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おれ匏 䞀呚目 スピンオフ 僕のスタむル パヌト1

    僕の朝は早い。

    平日は、仕事前にマンションの䞋の階にあるゞムで軜くトレヌニングをする。
    䌑日は、早朝から奥倚摩方面ぞサむクリングに出る。

    朝の時間は、誰にも邪魔されない。

    メヌルも、チャットも、クラむアントからの確認も、ただ動き出しおいない。
    街が完党に起きる前の、少しだけ䜙癜のある時間。

    その時間に身䜓を動かすず、自分の茪郭が敎っおいく気がする。

    平日はゞム。
    䌑日はロヌドバむク。

    僕にずっお、それは努力ずいうより、切り替えの儀匏に近い。

    仕事では、服装は自由だ。
    打ち合わせもオンラむンが倚い。
    ゞャケットを着る日もあれば、黒いTシャツで䞀日を終える日もある。

    だからこそ、䌑日のサむクリングでは、きちんずサむクルゞャヌゞを着る。

    ロヌドバむクに乗るための服。
    ポケットの䜍眮も、汗の抜け方も、颚の受け方も、すべおに理由がある服。

    僕にずっおそれは、䌑日の正装だった。

    その朝、シャワヌを济びお髭を敎えた埌のひず時。

    僕はコヌヒヌを飲みながら、テヌブルの䞊のロヌドバむク甚チュヌブを芋おいた。

    未䜿甚。
    箱もきれい。
    ただし、僕のホむヌルには合わない。

    ディヌプリムのホむヌルに、ショヌトバルブのチュヌブ。

    買った時の僕は、いったい䜕を芋おいたのだろう。
    少しだけ、自分に呆れる。

    けれど、䜿えないわけではない。
    僕には䜿えないだけで、誰かには䜿える。

    スマホを手に取り、メルカリを開く。

    アカりント名は、
    「ただただ䜿えたす」。

    僕は、メルカリを䞍甚品を出すためだけに䜿っおいるわけではない。

    買ったこずもある。

    䜕幎か前、サむクルゞャヌゞを䞀枚買った。
    状態は悪くなかった。
    生地も、瞫補も、思っおいたよりしっかりしおいた。

    今でも、予備ずしお持っおいる。

    チュヌブの写真を撮圱しお、説明文を曞く。

    未䜿甚品。
    バルブサむズを間違えお賌入。
    パッケヌゞに倚少の擊れあり。
    䜿甚には問題なし。

    最埌に、出品者名を確認する。

    「ただただ䜿えたす」

    その名前を芋お、少しだけ笑った。

    ただただ䜿える。
    物も、身䜓も、道も。

    僕はコヌヒヌを䞀口飲んだ。

    苊味が、少し遅れお舌に残る。

    奥倚摩ぞ向かう朝の空気を思い出した。

    青梅を過ぎるず、街の密床が少し倉わる。

    建物の間隔が広がり、川の気配が近くなる。
    信号の間が長くなり、ペダルを回す時間が増える。

    サむクルゞャヌゞの背䞭に、朝の空気が流れおいく。
    カヌボンフレヌムのマシンが僕の奜奇心を掻き立おる。

    速床を䞊げるこずだけが、ロヌドバむクではない。
    かずいっお、ゆっくり走ればいいずいうものでもない。

    姿勢。
    呌吞。
    ペダルの重さ。
    路面の荒れ方。
    前を走る車ずの距離。
    信号が倉わるタむミング。

    そういうものが、少しず぀噛み合っおいく。

    走る距離より、姿勢。
    速床より、䜇たい。
    勝぀こずより、厩れないこず。

    僕はそういうものを、自転車に求めおいた。

    奥倚摩方面ぞ向かう道は、毎回同じようで、毎回少し違う。

    春は、山の緑がただ薄い。
    倏は、川沿いの湿床が濃い。
    秋は、空気が也いお、チェヌンの音たで少し柄んで聞こえる。
    冬は、指先の感芚が戻るたでに時間がかかる。

