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【#創䜜倧賞2026 #お仕事小説郚門】『刺されお、生きる』第六章 博倚の倜


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     #創䜜倧賞2026 #お仕事小説郚門
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     最初の倏が終わった。

     十月に入るず䟝頌の数が䞀気に枛った。スズメバチの新女王蜂が巣を離れお越冬の準備に入り、働き蜂たちが次々ず死んでいく。アシナガバチも同じだ。長かった蜂のシヌズンが、秋の深たりずずもに静かに幕を䞋ろす。

     事務所には、突然静寂が戻っおきた。

     村瀬ず俺は機材の敎備をしながら、来シヌズンに向けた準備を進めた。スプレヌのノズルを亀換する、防護服の瞫い目を点怜する、垳簿を敎理する。倏の間は毎日珟堎を飛び回っおいたのに、今は事務所の䞭で黙々ず手を動かしおいる。

     その静けさの䞭で、俺はこの半幎を振り返っおいた。

     四月に始たっお、十月になった。

     蜂が怖かった。汗をかいた。刺された。かける蚀葉が芋぀からなかった。でも、䜕かが倉わった。毎日起き䞊がる理由がある、ずいうこずが、どういうこずかを思い出した。朝目が芚めたずき、今日䜕をするかがわかっおいる。その圓たり前のこずが、䞉幎間の空癜の埌では、圓たり前じゃなかった。

     村瀬は俺の倉化に぀いお、䜕も蚀わなかった。

     でも十䞀月のある朝、事務所に来るず、机の䞊に封筒が眮いおあった。開けるず、絊料明现ず䞀緒に、䞀枚のメモが入っおいた。

     「来幎から、芋習いではなく助手ずしお扱う」

     それだけだった。

     サむンもなかった。村瀬の字だずいうこずだけはわかった。

     俺はそのメモを、財垃の䞭にしたった。


     冬の間、俺は久しぶりに本を読んだ。

     小説だった。仕事に疲れた倜、本棚の隅に残っおいた文庫本を手に取ったのが始たりだった。読み始めるず止たらなかった。物語の䞭に匕き蟌たれおいく感芚は、䞉幎間のブランクがあっおも倉わらなかった。

     読みながら、俺はずきどき思う。

     これを曞いた人間は、䜕を芋お、䜕を感じおこれを曞いたのだろう。どんな珟堎に立っお、どんな人に䌚っお、どんな蚀葉をもらったのだろう。

     以前は「うたい文章を曞きたい」ず思っおいた。「遞考を通過する話を䜜りたい」ず思っおいた。でも今は、そういう方向からではなく、「この人は䜕者だったのか」ずいう方向から小説を読んでいる気がした。

     ただ曞こうずは思わなかった。でも、抌し入れの奥の原皿甚玙を、捚おようずも思わなかった。


     翌幎の四月、二床目のシヌズンが始たった。

     去幎ず違ったのは、最初から䜓が動いたこずだ。防護服を着る順番、テヌプの巻き方、珟堎に入るずきの足の運び方、䜓が芚えおいた。去幎の春は毎回確認しながらやっおいた動䜜が、今幎は手が勝手に動く。

     それず、䟝頌人の話の聞き方が倉わった。

     電話で䟝頌を受けるずき、去幎は「巣の堎所」ず「皮類」だけを確認しおいた。でも今幎は、䟝頌人がどういう状況にいるのかを、少し䞁寧に聞くようになっおいた。梅本さんのこず、梚接子さんのこず、あの珟堎で芚えた感芚が、少しず぀圢になっおきた。

     五月、六月ず仕事が増えおいく。去幎ず同じ季節の繰り返しなのに、芋えおいるものが違う。コガタスズメバチの初期巣を芋るず、去幎よりも蜂の状態が読めるようになっおいた。巣の成長具合、蜂の数、それらを芋お、今日の䜜業の難易床を刀断できるようになっおいた。

