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芋出し画像

『キャンパスを通しお圌を想う』#2 æ··è¿·

    第二話 混迷

     䞀匥ず玄束しおから1ヶ月経ずうずしおいたが、叶芜は絵が䞊手く描けずにいた。
     䞊手く描けないずいっおも絵自䜓は、矎術郚や家で描いおいるので、完成した絵もたくさんあるのだが、なんか違うず思っおしたう。
     衚面䞊は矎しく芋えるが、その奥は䜕もない空掞のようなもの。
     それが分かっおいるから、描けば描くほど、自分が䜕もないず突き぀けられおいるような感芚になっおいた。
     前に笹川が教えおくれた「自分の絵」がずっず頭の䞭にあるが、それがわからない時はどうしたらいいのか。
     その答えは、ただ芋぀からなかった。
     せっかく、䞀匥が䞀緒に芞術倧孊に行こうず蚀っおくれたのに。
     がんばるず玄束した。けれど今の自分は、自分自身のこずや絵のこずも分からない。それがひどく滑皜だった。
     叶芜は芖線を䌏せ、静かに息を吐いた。
     目の前には矎術宀のドアがある。
     そのドアを開けるず、午埌の日差しが郚宀を照らしおいる。
     今日は土曜日で、郚宀には誰もいない。
     静たり返った郚宀には、備品が綺麗に䞊べられおいた。郚宀に入るず絵の具や朚炭の匂いが肺の奥たで満ちおいく。匵り詰めおいた感情が、静かにほどけおいった。
     叶芜はふいに矎術郚の掲瀺板に目が留たった。
     䞀匥の䜜品写真の暪に『県代衚・党囜総文化祭出品』の札が添えられおいる。
     そこに映っおいたのは、息を呑むほど完成されたデッサンだった。
     線に迷いはなく、繊现な陰圱が静かに立䜓を浮かび䞊がらせおいる。
     正確なだけじゃない。そこには、䞀匥にしか描けない空気があった。
    「なんで  こんなに矎しい絵が描けるの」
     目が離せない。たるで、この絵に匕き寄せられおいくみたいだった。
     叶芜は小さく息を呑む。
     圧倒的な存圚感を攟぀その絵は、自分ずはたるで違う堎所にあるものだず嫌でも思い知らされる。
     叶芜は芖線を萜ずし、重い足取りで自分の垭ぞ向かった。静かな音を立おながら、むヌれルを準備する。
     自分のカバンから出したスケッチブックを立おかけお、描きかけのデッサンを開いお描こうずするが、指先が重かった。
     䞀匥の絵のように構図を芋お、正確に完璧にしようずするが、䞊手くいかない。陰圱はもちろん、構図の捉え方も未熟すぎお、絵が歪んでいるように芋えた。
    「なんで  うたく、綺麗に描けないの」
     叶芜は持っおいた鉛筆で、行き堎のない感情を吐き出すように塗り朰した。
     やがお手が止たり、深く息を吐いた。
     芖線を萜ずした先には、黒く朰れた鉛筆の跡だけが残っおいた。
    「なんだか、私みたい」
     耐えきれず蚀葉が挏れた。
     真っ黒に塗り朰された絵は、叶芜の醜い心を投圱しおいるかのようだった。
     䜕もできない自分。
     奜きな絵も分からない。
     自分自身も分からない。
     䞀匥に察しお尊敬の気持ちを持぀䞀方で、突き離されるかのような焊りず䞍安。
     圌ずの玄束は叶いそうにない。
     心の光が消えおいくようだった。
     スケッチブックを手に取り、前のペヌゞを芋るが、どのデッサンも違和感が匷く、コンクヌルには出せそうにもない。
     このスケッチブックは䞻に家で描いおいる物で、矎術郚の掻動では描かないような絵を描いおいる。前は、䞋校の時に芋た倕焌けや出かけた公園の颚景のように自由に描くこずが倚かった。
     でも、今はデッサンばかりだ。
     圌の䜜品を芋お、自分も同じ倧孊に行けるように緎習しおいたが、その努力は埒劎に終わりそうだ。
     こんなこずではダメだず思うけど、どうしたらいいのか分からない。叶芜は考えの沌にはたっお抜け出せないようだった。
    「  久遠さん、倧䞈倫」
     いきなり背埌から聞こえた声。
     聞き芚えのある、冷静で萜ち着いたその声に叶芜は振り返った。
    「  埡圱くん」
     様子を窺うように芋぀めおいる圌ず自然ず目があった。
     圌に芋られたくなかった。
     そう思った瞬間、反射的にスケッチブックを閉じおいた。
    「埡圱くんも、絵を描きにきたの」
     なんでもないように笑顔になるが、顔が匕き攣っおいる気がした。こんな䜕気ないこずでもうたくいかない自分が嫌だった。
    「  倧䞈倫傷぀いた顔をしおいるよ」
     心配そうにしおいる䞀匥の蚀葉に叶芜は思わず目を芋匵った。
     芋透かされたようで、胞に熱い思いが蟌み䞊げおくる。目も最んでくるので、顔を背けた。
     圌にだけは情けない姿を芋せたくないのに、思うようにいかない。
     本圓に自分の未熟さが苊しかった。
    「はい」
    「え」
     そう蚀っお、䞀匥はハンカチを出しおくれた。
     叶芜はハンカチず䞀匥に芖線を䜕床も移しながら、静かに受け取った。
    「ありがずう」
    「  どういたしたしお」
     䞀匥は、わずかに口角を䞊げるが、すぐに自分の怅子ずむヌれルを準備しおいる。圌が準備した堎所はい぀もず同じ叶芜の隣だ。
     その䜕気ない行動だけで、胞の奥がじんわりず枩かくなった。
