
『君と私とIF』第33話「文化祭!」
<3ーC教室>
「それこっちー」
「ドリンクここでいい?」
「クロスちょうだい」
(賑やかだ・・・)
朝から準備に追われる
女子たちの声が、
教室に響き渡る。
武田
「俺ら・・・何やってんだろうな・・・」
何を隠そう、
今日は待ちに待った
文化祭当日である。
勇人
「ホントそれな・・・」
そりゃあ、
女子たちの準備にも
力が入るってもんだ。
花音
「はい、できたよ〜。
うん、やっぱり小林くん可愛い〜」
小林
「ありがとう・・・相沢さん・・・」
絵梨花
「ほらー次ー。
中藤ー」
え?
男子は何してるのかって?
勇人
「はい・・・お願いします・・・」
絵梨花
「うん、衣装はバッチリじゃん。
そんじゃ行くよー」
俺たちは今、
新しい世界の
扉の前に立っている・・・。
七海
「次、武田だよー」
武田
「・・・へい」
扉を潜り終えた友・小林は、
向こうですでに
美少女メイドさん・・・。
絵梨花
「はい、目つむって」
勇人
「はい・・・」
そう・・・、
男子メイド化計画、
発動である。
(うひ〜くすぐってぇ・・・)
メイド服を着たヤローどもが、
あるいは既にバッチリメイクで、
あるいは順番待ちをして、
世界の混沌に
花を添えているのだ・・・。
絵梨花
「はい、目開けていいよ」
勇人
「はい・・・」
(まぁなんつーか、
普通に女装した男だな・・・)
鏡の中の自分にツッこむ俺。
小林が別格なのだ、小林が!
三浦
「なんか下がスースーするな・・・」
大原
「そうだね、
これは落ち着かないわ・・・」
桜澤
「・・・」
ムスッとした表情で、
桜澤メイドが立ち尽くす。
(あー・・・、
三浦は完全に
ゴリメイドの眷属だな・・・)
(しかし、大原は・・・)
元々、王子様タイプの大原。
180センチの高身長が
メイド服に身を包み、
ウィッグを被って
バッチリメイクが決まったその姿。
(美しい・・・)
まるでモデルかと見まごうほどに、
高身長美女メイドが爆誕していた。
(これは思わぬ伏兵だな・・・)
絵梨花
「はい、中藤。
終わったよ」
勇人
「あざーっす!」
(やっぱ女装した男だな・・・)
席を立ち、
一人モジモジする
小林の元へ向かう。
勇人
「よぉ小林!
どうよこれ?」
小林
「・・・うん、
女装した勇人だね・・・」
勇人
「だろ・・・?
ひっでぇよな」
そう言って笑いかけると、
小林もようやく苦笑いを浮かべた。
勇人
「あとはやるだけだな」
小林
「うん・・・」
勇人
「どうした? 自信持てって。
お前は間違いなく
この中で一番の美少女だぜ?」
小林
「嬉しくないよ・・・」
そうしてまた、
モジモジとうつむく小林。
その姿がまた可愛いんだがな!
勇人
「バッカ、お前。
素材がいいからだぜ?
みんなが知らないの、
もったいないだろ?」
小林
「勇人・・・」
勇人
「それにさ、
みんな準備、
頑張ったじゃん?」
目の前の美少女が、
ハッとした表情を浮かべる。
勇人
「成功させようぜ」
小林
「うん、そうだね」
勇人
「お前が頼りなんだぜ〜?」
小林
「やめてよ、もう・・・」
小林がさっきまでとは
全然違う苦笑いを
浮かべたあと、
キリッと顔が引き締まる。
七海
「ほら、終わったよ武田」
武田
「ありがとよ・・・」
全員の戦闘準備が整った。
こうして、
俺たちの闘いが
幕を上げたのだった。
──文化祭・午前の部──
<3ーC女装メイド喫茶>
「いらっしゃいませ〜」
「4名様ですね。
申し訳ありませんが、
ただいま満席です」
「そちらの順番表に
お名前と人数を書いて
お待ちいただけますか?」
受付の女子たちの声が響く。
女子たちは今や、
全員が男装カフェ店員さんだ。
「メイドさーん、
オーダーお願いしますー」
「こっちもお願い〜」
お客さんの声が飛ぶ。
「はい、ただいま〜」
「こちら、オススメです」
ゴツいメイドたちが入り乱れる。
文化祭開幕から1時間。
3ーC女装メイド喫茶は、
「大盛況の坩堝」と化していた。
小林
「お帰りなさいませ、
ご主人様♡」
女子生徒たち
「いやぁ〜んかわいい〜」
吹っ切れた顔の美少女メイドが、
引っ張りだこになっている。
真琴
「中藤くん〜、運んでもらえる?」
勇人
「あいよー」
(男装の委員長、かっこいいな!)
