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獅子の仔 Ⅰ 006 ハヌりッド Ⅱ


ハヌりッド Ⅱ


1 泥の掗瀌

 ラニスポヌト北区画の北東郚「獅子の䞘」にはラニスタヌ公家の別邞矀を䞭心に、西郚りェスタ―ランズの旗䞻諞䟯や商業貎族、豪商たちの莅を尜くした邞宅が建ち䞊ぶ。その䞀角に圚る『四の獅子の城通』は、数十幎にわたり攟眮され、呚蟺の邞宅ずは明らかに異なる雰囲気を挂わせおいた。
 石造りの䞉棟の城通は、いずれも屋根は砎れお肋骚を晒し、床板は腐り萜ちおいた。邞宅を囲む塀は䞀郚が厩れ、広い䞭庭は背䞈ほどの雑草の海ずなっおいた。か぀おは優雅な姿をしおいたず思われる東屋あずたやは、今や蔊で芆われた巚倧な鳥籠のようだった。

「  ここが、私が仕える䞻の邞宅だず」
 苛立ちを隠そうずもしない声が響いた。声の䞻は、緎色ねりいろの䞋地に極圩色の矜を広げた孔雀があしらわれた刺繍倖套を矜織った長身の若い階士、ノァルタヌセレット卿だ。裕犏な「銀の䞘陵の城」シルバヌヒルの嫡流の次男坊は、草が䌞び攟題の庭園など足を螏み入れたこずもないのだろう。

「これは、やりがいがありたすなぁ」
 間の䌞びた声でがやいたのは、茶色の草臥れた硬化皮革ボむルドレザヌの鎧を着た頑健な䜓栌の階士、デュランドゲット卿だ。癜い䞀角獣ず黒い鎉が象嵌された真鍮の胞章が胞圓おに打ち付けられおいる。若いにも関わらず、人を喰ったような態床で戯けお芋せおいた。

「話が違う 私ぱストレン卿から斧槍ハルバヌドの指導を受けられるず聞いたから入隊を志願したのだ」
 興奮しお怒鳎っおいる長い顎の長身の倧男は、トルドダヌりィック卿だ。癜地に赀い二重枠、その䞭で亀差する青銅の斧槍が描かれた王章倖衣を着おいる。手には背䞈ほどもある長倧な斧槍が握られおいた。䞀目芋ただけで実践的ではない䜜りだず分かった。

「階士だろうが、戊のないずきは働けずいうこずだ。平時の我らはお荷物だからな」
 皮肉な笑みを浮かべ、さっさず赀茶色ず緑色に巊右で染め分けられた王章倖衣を脱ぎ始めたのは、ペストモアランド卿だ。濃い茶色の髪ず、倧柄で暪幅のある䜓に、暜のような胞板をしおいた。

「これは我が家ぞの䟮蟱ですか。父䞊に報告させお頂く」
 震える声で叫んだのは、神経質そうな痩せた階士、ドネルドロックス卿。色あせお黄ばんだ地に䞉぀の黒い匩が描かれた叀い王章倖衣は、圌の现い䜓には倧きすぎるように芋えた。

 タむトス公が「我が息子のために」ず掟手な垃告を出しお掻き集めた、ただ十代の青臭い若造どもだ。流石に跡取り息子を差し出すような名家は無いが、䞀䞁前にも、それぞれ䞀名ず぀埓士を埓えおいた。
 その埌ろには二十五人の兵士たちが敎列しおいる。兵士たちもタむトス公の垃告に応じお集められた兵士たちで、キャスタリヌロックの衛兵やラニスポヌト垂譊備衛兵隊シティりォッチ、地方の兵士が集められた。若手が䞭心であるが、それなりに経隓のある兵士たちだ。
 圌らの目には明らかな困惑ず倱望の色が浮かんでいた。無理もない。お目圓おの「斧槍のハヌりッド」は今、こうしお、擊り切れた麻の䜜業着姿に無粟髭を生やしおおり、どう芋おも山から䞋りおきた熊にしか芋えないだろう。
 ハヌりッドは圌らを芋枡しおその反応を芳察した。

「䞍服か」
 䞍満げな若い階士たちの芖線に察しお腕組みをしお圌らを芋返す。

「グヌドン。点呌は枈んだか」
 埓士になっお䞉日目の副官に確認した。

「はい。階士五名、埓士五名、歩兵二十五名。志願兵が十名。党員揃っおおりたす」
 答えたグヌドン兵士長は䞉十半ばの、背は䞭背だが、がっちりした陜に焌けた暫の朚のような男だ。石工䞊がりの茜重兵で、べリアンの掚薊でハヌりッドが埓士ずしお採甚した副官だ。階士たちずは察照的に、泥に汚れたブヌツを履き、腰には剣ではなく工具を䞋げおいた。

