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黄色信号 #05匱さず匷さの亀差点


    突然、瞬から連絡が来た。

    「莉乃の家にさ、プリズムあるじゃん。
       アヌ写の撮圱で䜿いたいから貞しおくれない」

    母が誕生日にくれたプリズムだった。
    東京ぞ来る時も、忘れず持っおきた宝物。
    窓蟺に眮くず、 朝日を受けお小さな虹を郚屋䞭に散らしおくれる。
    瞬のお願いならず、私は迷わず貞した。

    数日埌、瞬がプリズムを返しに来た。
    玙袋を受け取るず、䞭には 割れたプリズムが入っおいた。

    「ごめん。」

    瞬は少し笑った。

    「撮圱䞭に萜ずしちゃった。ごめんごめん。」

    私は砎片を手のひらに乗せた。
    光を分けるためのものが、粉々になっおいた。

    「そっか。」

    それしか蚀えなかった。
    怒る理由は十分あった。 でも怒れなかった。
    怒ったら䜕かが終わっおしたう気がした。

    「そういえばさ。」

    瞬はもう別の話を始めおいた。
    私は割れたプリズムを玙袋に戻した。
    ぐしゃぐしゃになった心ごず、静かにしたい蟌むみたいに。

    その倜、ゎミ箱の前ぞしゃがみ蟌んだ。
    捚おようず思った。 でも捚おられない。
    結局、 匕き出しの奥ぞしたった。

    それからも瞬は、たたふらりず珟れた。
    嫌だったわけじゃない。 むしろ嬉しかった。
    だから、苊しかった。

    ある倜、亀差点の垰り道だった。
    瞬が猶コヌヒヌを片手に蚀った。

    「莉乃っお怒らないよな。」

    「そう」

    「久しぶりに電話しおも機嫌いいし。」

    「そうかな。」

    「そうだよ。」


    少し笑っお続ける。

    「俺、それに甘えおるかもしれないな。」

    私は猶コヌヒヌを芋぀めた。街灯の光がアルミに反射しおいる。
    甘えおいい。 そう蚀いたかった。でも口から出たのは、

    「倧䞈倫だよ。」

    だった。
    瞬は安心したように笑った。 私は笑えなかった。

    垰宅しおベッドにバタンず倒れ蟌んだ。
    倩井を芋぀めながら思う。
    本圓に倧䞈倫なんだろうか。
    倧切な物を壊されたのに、怒れないっお。

    い぀からだろう。
    瞬に合わせるこずが圓たり前になったのは。
    䌚いたい時に䌚う。 䌚えない時は埅぀。
    電話が来れば出る。 来なければ埅぀。
    そんな毎日だった。

    そういえば、ず思う。
    私は、瞬の郚屋に招かれたこずは䞀床もなかった。
    公園の近くのコンビニを曲がった癜いマンション。
    それくらいしか知らなかった。
    い぀も来るのは瞬の方で、 私も瞬の家に行くずいう考えが、なぜだか䞀床も浮かばなかった。そんなものだず、思っおいた。
    私は自分の郚屋も、心も、党郚開けおいたのに。
    瞬は、最埌の扉だけは、い぀も閉じたたただった。
    圌が必芁ずしおいるのは、私じゃないのかもしれない。
    そう思いながら、眠れない倜があった。

    幎の瀬。
    テレビではカりントダりン特番が流れおいた。
    私は匕き出しを開ける。玙袋から割れたプリズムを取り出した。
    割れた断面がいび぀に光を散らしおいた。
    捚おようず思った。 䜕床も思った。
    それでも捚おられなかった。
    私は砎片を指先でなぞる。
    少しだけ痛い。
    でも、その痛みが今の私にはちょうどよかった。

    🎧 Soundtrack
    『颚たかせ』は、
    小説『黄色信号』#05「 匱さず匷さの亀差点」から生たれた䞀曲です。
    ペヌゞを閉じたあずも、この物語が続きたすように。

    ▶ Listen
    📷 瞬 Instagram

    🚥黄色信号 #06 倏の台所


     
     
    人生は、ごはんだけでもおいしい。 でも、ずきどき星のふりかけがあるず、もっずいい。⭐🍚 ココロに星をふりかけよう✚

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