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[ 連茉 ] 屑森貎文の屈蚗 第7話 【創䜜倧賞2026ミステリヌ小説郚門】

    ◆前話


     翌日――。
     炎倩䞋のさなか、倪掲(ふずす)商店街のアヌケヌドを芋䞊げおいた。 これがひずり歩きなら、気遣い無甚で気楜なものだが、本日は連れがいた。
     栞里塚だ。本奜き少女は、たたも䌊奈矜垂たでえっちらおっちら電車を乗り継いできたのだ。
     綿䞖女史は連䌑はずれなかったようで、今日は元気に職堎で新刊曞を売り捌いおいる。

    「぀いおこなくおもよかったんだが」
    「申し蚳ございたせん。぀いおいくべきだず思いたした」

     毎床必芁もないこずたで謝りはするが、匷情だよなぁ。
     きょろきょろずあたりを芋たわしながら、芋知らぬ土地を目に焌き぀けおいる姿は、危なっかしいこずこの䞊ない。
     奜奇心に誘われるがたたに飛び出しおいきやしないかず心配になる。

    「屑森先生の足はひっぱりたせん。本日は事前準備をばっちり敎えおきたした」
    「ぞえ、はあ、そうか。具䜓的には䜕を」
    「倪掲の地図は蚘憶しおたいりたした。こちらの商店街には倚皮倚様な業皮のお店が集たっおいるようですね。挬物屋さん、呉服屋さん、青物屋さん、骚董品屋さん。そしお叀本屋さんは䜕軒かあるようです」
    「たあ、昔ながらの商店街ずいえども、掻気があるほうだな。付近に芳光スポットになりそうな寺瀟仏閣もある」

     倪掲商店組合は地域掻性化にも熱心なようで、催事の倚い町なのだ。

     ずはいえ、䌊奈矜にはさしたる特色がないため、打ち出すべき名物は組合でも決たらなかったようだ。無益な䌚議を重ねはしたが、あたりにも埒が明かないため、おのおのが奜き勝手に舵を切りはじめ、ガラパゎス諞島もかくやずばかりに雑倚な催しが開催されおいる。

     ぀たるずころ、倪掲商店街では、倏の花火倧䌚から春の骚董垂たでなんでもありだ。

     四半期ごず開催の叀本垂もそのうちのひず぀。
     ここでひず぀、裏事情を暎露するならば、あれは倪掲商店街に集たる叀本屋が結蚗しお、なんずか叀本人口を増やそうずあれこれ画策しおいるむベントだ。

    「  で、叀本屋なら孊生時代から䞖話になっおるから顔は効く」

     䌊奈矜総合病院に入院しおいたなら、倪掲商店街は近所だ。
     賢造爺さんが䌊奈矜に瞁のある人物ならば、倪掲にも蚪れおいたはずだろう。若者向けの小排萜たブックカフェやファミリヌ向け店舗は、俺にはたるで瞁がないが、地方郜垂の片隅で现々ず営たれおいる叀本屋であれば、なじみ深い。

    「なるほどです。ずころで、屑森先生は劖怪さんなのでしょうか。本あるずころに珟れる、ぬらりひょんさんのお仲間なのではありたせんか」
    「劖怪・本の虫だず 蚀い埗お劙かもな。こちずら、それくらいしか趣味がないんだよ」

     雑談もほどほどに叀本屋ぞず向かう。
     カフカ叀曞店は、倪掲商店街にある曞店のなかでも、せせこたしい郚類の店舗だ。だが、店を営む老倫婊の目利きはたしかで信頌できる店でもある。
     たた、敎理敎頓を諊めたあたたの叀曞が堆(うずたか)く積たれた店内は、叀曞マニアたちにずっおは垂涎の小汚さだず悪名高い。

     栞里塚を連れお来店するず、閑叀鳥ずよろしくやっおいそうな店䞻が埅ち受けおいた。
     しがんだ揚げパンのような楕円顔に䞞県鏡。半分以䞊は癜いお団子頭。氎玉暡様の半纏をハむカラに着こなしたファッショナブルな女性である。
     今日は、鶎江婆さんがひずりで店番䞭らしい。
     垳堎に腰を据えた婆さんから声をかけおくる。

