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【連載 #4】習字って、文字をきれいにするだけじゃない。【第4章】

    この記事は、

    マガジン『子どもに必要なことは、すべて習字が教えてくれた』です。全8回、連載完結しております。

    ※この連載はnote創作大賞2026にエントリーしています。プロローグから最終章まで、全8回を公開中です。

    最初から読む方はこちら↓からどうぞ。

    習字の真の効果、その4つ目のお話です。

    第4章:手を動かすことは、脳を動かすことだった

    ◯手は第二の脳

    「手は第二の脳」という言葉を聞いたことがありますか?これは比喩ではありません。ちゃんと脳科学の研究が裏付けています。

    カナダの脳神経外科医ペンフィールドは「ホムンクルス」と呼ばれる脳の地図を作りました。

    その"脳の地図"では、手と指が、身体の他の部位と比べて異常に大きく描かれていました。手と指から受け取る刺激が脳にとって大半を占めていることを表しています。

    つまり手と指を動かすことは、脳の非常に広い領域を使うことと同じということなのです。手を動かせば動かすほど、脳はたくさん刺激され、よく働くのです。

    習字は、その手と指を徹底的に使う習い事です。

    ◯筆は、力の加減を教えてくれる

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    筆というのは、面白い道具です。

    太い線も細い線も、同じ1本の筆で書くことができます。力を入れれば太くなる。力を抜けば細くなる。同じ1本の筆で太さが自由自在になる。

    最初のうち、子どもたちは指先をうまく使えません。力の加減がわからない。

    でも習字で繰り返し筆を使っているうちに、だんだんと力加減を覚えて、指先を使えるようになってきます。

    そしてさらに「脱力すること」も覚えていきます。

    ギュッと力を入れることは比較的簡単で、誰でもできることです。しかし力を抜くことが難しい。

    この、脱力することを覚えるのは習字ならではだと思っています。

    ◯結果が見えなくても、効いている

    器用な子は、線の変化が目に見えてわかります。最初はぐにゃぐにゃで不安定だった線が、数回の練習で少しずつ安定してくる。

    でも器用でない子もいて、なかなかうまくいかないこともあります。こういう子どもは変化が見えにくい。だからといって効果がないわけではありません。

    小学生前後の子どもというのは、かなり個人差の大きい時期なので、上達が早い子・遅い子、これは必ず出てきます。

    時間がかかっても、習字で指先をどんどん使っていれば、だんだんと力加減を理解して様々な太さの線を安定して書くことができるようになってきます。

    そして面白いことに、低学年のころはなかなか上達の見えなかった子が、小6や中学生になると急に上手くなるということも、よく見られます。

    それまでの積み重ねが身体の成長とともに一気に花開く瞬間です。積み重ねてきたものが外側に現れてくる。

    こういうことがままあるので、習字は、すぐに結果が出なくても続けてほしいものです。

    ◯我慢する力も、ここで育つ

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    手を使う細かい作業や、目の前のことに集中して取り組む活動は、子どもの脳の発達にとても良いと言われています。

    これは幼児教育ではおなじみの内容ですが、習字はまさにその両方を同時にやっています。

    あくまで私の推測ですが、小さい頃から続けてきた力加減の訓練により手指の巧緻性も上がり、微細な運動能力を高める。

    年齢とともに前頭前野は自然と発達もしていきますが、これがさらに筆の扱いにより、よりよく前頭前野が刺激され、健全な発達を促す。

    これが子どもたちの感情のコントロールにも良い影響を与えているのではないでしょうか。

    前頭前野が健全に発達すると、「自分がやりたいことを我慢し、やらなければいけないことを優先する」ということもできてきます。

    やりたいことを我慢して、やるべきことに向き合う。その力が、高学年になるにつれて育ってくる。習字の繊細な筆の扱いが、子どもの成長を静かに後押ししているのだと思います。

    ◯「手で見る」という感覚

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    筆を持つと、いろんな感触が手に伝わってきます。

    紙の凹凸。墨の含んだ筆の重さ。筆先が紙に触れた瞬間の紙の抵抗。

    これは目で見ているのではありません。手が感じ取っているんです。私はこれを「手で見る」と呼んでいます。

    視覚ではなく触覚による感知。筆から伝わる情報を手がリアルタイムで読み取っている。その繊細なフィードバックを受け取りながら次の一画を決めていく。

    習字とは、手で考える行為なのかもしれません。

    ◯習字は「和製モンテッソーリ」だった

    実は、モンテッソーリ教育やシュタイナー教育をご存知の方はピンとくるかもしれません。

    モンテッソーリ教育が大切にしているのは、計画する力、空間認識、手指の巧緻性、力加減、そして手本の再現。

    シュタイナー教育でいえば、空間感覚やフォルメン的思考と呼ばれるものです。どちらも、それぞれ専用の教具を使って育てようとしている力です。

    習字にはそれらの要素がふんだんに入っています。

    書き順を考える。
    文字の大きさを計算する。
    紙面全体を計算し、先回りして配置する。

    たった一枚の半紙の上で、これだけのことを同時にやっています。

    言ってみれば、習字は『和製モンテッソーリ』なのです。

    海外から輸入した教育メソッドが注目される一方で、

    日本には江戸時代の寺子屋の頃から、すでにそれと同じことをやってきていた。ただ、それがこれまでは言葉にされてこなかった。私はこのメリットを言語化したい。

    ◯指先を使う機会が、消えていく時代に

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    昔の子どもたちは、日常の中で自然に指先を使っていました。

    塗り絵、点つなぎ、迷路、お絵かき。そういった遊びが、指先のトレーニングになっていました。

    でも今の子どもたちは、タブレットやスマホに慣れています。画面をなぞるだけの単純な動き。細かく指を動かす必要がありません。現代は、気づかないうちに指先を使う機会が減ってきています。

    習字は、その失われた機会を補うことができます。

    筆を持ち、紙に向かい、線を引く。たったそれだけのことが、脳の広い領域を刺激し、指先の感覚を育て、身体全体の使い方を覚えさせてくれます。

    昔ながらのアナログな習い事こそが、現代の子どもたちに必要だった。その理由がここにあると思っています。

    手を動かすことは脳を動かすことです。そしてその積み重ねが、子どもの集中力・忍耐力・観察力を育てていきます。これが習字の強みなのです。

    ちなみにいくつになっても、これらのメリットは享受できるそうです。大人のみなさんのアンチエイジングにもおすすめです。

    次は第5章「時間をかけることは、むしろぜいたくなことだった」です。

    ↓どうぞご覧くださいm(_ _)m


     
     
    書家・東海林龍文|しょうじ書道教室 主宰/1980年創業&2代目・秋田市3教場|累積700人以上を指導|習字は「和製モンテッソーリ」、文字をきれいにするだけじゃない|秋田県美術展 特賞受賞|NHK秋田取材|手本年間2000枚|二児の父

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