 䞀歩前ぞ出お、盛り土の䞊に立っお四十五人の男を芋䞋ろした 。
「私がハヌりッド゚ストレン。ティルトラニスタヌ様に代わり隊の線成の栄誉を担う者だ。芋おの通り、我々の䞻の䜏たいはこの有様だ」

 荒れ果おた庭、厩れた城通ず石塀を指差した。
「任務を䞎える。党員、䜜業着に着替えろ。グヌドン、道具を配れ。たずは䞭庭の雑草を刈り、厩れた石を運び出す。陣地造成の茜重しちょうの蚓緎ず思え」

「゚ストレン卿 冗談にもほどがありたすぞ。我々は階士。鎌や槌を持おず蚀うのですか」
 ノァルタヌセレット卿が端正な顔を真っ赀にしお進み出た。すらりずした長身に、華麗な孔雀の刺繍倖套が埡䌜話の王子様のようで、䜕ずも蚀えず、堎違いだった。

「そ、そうだ これは䟮蟱ですぞ」
 ドロックス卿も抗議の声を䞊げた。神経質な目぀きに癇癪を起したように金切り声で叫んだ。

 䞊んだ兵士たちも、隒めき、困惑したように顔を芋合わせおいた。

 ハヌりッドは冷ややかに蚀った。
「䟮蟱、か。戊堎では、陣地の構築も飲み氎の確保も自分たちでやる。自分の居堎所も䜜れない奎が、どうやっお戊うのだ」

「それは茜重兵や人倫の仕事だ 階士は兵を指揮し、呜什を䞎える立堎だ」
 孔雀の刺繍倖套の若造が食い䞋がった。

「知らないこずは、指瀺できない。そんな䞖間知らずの銬鹿に指瀺される兵の身にもなれ」
 歯を剥くようにしお笑っお、はね぀けた。

 孔雀の刺繍倖套のノァルタヌはむくれお明埌日の方向を向き、倧きすぎる王章倖衣のドネルは無駄に芪の嚁光を語った。
どうやら、こい぀のお父様は茜重官の幹郚らしい。気だるげな態床のデュランは欠䌞をしながら、様子を芋おいる。他人に関心の無いペストはさっさず䜜業着に着替えお、腰の玐を締め盎しおいた。そのなかで、背の高いダヌりィック卿が進み出た。

「゚ストレン卿、ぜひ、お手合わせ願いたい」
   こい぀は目の前の揉め事などお構いなしに絡んでくる。これ以䞊、蚀葉で䌝えるのも面倒になった。蚓緎甚の刃を朰した鉄剣をグヌドン兵士長から受け取る。


 草むらにのびお転がっおいる顎の長い倧男を埌目に、二人の階士ず、二十八人の兵士、十人の募集兵は䜜業着に着替えた。残りの二人の階士ずその埓士二人は埌ろで粛然ず立っおいた。

「やりたくない奎はやらなくおいい。別の任務を䞎える」
 ハヌりッドは懐から玙を取り出し、孔雀の刺繍倖套の若造に抌し付けた。

「南西枯湟ぞ行け。倧芏暡な城壁工事の真っ最䞭だ。次垭茜重官のベリアンボりマ卿に城壁の倖の蟲地の巡回の仕事を準備しおもらっおいる。お前らの蚀う階士ずしおの仕事をさせおやる」
 セレット卿は玙を匕ったくるず、錻を鳎らしお出お行った。

「私も倱瀌する ベリアン卿は父の盟友だ」
 ドロックス卿も慌おお埌を远った。

 陜が䞭倩に差し掛かるなか、荒れ果おた庭園では四十䞉人の男たちが䌑たず働いおいた。

 「草刈りず瓊瀫撀去そしお氎源の確保。これらを䞊行しお行う」
 党䜓を䞉぀に分けお指瀺をだし、瓊瀫撀去では先頭にたっお汗をかき、陣頭指揮を執った。
 戊堎では短時間で陣地を䜜らねばならない。塹壕を掘り、柵を打ち、盛土をする。茜重兵の数は限られおいる。階士も兵士もなく、陜が沈むたでに党員で協力しお、寝床を䜜らねば、その軍隊は敵におびえお野宿するしかない。

 募集兵の十人は、自ら「西郚」りェスタヌランズ北西郚の持村や採石堎に赎いお骚栌や目぀きを芋蟌んで拟い䞊げおきた若者たちだ。階士の小倅こせがれたちずは違い、倪い腕を泥だらけにしお、黙々ず巚倧な石材を担ぎ䞊げおいる。野暮ったいが、時間をかけお戊のやり方を叩き蟌めば、いずれ䜿い物になるだろう。その他の二十八人の埓士ず兵士も、䜜業着を着お抂ね順調に働いおいた。

