
【連載 #2】習字って、文字をきれいにするだけじゃない。【第2章】
この記事は、
マガジン『子どもに必要なことは、すべて習字が教えてくれた』です。全8回、連載完結しております。
※この連載はnote創作大賞2026にエントリーしています。プロローグから最終章まで、全8回を公開中です。
最初から読む方はこちら↓からどうぞ。
習字の真の効果とは?、その2つめのお話です。
第2章:筆を持つ前に、まず「座る」。それだけでも子どもは変わりはじめる
習字のお稽古は正しく座るところから始まります。
基本は正座です。教室によってはイスとテーブルかもしれませんが。ひとまずここでは正座ということに。
腰は反らさず背筋を伸ばし、
頭を上げて、上半身はどこも緊張させず、
肩や腕には余計な力は入れずに、ごく自然に。
そして半紙と正対に向き合う。半紙の中心に身体の中心をあわせる。
ただそれだけのことですが、これが意外とできていない人は多いのです。
「正座」というと、なんとなく昔から悪者扱いされることがあります。足が曲がる、膝に悪い、子どもがかわいそう、と。
しかし最新の研究では、習字のような短時間であれば何も問題ないという結論になっています。
むしろ正座は、
・体幹が鍛えられる
・脚のストレッチになる
・集中力が上がる
などメリットがあるほどです。

背筋を伸ばすと気合いが入るような気がするのは精神論ではありません。身体の形がそうなると、気持ちもあとからついてくる。
落ち込んだときには顔を上げる。
辛いときこそ笑顔を作る。
ポジティブな言葉を口に出す。
武道を嗜んでいる方はピンとくると思います。剣道も柔道も空手も、正座で始まり正座で終わります。
歌舞伎や能でも、はじめは「型」から。これも礼儀のためだけではありません。
形から入ることで内面にも影響するという話はたくさんあります。
だから机に向かって背筋を伸ばすと「いっちょ、やってやろうかな」という気持ちになるのです。人間は姿勢に感情が左右されるのです。
さらに、正座には、気持ちを切り替える力があります。「これから習字を始めるぞ」というスイッチを、身体的感覚で入れているんです。
習字の正座は習字を書くための機能的にも優秀です。スポーツでいうところの「フォーム」。
イスでも習字を書けないこともないですが、イスで書くときに背筋を伸ばし続けるには、背中を少し意識する必要があるので、長時間、イスで書くことは正座で書くよりめ疲れてしまうかもしれません。
習字にとって正座は「フォーム」。この適切なフォームで文字を書くのです。
スポーツの世界でもフォームの研究には余念がありません。
野球のバッティングフォーム、水泳のストローク、サッカーのキック。
どの競技でも、正しいフォームで体の使い方を整えることが、上達の基本になっています。イチロー選手は現役時代、毎年フォームを少しずつ変えていったそうです。その探求心には敬服するばかり。
ピアノ教室でも、姿勢は基本中の基本だと教えます。これもフォーム。肩や手指には余計な力を入れず、背筋を伸ばし、少し浅く座る。疲れにくく動かしやすい姿勢を叩き込まれます。
「正しい姿勢」や「正しいフォーム」というのは、自身の身体的能力を100%発揮させるために考え尽くされているのです。

正しいフォームには、身体能力を100%発揮させる力があるのです。
習字の正座もこれと同じです。正座をして自分の身体の状態を確認する。気持ちのスイッチを入れる。
姿勢が整うと良いことだらけ。集中力も上がります。姿勢がモチベーションを呼ぶのです。
何かヤル気が出ない、書いていて疲れてくる、なんだかうまくいかない。
その理由は正しく座れていない、フォームが崩れているというところに原因があるかもしれないのです。
そういう人は自分の座り方を、自分のフォームを見直してみるべきです。
正しいフォームで自分の能力を引き出しましょう。姿勢が悪くて習字が上手な人は見たことがありません。
正座をした下半身が、背筋を伸ばした上半身をしっかり支え、
上半身は無駄に力むことなく、腕と手は縦横無尽・自由自在に動く。習字を書くフォームは、決して難しいことではありません。
では、逆にこれができない人は、なぜできないのでしょうか?
最近、気になることがあります。
じっと座っていられない子どもが増えてきたように思います。
身体が硬いのか、それとも体力が無いのか。
半紙一枚を書く時間はたった2〜3分のもの。それだけの短い時間なのに途中で姿勢が崩れてしまう。そんな子が以前より多くなった気がします。
低学年の子は、やはり長く座っているのが苦手ですし、そもそも現代の子どもたちは正座をする機会が少ない。慣れていない。
それに加えて、身体の成長の問題もあります。年齢的にまだ体幹が弱く筋力が足りていない可能性も。
これをそのままにせず、正しくまっすぐ座らせる。これが一歩目の体幹トレーニングになる。
高学年になると、体力もつき、体幹もしっかりしてくるので、10分くらいは平気で座っていられるようになります。

部活動などで頻繁に身体を動かしている子どもは、やはり座っていて安定しているように思います。
身体の成長・精神の成長、そして書道教室でのお稽古。身体の充実+トレーニングで子どもたちもだんだんと正座が安定してきます。
落ち着きが出て、集中力が上がり、そしてそれは日常生活にも活かされる。
だから低学年の子がじっと座れなくても焦らなくていいのです。
私は姿勢が崩れた子を叱りません。ただ、声をかけます。これはトレーニング。
「背筋を伸ばして。頭を上げて。」
何度崩れても、何度でも同じ言葉をかけます。まだトレーニングの段階ですから。怒るのではなく、ただ伝える。それを繰り返します。
姿勢を整えることは、これから始まる集中の時間への準備です。その準備を、教室で繰り返すうちに身体で覚え、子どもは自分で背筋を伸ばすようになっていきます。
姿勢を正すことを、バカにしちゃあいけないんですよ。さあ、トレーニングだと思って今日も座りましょう。
次は第3章「『とめ・はね・はらい』は、物事を最後までやり遂げる練習だった」です。
↓どうぞご覧ください。