
『そういうことだったんですね』の後、何も変わっていなかった
派遣職員が、責任者に
「どういうふうに支援したらいいのか分からないので、何か本を読んだ方がいいですか?」
と聞いていたことがあった。
その後、
実際に支援に入っている様子を見ると、
利用者さんへ、
何度も声をかけ続けていた。
でも、利用者さんは動かなかった。
私は、
「声をかけすぎると、利用者さんは情報が多くなりすぎて、逆に動けなくなることがある」
という話をした。
なぜ私が、
利用者さんに対して、
短い言葉で伝えるのか。
なぜ、待つのか。
利用者さん側では、どんなことが起きているのか。
そういうことも説明した。
すると彼女は、
明るい表情で、
「そういうことだったんですね」
と返してきた。
その瞬間、私は少し安心していた。
「伝わったかもしれない」
と思ったからだ。
でも、
時間が経つと気づく。
行動は、何も変わっていなかった。
でも質問は来る。
少しだけ言い方を変えて。
少しだけ角度を変えて。
でも、返ってくる質問は、
いつも同じ場所に戻っていた。
彼女は以前、私が利用者さんへ、
方向を指差しながら、単語で短く伝えている場面を見て、
「怖いと思っちゃいました」
と言ったことがあった。
私は怒っていたわけではない。
感情的になっていたわけでもない。
でも彼女には、
そう見えていた。
その時、
ふと気づいた。
彼女は、
自分の目線で仕事を解釈していて、
私は、
利用者さん側の目線で説明していた。
見ている場所が、最初から違っていた。
言葉は返ってくる。
理解したような反応もある。
でも、そこに、
「自分はどうだったか」
という視線がない。
・自分の行動はどうだったか
・なぜそう言われたのか
そうやって、
一度立ち止まる時間がない。
ただ、
わかったように、答えているだけ。
だから、
何も変わらない。
振り返りがないまま、
次の質問が来る。
そしてまた、同じ場所に戻る。
説明された側は、
自分の目線を変える意思がなければ、
相手の言葉は、
蒸発していく。
私が違和感を感じていたのは、ここだった。
この会話の一方通行感は、
もっと別のところで、
すでに決まっているものがあった。
当時の私は、
「どう説明すれば伝わるか」
ばかり考えていた。
でも、
本当にズレていたのは、そこではなかった。
(→第18話: 伝わらない理由を間違えていた)
(→第18話: 伝わらない理由を間違えていた)