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地味な恋愛|意気地なしの翻訳ー上海①ー

    2005年
    上海、春。

    アジアで先駆けて
    リニアが開通していた。

    植物園に並ぶベンチには
    一つ飛しでカップルが居座る。

    僕は日本人のクラスメイトと
    キスをしていた。

    付き合っていたわけではない。

    小さな顎。
    きれいに収まらない歯並び。

    彼女は悩んでいた。
    おにぎりでも
    簡単に外れてしまう。

    骨を削るような手術が
    将来待ってるらしい。

    ⸻

    ホームステイ先の
    朱さんはシングルマザーで

    彼女を家に連れて帰り
    紹介したら、

    後で僕が出っ歯の女を
    連れてきたと楽しげに話している。

    事情があるのに。
    中国語が間に合わない。

    朱さんは言った。
    顔に赤みが差して
    鼻の穴が広がる。

    なんでアンタは
    わざわざ留学に来て
    日本人の女の子と仲良くするの。

    グーの根も出ない。

    こういう時は、
    内緒にしておくものよ。

    ⸻

    なぜか朱さんの中国語は
    意味が霞んでもスッと入ってきた。

    息子のジンジンは
    頭がいいが、勉強はしない。

    ジンジンは小学校の頃、
    歴史の授業で

    僕の知り合いの日本人は
    良い人ですと発表したら
    こっ酷く怒られたらしい。

    中国語とは全く異質な上海語が
    空中戦を広げて罵り合う。

    3つの国がのさばるダイニング。

    ⸻

    ベンチのキス。

    見つめる手元。

    動かない2人。

    ⸻

    朱さんに
    友達に戻った話をしたら

    意気地なし

    と言われた。

    どうもズレるけど
    その通りだとも思った。



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