
【谷の巡礼】③揺れる谷 後編「リスク許容度の谷」
むかしむかし、
あるところに、
天気の変わりやすい谷がありましたとさ。
その谷の奥には、
“複利の泉”と呼ばれる
不思議な泉がありました。
そこへ辿り着いた者は、
投げ入れた種銭が、
幾年もの後に、
大きな実りとなって返ってくる――
そう言い伝えられておりました。
しかし、
泉へ至るには、
“リスク許容度の谷”と呼ばれる、
切り立った崖道を
越えねばなりませんでした。
その谷では、
時折、
『相場の嵐』が吹き荒れるのでした。

~身の丈以上で越える谷~
旅人は、
言いました。
「どうせ渡るなら、
一度に大きく儲けたほうがいい」
旅人は、
米も、
家畜も、
家の蓄えまでも、
荷袋へ詰め込み、
肩へ、
ずしりと背負いました。
荷は重く、
重く、
谷道を歩くたび、
足元の石が、
ぱらぱらと崩れ落ちました。
けれど、
旅人は、笑いました。
「これは“リスクを取っている”だけだ」

そのときでした。
谷に、
『相場の嵐』が吹いたのでした。
風は、
それはそれは強く、
谷全体を、
大きく揺らしました。
旅人は、
その荷を
離すことができませんでした。
なにしろ、
そこには、
自分の人生すべてが
詰まっていたのです。
そして――
旅人は、
谷底へと消えていきました。

~身の丈で越える谷~
ある巡礼者は、
背負う荷を、
“夜、眠れる程度の重さ”
に留めておりました。
嵐が吹けば、
無理に歩かず、
その場へ膝をつき、
風が過ぎるのを待ちました。
周囲の旅人たちが、
先へ先へと、
急いでいっても、
ただ静かに、
自分の歩幅で、
谷を
進み続けたのでした。

そして幾年もの後。
巡礼者は、
複利の泉へと辿り着きました。
泉のほとりには、
誰よりも、
大きな実りではなく、
誰よりも、
長く旅を続けた者の灯りが、
静かに揺れておりました。

――それは、まるで。
凪の心で歩む、谷の巡礼。
めでたし、めでたし。
揺れる谷の物語。
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複利の泉へ
辿り着いた巡礼者たち。
けれど谷では、
昔から、
一つの問いが語られておりました。
「灯りは、どう育てればよいのだろう」
これは、
異なる“ゲイン”を育てた、
2人のじいさんのお話――
