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『“同類じゃん”と言われた日』― 航海四部作 番外編

    「どうせ、自分なんて」と思ってた。
    “あの人にはかなわない”―ずっと、そう思っていた。
    でも、あの日の親友のひとことが、静かに刺さった。


    誰にも見られない深夜の船底。
    潮の匂いが染みついた作業服のまま、僕はスマホを握っていた。

    電波は、時折ぷつぷつと途切れる。
    でも、不思議と“言葉”だけは、どこまでも届くような気がした。

    海の上で孤独に揺られながら、noteに想いを綴る。
    それはまるで、灯台のない海に向けて、ひとり灯りを投げるような作業だった。

    ―ある日、親友に言われた。

    「同類じゃん」

    そのひとことが、僕の人生を静かに変えていった。


    思えば、ジモティーで7年間「珍職交流会」を続けて全国1位に。
    noteでも3年間、ただ書き続けて―創作大賞・エッセイ部門の人気1位をいただいた。

    でもそれは、天才だったからじゃない。書いて、消して、また書いて。人に会って、断られて、また声をかけて。
    ―地味な努力の積み重ねだった。




    大学受験の模試で全国1位を常連でとり、旧司法試験にもほぼ独学で合格した親友がいる。

    超難関を突破した彼は、まるで“修行僧”のようだった。
    無駄を削ぎ落とし、ただひたすら勉強に集中するストイックな姿勢。

    でも、彼は決して孤高ではない。
    くだらない冗談で笑い合い、夜中にラーメンを語り合い、ときには抜けた一面もある。
    そんな彼の人間味に、僕はずっと救われていた。

    ある日、ふと彼に聞いた。
    「なんでそんなストイックに、自分を追い込んでまで勝ちにいくんだ?」
    「なんでそんなすごいお前が、僕なんかと仲良くしてくれるんだ?」

    彼は少し驚いたような顔をして、それから笑った。

    「おまえもさ、誰に見られてなくても、ずっと書いてるじゃん」
    「盛るわけでも着飾るわけでもなく、自分のペースで勝負してる」

    そう言って、彼はひとこと。  

    「同類じゃん」

    言葉が詰まった。
    自分が“修行僧側の人間”だなんて思ったこともなかったけど、たしかに何かを得るために、何かを削ってきた気がする。
    何度も書いて、消して、また書いて。


    読まれない時期も、評価されない時期も、それでも書き続けた。

     

    彼は続けた。
    「おまえの文章ってさ、たぶん読ませる力でいったら“全国模試トップ”レベルだと思う」
    「単なる上手さじゃなく、“読み終わったあとに余韻が残る”って意味でね」

    たぶん、親友だからこそ言ってくれたんだと思う。
    でも、それでも、嬉しかった。

     
    その言葉を胸に、僕は書き続けた。
    投稿を重ねる中で、少しずつ読者が現れ、言葉が届くようになっていった。
    気づけば、“文章を通じて誰かとつながる”という小さな奇跡を繰り返していた。


    「同類じゃん」と言ってくれた彼の言葉が、今もずっと僕を支えている。

     
    もしあなたにも、「あの人にはかなわない」と思う誰かがいるなら。


    その人がふと、「同類じゃん」と笑ってくれたとき、それは、あなたの努力が、誰かの心に届いたという静かな証かもしれません。

     「同類じゃん」と言われたあの日。
    あの言葉が、僕の人生をつなげてくれたように。


    もし、あなたも今、書くことを迷っているなら。
    その言葉が、いつか誰かの灯りになる日が来る。

    ― 僕たちは、きっと“同類”だから。

    もし誰かに“同類じゃん”と笑ってもらえたら、
    それだけで、人生はちょっとだけ続けてみたくなる。

    電波が届かなくても、言葉は届く。
    じゃあ、あなたの“灯り”は、誰に届いてるだろう?

    もし、あなたも『同類じゃん』と言えた日があれば、よければその話、聞かせてもらえたら嬉しいです。

    それもきっと、次へ進む小さな『伏線』なのだから。




    ※この作品は「note創作大賞2025」エッセイ部門への応募作です。

    本作以外に、【表の三部作】+【裏の一作】の“隠れ四部作”としてnote創作大賞に挑戦中です。どれも“人生の再出発”がテーマです。

    【note創作大賞2025エッセイエントリー記事(航海四部作)】

    【第1作】『その日、私は“現実転生”を始めた』─ 現実逃避の先で見つけた、“自分の人生”の意味

    【第2作】「運命は、静かに伏線を回収してくる」─ 偶然と必然が交差する、静かな再出発の物語

    【第3作】『2013年・福島での除染作業が教えてくれた、“絶望の中の希望”』  
    ─ 現場から見た、“命”と“希望”の記録

    【裏1作】『恋の羅針盤をなくした夜 ― “普通の恋”がわからない船乗り占い師のエトセトラ』─ 年齢も職業も飛び越えた、“恋の再出発”エッセイ

    【番外編】(本作)
    『“同類じゃん”と言われた日』
    ─航海四部作の番外編。“本編の陰で交わされた”静かな対話。




     
     
     
    文藝春秋SDGsエッセイ大賞2025グランプリ/『文藝春秋』本誌掲載。 サンクチュアリ出版「第3期 正直レビュアー」選出。 市場調査、漁師、船乗りを経て、人生の分岐点を書くエッセイスト。 10月、武蔵大学社会学部ゲスト登壇。メディア取材対応実績あり。

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