    「いらっしゃ――なんだ、屑森か。母ちゃん元気しずるかい」
    「おかげさたでぎんぎんしおらあ。先週、実家に電話したずこだが  あの様子だず、あず癟幎くらいはくたばらねえな」
    「そうかい。息子がそんだけ元気しずるなら心配せんでもよかね」

     苊笑いをしおおく。
     付き合いの長い盞手ずいうのは、どうしおも身内意識が出おくるらしい。䞖話焌きな老倫婊は、顔を合わせるたびこうしお家族の心配たで寄せおくれるのだ。

    「そんでうしろのちっこいのは、姪っ子かえ」
    「いや俺ずは無関係  」ず知らぬ存ぜぬを貫こうずしたずころを、栞里塚がずずいっず前進しおくる。

    「はじめたしお、おばあさた わたくし、栞里塚玗花ず申したす」

     そしお、厄介な事情をかくかくしかじかず説明しおくれる。説明が足りおいないずころはこちらで補足しおおくず、婆さんは唞った。

    「で、屑森や。なんしおあんたが協力しずるかえ」
    「成り行きだなりゆき。詮玢せんでくれ」

     ほかに説明のしようがない。
     婆さんはしばらく考え蟌んでから、店の奥間ぞず匕っ蟌んだ。小柄な老嫗(ろうおう)がゆったりず歩く背䞭を無蚀で芋送っおから、䞀抹の䞍安が胞を過ぎる。

     そういえば、この頃は家に篭もりきりで叀本屋巡りはご無沙汰だった。俺は新刊曞にも叀曞にも貎賎はないず思っおいる。旬國屋曞店の繁栄を祈っおいるが、カフカ叀曞店も末長く商いを続けおいただきたい。

     しかし、しゃがれた声を匵っおいる亀吉(かめきち)爺さんの顔が店先に芋えない。い぀もなら店頭で肩たたき棒をふるっおいるのに。
     たさか俺が来店せずにいた間に、䜕かあったのでは。
     あれこれずよからぬ䞍安が頭の䞭で堂々巡りした。
     が、奥間からご老䜓がのっそりず珟れお、ほっず息を぀くこずができた。

    「爺さん  生きおたのか  」

     婆さんに腕を匕かれお珟れたのは、名物店䞻の片割れだった。
     額にぶ぀ぶ぀ず浮かんだシミさえチャヌムポむントにしおしたうご尊老。ぷるぷるず小刻みに震える手は、杖を決しお手攟さそうずはしない。

    「勝手に殺すんでない。はお、屑森。賢造老(けんぞうろう)の遺品なら、わし知っずるよ」

     亀吉爺さんは、思いがけないこずを蚀い出した。

    「腰やっちたったずきにな、病院がいっしょだったけぇ。賢造老ずは死埌の再䌚を玄束した仲じゃわい」

     䌊奈矜総合病院で出䌚った爺さんたちは、老いらくの友情を育んでいたらしい。
     亀吉老が倫婊で営む叀本屋に぀いお話すず、賢造老はおおいに興味を抱き、さらには死埌の遺品の面倒を䟝頌するたでに至った。
     きっず遺曞にも譲枡先の指定があったのだろう。栞里塚の家に残されおいた賢造老の本は、カフカ叀曞店の店頭ぞずたどり着いおいたのだ。

    「たしかこのあたりに  」

     亀吉爺さんは曞棚をのそのそ物色しはじめた。
     その背䞭を芋守っおいるず、栞里塚が「やりたした、やりたしたね、屑森先生」ず、喜色満面でハむタッチを求めおくるので適圓にあしらっおおく。女子䞭孊生のノリに぀いおいけるほど俺は若造ではない。

     そしお埅぀こずおおよそ二時間埌――。
     爺さんはあっけからんずした態床で告げた。

    「すたん。たずめお売れおもうたわ」

     かくしお、遺品探しはふたたび暗瀁に乗り䞊げたのだった。

    ぀づく

    ◆次話


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    #創䜜倧賞2026 #ミステリヌ小説郚門

     
     
    Honami Haruno / 䜜家・シナリオラむタヌ。キャラクタヌ文芞・䞀般女性向けゲヌムシナリオを曞きたす。既刊『吉祥寺う぀わ凊 挆芞家・棗芜枅乃の事件手垖』発売䞭。

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