
『君と私とIF』第18話「約束」
──翌日・放課後──
<図書室>
武田
「で・・・、
log(ログ)って結局何なんだ・・・」
勇人
「そりゃお前・・・、
LINEYとか昔に遡るヤツ・・・」
武田
「過去ログじゃねーよ!」
小林
「勇人・・・」
七海
「あんたら・・・、
相当よ? それ」
高橋の向こうで、
頭を抱える委員長。
(何も言い返せねぇ・・・)
武田と2人でシュンとなる。
平方さんはと言うと・・・。
(なんかものスゲー勢いで
PC打ってるな・・・)
自前のタブレットPCらしい。
小林
「とりあえず、
定義から見直そっか」
武田
「定義・・・」
小林
「これがこうなってるから・・・」
勇人
「おお・・・それは分かる・・・」
小林
「例えば、
log2の8が・・・」
武田
「なんでそれが3なんだ・・・」
勇人
「つまり、
2と8をどうにかして3に・・・」
小林
「いや、
指数だから・・・」
武田
「なんで指数が・・・」
完全なるカオスである。
真琴
「つまり、
指数だけ取り出して計算するの」
武田
「なんで・・・?」
「普通に計算すりゃいいじゃん・・・」
勇人
「こんなん何に使うんだよ・・・」
武田
「それな・・・」
再び頭を抱える委員長。
「大きい数字を、
直接計算しなくていいから」──
静かな声がした。
見ると、
平方さんがタブレットPCから
顔を上げていた。
葵
「logは、
数字を指数に直して見るための道具。」
「今回は、2を底にして見る。」
「例えば、128掛ける16割る4。」
勇人
「・・・えーと?」
「いくつだ・・・」
葵
「普通にやると、
128掛ける16で2048。
それを4で割って512。」
武田
「デカいな・・・」
葵
「順番を変えて、
16割る4は4。
だから、128に4掛けてもいい。」
「でも、2の累乗で見ると」
「128は、2の7乗。
16は、2の4乗。
4は、2の2乗。」
「だから、
7足す4引く2。」
勇人
「9・・・?」
葵
「うん。」
「だから、log2で見た答えは9。」
「実際に計算してみると、
ほら、2の9乗は512になるでしょ?」
武田
「数字、デカくしてねぇ・・・」
葵
「うん。
指数だけ見たから。」
勇人・武田
「おお・・・」
唖然とする委員長と小林。
武田
「ヤベェ・・・、
何か分かったかも!」
勇人
「さっきの問題・・・!」
武田
「・・・」
「なんでこれがこうなるんだ・・・」
頭を抱える武田。
一方、俺は、
勇人
「あかん・・・」
ボーッとする頭で
周囲を眺める。
(一瞬、
分かった気がしたんだが・・・)
その時、
「早坂さん、ちょっといい?」──
平方さんが委員長に声をかける。
タブレットPCを見せて、
何か話しているようだ。
小林
「勇人・・・大丈夫?」
勇人
「煙が出そうだ・・・」
・・・・・・
・・・
真琴
「なるほど・・・」
「具体的なイメージか・・・」
葵
「うん。」
「勉強が苦手な人って、
そもそも、『何を見たらいいか』が
イメージできてなかったりするから。」
真琴
「うん、なんとなく分かる」
「じゃあ、
これでスケジュール立ててみよっか」
葵
「うん。」
真琴
「そうしたら、
私、スケジュール立てるね」
(流石、早坂さん。)
(頼りになる。)
真琴
「平方さんは2人をお願い」
葵
「うん、分かった。」
(これで、
少しは勇人の助けになるかな・・・。)
真琴
「みんな〜」
「少し休憩しよっか」
図書室の時計を見ると、
17時を少し回ったところだ。
勇人
「俺・・・ちょっと歩いてくるわ・・・」
真琴
「20分には再開するね」
勇人
「おー・・・、分かった・・・」
武田くんは、ぐったりしている。
勇人が、
ぐっと勢いをつけて立ち上がる。
(あ・・・私も・・・)
慌てて、
鞄にしまってあった物を取り出す。
葵
「私も、ちょっと出てこようかな。」
勇人
「お?
そんなら一緒にぶらつく?」
葵
「うん。」
「早坂さん。
スケジュール、お願いします。」
真琴
「任せて」
そうして、
私たちは、図書室を後にした。
<1階・廊下>
(大分、疲れた顔してる・・・。)
隣を歩く彼の横顔に、
疲れが見える。
時折、
「うぇえ・・・」とか言いながら、
フラフラ歩く彼。
(・・・)
(もしかしたら・・・)
怪我の影響もあるのかもしれない。
(頭部の大怪我だったし。)
3月頃のことを思い返す。
(あれから、もう1ヶ月。)
彼と、あのベンチで出会ったのは、
まだ桜も咲いていない時期だった。
(でも・・・)
(たった1ヶ月・・・)
そして、
彼がクラスに復帰してからは、
まだ3週間も経っていない。
(それなのに・・・)
陽葵の笑顔が戻った、あの日。
何も分かってないような顔をする彼。
(きっと、
勇人の中ではそうなんだろうな。)
(でも・・・)
間違いなく、
教室の空気は変わった。
(桜澤くんも、武田くんも。)
(陽葵も、・・・そして私も。)
まだ、
ぎこちなさはあるけれど。
(・・・)
(今度は、私が助ける番。)
その時、
視界がふと開ける。
(ここ?)
こっちを見て、
勇人
「ちょっと座ってこうぜ」
苦笑いしながら、
そう言う彼。
「やっぱ、
平方さんと言えばここだろ」
──いつもの、欅のベンチ。
(また、「平方さん」・・・)
家族も親しい友人も、
みんな、私を名前で呼ぶ。
(勇人も名前でいいのに。)
お構いなしに進んでいく彼。
(もう・・・)
ベンチに腰かける彼。
空いた側に、私も座る。
勇人
「あ゛〜、疲れた・・・」
早速、崩れかかる。
葵
「勇人。」
勇人
「ん?」
葵
「数学もだけど、英語とか大丈夫?」
勇人
「英語・・・」
半分泣きそうな顔。
「・・・壊滅的」
葵
「そっか。」
「これ、よかったら。」
持ってきた物を差し出す。
勇人
「え・・・? これは・・・?」
葵
「私が使ってた、英単語・熟語帳。」
「よかったら、使って。」
勇人
「マジ?! ・・・いいの?」
葵
「うん。」
「私は、大体覚えたから。」
勇人
「おおー、マジかぁー」
パラパラとページをめくる彼。
「サンキュー!
平方さん!」
葵
「・・・」
(また・・・)
勇人
「・・・、葵」
葵
「うん。」
(そんなに嫌なのかな・・・)
ふと、スマホを確認する。
時間だ。
葵
「そろそろ時間。」
「戻ろっか。」
勇人
「おお・・・、そうだな・・・」
図書室まで、少し急ぎ足で戻った。
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