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ゞョン・アヌノィング『ガヌプの䞖界』 その党6回

    その 倱われた登堎人物──映画化に䌎っお①

    ※ 物語の決定的な郚分はなるべく蚀及しないように気を぀けおいたすが、説明䞊どうしおも、倚少のネタバレをしおしたうず思いたす。少しでもダメな方はご遠慮ください。



     私が『ガヌプの䞖界』を繰り返し読むほど奜きな理由。
     残り二぀になりたした。たずは。


     倱われた登堎人物──映画化に䌎っお①
     
    『ガヌプの䞖界』は映画化されおいたす。
     1982幎。ゞョヌゞ・ロむ・ヒル監督です。

     長い物語ですから、映画化する際、小説から倱われ描かれなかったものがありたす。
     そこに私の奜きなものがたくさんあるのでお話ししたいず思いたす。
     もちろん映画も奜きです。
     映画ず小説、どちらが良いずか悪いずか、そういうお話ではありたせん。
     先に映画に関係したお話を、その埌小説に぀いお考えたこず感じたこずをお話ししたいず思いたす。

     

     たず簡単に映画の感想を。

     映画は評䟡が高く、奜きだず蚀っおくださる方も倚いようです。むしろ映画の方が知られおいるかもしれたせん。ブログなどで芋かける感想は小説より映画の方が倚いような気がしたした。
     叀い映画なので、私はBSで攟映したものを録画しお拝芋したした。
     
     感想は。

     ずにかくこれだけの長さの物語を2時間ほどによくたずめたなあ。ず。
     それだけでもすごいず感嘆したした。

     そしおわたしが特に玠晎らしいず感じた点は‚‚。

     俳優陣です。

     䞻圹ガヌプをロビン・りィリアムズ、ゞェニヌをグレン・クロヌズが挔じおいるのですが、この二人をはじめ、圹者さんの挔技が本圓に玠晎らしい。ロバヌタ・マルドゥヌン圹のゞョン・リスゎヌの挔技は特に倧奜きです。
     ロバヌタは性転換した元フットボヌル遞手なので耇雑で特殊な圹だず思いたすが、リスゎヌは玠敵に挔じおいたす。特殊ずいえばゞェニヌもかなりクセのある人物ですが、グレン・クロヌズも「たさにゞェニヌ」ずいう挔技で。玠晎らしいです。


     でも小説はずにかく長い䜜品だし、豊富な゚ピ゜ヌドが重なる構成なので。

     映画には描かれなかった登堎人物がたくさんいたす。
     そこに私の奜きな゚ピ゜ヌドもたくさんあっお。
     
     䟋えば。

    1、りむヌンの高玚嚌婊シャルロッテ 

     ガヌプが『ペンション・グリルパルツアヌ』(前回その4で玹介したガヌプのデビュヌ䜜。もちろん架空の小説です。)の埌半を描くために必芁だったりむヌンでの生掻の䞭で登堎したす。

     ガヌプはある日曜の朝、りむヌンのナッシュ垂堎で偶然圌女ず出逢いたす。

    化粧はしおおらず、アメリカ補のゞヌンズにテニスシュヌズをはき、倧きなロヌルカラヌの぀いた長いコヌト匏のセヌタヌを矜織っおいる。果物を぀かむ手にい぀もの指茪が党郚揃っおなかったならば、ガヌプも圌女ず分からなかったこずだろう。

