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【連載 #3】習字って、文字をきれいにするだけじゃない。【第3章】

    この記事は、

    マガジン『子どもに必要なことは、すべて習字が教えてくれた』です。全8回、連載完結しております。

    ※この連載はnote創作大賞2026にエントリーしています。プロローグから最終章まで、全8回を公開中です。

    最初から読む方はこちら↓からどうぞ。

    習字の真の効果、その3つ目のお話です。

    第3章:「とめ・はね・はらい」は、物事を最後までやり遂げる練習だった

    ◯決まりごとを守る、ということ

    習字には決まりごとがあります。それは、文字の書き方を守ること。

    止めるところは、きちんと止める。
    はねるところは、きちんとはねる。
    払うところは、きちんと払う。

    たったこれだけのことです。当たり前。でもこれが、意外と難しい。

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    子どもたちを見ていると、止めるべきところを払ってしまったり、出すべき線を出さなかったり、長く書くべき線を短く書いてしまったりします。

    「とめ・はね・払い」を守ることは、お手本から必要な情報を見つける第一歩です。

    これをしっかりと守れるか・守れないか、ここがスタートになります。

    「決められたことを、しっかりとできるのか?」
    「決まっているルールを守れるか?」
    ここが試されている。

    この基本スタンスは、勉強にもスポーツにも当てはまります。

    勉強でいうと、

    「ここは、この順番で進めていきますよ」というルールがあったとしたら、それを守って進めないと正解にはたどり着かない。 

    スポーツでも、

    「こことここは力を抜く。ここでは力を入れる。」というようなことを、忠実にひとつひとつやっていける人だけが上達する。

    勉強もスポーツも、自己流を押し通す人は進歩しません。基本に忠実に、テキストに忠実に。

    習字では、このようなさまざまなルールや決まり事が、室内で、テーブルの上で完結する。じつに分かりやすい。

    そして子供たちは、まだまだ成長途中。

    ◯答えを見ていいのは習字だけ!

    習字でも「お手本を、見ているようで見ていない」という状態がよくあります。

    「お手本見てないね?」と言うと、子どもは「見てるよー!だって同じ字だよー!」と返してきます。

    習字を始めたばかりの子どもは、まだまだ「同じ字を書けばいいんでしょ?知ってるよ!」と思っています。

    でも習字で言う「同じ字を書く」というのは、

    字の大きさも、
    線の長短も、
    背の高さも、

    全てが同じということなんです。子どもがそこに気づくまでには少し時間がかかります。

    私が子どもたちによく言う言葉があります。

    「答えを見て書いていいのは習字だけだよ!」

    学校の勉強の中でも、答えを見ながらやっていいのは習字だけです。それなのに子どもたちは、隣に置いてある「答え」をなかなか見てくれません。

    どうすればお手本に意識を向けさせられるか。それが私の腕の見せどころ。

    「ここは止めるのかな?払うのかな?お手本はどうなってる?」
    「この線は長いかな?短いかな?」

    これも、れっきとした「決まりごと」。

    私が繰り返し「お手本見てる?」と聞くのは、べつに怒っているのではありません。とことん確認させているのです。なぜなら文字の書き方の決まりごとは守らなければいけないから。

    自分の思い込みで、書き方を自分勝手に変えてはいけないから。

    書き方が分からないところを、ひとつひとつお手本で確認しているか?答えはいつもお手本の中にあります。

    ◯「山」という単純な文字の中にも

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    例えば「山」という字。画数も少なくて、誰でも知っている字です。

    でも実際に筆で書いてみると、お手本を見ている子どもはちょっと困った顔をします。

    「あれ、なんか違う。」

    そうなんです。簡単そうに見えても、気をつけるポイントは何個もある。線の長さ、角度、止め方。たった一文字に、たくさんのことが詰まっています。

    この、「あれ、なんか違うかも……?」という発見が、「お手本を見る」ということを身につけさせます。

    自分はそれまで決まりごとを守って書いているつもりだったでしょう。でも、まだ守っていないところがあることに、だんだんと気付く。

    そして習字にハマっていく。このように奥が深いから、続けられる。

    訓練を重ね“見るレベル”が上がると、お手本で、同じ線を見てもたくさんのことに気付きます。

    習字をやったことのない人は、書きあがったお手本のきれいな文字を見て「きれいな字だな」で終わります。

    でもある程度、習字をやってきた人は違います。

    「ここで筆が止まったな」
    「ここで力が抜けた」
    「ここで筆を動かす速度が変わってるな」

    と分析をはじめる。細部まで読めてしまう。線の解像度が上がるんです。

    ◯お手本を、見る子/見ない子

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    私は指導者として、子どもたちが書く文字を何千回と見てきました。

    子どもが書く、

    「お手本を見ないで、自分で覚えた形で書いた文字」と、

    「なんとかお手本に近づけようとして苦労して書いている文字」では、

    私にははっきりと見分けがつきます。

    お手本を無視して書く子どもは、習字が単なる「作業」になりがちです。早く終わらせたくて仕方ない。「ほら、同じ字を書いてるでしょ?」という顔をして持ってきます。

    一方、お手本を一生懸命見て書いた子どもは、書くのに時間がかかります。でも書き終わった後が違います。

    「ここがちょっとおかしくなっちゃった。」
    「ここ失敗しちゃったんだよ。」

    自分で分析して、自分から私に教えてくれるんです。

    自分の失敗を自分から言える子どもは精神年齢が高いです。そしてこういう言葉が出てくるということは、お手本と自分の字をちゃんと比べられているということです。見る力がついてきた証拠です。

    入会したばかりのころは「同じ字を書いたでしょ?」という顔をして持ってきていた子が、

    だんだんと「ここ失敗しちゃったんだよ」と言えるようになる。これは「見る力」が確実に育っています。

    ◯花丸を付けながら、かける言葉は

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    「ここは気をつけられたね。」
    「ここもできたね。」
    「さっきと変わったね。」

    私は子どもと一緒に確かめながら花丸をつけていきます。子どもが書いた文字の、線の1本でもよければ、その線に花丸をつける。

    「この線はできているけど、この線はできていない」と、良い線と悪い線を区別し、子どもと一緒に確認することで、子どもの自尊心は損なわずに間違いを指摘できます。これは私の添削のテクニックの一つですね。

    お手本を見る力は、習字だけで使う力ではありません。手本を見て、真似て、近づけていく。それは勉強でも、スポーツでも、人間関係でも、すべての学びの基本です。

    これを小さいうちから習字で身につけてほしい。

    決められたことを、決められた通りに最後までやり抜く。たった一枚の半紙の上で、子どもたちはその練習を、毎回繰り返しています。

    次は第4章「手を動かすことは、脳を動かすことだった」です。

    ↓どうぞご覧くださいm(_ _)m


     
     
    書家・東海林龍文|しょうじ書道教室 主宰/1980年創業&2代目・秋田市3教場|累積700人以上を指導|習字は「和製モンテッソーリ」、文字をきれいにするだけじゃない|秋田県美術展 特賞受賞|NHK秋田取材|手本年間2000枚|二児の父

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