    同じ道を走っおいるはずなのに、同じ颚景だったこずは䞀床もない。

    だから僕は、週末になるずたた同じ方向ぞ向かう。

    䜕かを探しおいるわけではない。
    けれど、䜕も倉わらない道を確認しに行っおいるわけでもない。

    倉わっおいくものを、同じ姿勢で芋に行く。

    たぶん、それが僕にずっおのサむクリングだった。

    毎週のように走っおいるず、䞀週間ごずに季節が移ろっおいるのを肌で感じる。

    それがロヌドバむクの醍醐味のひず぀だず思う。

    僕は、い぀もの叀里のセブンむレブンで䌑憩を取った。

    叀里ず曞いお「こり」ず読む。

    関東のロヌディヌでこの字を読めなかったら、少し怪しい。
    駅名でもあるし、奥倚摩方面を走る人間には、それなりに知られた名前だず思う。

    初心者の頃は、このコンビニたで来るのが目暙だった。

    それが今では、颚匵峠たで行けるようになった。

    我ながら、距離感が少しおかしくなっおいるず思う。

    僕は、ロヌディヌである前に、垞識人でありたい。

    レゞで矊矹をひず぀買い、䌚蚈を枈たせる。

    「ありがずうございたす」

    ホクロのある店員さんに、軜く頭を䞋げる。

    盞手が誰であれ、挚拶はする。
    それは意識しおいる。

    仕事では、固定抂念だ、パラダむムだ、倚様性だずいった蚀葉を䜿うこずがある。
    ならば、たず自分の態床くらいは、分け隔おなくしおおきたい。

    そういう基本を雑にする人間が、立掟な蚀葉だけ䜿っおも、あたり信甚できない。

    矊矹を背䞭のポケットに入れ、もう䞀床ボトルの残量を確認する。

    今日は、奥倚摩湖たで行く぀もりだった。

    氎ず緑のふれあい通で、小河内ダムカレヌを食べお折り返す。

    予定ずしおは、悪くない。

    垰りは脚が少し重かった。

    ダムカレヌのせいではない。
    たぶん、行きで少し螏みすぎたせいだ。

    ロヌドバむク乗りは、よく「今日は流すだけ」ず蚀う。
    ただ、その蚀葉を本圓に守れる人間は、あたり倚くない。

    犏生のあたりだったず思う。

    向こうから、グラファむトのビアンキが来た。

    ただ、乗っおいる男はサむクルゞャヌゞではなかった。

    黒い䞊着。
    キャメル色のパンツ。
    癜いレンズの県鏡。
    䜓にぎったり沿うように背負われたメッセンゞャヌバッグ。

    䞀瞬、ロヌディヌずしお挚拶するべきか迷った。

    けれど、よく芋ればそれは、ロヌドバむクを知らない人の普段着ではなかった。

    ニュヌペヌクやサンフランシスコのメッセンゞャヌたちが、必ずしもサむクルゞャヌゞを着ないように。
    あれはあれで、街を走るための服だった。

    そう思った瞬間、向こうの男が軜く䌚釈をした。

    僕は少し遅れお、頭を䞋げた。

    仕事では、倚様性だ、固定抂念を倖すこずだず話しおいる。
    コンビニの店員さんには、分け隔おなく「ありがずう」ず蚀う。

    それなのに、ロヌドバむクの䞊では、僕は䞀瞬で盞手を分類しようずしおいた。

    ヒルクラむムでもがくのも、正解だ。
    䞊質なりェアで、姿勢を厩さずに走るのも、正解だ。
    普段着で、生掻の続きのようにロヌドバむクに乗るこず、これも正解だ。

    どれが本物かではない。

    どれも、その人のスタむルなのだず思った。

    スマホの画面が暗くなりかけおいた。

    僕は指先で画面に觊れ、メルカリの出品ペヌゞぞ戻る。

    チュヌブの写真。
    説明文。
    サむズ。
    バルブ長。

    問題ない。

    コヌヒヌは、少し冷めおいた。

    僕は最埌の䞀口を飲み干し、出品ボタンを抌した。

    さお。

    今日も走りに行こう。

    ロヌドバむクはDE ROSA。
    コンポヌネントはDURA-ACE。
    サングラスはOakley。

    これが僕のスタむルだ。


     
     
    倧倢楜富タむムラクトミ。普段から頭の䞭で、色々なこずを「あヌでもない、こヌでもない」ず発酵させおいたす。腐っおいるのではありたせん。そこは倧きな違いです。Time lacto me.

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