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Photo bykasumisora_art

Netflixドラマ+小説「グラスハート」感想文

     本が好きな子どもだった。

     ピアノ教師の母を持つわたし(当時4歳)は、「お母さんに教わりたくない!」と駄々をこね、ヤマハ音楽教室に通わせてもらう傍ら、
     小学生になると、図書館にも通った。
     小学校高学年でティーンズハート文庫に出会い、同じ棚にあるコバルト文庫に辿り着いた。
     中学では、友達から少女漫画を借りるようになって、「フルーツバスケット」とか「花ざかりの君たちへ」とか。わたしは代わりにコバルト文庫の「マリア様が見てる」を貸し出していた。
     そして、高校生で漫画「ハチミツとクローバー」に出会い、作者の羽海野チカ先生がコバルト文庫で当時挿絵をしていた「グラスハート(主人公:西条朱音、当初はバンドの鍵盤屋で女子高生)」に出会うのは、もう当然の流れだったと言える。
     本が好きで、ピアノのレッスンは嫌いだけれど辞めたくなくて、バンドに憧れていた。音楽を諦められないわたしは、地方のごくごくフツーの女子コーセーだった。
     そのまま、東京で女子大生になって、バンドマンになって、ライブハウスのスタッフまでやった。フルコースだよ!

    「グラスハート」と、テン・ブランク(という名の、物語の核であるバンド。小説版ではこの表記。ドラマ版ではTENBLANK)のことは、最近まですっかり忘れていた。
     そのくせ、今でも大変に懐かしい存在だと思う。
     この世界を「覚えている」と「忘れてしまった」で二分するなら、わたしは「グラスハート」を「覚えて」いた。

    「グラスハート」の作者である、若木未生先生のツイートでドラマ化を知って、「ふぅんそっか」と思った記憶はある。
     この、「ふぅんそっか」には、「どうして今更グラスハートなんだろう」っていう気持ちと、「どうせ見ないからいいや」っていう気持ちが込められていた。わたしは、ドラマを見る習慣がない。
     本音を言えば、十代のわたしがあんなに愛して憧れた「テン・ブランク」というバンドが、なんというか、酷い有様で現れたりして欲しくないなあ……と、目を背けたい気持ちで。
     格好良いままでいてよ、そのままで充分だよ。

    「汚さないで」と思った。
     ものすごく傲慢に。
     思い出、ひっくり返さなければ綺麗なままなのに
    「グラスハート」はすばらしいけど、「グラスハート」じゃなくていいじゃん!
     わたしの大好きな、大変懐かしい、心のやらかいところを、いまさら踏みにじらないで欲しい。
    「十代で出会った物語」っていうのは、もう増えないんだよ!
     キラキラの、宝物なのに。

     だから、「どうしてグラスハートなんだよぉ」と思いながらも、
     Xでお見かけする若木先生のポストが、とても嬉しそうで、すごく救われた。うん、若木先生がいいならいいのだよ。なんて、上から目線みたいになっちゃうけど。本当に。

    #グラスハート
    ネタバレにならずなにかを言うのが、いまはたいへん難しいので
    口数が少なくなっちゃうんですけど

    とにかく明日が最高に楽しみです!!!

    グラスハート配信開始は7/31(木)16時~
    1~3話のウォッチパーティーは19時~

    同日の、テンブランクのアルバムの発売もお忘れなく!✨

    — 若木未生@グラスハート実写ドラマNetflixにて配信中 (@wakagimio) July 30, 2025

     で、「若木先生がそこまでおっしゃるなら……」ちょっと見てみようかな、と思って予告を見たらね。

     テン・ブランクだった。
     藤谷直季が、藤谷直季過ぎた。
     辞書に「例」として載せてもらっても構わないくらい、本当にきれいに息を飲んだ。唇に、手を当てて

    「会えた」って思ったんです。バカみたいに。
     会えちゃったんだよ、二十年の時を経て!
     十代の頃、あんなに憧れたテン・ブランクに。
     だって、「テン・ブランクです」って言った、あの瞬間が
     どうしようもなく藤谷直季で、「テン・ブランク」なんだよ。
     ライブで「はじめまして」って言ったその瞬間まで
     そのバンド名は、作中にも出てこなくて、ライブの幕開けと一緒に、わたしも「テン・ブランク」に出会った。
     そのことも、ぐわああっ、と思い出して。

