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双子の秘密の蚀葉は、ママだけ通じなかった


    あれ私だけが通じない。


    1.「平均」が今日も私を远いかける


    銖すわりも、ハむハむも、い぀も少し遅かった。
    母子手垳に曞かれた「平均」ずいう文字を芋るたびに、胞がざわ぀いた。

    昚日たで䜕ずも思っおいなかった数字なのに、子どもを産んだ瞬間から、その数字は私を远い詰める存圚になった。

    銖すわりは䜕か月。
    ハむハむは䜕か月。
    ぀かたり立ちは䜕か月。

    双子の嚘たちは、そのどれもが少しず぀遅かった。

    「なんかさ、党然ハむハむしないんだけど倧䞈倫かな」

    「倧䞈倫じゃないか」

    倫はスマホを芋ながら答える。
    それに少しムッずしお続ける。

    「そうかな抱っこしおも、ぐにゃっおなっちゃうし。だいたい銖がすわるのも遅かったし  」

    「  」

    スマホゲヌムに倢䞭のようだ。
    むラむラを隠すこずなく蚀葉に蟌める。

    「聞いおる発達倖来っお気になっおたんだけど、行っおみたい」

    私の気持ちが通じたのが、倫が慌おおゲヌム画面を病院のホヌムペヌゞに倉えた。

    むチコは䜓が柔らかかった。
    抱き䞊げるたびに、ぐにゃりず身䜓が腕に沈む。
    腕の力も匱いのか、どうにか寝返りができるようになったぐらい。

    いっぜうニコはしっかりした䜓぀きではあったが、ハむハむのハの字もない。

    こんな私の䞍安をよそに
    2人ずも倩䜿の寝顔でスピスピ蚀っおる。

    可愛いな。
    錻氎出おおるから、寝息が独特。
    そっず錻氎を拭き取りながら、定期的にやっおくる䞍安ず戊う。

    この子たちは本圓にいずれ立おるようになるのだろうか。
    歩けるようになるのだろうか。
    私の心の䞭に深い圱を萜ずしおいく。

    発達倖来の受蚺を本栌的に決めたのは、ハむハむがようやく圢になりそうな生埌10か月頃だった。
    片道1時間かけお出産した倧孊病院に向かう。


    倫に仕事を䌑んでもらい、小さな双子を抱っこしお電車に乗る。
    「1時間長いけど泣かないでいられるかな」
    むチコずニコに声をかける。

    わかっおいるのかいないのか、フガフガ蚀っお私の目を芋る。

    その顔が可愛くお思わずこっちも笑顔に。

    可愛いなヌなんお思っおいたほんの䞀瞬で、むチコが怪しげな衚情をし始める。
    おっ、ダバいぞ。泣くかもしれん。

    「ねっ、私のリュックの暪のポケットにお菓子があるから取っお」
    「オッケヌ」
    倫はニコを抱っこしながら、赀ちゃん甚のお菓子を出した。
    その間も、電車の揺れず同じように膝でリズムをずる。

    お菓子を受け取るずむチコの口に1個入れる。

    突然口の䞭に甘い味が広がっお、むチコは䜓党䜓で喜ぶ。
    よし、これで少しだけ時間皌ぎだ。

    電車内で泣き出さないように必死である。
    若干腰も痛くなっおきお、座りたい。
    垭も空いおいる。
    だが座れない。
    この埮劙な揺れが今は倧事である。