(俺も負けておれん!)
サッとお盆を受け取ると、
お客さんの元へ運ぶ。
勇人
「お待たせいたしました、ご主人様♡
ジュースとパンケーキの
セットでございます♡」
下田
「ありがとよ、中藤」
こいつは下田。
一年の時に、俺や小林と、
同じクラスだったヤツだ。
下田
「しかし、お前ら。
似合ってんじゃねーか」
ニヤニヤしながら
下田が話しかけてくる。
勇人
「まーな?」
下田
「あれ、小林だろ?」
勇人
「そうだが?」
下田
「ヤバいな・・・変な扉開きそう・・・」
勇人
「ほどほどにしとけ・・・?」
下田
「ああ・・・」
勇人
「では、失礼致します。
ごゆっくりどうぞ、ご主人様♡」
一区切りつき、顔を上げると。
「キャー──」
向こうで、
女子生徒の歓声が上がった。
声のした撮影パネルコーナーの方を見ると、
記念撮影中の女子たちが、
大原と桜澤の長身メイドに挟まれ、
目をハートにしていた。
(ゴリメイドがこんな人気出るとは・・・)
思わぬ誤算である。
(まさか、あの桜澤がな・・・)
目が笑ってない桜澤メイドが、
女子と片手ずつ合わせてハートを作り、
撮影に応じる姿は割とシュールだ。
記念撮影は、1回500円。
これが思いがけず大人気で、
人気メイドが引っ張りだこになっている。
七海
「小林〜、
記念撮影お願い〜」
小林
「はーい」
(また小林か・・・)
ちなみに俺は、
一度も呼ばれていない。
(やっぱすげぇわ、あいつ・・・)
(しかし・・・)
葵
「ありがとうございました〜」
後輩女子生徒たち
「平方先輩、ありがとうございました〜」
「先輩の男装姿も素敵です〜」
葵
「あはは・・・ありがとう。」
(葵も大人気だな・・・)
そこに、案内役の女子の声が響く。
「次のお客様〜、お待たせしました〜」
(客が、はけたそばから入ってくるな・・・)
(あの二人・・・どんだけ集めるんだ・・・)
客寄せ担当は、
坂下と相沢の一軍ギャルズ。
葵・作の喫茶店ポスターを掲げ、
校内を練り歩いてる・・・はずである。
(コミュ力高すぎだろ、ギャルズ・・・)
入れ替わり立ち替わり、
ひっきりなしに出入りするお客たち。
武田
「いらっしゃいませ! ご主人様!」
(メイドになっても武田は武田か・・・)
周囲を見回すと、
男子も女子も、
みんな忙しく動き回っている。
(よーし! 頑張りますかね!)
・・・・・・
・・・
(ふー・・・)
少し間が空き、
時計を見上げる。
(午前の終わりまで、
まだ少しあるな・・・)
一息つきながら、
ふとカウンターの方に目を向けると、
委員長が女子たちと
何か青い顔をしているのが
視界に入った。
(なんだ・・・?)
慌ただしく、
在庫を確認しているような・・・?
様子を見るのに、
近寄ってみる。
女子生徒たち
「どうしよう、委員長・・・」
真琴
「なんで・・・」
勇人
「委員長ー、どした?」
真琴
「中藤くん・・・実は・・・」
事情を聞くと・・・。
勇人
「マジか・・・」
真琴
「うん・・・どうしよう・・・」
伝票の発注ミスが発覚し、
在庫不足の危機が、
3ーCに忍び寄っていた。
( 第34話「緊急事態」へ )
※初めての方は
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※「この人、誰だっけ?」の迷子防止用です。
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