
ハラホレ道中記 福井編 最終回
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最終話 王への手紙の巻
父上へ
お元気でしょうか。
まずはご安心ください。
私も爺やもチャピィも元気です。
そして、この旅で大きな発見がありました。
このアワラの地には、ほっこり水が絶えず湧き出ているのです。
ヒレハレ星では考えられないほど豊富な量です。
我が星にとって大変価値のある発見になると思います。
どうか調査団を派遣してください。
ですが、その際にはひとつお願いがあります。
この地の人々は、とても親切で優しい方ばかりでした。
困った時には助けてくださり、知らない土地の私たちを温かく迎えてくださいました。
どうか無礼のないようにお願いいたします。
ヒレハレ星の気品を損なうことのないように。
そして何より、まずは感謝を伝えてください。
私はこの旅で、ほっこり水以上に大切なものを見つけました。
静かな寺で心を落ち着かせました。
恐竜の化石に驚きました。
温泉という不思議な文化を知りました。
美しい庭園に心を奪われました。
そして、多くの人々の優しさに触れました。
知らないことを知る喜び。
自分とは違う考えに出会う面白さ。
人々の温かさ。
世界の広さ。
それらもまた、ほっこり水に負けない大切なお土産です。
私はもう少し旅を続けようと思います。
もちろん、勝手なお願いであることは分かっています。
王子として失格だと言われても仕方ありません。
それでも、この星にはまだ私の知らないことが溢れています。
私はそれを見たいのです。
聞きたいのです。
触れたいのです。
そして、この心で感じたいのです。
もうひとつお願いがあります。
どうか爺やを叱らないでください。
爺やは何度も私を止めようとしました。
何度も帰るよう説得してくれました。
それでも私が聞かなかったのです。
悪いのは私です。
爺やは付き人としての務めを果たそうとしてくれました。
それでも最後は、私のわがままに付き合ってくれました。
本当は今頃、胃を痛めているかもしれません。
それでも笑いながら「お待ちくだされー!」と追いかけてきてくれるのです。
私はそんな爺やに感謝しています。
チャピィも同じです。
困った顔をしながらも、いつも私たちのことを気にかけてくれています。
二人には迷惑ばかりかけていますが、私はとても心強く思っています。
二人には感謝しかありません。
父上。
いつ帰ることになるのか、今の私には分かりません。
ですが約束します。
この旅で得たたくさんのお土産を持って帰ります。
ほっこり水だけではありません。
この目で見た景色も。
出会った人々の優しさも。
心を震わせた感動も。
そして、この旅で学んだことも。
全部まとめて、ヒレハレ星へ持ち帰ります。
その日まで、どうか見守っていてください。
また手紙を書きます。母上の事もよろしくお願いします。
ハラホレ
――という冗談はさておき。
〜お土産編〜
帰りの新幹線までは、まだ少し時間がある。
その時間を使って、私たちはくるふ福井駅のお土産売り場を歩き回っていた。
広い売り場には福井の名産品がずらりと並んでいる。
まるでデパ地下のようだ。
旅の終わりが近づいているはずなのに、不思議とお土産探しは旅の続きのような気がする。
「あの人には何がいいかな」
「これ好きそうちゃう?」
妻とそんな話をしながら店内を歩く。
職場でお世話になった人。
いつも気にかけてくれる親族。
友人たち。
ひとつひとつ手に取りながら、その人たちの顔を思い浮かべる。
喜んでくれるだろうか。
驚いてくれるだろうか。
そんなことを考えながら選ぶ時間が楽しい。
お土産は物を渡すだけではない。
旅のお裾分けなのだと思う。
少しでも福井の空気や思い出を感じてもらえたら嬉しい。
羽二重餅。
羽二重どら焼き。
えび煎餅。
気がつけば次々と買い物かごに入っていた。
旅の最後になると財布の紐が少し緩むのは、きっと私だけではないだろう。
そして自分たち用のお土産も忘れない。
選んだのは、はや川の「羽二重くるみ」。
有名な銘菓らしい。
値段もなかなか立派だったので、自分たちの分だけにした。
家に帰って食べてみる。
ひと口。
思わず顔を見合わせた。
美味い。
羽二重餅のやわらかさ。
その中にある香ばしいシュー生地。
ふわりと広がるバターの風味。
そして砕かれた胡桃の食感。
それぞれが喧嘩することなく重なり合い、想像以上の美味しさだった。
大げさではなく、脳天に直撃した。
「あぁ、これは人気があるわけだ」
と妙に納得してしまった。
そして今回の旅で、ひとつ活躍したものがある。
以前noteにも書いた、Shupattoというエコバッグだ。
お土産を次々に放り込んでも余裕がある。
使わない時は小さくまとまる。
旅先では本当に便利だった。
今年のベストバイかもしれない。
お土産袋を抱えながら駅を歩く。
その重さが、どこか心地よかった。
それは荷物の重さではなく、
この旅で出会った景色や思い出の重さだったのかもしれない。
これにて──
ハラホレ道中記・福井編、おしまいです。
あとがき
ハラホレ一行の物語は、最初はエッセイの添え物として始まりました。
ところが書き進めるうちに、少しずつ存在感を増していき、気がつけばエッセイを飛び出して、本編と言ってもいいくらい力の入った物語になっていました。
ハラホレ殿下。
爺や。
チャピィ。
書いているうちに、私自身はこの三人がどんどん大好きになっていきました。
会いたいという気持ちから
私たちとハラホレ一行がどこかで交差するようにしました。
第九話の「そして交差する の巻」は3人の思いが交差するだけでなく、私たちとも交差するという意味でこのタイトルにしてます。
きっと物語はここで終わりですが、三人の旅はまだ続いているのでしょう。
今頃どこかで、新しい景色に驚き、新しい出会いを楽しんでいるかもしれません。
もしかしたら、あなたの住む町にも現れているかもしれませんね。
その時はぜひ、
「風の吹くまま、気の向くまま」
と声をかけてあげてください。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。