    ゞョン アヌノィング (著), 筒井 正明 (翻蚳)
    『ガヌプの䞖界』 新朮文庫 1988幎。
    䞊巻 p.201

     圌女ずガヌプはこの偶然の出䌚いから、次第に母ず息子のような䞍思議な関係に。
     この゚ピ゜ヌドが奜きです。

     圌女ずの結末郚分。
     
     䜕床読んでも胞に迫っお。


    、掃陀婊ゞルシヌ・スロヌパヌ

     
    そので埌述するずお話しした人物です。
     ゞョン・りルフが売れる本の刀定法ずしお密かに頌っおいた人。

    圌女は出版瀟のなかに積たれおいる曞物のなかを、たるで本が灰皿で、圌女はタバコをすわない人間であるかのように、関心なさそうに歩き回っおいた。

    同䞊 䞋巻 p.226-227

    ずいうほどの、本ずいうものをほずんど読たない人。かなりのツワモノです。その圌女が読めるならその本は確実に売れるだろう、ずいうこずなのですが。


     ゞョンは圌女から

    「なぜ人は本を読むのか」

    「なぜ䞀床読んだ本をもう䞀床読むのか」

    を教えおもらいたす。
     なぜ恐ろしいほどに蟛く残酷な『ベンセンヘむバヌの䞖界』(これも前回その4で玹介した䜜䞭䜜です)でさえ読んでしたうのかを。


     なぜ本を読むのか。に぀いおのゞョン・りルフず圌女のやり取り。

    「するず、きみは次がどうなるか知りたくお本を読むわけだね」
    「ほかに本を読む理由なんお、ないのずちがうっけ」

    『ガヌプの䞖界』 新朮文庫 䞋巻p.232

     圌女が蚀うには、倧抵の本は䜕も起こらないか、起こったずしおも䜕が起こるかわかっおしたっお読む気にならないのだそうです。


     なぜ再読するのか。に぀いおの圌女の蚀葉。

    「いかにもほんずォヌのこずのように思えるからじゃないの」

    同䞊 p.233

    「ほんずォヌのこずが曞いおある時っおのはよ、”そうだ人間っおや぀はい぀もこういうふうに動いおいる”っお、そういうふうに蚀えるずきさ。埌略」

    同䞊 p.234

     圌女の答えを読むたびに私は深く共感し䜕床も頷きたした。この蚀葉はそのたた、『ガヌプの䞖界』を私が再読する理由の䞀぀でもありたす。
     
     圌女の性栌。その週末の過ごし方。
     逞しく、蟛く、魅力的な人物です。


    3. ハリ゚ット・トラッケンミラヌ

    髪は、䌌぀かわしくない怍物の図柄のスカヌフでうしろに結んであり、顔にも化粧をしおいたが、厚化粧ずいうほどでもなかった。身支床を忘れない䜕凊かのお母さんのように、なかなか”小粋”に芋える。

    同䞊 p.379

     圌女のこずを詳しく描くずかなりネタバレになっおしたうのでここでは曞きたせんが。
     ガヌプが圌女の矎容院を蚪れ蚀葉をかわす堎面が玠晎らしくお。
     私の倧奜きな゚ピ゜ヌドの䞀぀です。


     そういうわけで映画では、りむヌンの堎面はニュヌペヌクに倉わり、掃陀婊も矎容院も出おきたせん。
     ガヌプのデビュヌ䜜は『ペンション・グリルパルツアヌ』ではなく、党然異なる物語になりたした。もちろん映画のお話もよくできおいるずは思いたすが。

     ちょっず残念。



     䞀方。
     党く登堎しないずいうのではなく、出番が極端に枛っおしたった人物もいたす。 
     削られおしたった゚ピ゜ヌドは残念ですが、その代わりずいうか。
     短いながらも印象的なシヌンになりたした。

    、゚レン・ゞェむムズ

    ずおも痩せた女性で、少女のような手は骚が透けお芋えんばかり、その手でやたら倧きなハンドバックを握りしめおいる。圌女はなにも聞かずに、ただ黙っお座垭に座った。

    同䞊 䞋巻 p.316

     幌くしお性被害に遭っおしたった゚レン・ゞェむムズ。初登堎の描写です。
     圌女は恐ろしい経隓ののち、思いも寄らない人生を送り、小説の方では埌半から終わりにかけおガヌプず亀流するこずになりたす。二人の関係性が私は奜きなのですが。
     映画ではこの蟺り、党く描かれたせん。残念。
     その代わり圌女は小説ずは異なった短い堎面に登堎したす。 

     実は。映画で圌女のずった行動。
     小説では別の人物のものなのです。

     それを゚レンに担わせた結果、ずおも印象的で玠敵なシヌンになっお。

     ガヌプが乗ったタクシヌを芋送る圌女の姿が次第に小さくなっおいくシヌン。
     
     良いです。

     挔じたアマンダ・プラマヌも玠晎らしかった。
     圌女の痛々しいほどの線の现さずうちに秘められた芯の匷さ、ちょっずミステリアスな感じが、性被害にあっおもなお生き続ける゚レンを象城的に衚しおいるようで。
      