     ドラマは普段から見ないとか、
     Netflixの契約めんどくさいとか、
     もう全部どうでもよくなって
    「これを見ない人生は嫌だ」と思って、一気に全部見た。

     ドラマの始まりがね、
     わたしの知らない「グラスハート」だったの。
     小説と違うところ、数えたらキリがない。

     最初は、ちょっと驚いたよ!
     でもね、西条が、藤谷直季を「先生」って呼ぶの。
     これ、小説でも理由の説明はかなり後の方で、でもいろんな人が「先生」って呼ぶの。
     ドラマでも、すごく自然に「先生」で。
     説明がないから、わかりづらいのに。
    「先生」って呼んでくれた。

     小説では、気分で呼び名を変える人が多いのだけれど、ドラマでのバランス、美しかったな。むりやり情報を詰め込みすぎず、誰の個性も潰してなかった。

     あと、西条が作中で初めて高岡尚の名前を聞いたとき、すごく嬉しそうで。
     ドラマでは全然説明ないけど、西条は高岡尚のファンだから。
     ずっと、そういう顔してたのが、嬉しくて。
     先生のロングコートも。
     なんでだろう、小説にイラストがそんなにたくさんってわけじゃなかったのに、先生はずっと裾の長いものを着ているイメージだったよ。

     そんなふうにぜんぶが、小説の「テン・ブランク」としての歴史がきちんとある上で、「TENBLANK」がドラマというメディアで何をどう表現しようかということに
     ものすごく、真摯に向き合っているんだな。っていうのがわかって。
     そう、わたし嬉しかったの!

     でもきっとさ、藤谷先生が「テン・ブランク」を、ドラマも交えた音楽にしようとする日が来たらさ、「いつもと同じじゃつまらないから、ドラマらしく派手に、格好良くしようよ!」って、言うよね。

    ▼雨とか

    ▼船とか

     こういう演出は、小説にはなくて。
     小説ではもっと地味に音楽ばっかりやっているのに、あれこれ事件ばっかり起きていたり、気づいたら喧嘩したり迷子になったり、みんなが全然まっすぐ歩けなくて、転んだり、拳以外じゃないもので殴り合いながら音楽を作っていく。
     個々の音楽の才の部分を除けば、非常に人間らしい、リアルな物語で(わたしは、そう思う。みんなが自分の都合であるからうまくいかないので、それが物語になっちゃってる。友達の話聞いてるみたいな気持ちになる)

     そもそも、バンドものとか、スポーツものって、エンタメにするの難しいと思っていて。あんまり現実に重きを置きすぎるとエンタメにならなくて、でも非現実すぎると冷めちゃうというか、作品にのめり込めない。一歩引いちゃう、みたいな。
     魔法とか異世界より、「ご都合主義」難しくて。

     雨の中とか、船の上、とか、普通は演奏しないよ!
     でもそれが、すごくエンタメで、ドラマで、魅力で
     現実の世界では、そんなところで演奏しないの百も承知なんだけど、
    「そりゃないよ」なんて思っている暇なくて、
     引き込んでくれるのがすごい。

     オーディションのときの西条のドラム、とてもどうしようもないみたいな音、してたのすごくて。
     あと、高岡尚のギターが、ちゃんとうるさくて、それがすごい好きで。
     なんていうか、彼はバンドのママ的な、面倒見がよくて、大人の立ち位置であることも事実なわけだけれど、彼だけが専業の「ギター屋さん」で
    (ドラマでは、鍵盤とベースが兼任扱いだけど、小説では鍵盤とドラムが兼任。先生は当然、ピアノ弾けるから。ドラマでも、ギターの彼だけが、ほかの楽器の演奏シーンが一切ない)
     ああ、わたしの知ってる高岡尚だ、と思って。
     坂本くんの音なんて、笑っちゃったもんね。
    「あ、坂本くんだ」っていうか、「めっちゃ知的で神経質そうなやつの音だ!」って思ったもん。同じ鍵盤屋さんを名乗らせてもらえるなら、友達になれそうにないタイプで、すごい坂本くんで、すごい好きだと思った。


