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誰かの舟を少し押す|「助けて」と言えることも自立のひとつ|船頭の道しるべ#9


はじめに|「人に迷惑をかけたくない」と思ってしまう


自分も日々の生活の中で浮かぶ考えです。

・仕事で分からないことがあっても、自分でなんとかしようとする。

・家事や育児がしんどくても、「これくらい自分でやらないと」と抱え込む。

・誰かに相談したいことがあっても、「相手も忙しいだろう」と飲み込んでしまう。

背景には

「人に頼る=迷惑をかける」

という感覚があるのではないかと思います。


今回の「舟の語り#9」では、船頭の舟が
壊れました。

なんでもできそうな船頭ですら、
自分では直せない。

だから船大工に頼る。

「人は一人では生きられない」と言葉にすると当たり前のようですが、実際に誰かに頼るとなると、案外難しいものです。

今回は、そんな「頼ること」について考えてみます。



1|「自分でできることは、自分で」は悪いことではない


まず、

自分で考える

自分で動く

人任せにしない

自分の責任を引き受ける

これはとても大切です。

ただ問題なのは、

「自分でできることは自分で」が、
「自分で全部やらなければならない」に
変わったとき。


舟で言えば、

自分で櫂を持つことと、舟が壊れても一人で直そうとすることは別です。


2|船頭にも「できないこと」があった

船頭は、舟を漕げる。

湖の流れを読める。

人に道を示すこともできる。


一方、船大工は舟を直せる。

しかし舟を漕ぐのは苦手。

船頭には船頭の役割があり、船大工には船大工の役割があります。

できないことがあるのは、能力が足りないからではなく、担っている役割が違うからなのかもしれません。

だからこそ、自分にできないことを誰かに任せるのは、弱さではありません。


3|助けてもらうことは「借りを作ること」なのか


「頼ったら返さなければ」

「助けてもらったら申し訳ない」

こう考える方は多いと思います。

物語では、

昔、船頭が船大工を助けた。

今回は船大工が船頭を助けた。

一見すると貸し借りに見える。


必ずしも、助けてもらった相手に直接返せるとは限りません。

でも、自分が助けてもらった経験があるからこそ、別の誰かに手を差し出せることがあります。

そうやって、受け取ったものが別の誰かへ巡っていくこともあるのだと思います。


4|人とのつながりは「縄」ではなく「網」

人とのつながりを一本の縄だと考えると、

自分――相手

という一対一の関係になります。

だから、

「迷惑をかけた」

「返さないと」

「借りができた」

と考えやすい。

けれど、人とのつながりを「網」と考えると、少し見え方が変わります。

誰かから受け取ったものが、別の誰かへ渡っていくこともある。

今日、自分を支えている糸が、明日は別の誰かを支えるかもしれません。


家族、友人、同僚、地域、専門家、知らない誰かまでつながっている。

私たちは一人の人だけに支えられて生きているわけではありません。

そして、

自分もまた、その網を作っている一本の糸です。


5|「助けて」と言えることも、自立の一つ


舟の語り#7では、

自分の舟は自分で漕ぐ。けれど一人ではない。

これをテーマに描きました。

今回の#9では

自分の舟を漕ぐからこそ、漕げないときには助けを求める。

と少し踏み込みました。



自立とは、

自分にできることを知る。

できないことも知る。

必要なときには、人に頼る。

自分は、それもまた「自分の舟を自分で漕ぐ」ということなのではないかと思います。


6|小さく頼る


大げさに「助けてください」と言わなくてもいい。

たとえば、

「ちょっと教えてもらえますか」

「今日は少し手伝ってもらえる?」

「これについてどう思う?」

「一人では整理できないから聞いてほしい」

くらいでも構いません。


そしてもう一つ。

誰かに頼られたときも、全部を背負う必要はありません。

誰かを助けるために、自分まで疲れ切ってしまう必要はない。

自分にできることだけを差し出す。

それは、舟の語り#5で触れた「自利利他」にもつながる考え方です。

舟の語り#5はコチラからどうぞ。
→空の水筒から、水は注げない舟の語り#5🐯🛶



まとめ|自分の舟だけで、海はできていない


一人で漕げる日はあります。

二人だけで進める日もあります。

けれど長い人生では、自分だけではどうにもならない日もきっとあります。

そんなとき、誰かの手を借りる。

そして自分に余裕がある日は、今度は誰かの舟を少し押す。

人とのつながりは、一本の縄ではなく、たくさんの糸でできた網なのかもしれません。

自分もまた、その一本です。


「あなたは最近、誰かに『助けて』と言えていますか?」


物語から読みたい方へ


今回のテーマは「舟の語り#9」で物語として描いています。

→人は一人では生きられない|舟の語り#9🐯🛶

自立については舟の語り#7でも描いています

→自分の舟は、自分で漕ぐ。でも、一人ではない|パートナーとの距離感|舟の語り#7🐯🛶


シリーズ全体はこちら。

→「人生の船頭|はじめての方へ」

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