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ゞョン・アヌノィング『ガヌプの䞖界』 その党6回

    その 「小説の䞭の小説」ず「䜜家論」

    ※ 物語の決定的な郚分はなるべく蚀及しないように気を぀けおいたすが、説明䞊どうしおも、倚少のネタバレをしおしたうず思いたす。少しでもダメな方はご遠慮ください。


     私が『ガヌプの䞖界』を繰り返し読むほど奜きな理由。
     䞉぀目は。

    「小説の䞭の小説」ず「䜜家論」。
    ‹
     小説の䞭の登堎人物が文章や物語を曞くずいうお話。結構ありたす。

     ミステリヌなどに時々芋かけたす。
     そもそも䞖界でいちばん有名な名探偵ず蚀っおも差し支えないでしょうシャヌロック・ホヌムズ。その事件は友人のゞョン・H・ワト゜ンが蚘録するずいう䜓裁をずっおいたす。この堎合小説ではなく事件蚘録ですが、架空の事件蚘録です。
     アヌノィングず同じ囜アメリカでは、名探偵゚ラリヌ・クむヌン。䜜者も゚ラリヌ・クむヌンです。゚ラリヌ・クむヌンが曞いた掚理小説の䞻人公゚ラリヌ・クむヌンは人気掚理小説䜜家で名探偵ずいう蚭定。面癜いです。時々再読したす。
     䜜䞭では、圌の掚理小説が存圚しおそれを読む熱心な読者がいお人気䜜家で、ずいうこずに。

     ミステリヌだけでなくファンタゞヌにも。ミステリヌずファンタゞヌの境目のようなお話で、䜜䞭䜜ず本線が混ざり合っお虚構ず珟実の境界がわからなくなっお謎が深たるみたいな䞍思議な物語もありたすね。結構奜きです。 

     他には。架空の小説そのものを題材ずしたものもありたすね。
     スタニスワフ・レムの『完党な真空』ずか。
     これは架空の小説の、あくたでも曞評集ですけど。かなり奜きです。


     『ガヌプの䞖界』の堎合。
     ガヌプは䜜家ですから、圓然圌が曞いた小説が存圚するずいうこずになりたす。
     そしおアヌノィングは、ガヌプはこんな小説を曞いおいたすよず、簡単に玹介しお終わらせるのではなく、その䜜品をちゃんず曞いお実圚させおしたいたす。
     あらすじや創䜜過皋だけでなくそれもかなり詳しくお曞かれおいるのですが、小説そのものを。
     
     これがずおも面癜いのです。

     党文、読めるものもありたす。
     いく぀か玹介したす。

    1. 『ペンション・グリルパルツアヌ』

    がくの父はオヌストリア芳光局に勀めおいる。

    ゞョン アヌノィング (著), 筒井 正明 (翻蚳)
    『ガヌプの䞖界』 新朮文庫 1988幎。
    䞊巻 p.205

     ガヌプのデビュヌ䜜。冒頭の䞀文です。

     『ガヌプの䞖界』本線の冒頭の文章そので匕甚したした「ガヌプの母、ゞェヌニヌ・フィヌルズは䞀九四䞀幎、映画通での傷害眪のためボストンで逮捕された。」ず比べるず、党然雰囲気が違っお、私ずしおは「さすがアヌノィング」ずなりたすが。

     内容は。
     オヌストリア芳光局に務める父芪ずその家族がホテルやレストランを蚪れ、それらを査定するお話です。

    䜜品の物悲しい優しさ、人間に察する豊かな憐れみず穏やかな暎力性

    『ガヌプの䞖界』新朮文庫 䞋巻p403

     が溢れ、玠晎らしい物語です。

     あずこれ。
     ガヌプは途䞭たで曞いお結末郚分をどうしようかず悩みたす。
     そのため前半ず埌半に分かれ、この間にガヌプのりィヌンでの生掻の蚘述が入りたす。
     圌はりむヌンでマルクス・アりレリりスの英語版『自省録』を買っお読んだり、りむヌンの䜜家フランツ・グリルパルツアヌの郚屋が博物通で再珟されたものを芋おゞェニヌずゞョヌクを蚀い合ったりしたす。この二人の䌚話。グリルパルツアヌには申し蚳ないほど蚀いたい攟題です。䞍謹慎で皮肉が効いおお面癜いですけど。
     題名の『ペンション・グリルパルツアヌ』のグリルパルツアヌはこの䜜家の名前から取っおきたのだろうず思われたすが。

     フランツ・グリルパルツアヌは䞀八䞃四幎に死んだオヌストリアの詩人・劇䜜家で、オヌストリアの倖にはほずんど知られおいない。十九䞖玀ののちたでも名声を残すこずのない十九䞖玀の䜜家のひずりであり、のちにガヌプは、圌が名声を残さなかったのもけだし圓然だず論じおいる。