     嬉しいなあって思っていたら
     制作の裏側まで見せてくれる、ドキュメントのYouTubeも見つけてしまって!
     もっと好きになっちゃったんだよ。

    「ごはん作ったの、ここ置いておくから食べておいてね」じゃなくて
    「すごく美味しいものを作りました! こだわりポイントはこことここで、××時間かけて煮込んだ自信の品です!」っていうふうに、提供してくれている。みたいな。
     それってすごいことだよね。
     だって、置いておくだけでもおいしいものを、もう充分に作っているんだよ?

    ▼Document of "Glass Heart"
     ドラマはNetflix限定だけど、ドキュメントは佐藤健さん(主演+プロデューサー)のYouTubeチャンネルに載ってるのすごい。このドキュメント、1話ずつあるからね。正気の沙汰じゃない(褒めてる)

    「ここまでしてくれるんだ」っていうの、連続で
     嬉しい以外の言葉が出ないけど、やっぱり嬉しくて。
    「丁寧さ」っていうのは、誤魔化しが効かないものだから
     どんな対象でもジャンルでも、受け取り手は、「丁寧さ」を嗅ぎ分けられる。

     人生が常に丁寧である必要はないよ!
     でも、ここぞってときには、怠ってはいけないもので
    「グラスハート」は、ずっと「ここぞ!」で、
     ずっと丁寧だった。死角ナシ。

     あと、佐藤健さんは、わたし(4歳から18歳までヤマハ音楽教室に通っていた元バンドマン)よりピアノ上手いよ……
    「天才、藤谷直季」のピアノだよ。
     明確な目標、目指して
     ああ、たっくさん弾いたんだろうなって思った。
     易くないピアノだった。
     ライブシーンで、お客さんを物語から醒めさせないどころか、魅了するっていうのが、本当にすごいことで。
     ライブシーンは嬉しいどころの話じゃなかった。
    「会えた」と思っている。


     二十年振りに、「テン・ブランク」と先生、みんなに会えてよかったです。
     ドラマもね、言いたいこと語り出したらキリがないけど、わたしが好きなグラスハートの「藤谷直季と、彼のことを大好きな人たちが一生懸命に、諦めず振り回されていく話」だったことが、やっぱり嬉しかったなあ。
     それが、「テン・ブランク」であり、「TENBLANK」なんだよね。

     何より、ドラマを見たあと「絶対に小説も読みたい」と思って、小説全巻セットを買ったことは、一生の財産です。
     6巻セットの最終巻「イデアマスター」に出会えました。女子大生の、西条朱音に。嬉しかったです。そして、そのあとの高岡尚の物語「アグリー・スワン」にも。これに出会わず死ぬわけにはいかなかったわ!

     最近はピアノ、あんまり弾かなくなったわたしで
     やっぱり、誰かと比べちゃうと「それほど音楽が好きじゃないかもしれない」とか、いろいろ考えちゃうけど
     なんていうか、自分らしいBPMで生きていこうと思えました。
     こうして、文章を書くことも。
     読み手に親切にすることと、作り手のワガママって、きっと共存するよ!
     いや、ワガママかな? ワガママって悪いことかな?
     諦めたフリがいちばんよくないよね。って、そう思える言葉の速度、思い出して。
     世界と正解かどうかは知らないけれど、わたしが手に入れたBPMを抱えていければ、これからきっと無敵です。

     もう怖いよね、「グラスハート」がない人生は。
     後回しにしなくてよかった。
     大事にとっておかなくてよかった。
     大切だって気づけて良かった。
     時を越えて出会わせていただいて、ありがとうございます。

     人生でまさか「TRNBLANK」の音楽、聞けると思わなかった!
     音を通して、言葉とか景色とか、たくさん伝わってきて。
     宝物です。
     小説だって何度も読むし(たぶん、貸してって言われても貸したくない。手元から離したくない)、ドラマも何回も見たけれど
     曲があるの、すごい。嬉しいです。
     日常に、「TENBLANK」いてくれる。嬉しいです。灯台みたい。