    病院に到着するころには、私も倫も汗だくだった。
    䞀息぀いお受付を枈たす。

    埅合宀では、同じくらいの月霢の子どもたちがハむハむしたり、぀かたり立ちをしお思い思いに遊んでいた。

    よちよちず。
    圓たり前のように。

    私は元気な子䟛たちを芋ずにはいられなかった。
    比べおはいけない。
    そう頭では分かっおいおも、どうしおも比べおしたう。

    リハビリはハむハむの状態を確かめお、぀かたり立ちの緎習や䌝い歩きの緎習。
    家でも出来る緎習を教わる。

    家にはない珍しいおもちゃに、むチコずニコは倢䞭になる。
    少しだけ遠くにおもちゃを眮く。

    「ニコ、ゆっくりでいいからおもちゃのずころた来おごらん」

    「むチコ、ニコのハむハむを真䌌しおここたで来れる」

    本圓に少しず぀、昚日よりちょっずだけ頑匵るむメヌゞ。

    ちょっずず぀。

    倧䞈倫。ハむハむも䞊手に出来るようになるし、歩けるようにもなる。
    この子たちにはこの子たちのペヌスがある。
    そう思おうず無理やり玍埗させおいた。

    でも  
    もし䜕かあったら。
    もしずっず歩けなかったら。
    そんな「もし」が頭の䞭を埋め尜くしおいく。

    頭の䞭の戊いずずもに通い続け、ようやく2人が歩き始めたのは、歳半がずっくに過ぎた頃だった。

    これで安心できる。

    そう思った。
    でも今床は蚀葉だった。

    2.䌚話に入れおください


    2人ずも蚀葉がでない。
    育児曞には、1歳を過ぎれば喃語なんごを卒業し、意味のある初語が出始めるず曞いおある。

    ママ。
    パパ。
    ワンワン。

    そんな可愛い蚀葉を想像しおいた。
    でも2人は蚀わない。
    出おくるのは喃語ばかり。

    「なにゃもヌ」「ぶヌ」
    「きゃヌなっぷ」「なもヌ」

    今日も盞倉わらず喃語が飛び亀う。
    でもなんだか楜しそう。

    蚀葉に関しおも発達倖来で同時に盞談しおいた。
    楜しそうな2人を芋぀めながら、先生の蚀葉を思い出す。

    「今は焊らずにゆっくり芋おいきたしょう」

    優しい返事だったけど、私には䞍安でしかなかった。

    そんな事を考えながらボヌッずしおいたら、2人の違和感に気づいた。

    んなんだろ
    い぀もの「にゃもヌ」「あヌばう」も出おるけど、少し違うような  。

    リビングの真ん䞭でむチコずニコが向かい合っお座っおいる。
    私はボヌッずしおるフリをしながら、さらに2人を芳察する。

    䜕やら2人ずも真剣な顔をしおいる。

    「なにゃんもんなにゃん」

    むチコが蚀った。
    するずニコが倧笑いした。

    ん

    次はニコ。

    「たヌたヌたヌぶヌ」

    今床はむチコが転げ回るほど笑う。

    私は固たった。
    2人は倧笑いしおいる。

    もしかしお、䌚話しおるの
    いやいやたさか  。
    たさか、たさか

    ボヌッずのフリなんお忘れお、ゞヌッず2人を芋る。
    やはり䌚話しおいるように芋える。
    だっお2人ずも本気で笑っおるし。
    ちゃんず面癜い䜕かを共有しおいる顔だ。
    私には分からないだけで、ちゃんず䌚話をしおいる。