     もうさっきたで蟌み䞊げおいたマむナスの感情がきれいに消え倱せおいた。それは、䞀匥のおかげだず思う。
     圌の存圚は、叶芜の感情をいろんな方向に連れおいく。いいこずも悪いこずも。
     でも決しお嫌ではなかった。
     叶芜はもらったハンカチを少し握りしめおいたが、ポケットにしたった。圌の奜意を無駄にしたくなかったから。
    「ずころで、久遠さんの絵芋おダメかな」
    「え」
     䞀匥の方を芋るず、芖線が合う。迷いのない県差しから芖線を逞らせない。
     叶芜が背䞭に隠しおいたスケッチブックは、䞀匥にはすぐにバレおしたっおいたのだろう。叶芜はスケッチブックを震える手で䞀匥に枡した。
    「  ごめん。かなり䞋手なの、だから  」
     次の蚀葉は続かない。
     嫌われたくなかった。
     圌にだけは、自分の絵を吊定しおほしくなかった。
    「  君の絵を芋お、䞋手だず思ったこずは䞀床もないよ」
    「え」
     俯いおいた叶芜には、その蚀葉がうたく聞き取れなかった。
     顔を䞊げるず、䞀匥は穏やかな県差しでこちらを芋぀めおいた。
    「倧䞈倫」
     ゆっくり頷いた圌を芋るず、匵り詰めおいた気持ちが緩む。
     叶芜の様子を芋おから、䞀匥はスケッチブックを開いおいた。静かに1枚1枚芋おいる。その様子を芋おいた叶芜は、萜ち着かない気持ちになった。
     窺うように䞀匥を芋るず真剣に芋おいる。圌の姿をじっず芋぀めおいるず、ふず芖線が合った。
    「ありがずう」
    「うん、あの  」
     スケッチブックを受け取り、芖線が圷埚った。
     党囜に行く圌の意芋が知りたかった。でも同時に自分の絵がなんでもない存圚だず知るのは勇気がでなかった。
     叶芜はどう反応したらいいのかわからず、挙動䞍審になっおいた。
    「久遠さん、奜きなものは䜕」
     唐突に䞀匥が、叶芜に向き合った。
    「奜きなもの」
    「うん、デッサンもいいけど、本圓に君が奜きなものを描いおみたらその方が君に合っおいるず思うよ」
    自分の奜きなもの  
     自問自答しおみおも、答えは出なかった。
    「もしかしお、分からない」
     考え蟌むように芖線を萜ずす叶芜に、䞀匥は小さく銖を傟げた。
    「  君は他人の評䟡なんお気にしなくおいい」
    「え」
    「間違っおいたらごめん」
     䞀匥は、静かに呌吞を敎えおから、顔を䞊げた叶芜ず芖線を合わせた。
    「矎術展の結果を聞いお、君の絵に力みが出おいる気がする」
    「――っ」
     䞀瞬息が止たった。
     䞀匥の蚀う通りだったからだ。
     矎術展の結果がずっず頭に残っおいる。
     結果が良くなかったから䜙蚈に、もっず評䟡される絵を描かないずいけないず思った。
     䞀匥には隠せない気がしお、叶芜は小さく芖線を萜ずした。頬が熱い。
    「評䟡なんお関係ない」
     その蚀葉を聞いお、䞀匥を芋た。
     圌の瞳が、ずおも柄んでいお矎しい。そしお、䞀切の迷いがない。
    「君の絵は、心に残る絵だから、君が奜きな絵を描けばいい」
     静かに目を现めた圌の蚀葉に、停りはなかった。
     予想もしなかった蚀葉に、叶芜は息を止めた。
    「  私は奜きな絵がただ分からないの」
     震える声を振り絞るように話した蚀葉は、ちゃんず圌に届いた。
    「俺もただ分からないよ」
    「え」
    「偉そうなこず蚀ったけど、俺はそこにあるものをただ描いおるだけだから」
     困ったように少し曖昧に笑っお肩をすくめた䞀匥に叶芜は目を芋開いた。
    「俺の絵は自分の奜き嫌いで描いおいない。でも、君の絵は違う。絵の䞭にちゃんず感情がある。だから、奜きなものを芋぀けおほしい。  そうするず君の絵は茝くから」
    「本圓」
    「ああ。絶察。奜きなものがなかったら、描きやすいこずずかなんでもいいから描いおみるずいいよ。奜きなものなんお、やらないず分からないから」
     圌の珍しい笑みは茝いおいた。
     圌の蚀葉は、叶芜の心を救っおくれおいた。
    「  ありがずう。ただ分からないけど、やっおみるね」
    「うん」
     もう普段通りの圌に戻ったが、構わなかった。
    「  埡圱くん、たた絵の盞談しおも  いい」
    「俺でいいなら、い぀でも」
     圌も叶芜の衚情を芋お、雰囲気が和らいでいる。
     それを芋お、叶芜も嬉しかった。
     矎術郚の郚宀は、優しい日差しが包みこんでいた。

    #創䜜倧賞2026
    #恋愛小説郚門


    あずがき

    ここたで物語を読んでくださりありがずうございたす。
    叶芜の葛藀を衚珟できおいたら嬉しいです。


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    「再生」「垌望」「心の光」をテヌマに、キャラクタヌの心情を倧切にしながら物語を曞いおいたす。 第33回電撃小説倧賞2䜜品、note創䜜倧賞2026恋愛郚門応募枈み。 珟圚は来幎の新人賞に向けた新䜜執筆に集䞭するため曎新䌑止䞭。 読んだ方の心に小さな光を届けられたすように。

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