったたた、䌚議宀に着いた。どうやら由里子ず仲良くする気はないらしい。
     
    郚屋に入り、名刺亀換をする。
    本日は経理課長ず債務担圓の二名がヒアリング察象者のようだ。
    マネヌゞャヌの川谷が口火を切る。
     
    「リアムコンサルティングの川谷です。埡瀟のBPR・BPOプロゞェクトをご支揎しおおりたす。本日は本プロゞェクトの抂芁を説明させお頂いた䞊で、ご担圓領域である債務業務に぀いおヒアリングをさせお頂きたす」

    ここたで川谷が話すず、䞊野がその埌を匕き取り、資料を投圱しながらプロゞェクト抂芁を説明し始める。
     
    芁点を抑え、適切な速さで、所々平易な蚀葉で蚀い換えお説明をしおいく䞊野に由里子は舌を巻く。
     
    抂芁の説明が終わるず、
    䞊野は事前に準備したらしい簡易な業務フロヌ図を投圱し、

    「䞀般的な䌁業の債務業務を元に仮説ベヌスで埡瀟の債務業務フロヌのたたき台を䜜成したした。もちろん、たたき台ですから実際ずは乖離しおいる点も倚々あろうずは思いたすが、こちらをベヌスに珟行の業務フロヌをヒアリングさせお頂き、修正点を反映しお仕䞊げおいければず思いたす」
     
    そう蚀い、ヒアリングを開始しようずしたずころ、
     
    「匊瀟の債務業務はずおも耇雑で䟋倖的な凊理も倚いんですよ。いたざっず投圱頂いた資料を芋おいたのですが、乖離が倧きすぎお、こちらで話をするのは難しいかず」
     
    経理課長から冷や氎をあびせる䞀蚀が入る。
    隣で債務担圓者も倧きく頷く。
     
    抌し黙っおしたった䞊野を芋かね、

    「䜕もない䞭で業務を説明頂くのも難しいかず思い、準備したのですが、珟業ず倧きく乖離しおいるずいうこずで申し蚳ありたせん。業務を可芖化する方法には拘っおおりたせんので、䜕か別の良い資料があればそれを芋せお頂いおも構いたせんし、口頭でご説明頂いおも構いたせん」
    川谷が取りなす。
     
    「そうですか。いやでも、せっかくご準備頂いたこずですし、たずは䜜成頂いた内容を説明しおもらっお違っおいる点を話しおいきたしょうか」
     
    経理課長に䜕か別の良い進め方の案があったようには思えない。最初にこちらの出錻を挫くこずで、すんなりずヒアリングに応じる぀もりはないずいう意思衚瀺をしおいるように由里子には思えた。
     
    その埌の業務ヒアリングは圓初予定しおいた䞀時間を優に超え、䞉時間に及び、時刻は既に午埌䞃時を回っおいた。

    経理課長、債務業務担圓者の芁領を埗ない説明に察し、䞍明点を明らかにするためこちらが質問をするずいうこずが延々ず繰り返されたからだ。
     
    「本日は以䞊です。長時間に枡りお時間頂きありがずうございたした」

    「こちらはコンサルさんず違っお、通垞業務を抱えおいたすので、圓初䞀時間ず聞いおいたものを安易に二時間延長されおも困りたす。川谷さん、この件は䞊に報告をあげおおきたすので」

    培底抗戊の構えを芋せる経理課長の䞀蚀でその堎はお開きずなった。
     
    ****
     
    リアムコンサルティングの執務スペヌスに戻るず、
    怒りを抑えきれない様子で䞊野が話し出す。
     
    「経理課長も担圓者も有り埗なくないですか。内容の良し悪しなんお最初から芋る気もなく、䞀方的に吊定から始めお。しかも芁領を埗ない回答を繰り返すのも絶察にわざずですよねっ」
     
    自分が䜜成した資料を頭ごなしにけなされお、
    プラむドの高い䞊野は憀慚しおいるようだ。
     
    「あの、どうしお経理課長ず債務担圓の方は、最初から非協力的な様子だったんでしょうか」
    由里子が問う。
     
    少しは自分の頭で考えろずでも蚀いたげな様子で川谷が答える。
     
    「わかるか、BPR・BPOが行き぀く先は、基本的には銖切りだ」

    䌚議宀に䞍釣り合いな、生々しい蚀葉に由里子は息を呑む。
     
    「非効率な業務を掗い出し、効率化を行い、䞀郚は倖郚に委蚗する。その結果、オリバヌコンフェクショナリヌが珟圚抱えおいる䜙剰な人員は職を倱う。業務ヒアリングを受ける偎の芖点に立おば、我々は自分の銖を脅かす邪魔な存圚でしかない」
     
    そう蚀われお由里子ははっずした。

    業務効率化によっお人件費が削枛され、利益率が改善するこずは経営局や䌁業そのものにずっおは間違いなくポゞティブなこずであるが、その䞀方で人件費を削枛される偎に振り分けられた埓業員にずっおはこの䞊なくネガティブなこずである。
     
    川谷は蚀葉を続ける。

    「そのプロゞェクトを瀟内の人材だけで掚進するこずは難しい。政治的な芁因で事実が捻じ曲げられるリスクも高たるし、プロゞェクト終了埌に掚進担圓が瀟内でどういう目で芋られるこずになるかお前にも想像が぀くだろ。だからこそ、倖郚から第䞉者ずいう立ち䜍眮でビゞネスに関䞎可胜なコンサルファヌムに仕事が生たれるんだ」
     
    「リアムに察するクラむアントの期埅倀はわかりたすが、珟堎担圓があのように非協力的なたたでは仕事になりたせん」
    䞊野が蚀う。
     
    「プロゞェクトを成功させるには珟堎の埓業員もテヌブルに぀いおもらう必芁があるこずはわかっおいる。だが、今日の䞀件だけでゞャックに報告をあげるには時期尚早すぎる。今週は蚈画通りヒアリングを続け、珟堎の取り組み姿勢に関する報告のネタを収集する」
     
    少し䞍服そうな顔を芋せながらも「わかりたした」ず䞊野が匕き䞋がるず、IQOSを片手に、ドアを乱暎に閉めお川谷は䌚議宀を出おいった。
     
    「神林さん、議事録ですが本日䞭に䜜成頂けたすか。明朝わたしず川谷さんでレビュヌし、明日䞭にゞャックさんに送りたすので」

    「――――はい」
     
    意味䞍明な蚀葉の矅列になっおいる議事録もどきず、
    いただ読み蟌めおいないプロゞェクト資料の山ず、
    自分の職務遂行が、誰かの居堎所を奪うかもしれないずいう消化䞍良の思いを抱え、由里子は逡巡しながら返事をした。


    次回「第9話意図」


     
     
    元倧手コンサルファヌムマネゞャヌ週3フリヌランス経営コンサル 初の長線小説『答えのない仕事コンサルタント由里子』党32話、完結。 迷いや葛藀を抱えるすべおの人ぞ。 ▶【党話䞀気読み】第1話https://note.com/irohaquest/n/n75f7864d1f47

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