
百貨店で、いい買い物をした日
少し前のことだが、母の日のプレゼントを探しに、最寄りの百貨店へ行ってきた。
これまでは花屋でカーネーションを選んで送っていた。しかし今回は、近々実家へ帰る予定もあったので、花ではなく、普段の生活で役立つものを直接渡そうと思っていた。
駅前の商店街を歩いていると、妻がふと言った。
「カバンなんかどう? 最近流行ってるやつがあってな」
ただ、商品名までは思い出せないらしい。
「でも、カバンはな……」
私は小さくつぶやく。
予算は五千円ほど。その範囲で買えるカバンには限界がある。母は何を渡しても喜んでくれる人だが、だからこそ中途半端なものを選ぶと、かえって申し訳ない気もした。
「そもそも百貨店でカバンは厳しいかもな」
そう言うと、妻も「たしかに」と笑った。
「なんか他にいいものないかな。とりあえず雑貨コーナー見てみようか」
百貨店に入り、エスカレーターで雑貨売り場へ向かう。
そこには、手頃な価格のものから高価なものまで、さまざまな商品が丁寧に並べられていた。どれもセンスよくディスプレイされていて、見ているだけでも楽しい。
そんな中、回転ラックに並んでいたある商品が、ふと目に留まった。
エコバッグだった。
おそらく、“バッグ”という言葉が頭のどこかに残っていたのだろう。
カラフルなものからシンプルな単色のものまで種類も豊富で、見本が広げられている。私はいくつか手に取って眺めてみた。
ちょうど戻ってきた妻に、
「これなんかどう?」
と聞くと、
「エコバッグか。ええやん」
と、なかなか反応がいい。
「おしゃれやし、エコバッグってあって困ることないしな」
たしかにそうだった。近所の買い物だけでなく、少し遠出する時でも使えそうなデザインで、値段もちょうど三千円ほど。母が好きそうなカラフルな柄を選び、レジへ向かった。
すると、店員さんが商品の魅力を熱心に説明してくれた。
「これ、本当に便利なんですよ。袋口の紐を引っ張るとキュッと閉まって、ショルダーバッグにもスポーツバッグにもなるんです。このサイズなら旅行にも便利ですよ」
どうやら、私たちは知らずにLサイズを選んでいたらしい。
店員さんの説明はさらに続く。
「お土産なんかも、これ一つにまとめられますし……こうやって、シュパッと両端を引っ張ると簡単に折りたためるんです」
実際に両端を引くと、一瞬で細長くまとまる。
「あと、これをクルクル巻いてボタンを留めると、こんなにコンパクトになるんですよ」
その手際の良さに、思わず「おお」と声が漏れた。
近々旅行の予定もある。店員さんの熱のこもった説明を聞いているうちに、自宅用にも欲しくなり、結局もう一つ買ってしまった。
おそらく、この店員さん自身も実際に使っているのだろう。
ただ商品の特徴を説明しているだけではなく、「便利だった」という実感が言葉に乗っていた。そういうレビューが、いちばん信用できる。
しかも商品名が面白い。
先ほどの“シュパッ”という折りたたむ動作から、そのまま『シュパット』という名前になったらしい。
母の日の贈り物としても、自分たち用としても、いい買い物ができたと思う。
もしかすると、今年のベストバイかもしれない。
――おまけ。
家に帰ってから、実際に“シュパッ”と折りたたんでみた。
たしかに簡単だった。
ただ、そのあとクルクル巻いてボタンを留めるところで少し苦戦した。
結局、箱に書いてあった説明を見ながらやると、ちゃんとコンパクトに畳めた。
店員さん、あれを一瞬でやっていたの、地味にすごい。