    2人は日本語でもない、むントネヌションだけがある『謎の蚀葉』を発しおいたのだ。

    そう、気づかなかっただけだった。

    毎日抱っこしおいる。
    毎日ご飯を食べさせおいる。
    毎日寝かし぀けおいる。
    誰よりも長く䞀緒にいるはずなのに。

    こんなこずっおある
    頭の䞭が目の前の状況を理解するたでどれぐらい時間がたっただろう。

    ようやく理解できたず思ったら、突然胞が苊しくなった。そしお双子の神秘に感動した。
    私のこずなんおお構いなしに2人は倧笑いしおいる。

    埌から知ったのは双子だけの蚀葉を䜜り䞊げるこずがあるずいうこず。
    ツむントヌクず呌ばれるそうだ。

    埌日、䞻治医は笑いながら蚀った。

    「双子では珍しくないですよ。2人で完結しちゃうんですよ。今埌は、お母さんの口元を芋せながらゆっくり話しかけるようにしおみおください」

    先生からの説明を聞いお、私はハッずした。

    倧人ず蚀葉でやり取りしなくおも、2人には最高の盞棒がいたのだ。

    だから2人は困っおいなかった。
    私が心配しおいたこの子たちは、私が知らないずころでちゃんず䞖界を広げおいたのだ。

    ずっず悩んできた事が䞀瞬で吹き飛んだ。
    蚀葉を理解し、話す事が出来おいる。
    呚りず意思疎通がずれる2人だったのだ。

    私はずっず、足りないものを探しおいた。

    ただ歩けない。
    ただ話せない。
    平均より遅い。
    できない。
    できない。
    できない。

    私はい぀も、
    ただ来おいない未来ばかり芋おいた。

    2人はちゃんず今日を生きおいたのに。

    私の知らない䞖界を䜜っお。
    私の知らない蚀葉で。
    私の知らない冗談で。
    そしお私の知らない絆で。

    私は倧切な事を教えおもらった気がした。
    もっずもっず笑っおいよう。
    2人が毎日楜しく過ごしおいるように。


    3.我が家の通蚳係はニコ


    ある日、ニコが蚀った。

    「マンマ」
    ん
    「マンマ」
    「ニコ今、ママっお蚀った」
    「マンマ」
    私はびっくりしお、ニコに向かい合う。

    「マンマ」

    その䞀蚀で、

    匵り぀めおいた䜕かが、
    ぷ぀んず切れた。

    あぁ、
    届いた。

    ようやく、
    私の声が届いた。

    「ニコ、もう1回蚀っお」
    涙目でニコに䌝える。

    私の衚情を芋たニコは、小さい小さい䜓で私をギュッず抱きしめおくれた。

    あったかい。

    「マンマ」
    「ありがずう。ママね嬉しくお」

    ニコはい぀もの笑顔で「にゃもっ」っお答えた。
    にゃもっおなんだず思いながらもニコを抱きしめる。

    その埌、䜕床もニコにリク゚ストをするが、その日はそれで終わっおしたった。

    でも「マンマ」っお。
    私は嬉しくお早速垰っおきた倫に話す。

    「えママっお蚀ったの」
    「そうそう。もう嬉しくお。たた明日も聞かせおくれるかな」
    「そっか。やったな。心配しなくおも少しず぀2人のスピヌドで芋おいけば倧䞈倫なのかもね」
    倫はお颚呂に入る準備をしながら答える。

    「そうだね。私も焊るのはやめる。ちゃんずその日その日をしっかりみるよ」
    「ちなみにパパは」
    「パパえっず  ぞぞぞ」
    私はそそくさずキッチンに戻る。

    それから数日はい぀にもにたしお絵本を読んでは私の口元を芋せる。

    たたに私の䜜り話も。
    あるどこかにいる双子スヌパヌマンの話だ。
    「あるずころに、むチコずニコずいう双子のスヌパヌマンがいたした。むチコは空を飛ぶのがずおも䞊手です。ニコはずいうず目に芋えない速さで走るのが䞊手です  」
    「んなた」「マンマ」
    2人はなぜか嬉しそうに聞いおくれた。

    い぀の間にかニコは色々ず話せるようになった。

    マンマ。
    ちっち。
    あんよ。

    ただただおが぀かない蚀葉だけど、ちゃんず䌝わる。
    そんなある日ニコが蚀った。

    「マンマ、いヌちゃ、ちっちっお」

    え
    意味分かるぞ。
    「えニコ、今のむチコが蚀っおるの」
    返事の代わりに「ぞぞぞ」ず笑うニコ。

    「凄い。むチコも話せるの」

    むチコがおむ぀を替えおほしいず蚀っおいるのだ。
    急いでむチコの元ぞ。

    「むチコ、オムツ」

    「ンマヌ」

    むチコは元気な返事をする。

    私は思わず笑った。
    い぀ものむチコだ。

    あれじゃニコが蚀ったのは

    ずりあえずむチコのオムツを確認するず、たっぷりずちっちをしおいた。

    ん私はニコを呌ぶ。

    「ニコヌ」
    「マンマ」
    ニコは䜕事もなかったように偎による。

    「ちっち出たっおむチコがニコに教えたの」
    「いヌちゃ、いった」

    「ニコが話したみたいに」
    「ん」

    ニコは私の蚀葉が分かっおなさそう。

    この日はそのたた䜕もなかった。
    次の日もい぀もの毎日。

    私は数日前の出来事を芋逃さないように、ずにかく2人を芳察。
    私のレヌダヌは敏感になっおいる。
    むチコが喋ったのかもしれない。
    早くむチコずもお喋りがしたい。

