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地味な恋愛|母親の翻訳ー上海②ー


    朱さんの友人のセンスーは、
    最近再婚したらしい。

    娘のインインは僕と同い年で

    留学して間もなく、
    家族同士の食事会で紹介された。

    ⸻

    場をペラペラと盛り上げる父。
    知らない親の生活。

    ⸻

    これが留学か。

    ⸻

    大学を休んで
    駐在している父を訪ねたら、
    朱さんの家に放り込まれた。

    学校も決まってない。

    去年は、
    中国語のクラスを選択して
    基礎を勉強した。

    父は、
    上海訛りの北京語だから
    聞き取りづらいかもな、と言った。

    ⸻

    全く聞き取れない。

    ⸻

    テーブルの下にカシオの辞書を構えて
    流れを追いきれずに
    あきらめる。

    ⸻

    インインは、
    おしゃべりな母と違い、
    物静かでスっと通る声をしていた。

    か細い北京語は
    滑らかな抑揚があって

    上海の大人達よりも
    ずっと聞き取りやすかった。

    ⸻

    お金と政治の話で盛り上がる
    丸テーブルを囲む中で、
    僕らはお互いの空気を確認した。

    学生であること。
    口やかましい大人に
    少しうんざりしていること。

    ⸻

    当たり障りのない
    単語を交換した。

    ⸻

    会食の後、朱さんは鼻の穴を広げ
    センスーはケチだと怒っていた。

    食事で金を払った試しがないらしい。

    前の旦那も、
    稼ぎが悪くて捨てたそうだ。

    いつも支払いを済ませる父に
    取り入ろうとしているから
    気をつけろとも言われた。

    あのおしゃべりな母親と
    インインが
    どうも似つかない。

    2人は似てないね。

    と朱さんに伝えたら

    あの子もきっと
    母そっくりになるわ。

    と言った。




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