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続・あんたなんか大っ嫌い!! ~すれ違った言葉~

今日もkzy文庫を訪れて下さり有難うございます
「誰かが気軽に訪れてくれる“昭和時代の縁側”を作りたい」
kzy(カジ―)です

今回は以前書いた「あんたなんか大っ嫌い!!」の続編となります
ちなみにこのシリーズはすべてフィクションです

よろしければお付き合い下さい
それでは、どうぞ


A君とは月に一回、飲みに行く
彼曰く、「今月も月命日に付き合えよ」
なぜかA君は私にだけは少し上から話ができる(そうです)

ちなみに誰の月命日かと言えば
A「俺の初恋だよ」(だそうです)
あきれて何も言えないが、飲む口実があるなら私にとってそれはそれで好都合
月命日は、いつもA君がお金を支払う
私は毎回“お気持ち”だけで飲みに付き合う
彼曰く、「奢りは俺の男気」(だそうです)


二人の飲み会はビールに始まり、サワー、焼酎お湯割り、焼酎ロック、そして最後は日本酒の熱燗
「さぁ、飲むぞ~!!」と張り切ったA君はYシャツを脱ぎだす
なぜか飲む時は気合を入れてネクタイを外し、Yシャツを脱ぐのが昭和の居酒屋スタイル
焼酎ロックになる頃には頭にネクタイを巻いて
「マッチでーす!」とは言わせない!、二人の間のご法度ルール

「このお通し、うまくない?」
「この焼き鳥、うまいよね?」
「ここの刺身がうまいんだよね」
「やっぱりもつ煮は最高!食べた事ある?、もつ?」
(毎回、この店なんだけど)

おじさん達の話は“永遠のリフレイン”
同じ会話で同じ酒、同じ相手と同じ店、そして毎回、行きつく先は同じ結末

日本酒を飲みだす頃にはそろそろ“お開き”になる時間が迫る
飲み干した徳利をテーブルの上に横に並べて、それを眺めながら「俺はこんなに呑んだぞ」と自慢しながら眠りにつくA君
(飲んだら吞まれるな、吞まれるなら飲むな!)
-これは僕の独り言-

世界中で彼がタメ口で話ができるのは私一人だけなのではないだろうか?
そんな彼を眺めているとひとりの男の人生が垣間見えてくる


その日のA君は珍しく、いつもと違うこんな話をし始めた
A「最近、YouTubeで子猫の動画を良く観るんだよね」
私「ふーん、それで」
(こんどnoteに“おじさんと猫”って話、書こうかしらん)

A「猫の動画って再生回数がすごい伸びるんだけど、子猫を保護して育てるパターンの動画って次から次へと観ちゃうから時間がいくらあっても足りないよ」

A「動画を観てて、ふと、あいつの事を思い出したんだ」

A君が“あいつ”と言う相手はこの世に一人しかいない
少し前まで苗字で呼んでいたけど、思い出に浸る時だけ“あいつ”と呼んでいる

ちなみに私達、昭和世代思春期通過男子には好きな女子を下の名前で呼べるのは彼氏だけという鉄の掟があった

“好きな子の名前を呼び捨てにする”

重度の中二病を患った僕達がもっとも憧れる、「彼女がいる男」だけが使える最上級特権のこの掟を、A君は今でも固く守り続けている気骨のある中年男子である

A君曰く
「子猫って可愛いだろ。あれは生存戦略で、可愛けりゃ可愛いほど生き残れる確率が高くなる」
 「なるほど」
「同じような感情に可哀想がある。捨て猫がずぶ濡れになって飢えているのを見て、拾って助けてあげたくなる。これもれっきとした生存戦略」
 「なるほど、なるほど」
「ようは可愛いもしくは可哀想のいずれかの戦略で相手の感情を手に入れれば生き残れる確率が上がるってわけよ」
 「ふーん」(A君は酔うと少し哲学的になる)

「可愛いと可哀想、この2つはまったく異なる結果を生み出す」
 「そんなもんなの?」
「可愛いなら丸抱え。家に連れて帰って飼い猫として幸せに暮らす未来がある」
 「それで」
「可哀想は部分的補填。例えば毎日、餌だけもらえる。つまり可哀想な部分だけを補ってもらえる確率が高い。逆に言えばその他は自由でいられる」

 「なんだか良くわかならないね?今日は飲みすぎじゃない」

「でも、可愛いはある意味、先天的特権でもあり本人の努力だけではどうしようもない事が多い。意図的に狙えば大体“あざとい”になる。となれば残るは如何に自分を可哀想に見せるか、演じるか、そこが猫にとって保護と自由を両立させるための重要戦術」
 「なるほどねぇ。。」

「で、あの時、俺、あいつに言ったんだ」
 「なんて?」

「『お前って可愛いよな』って」

 「そしたら?」
「そしたらのあの始末。『あんたなんか大っ嫌い!!』ってあいつ叫んでそれっきり」

「俺、最初に会った時からずっと本気であいつを可愛いと思っていたし、ちゃんと目を見ていったんだけどなぁ。。おんな心ってほんと、わかんないね」

「あっ、おちょうし、もう一本ください」

酔ったA君がぽつりとつぶやく
「あいつ、ほんとうにかわいい顔してたよなぁ。。」

こうして、A君はまた一本、徳利を横に倒して安らかな眠りにつくのであった

あなたが“愛”だと自覚している感情は
心からの愛情ですか?
それとも同情ですか?

それとも。。。初恋の痛みですか

(続く)

続きはこちら(第三話に続きます)

このシリーズは全5話で構成しています
是非、第三話もお楽しみください


今作から読んで、前作が気になった方はこちら(第一話に戻ります)


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