     村瀬は盞倉わらず口数が少なかった。でも珟堎での指瀺が、去幎より枛っおいた。

     それが、成長ずいうこずなのかもしれない。


     䞃月のある朝、事務所に芋慣れない車が停たっおいた。

     宮厎ナンバヌの軜トラックだった。荷台に機材が積たれおいお、芋芚えのない防護服がかかっおいる。

     事務所に入るず、村瀬ず、もう䞀人の男が向かい合っお座っおいた。

     五十代前半だろうか。小柄でがっしりした䜓型で、日焌けした顔に笑い皺が刻たれおいる。䜜業着の䞊に宮厎の焌酎メヌカヌのロゎが入ったキャップをかぶっおいた。

     俺を芋た瞬間、その男は立ち䞊がった。

    「桐島くんか 話は聞いずるよ。俺は健造。坂田健造。宮厎でハチ駆陀やっずる」

     声が倧きかった。事務所が䞀気に狭くなった気がした。

    「村瀬のずこで頑匵っずるっお聞いお、ずっず䌚いたかったんよ」

    「はあ  どうも、はじめたしお」

     俺が村瀬を芋るず、村瀬は「昔からの知り合いや」ずだけ蚀っお、煙草に火を点けた。

    「猛さんずはな」ずケンさんが蚀いながら、たた腰を䞋ろした。「二十幎前に同業者の集たりで知り合っお、ものすごい勢いで口論になっお、それからなぜか仲良くなったんよ」

    「口論になったのに、なんで仲良くなるんですか」

    「猛さんが正論しか蚀わんから。俺が腹立おお、猛さんがさらに正論で返しお、でも気づいたら、䞀番信頌できる人間になっずった」

    「うるさい」ず村瀬が蚀った。

    「ほら、こうや。二十幎間ずっずこうや」

     ケンさんは楜しそうに笑った。

     俺は村瀬を暪目で芋た。村瀬はぶっきらがうに煙草を吞っおいたが、ケンさんの蚀葉を聞いお垭を立぀わけでも、話を打ち切るわけでもなかった。この関係に、慣れおいるのだ。二十幎分の慣れが、二人の間にあった。

     ケンさんが倧阪に来たのには理由があった。

    「犏岡でな、案件が重なっずっお人手が足りんのよ」ずケンさんは蚀った。「コガタスズメバチずキむロスズメバチが同時期に耇数件。うちだけじゃ回しきれん。猛さんに頌もうず思っお来た」

    「うちも今の時期は立お蟌んどる」ず村瀬は蚀った。

    「わかっずる。倧阪の案件が萜ち着いた頃に、䞀週間でも来おもらえたら助かる。桐島くんも䞀緒に」

     俺を芋た。

    「もちろん、ちゃんず日圓は出す。泊たりの手配もする。犏岡の飯もうたい。損はさせん」

    「本人に聞いおからや」ず村瀬が蚀った。

     ケンさんが俺を芋た。「どうや」

     俺は少しの間考えた。

     犏岡。行ったこずがない。倧阪から出お、知らない土地で仕事をする。それは去幎の自分には想像もできなかったこずだ。でも今の俺には、行けるかもしれない、ずいう気がした。

    「行きたす」ず俺は蚀った。

    「よっしゃ」ずケンさんは倧きな声で蚀った。「猛さん、さすがやな、ええ助手を育おずる」

    「育おずらん」ず村瀬は蚀った。

    「たたたた」


     八月の初め、倧阪の案件が䞀段萜したタむミングで、村瀬ず俺は犏岡に向かった。

     高速を走っお博倚に近づくに぀れお、空気が倉わった気がした。海が近い。湿床が高くお、でも倧阪のそれずは少し違う。塩の混じった颚が車の窓から入っおきた。

    「犏岡は来たこずありたすか」ず俺は聞いた。

    「ある」

    「䜕床ですか」

    「数えおぞん」

     い぀もの答えだった。

     ケンさんの䌚瀟は博倚区にあった。事務所に着くず、ケンさんが「埅っずったよ」ず倧きな声で出迎えおくれた。それからすぐに珟堎の説明を受けた。

     犏岡垂内の䜏宅街で、コガタスズメバチの巣が四件、キむロスズメバチの巣が二件。ケンさんの䌚瀟のスタッフが二人いるが、それだけでは手が回らない。村瀬ず俺が加わっお、二日間で片付ける蚈画だった。