     ということで、「グラスハート」出会えてよかったわたしなんだけど
     この作品を、実は誰にもオススメしてなくて。
     わたしは、思い出ありきで見ているから。
     好きな人に「出会えた」わけだから。
     初めて藤谷直季に会う人が、彼をどう思うかわからなくて。
    (藤谷先生の、どうしようもないところが、わたしは好きだから。どうしようもないよね、それ以外がなくて)

     ただね、羨ましいなあ、と思っています。
     小説の「テン・ブランク」を知らない状態で
     ドラマの「TENBLANK」に出会った人は、どんな気持ちになるんだろう?
     ああ、わたしも記憶を消してドラマを見てみたかった!
     と思うけど、十代で出会った小説「グラスハート」は絶対に譲らないよ!


     ここまであれこれ書いたけど最後に。ドラマに関して
     劇伴が、高木正勝さん(「おおかみこどもの雨と雪」なども高木さんの劇伴)

    ▼高木さんのピアノ、とても好き。この曲は大学生のころから聞いてる

     そして、ピアノ演奏がスガダイロー氏

    ▼志人さん×スガダイローさんのピアノ。これ初めて聞いたときの衝撃たるや

    「TENBLANK」の楽曲が素晴らしいことはもちろんですが、
     劇中の音やピアノも大変に上質で、最高な気分だったことをお伝えしたいです。
     すごいね、贅沢だよ。
     でも、藤谷先生が「贅沢」な人だからね。

     わたしはただ、自分の人生を生きていただけで
     たくさんの贅沢、させてもらったみたいな気持ちで
     とにかく嬉しいです。幸せです。
     出会えてよかった、出会わせてくれてありがとう。

     願わくば、
    「グラスハート」を通して心に灯してもらったもの
     うーーーん、言葉にするなら
     とっておき、永久不滅の「大丈夫」かな!
     あと、西条から「野望」もらった!
     わたしにも、「野望」あるからって思い出せたよ。もう絶対忘れないね。

     この大丈夫を、たくさん抱きしめて、言葉と音にして
     生きて
     次の誰かに、渡せたらいいなあ。
     そう、つまりはそんな「野望」あります。

     その一歩として、感想文を書きました。
     好きすぎて、言いたいことがたくさんあって
     一割も書けなかったよ!
     きっとこれから、一生をかけて、書いてゆく。

     そんな作品に出会えました。
     ありがとう。
     ありがとうなのに、もらいっぱなしじゃ悔しいよ!って思っちゃうよ。悔しいくらいに素晴らしい作品だから、やっぱり「出会えてありがとう」なんだよね。

     2025年9月30日 ねる


    ▼小説全巻セット「いつ買おうかな」と思ってたら品切れになって泣いた。めちゃくちゃ探して買った。買わないと後悔すると思って。久しぶりに、そんな気持ちで買い物できました。あのときのわたし、ちゃんと買う方、選んでくれてよかった。人生、掴む決断だったね。

    ▼小説全巻セット、在庫復活しています。
    (わたしが高校生のときに読んでいた時代背景がそのままなので、人によっては違和感あるかも。携帯持ってないとか。当時の空気そのまま楽しんでほしい)

    画像
    全巻セットについてた小冊子、手帳に挟んで持ち歩いてる。
    大事なこと、忘れないように。
     手帳は、羽海野チカ先生の。
    わたし、十代のころから大事なもの、変わってなかったね


    ▼「グラスハート」のこと、すっかり忘れていたのに、すごーーーく影響を受けてたんだよね。って話のひとつ。坂本くんにモノ申す


    ▼「TENBLANKのCDをいつか買う」という夢を抱えながら生きています。すごいよね。嬉しいよね。そんな日が来るなんて、思わなかったよ。


    ▼now playing
    「TENBLANK」の曲を聞いていると、自分の速度、思い出して、わたしの好きなわたしになれるから。いつでも、どこかでも。だからすごくたくさん聞いています。宝物をありがとう。




     
     
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