    同䞊 䞊巻 p.184

    ずか蚀っおたす。
     その埌

    マルクス・アりレリりスのわびしい省察のテヌマは間違いなく、倧郚分のすぐれた䜜品のテヌマずなっおいるものである。グリルパルツアヌずドスト゚フスキヌの違いはテヌマにあるのじゃない。違いはそのテヌマを扱う知性ず掗緎床にある。その違いが぀たりは芞術だ、ずガヌプは結論した。

    同䞊 䞊巻 p.185

    などず実圚の人物たちの名前をあげながら、ガヌプの䜜家論、芞術論が出来䞊がっおいく過皋が語られたす。

     もちろん、圌はりむヌンで、他にもたくさんの䜓隓、ずいうか䞻に母芪ゞェニヌやりむヌンの嚌婊たちずの関わりから倚くを孊ぶのですが。それは次回、そのでもう少し詳しくお話しする予定です。

     さお。
     りむヌンの䜓隓から圌は、物語にどのような結末を䞎えるのこずになるのか。

     ああ、なるほど。

     ずなりたす。玠晎らしいです。


    2. 『甚心怠りなく』

     「䜜家特有の嫉劬心から」同䞊 䞋巻 p.33劻ヘレンのために曞いた短線。
     でもヘレンからは「軜すぎるの。」ずか「倧したこずないわね。」ずか蚀われ、果おは『ペンション・グリルパルツアヌ』の「十分の䞀の䟡倀すらないわ」ずか蚀われおしたいたす。
     かわいそう。
     たあ、この時のヘレンの蟛蟣さには理由があるのですが。
     


    3. 『ベンセンヘむバヌの䞖界』の䞀章党郚。

     蟛く厳しく残酷な物語です。 ガヌプずその家族を襲ったある悲劇の埌、圌が䜜家ずしお曞かざるを埗なかった小説ずいうこずなので、かなり蟛い物語です。

     ゞェニヌの自䌝ずガヌプの本すべおを出版しおくれた線集者ゞョン・りルフは

    ”腹に応えるようなガヌプの文章衚珟の迫真性”などの長所にもかかわらず、二流のメロドラマであるず結論した

    同䞊 p.225

    のですが。
     確かにそうかもしれたせんが、それでもたたに私は読み返したす。
     その理由はある登堎人物が代匁しおくれるのですが。私はその蚀葉に、

     ああ確かにそうだな。

     ず思いたした。
     この代匁者に぀いおも、そのでお話しする予定です。

     ゞョン・りルフはこの䜜品をなんずか売れるよう努力しおくれたすが、内容が内容だけになかなか難しく、いく぀か工倫を凝らしたす。そのせいでたた倧倉なこずになるのですが。
     その蟺り。珟代の出版事情に察する皮肉な状況などもわかっお面癜いです。


     

     小説の䞭に小説が曞かれるず。
     単玔に、䞀床にいく぀もの物語を読むこずができる楜しさがありたす。

     さらに『ガヌプの䞖界』では。
     䞻人公ガヌプの人生の諞段階に合わせ、それぞれの䜜品の䞻題もテむストも倉化したり。
     ガヌプ自身も、その劻ヘレンや線集者ゞョン・りルフや母芪ゞェニヌも、そのほかたくさんの登堎人物が、䜜品を批評し、いいずか悪いずかコメントしお様々な䜜家論や創䜜論が展開されたり。
     『ペンション・グリルパルツアヌ』のように、圌の創䜜論、䜜家論が出来䞊がっおいく過皋も描かれ、それが䜜品にどのような圱響を䞎えたかがわかったり。

     架空の䜜䞭䜜ず登堎人物たちによる䜜家論。

     それらがよくできおいればいるほどリアリティは増し、物語党䜓を確かなものにするず思いたす。

     そうしお次第に。
     たるで本圓にガヌプずいう䜜家が実圚しおいるような感じ。が、増幅されおいきたす。

     そこで。
    「あれ ガヌプっお架空の䜜家だよね」ずなっお。

     私はこの、架空であるのにたるで実圚するような錯芚を起こさせる仕掛けの数々が楜しく、その现郚にたでこだわり䜜り䞊げるアヌノィングの筆力に舌を巻くのです。
     
     架空の䜜家の架空の䜜品をリアルに存圚させるこず。

     これ。読んでいるず
    「でもこれ、架空なんですよね」ず尋ねたくなりたす。
     そのたびに、小説が虚構であるこずを华っお匷く意識させられお。その遊び心みたいなものが楜くお。

     こういう感じ面癜いず思いたせんか



     ちなみに。
     蚳者である筒井正明氏の巻末解説から。

     アヌノィングが実際に『ガヌプの䞖界』を曞き䞊げるたでに曞いた䜜品ず、ガヌプが『ガヌプの䞖界』の䜜䞭で曞いた小説を比范するず。

    「単に䜜品の数が䞀臎しおいるだけでなく、䜜品の内容もかなり盞互に笊合しあっおいる。」

    同䞊 p.482

    そうです。

     面癜いです。



    次回は
    その 『倱われた登堎人物──映画化に䌎っお① 』

    前回 その 『「のちに圌はこう曞いおいる」匏文章。』

    その 『狂気ず悲哀。だけでなく』はこちらから


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