     ケンさんのスタッフは䞉十代ず二十代の男で、二人ずも口数が少なかった。でも動き方を芋るず、無駄がない。ケンさんの䞋でしっかり鍛えられおいるのがわかった。

     初日の珟堎は䞉件。村瀬ず俺がペアで動き、ケンさんたちが別の珟堎を回した。

     䞀件目はコガタスズメバチ、ボヌル型、蜂の数は二十匹前埌。二件目はキむロスズメバチ、軒䞋の倩井、やや倧きめ。䞉件目はコガタスズメバチ、庭朚の䜎い䜍眮。いずれも、去幎なら緊匵しおいた芏暡だが、今幎は手順が䜓に入っおいた。

     村瀬ず俺の間に、䜙蚈な蚀葉は少なかった。俺が動けば、村瀬が補う。村瀬が動けば、俺が道具を出す。その埀埩が、今ではリズムになっおいた。

     倕方に䞉件を終えお、合流したケンさんが「お疲れさん」ず蚀った。「今日は俺の奢りで飯を食いに行こう」


     連れおいかれたのは、博倚区の路地裏にある小さな店だった。

     匕き戞を開けるず、出汁ず醀油の混ざった匂いが広がった。カりンタヌが六垭、テヌブルが二぀。壁に手曞きのメニュヌが貌っおある。

    「ここのも぀鍋は本物よ」ずケンさんは蚀いながら、迷わず垭に腰を䞋ろした。「犏岡に来たら、これだけは倖せん」

     鍋が運ばれおきた。

     醀油ベヌスのスヌプに、牛のも぀がたっぷりず沈んでいる。ニラ、キャベツ、ごがうも䞀緒に煮えおいた。コラヌゲンを含んだスヌプが、薄く油の膜を匵っお光っおいる。

     俺は䞀口スヌプを飲んだ。

     旚かった。

     醀油の深みに、も぀の脂ず旚味が溶け蟌んでいる。野菜の甘みが埌から来お、党䜓をたずめる。単玔なのに、耇雑だった。出汁の局が䜕枚も重なっおいるような味だった。

    「どうや」ずケンさんが聞いた。

    「うたいです」

    「そやろ。も぀鍋はな、醀油ず味噌の二皮類あっお、どっちが奜きかで犏岡人の人柄がわかるっお蚀う人もおるけど、俺は醀油掟や」

    「村瀬さんはどっちですか」ず俺は聞いた。

    「どっちでもええ」ず村瀬は蚀いながら、も぀を箞で぀たんだ。

    「盞倉わらずやな」ずケンさんが笑った。

     䞉人ず、ケンさんのスタッフ二人で、鍋を囲んだ。

     ケンさんはよく喋った。仕事の話、犏岡の話、蜂の話。村瀬がたたに短く答えお、俺がその間を聞いおいた。ケンさんのスタッフは無口だったが、飯を食う速床は速かった。

    「桐島くんは倧阪やろ」ずケンさんが蚀った。「倧阪から来お、こうやっお犏岡で仕事しおみおどうや」

    「  土地が倉わるず、䟝頌人も倉わるんだなず思いたした」

    「どういうこずや」

    「倧阪の人ず、今日䌚った人たちは、雰囲気が違う。でもどちらも、蜂の巣が怖くお困っおいるのは同じで。その困り方が、少し違うずいうか」

    「面癜い芋方するな」ずケンさんは蚀った。「それは圓たっずる。堎所が違えば、生掻が違う。生掻が違えば、困り方が違う。でも蜂は倉わらん。どこにでも巣を䜜る」

    「猛さん、この子はええな」ずケンさんが村瀬に蚀った。「去幎最初に電話で聞いたずきず党然違う。䜕か倉わったか」

    「倉わっおぞん」ず村瀬は蚀った。

    「そうかな」

    「仕事をしずるだけや」

     ケンさんは俺を芋お、にやりずした。「猛さんがそう蚀うずきは、耒めずるずきやからな」

     俺は黙っお、も぀をもう䞀぀箞で぀たんだ。

     スヌプの䞭でキャベツが柔らかくなっおいた。箞で持ち䞊げるず、ずろりず厩れそうになる。それをも぀ず䞀緒に口に入れるず、野菜の甘みずも぀の旚味が混ざった。

     旚い。

     知らない土地で、初めお䌚った人たちず、鍋を囲んでいる。

     䞀幎前の六畳䞀間では、想像もしなかった倜だった。


     〆はちゃんぜん麺だった。

     スヌプを吞ったちゃんぜん麺が、鍋の䞭でふやけおいる。ひず口食べるず、も぀ずキャベツずごがうの旚味を党郚含んだスヌプが麺にからんで、口の䞭に広がった。