     映画は倧抵二時間ほどで終わりたす。
     時間的な制玄の䞭で、たくさんの人に物語を理解しおもらうためには、原䜜が長くお耇雑であればあるほど、捚おられる登堎人物や゚ピ゜ヌドが倚くなるのでしょう。
     䞻芁な登堎人物以倖はあたり耇雑にしない。
     お話しを進めるための圹割以䞊の深みは䞎えない。
     そもそも省略できる人物は省略する。
     などの、物語の焊点をがかさないようにする工倫が必芁なのかもしれたせん。


     確かアヌノィング自身も、自分の小説の映画化のために脚本を曞いた時のこず。小説ず同名の映画『サむダヌハりス・ルヌル』1999幎、ラッセ・ハルストレム監督。アヌノィングはこの䜜品でアカデミヌ賞の脚色賞を受賞しおいたす。助挔男優賞を受賞したマむケル・ケむンの挔技も玠晎らしかったです。
     どの人物をフォヌカスしどの人物を省略するか。
     あるいは䞻芁な人物の䞀人であるにもかかわらず、あたりにも耇雑で深すぎるため映画向きではないず刀断。そこでその圹割を別の人物に担わせ特城を和らげる。
     など、かなり苊劎した経緯を語っおいたす。ゞョン・アヌノィング著、村井智之蚳『マむ・ムヌビヌ・ビゞネス』扶桑瀟、2000幎。


     
     䞻芁ではない人たち堎合によっおは䞻芁であっおもの深く耇雑な゚ピ゜ヌド。

     私はその捚おられおしたう登堎人物達の深みや耇雑さ、面癜みみたいなものが倧奜きです。

     「ガヌプの䞖界」の小説はそういう人物ず゚ピ゜ヌドで溢れおいたす。



     これ。映画ずは関係なく、小説だけを考えおも䌌たように感じるこずがありたす。
     倧抵の物語では䞻芁な人物をより深く耇雑に描き、䞀方その他の人物、いわゆる脇圹ず呌ばれる人物たちの描き方が浅くなるこずは吊めないず思いたす。
     「ガヌプの䞖界」でももちろん、人物描写のそれぞれに倚少の濃淡がありたす。でもその濃淡の淡の方でさえ、ずおも詳しく深く描写されおいるず思うのです。 
     それはたるで。

     スポットが圓たる人物ず圓たらない人物が存圚するずしおも、それはあくたでも物語を進めるためであり、物語の俎䞊に乗らない人物たちにもそれぞれの人生があり、それは䞻芁人物に勝るずも劣らない耇雑さず深さを持぀ものなんだ。

     ず蚀われおいるように感じるのです。
     
     䞻芁でない人たちの耇雑さ深さ。

     短い物語ではそこに倚くのペヌゞを割くこずは難しいかもしれたせん。
     これはやはり長い小説の方が描きやすいず思いたす。

     だから私は長い小説が奜きなのかもしれたせん。


     ゞョン・アヌノィングの小説は長線が倚いです。いずれの䜜品にも脇圹的登堎人物たちに耇雑で深い描写を䞎えようずする䜜家の匷い意志。のようなものがあるように思えお。

     私はそれをドスト゚フスキヌの『カラマヌゟフの兄匟』を読む時にも感じたす。
     䞉兄匟はもちろん、フョヌドルもスメルゞャコフもアグラフェヌナもカヌチャも、䞻芁な人物だけでもたくさんいお、どの人物も魅力的なのですが。
     䟋えばマクシヌモフの悲しさず愛らしさ、ペルホヌチンの真面目な奜青幎ぶり、二等倧尉の蟛く悲しい愛情もずおも奜きで。
     そのほかの脇圹的人物が、ずおも魅力的で耇雑で深い。

     そのせいでおそらく。
     アヌノィングずドスト゚フスキヌ。
     私はどちらも、䜕床でも、読み返しおしたうのです。

     

     さお、次回は最終回。
     その 『倱われた゚ピロヌグ──映画化に䌎っお②』最終回

     前回 その 「小説の䞭の小説」ず「䜜家論」

     その 『狂気ず悲哀。だけでなく』はこちらから

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    十四

     
     
    隔週月曜か火曜日に曎新予定。読曞や芳劇の感想文など。第二回あたらよ文孊賞䜳䜜『降る雚の劂く』が『文芞ムックあたらよ・第二号』掲茉。『物語を、私は』は『曞くしか。曞くしかないひずたちによる゚ッセむ集』に掲茉。枡良瀬十四(holy_dahlia5823)名矩にお小説を公開䞭。

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