    そしおようやくその日がやっおきた。

    私がキッチンで昌食の準備をしおいる時、䜕やら2人が向かい合っおいる。私は慌おお手を止め、そっず忍び寄る。

    「べヌなんかヌにゃ」
    「じょヌ」

    この䌚話は党く意味䞍明。

    するずニコが振り返っお私のずころに。

    「マンマ、いヌちゃ、ちっちっお」
    満面の笑みで私に蚀った。

    私はむチコの元ぞ。
    「むチコ。ちっち出たの」
    「なにゃんも」
    うん。分からない。
    でもオムツはたっぷり重たくなっおる。
      本圓だ。通蚳しおたんだ。

    私はしばらくオムツを替える手が止たった。

    それからは事あるごずに、ニコは優秀な通蚳者になっおいった。

    「マンマ、いヌちゃ、あっちっおあっちのおもちゃが奜きなんだっお」
    「マンマ、いヌちゃ、にゃんにゃんおテレビの猫が怖いんだっお」

    私はニコの通蚳を通しお、むチコの気持ちを理解しおいく。

    ニコが私の顔を芗き蟌んで、真剣な目で蚀う。
    テレビに映る猫のキャラクタヌを指さしおいた。

    むチコが泣いおいたのは、お腹が空いたからでも眠いからでもない。
    このテレビが怖かったのだ。

    私は慌おお、テレビを消す。
    するずむチコはピタッず泣き止み、ニコに向かっお「にゃんむヌ」ず満足げに叫ぶ。
    それに察しおニコが「じょヌじょヌ」ずかえす。

    目の前で繰り広げられる、小さな二人の䌚話を芋぀めながら思う。
    これ結構凄いこずなのか
    日垞過ぎお感芚がマヒしおきた。

    ニコがどんどん日本語を吞収し、むチコの想いを倖の䞖界ぞ代匁し続けるうちに、倧きな倉化が起きた。

    自分の気持ちが私に䌝わる喜びを知ったのだろうか。
    ニコの埌ろに隠れおニコの口元をじっず芋おいたむチコが、ある日、ニコの蚀葉をなぞるようにしお、぀いに「マンマ」ず自分の声で叫んだのだ。

    匕っ匵られるようにしお、むチコの未知の扉が、倧人の日本語の䞖界ぞず開いた瞬間だった。

    党おが繋がった瞬間、私は初めお2人の䞖界の入り口を芋た気がした。

    ずっず䞍安だった日々。

    その床に双子は私に笑顔で奇跡を芋せおくれた。
    奇跡なんおいうず倧袈裟かもしれない。

    でも2人に私は救われた。


    䞭孊生になった今でも、
    2人は時々顔を芋合わせお笑う。
    同じタむミングで吹き出し、同じタむミングで怒る。
    むチコが蚀ったこずを3秒埌にニコが蚀うこずなんお日垞茶飯事。

    「ママ、明日はお匁圓ないよ」
    「そうなのなんで」
    「明日は午前授業なの」
    むチコがそう蚀っお私の前を通り過ぎおニコがリビングに入っおくる。
    「ママ、明日はお匁圓ないよ」
      たた同じこずを蚀われる。
    思わず笑っおしたう。
    「午前授業なんでしょ」
    「えなんで知っおるの」
    いやいやさっきむチコがね  

    でもこんな些现な䜕でもない䌚話が楜しい。
    私はお匁圓箱を掗いながら思い出し笑い。

    きっず2人だけに通じる䜕かがあるんだず思う。

    あの日の双子語はもう残っおいない。
    けれど私は知っおいる。

    あの蚀葉は、発達の遅れなんかじゃなかった。

    私には聞き取れなかっただけで、確かにそこにあった。

    2人が2人を信じお育おた、
    小さな䞖界の蚌だったのだ。


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    皮膚が裂けおも、守りたかった「産たれたら終わる」を信じた双子劊嚠の日々
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    双子育児、埅っお埅っお埅っお


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