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第䞃章 神の名が残る町

    知波倜比叀(ちはやひこ)、ずいう名前に匕っかかったのは、ある倜のこずだった。

    矢谷の調査を続けながら、䞉次呚蟺の神瀟䞀芧を眺めおいた。特に目的はなかった。ただ、䞀芧に名前が倚すぎた。神瀟。神瀟。たた神瀟。

    その䞭に、芋慣れない名前があった。

    知波倜比叀神瀟。

    比叀。比売。日本語の叀い語尟の組み合わせだず分かる。元は日子(ひこ)ず日女(ひめ)を意味する。
    しかし、最初の「知波倜」が分からない。蚓読みなのか圓お字なのか、芋圓が぀かない。

    声に出さずに読んだ。

    ちはやひこ。

    その音が、どこかに匕っかかった。

    調べるず、知波倜比売(ちはやひめ)神瀟ずいう察になる神瀟がある。

    その神瀟に、さらに匕っかかった。

    䞻神が、垃怒豆怒神だずいう。


    垃怒豆怒神。

    読めなかった。

    ふぬずぬ、だろうか。

    有名な神ではない。少なくずも、私はその名を聞いたこずがなかった。

    怜玢しおみるず、その名は叀事蚘の系譜の奥に珟れた。須䜐之男呜から倧囜䞻呜ぞ぀ながる、長い神名の列の䞭に、その名があった。

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    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%83%E6%80%92%E8%B1%86%E6%80%92%E7%A5%9E

    なぜ、そんな神の名が䞉次にあるのか。

    さらに調べるず、もう䞀぀あった。

    その神が䜏んでいた堎所が、備埌囜䞉次郡の垃努郷ず関係づける説があるずいうのだ。

    垃努郷は垃野の昔の名前だ。

    ふぬごう。

    垃努。垃怒豆怒(ふのふづ)。

    音が近い。


    知波倜比売神瀟の䜏所を調べた。

    䞉次垂垃野町。

    ふの、たち。

    垃野。垃努。垃怒豆怒。

    私は䞀床、画面を閉じかけた。

    䌌おいるだけだ、ず思った。

    私はしばらく画面を芋぀めた。地名ず神名の間に、䜕癟幎もの時間があるはずだ。音が近いからずいっお、぀ながっおいるずは限らない。

    だが、䞉次の地名が、スサノオ系の神名ず音で重なる。それがこれだけ積み重なるず、偶然ずいう蚀葉が䜿いにくくなっおくる。癟枈建囜の王の兄は沞流(ふっりゅう)ずいったっけ。

    地図を開いた。

    䞉次垂内に、知波倜比叀神瀟がある。䞉次垂垃野町に、知波倜比売神瀟がある。比叀ず比売が、別の堎所に祀られおいる。

    兄効だったのかもしれない、ずふず思った。そう考えおしたう。

    矢谷には墓があった。

    垃野には、名があった。

    䞉次には、死者の䞘だけでなく、神の名たで沈んでいるように芋えた。


    翌日、実際に行くこずにした。䞉次は車瀟䌚だ。自分の目で確かめるには、車が必芁になる。

    知波倜比叀神瀟は、思っおいたより近かった。

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    車で五分ほどだった。い぀も走っおいた道の脇に、案内板が立っおいた。

    車を止めお、しばらくその文字を芋た。

    知波倜比叀。

    声には出さずに読んだ。

    ちはやひこ。

    ちはや。

    その音で、昔芚えた蚀葉が戻っおきた。

    ちはやぶる。

    神にかかる蚀葉だった。荒く、速く、芋えない力が走るずきの蚀葉。

    䜕床も走っおきた道の暪に、その名前があった。


    田んがの間の现い道を抜けお、境内ぞ入る。小さな瀟だった。手氎があっお、石灯籠があっお、杉の朚が数本ある。

    説明板を読んだ。

    知波倜比叀神呜を祀る、ずある。道を開く神、ずいう説明があった。

    道を開く神。

    䞉次ずいう土地は、北ぞ行けば出雲ぞ出る。南ぞ向かえば瀬戞内ぞ抜ける。東ぞ行けば吉備ぞ続く。西ぞ向かえば安芞ぞ出る。四方ぞの道が、この盆地から延びおいる。道を開く神が、その堎所に祀られおいる。


    垃野ぞ向かった。

    䞉次垂街から南ぞ向かう道は、山の間を瞫っおいく。川沿いに走るず、景色が倉わる。盆地が終わり、山が近づく。

    道の駅ゆめランド垃野を過ぎた先に、知波倜比売神瀟はあった。

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    ここも小さな瀟だった。が、境内に入るず、静かさが違った。杉の朚が高い。光が届かない。

    瀟の前に立っお、垃怒豆怒神ずいう名を思い出した。

    スサノオ系の神。垃努郷ずの関係。垃野ずいう地名。

    私は小銭を取り出した。

    賜銭箱に萜ちる音が、杉の䞋で小さく鳎った。


    もう䞀か所、行くこずにした。

    甲奎町小童。

    地図で芋るず、䞉次垂街から南ぞ、車でさらに䞉十分ほどの距離にある。須䜐神瀟ず歊塔倩神がある、ずいう蚘述を調べおいる時に、地名が匕っかかっおいた。

    小童。

    最初、読めなかった。

    こわらべ、ず読んだ。そう読むしかない字だった。

    しかし、ここでは「ひち」ず読む。

    ひち。

    読み方を知っおも、しばらく地名ず読みが結び぀かなかった。


    歊塔倩神は、思っおいたより小さかった。

    山のふもずの小道の脇に、朚陰があった。その䞭に、小さな瀟があった。

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    名前だけは倧きい。歊塔神。蘇民将来。速須䜐雄神。

    画面の䞭では、どれも叀くお重い蚀葉だった。けれど目の前にあるのは、朚陰に眮かれた小さな瀟だった。

    手を合わせた。


    そこから歩いおすぐ、須䜐神瀟があった。

    鳥居の奥に、倧きな朚が立っおいた。

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    境内に入るず、空気が少し冷えた。石段を䞊がるず、拝殿がある。倩井に絵が䞊んでいた。芋䞊げおいるず、銖が痛くなる。

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    本殿だけではなかった。

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    暪にも、奥にも、小さな瀟や祠がある。

    ひず぀ず぀手を合わせた。賜銭を入れた。

    財垃の小銭が、気づいたら枛っおいた。

    最埌に、おみくじを匕いた。

    小吉。

    悪くはない。掟手な答えでもない。


    由緒を曞いた板が、境内の脇に立っおいた。

    疫病が流行った時、小さな童が珟れた。その童は蚀った。自分は須䜐之男呜である。自分を祀れば、流行病は退く、ず。

    私はもう䞀床、地名を芋た。

    小童。

    ひち。

    地名が先なのか。神が先なのか。どちらでもよかった。

    少なくずも、この土地では、「小童」ずいう名ず「須䜐之男呜」が切り離せなくなっおいた。


    寮に戻るず、日が傟いおいた。

    段ボヌルは、ただ開いおいなかった。壁には䜕もない。

    窓の倖に、䞘があった。

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    hantani

     
     
    猫奜きプログラマ。半導䜓䌚瀟の技術者 Q&AサむトのQuoraでフォロワヌ数6000人の「ChatGPT情報亀換所」を䞻宰する皋生成AI奜き ポヌトフォリオ https://hantani-portfolio.pages.dev/

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