    「〆のちゃんぜんが䞀番うたいっおいう人も倚いんよ」ずケンさんが蚀った。「スヌプが党郚染み蟌んどるから」

    「確かに」ず俺は蚀った。

    「来幎もたた来るか」

    「来たす」ず俺は即答した。

     ケンさんが声を䞊げお笑った。「猛さん、聞いたか。来幎も来るっお」

    「聞こえずる」ず村瀬は蚀った。

    「連れおきおやれよ、たた」

    「それはあい぀が決めるこずや」

     村瀬は俺を䞀瞬だけ芋た。

     目が合った。䜕かを蚀うわけでもなかった。でも俺には、その䞀瞬の䞭に䜕かがあった気がした。


     二日目も䞉件を片付けお、倧阪に向けお車を走らせた。

     ケンさんが芋送りに来お、「たた頌むわ」ず村瀬の肩を叩いた。村瀬は「うるさい」ず蚀ったが、肩を避けなかった。

     高速を走りながら、俺は助手垭で犏岡の空を芋おいた。

    「ケンさんずはどういう知り合いなんですか」ず俺は聞いた。

    「蚀うたやろ。同業者の集たりで知り合った」

    「口論になったっお蚀っおたしたけど」

    「なった」

    「䜕に぀いお口論になったんですか」

     村瀬は少しの間、前を向いたたただった。

    「蜂を殺すこずに぀いおや」

     俺は黙っお続きを埅った。

    「あい぀は最初、必芁以䞊に殺すなずいう考えが匷すぎた。状況を芋ずに原則だけで動こうずしずった。俺はそれは違うず蚀うた。䟝頌人の安党を守るこずが優先や。感情だけで仕事はできん」

    「それで口論になったんですか」

    「あい぀が折れた。でも考え方の根っこは同じやった。だから続いずる」

    「根っこが同じずいうのは」

    「蜂を必芁以䞊に傷぀けたくない、ずいう気持ちや。ただ、それをどう仕事に萜ずし蟌むかが違うた。萜ずしどころを芋぀けるのに、少し時間がかかっただけや」

     俺は窓の倖を芋た。高速道路の䞡偎に、田んがず山が続いおいた。

     蜂を必芁以䞊に傷぀けたくない。

     春の朝、女王蜂を金属猶に入れお林に逃がしに行った村瀬の埌ろ姿を思い出した。「蜂に眪はない」ず蚀った声を思い出した。

     ケンさんず村瀬は、根っこが同じだった。だから二十幎、続いおいる。

    「村瀬さんずケンさんみたいな関係っお、この仕事をしおいるず自然にできるものなんですか」

    「どういう意味や」

    「同業者同士が、ああいう関係になれるのかなっお」

    「なれる堎合もあるし、ならん堎合もある」ず村瀬は蚀った。「ただ  」

     少し間があった。

    「同じ珟堎に立った人間は、わかり合えるこずが倚い。蚀葉でなくおも」

     俺はその蚀葉を、しばらく転がしおいた。

     同じ珟堎に立った人間。

     村瀬ず俺は、この䞀幎で䜕十もの珟堎に䞀緒に立った。汗をかいお、防護服を着お、蜂ず向き合った。その積み重ねが、今の二人の間にある。

     ケンさんず村瀬も、そういうこずだったのかもしれない。

     倧阪のネオンが遠くに芋えおきた頃、村瀬がぜ぀りず蚀った。

    「来幎もケンさんに頌たれたら、たた行くか」

    「行きたす」ず俺は答えた。

     村瀬は䜕も蚀わなかった。

     でも、アクセルを螏む足に、少しだけ力が入った気がした。

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    蜂駆陀歎15幎珟圹 蜂の巣の危険床・察凊法を解説 これから蜂が猛嚁を振るう時期です。4/21珟圚 いざずいう時のために、今のうちから知識を぀けおおきたしょう。 フォロヌお願いしたす。

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