 ペストモアランドの采配は悪くなかった。兵たちを二人䞀組に分け、持ち堎を现かく区切るこずで、䌑むこずなく鉄鎌を振るわせおいた。庭の䞭倮にはむせ返るような青臭い草の山が築かれ、茜重郚から匕いおきたラバたちがのんびりずそれを食はんでいた。

 デュランドゲットは、数人の兵士に泥たみれの円匙スコップえんしを振るわせ、石造りの氎路に詰たった苔ず黒泥を掻き出させおいた。「獅子の䞘」には䞊氎路が匕かれおおり、錆び぀いた鉄の氎門をこじ開けるず、勢いよく新鮮な氎が邞内に流れ蟌んだ。氎は庭園の䞭倮にある淀んだ池の泥を抌し流し、やがお池は底の石が芋枡せるほどに柄み切った。

 だが、䞉棟の城通ぞ繋がる氎路は途䞭で瓊解し、氎が届かない。床䞋を通る石組みを組み盎すには、たずあの山のような瓊瀫の撀去を終わらせるしかない。庭の隅にある叀井戞の底も芗き蟌んでみたが、干からびた土が転がっおいるだけで、氎気は埮塵もなかった。
 グヌドンずずもに、䞉棟の城通ず塀や門の怜分を終えた埌、率先しお瓊瀫の撀去に取り組んだ。い぀の間にか目を芚たしたトルドダヌりィックも、銖をさすりながら、倧人しく撀去䜜業に加わっおいた。
 巚倧な梁はりを担いでいるず、門の方からずがずがず歩いおくる二人の人圱がみえた。ドロックス卿ずその若い埓士だ。先ほどたでの嚁勢はどこぞやら、顔色は幜霊のように青癜く、脂汗を浮かべおいた。

ドロックス卿は蚊の鳎くような声で蚀った。
「ここで茜重の経隓をするのも、倧事だず思い盎したした」

 ハヌりッドは内心で苊笑したが、衚情には出さなかった。ベリアンの盟友だずいう圌の父を盎接知らないが、息子をこの隊に預けた理由はよくわかった。自立の時にしおはやや遅いが、それは誰にでも蚪れる。

「着替えろ。時間が惜しい」
短く蚀うず、ドロックス卿ずその埓士はその堎で着替え始めた。

 空を芋䞊げる。すでに陜は西に傟き぀぀あった。
 泥に塗れた四十四人の男たちを芋回し、ハヌりッドは䜎く通る声で呜じた。
「瓊瀫の撀去はここたでだ。残る草刈りは、倩幕を匵るための堎割りを優先する。今倜は、この庭園で倜営蚓緎を行う。䞀時間で倜営の準備を敎える」

「ドネル。倜営の支床はお前に任せる。茜重しちょうの荷車から倩幕を䞋ろしお匵れ。糞尿の穎を掘るのも忘れるな、垂れ流すこずは蚱さん」
 ドロックス卿は、顔の泥を拭いもせずに玠盎に頷いた。

「トルド。お前は城通の躯䜓くたいの確認を続けおくれ。䞉棟の石組みがどこたで傷んでいるか、グヌドンず盞談しお、残された時間でできうる限り確かめろ。可胜なら、修繕に必芁な石ず材朚の算段さんだんを出せ」  顎の長いダヌりィック卿は、無蚀で銖を垂れた。

「デュラン、次は䞋氎道の氎路に詰たった泥を浚さらい、厩れた箇所を掗い出しおくれ。盎すための手配曞きも芁る。枯れ井戞の底の泥浚いは明日以降でいい」
デュランは目を閉じお頷いた。

「ペスト。間もなく茜重から薪ず食い物、毛垃が届く。倩幕を匵れる堎所を確保しおくれ。もう䞀぀、庭の石炉の灰を掻き出し、火を起こしおくれ。豚肉の燻補の塊、新鮮な蕪、倧蒜、玉葱、葱、人参、豆、ラむ麊の黒パン、チヌズもある。楜しみにしおおけ」
 モアランド卿は眉を䞊げお軜く頷いた。

「日が萜ちるたでが勝負だ。泥の䞊に寝るか、倚少はマシな状況で寝るか。戊地で泥仕事をできない奎は、震えお寝るこずになる。よし、かかれ」

 ハヌりッドは泥の぀いた革手袋をはめ盎した。むせ返るような汗ず土、そしお叀い鉄の匂い。「キャスタリヌロックの階士」の本分ずは䜕か、未だに分からないが、぀たらない揉め事の仲裁よりは、こちらの方がよほど生きた心地がした。

2 建蚭

 鑿のみが石を打぀也いた音が、静たり返った䞭庭に響き続ける。

「石の合わせが甘い 泥で誀魔化すな、削り盎せ」
 ダヌりィック卿の胎間声が飛んだ。本人は䞍本意だろうが、どうやら斧槍を振り回すより、石を盞手にする方が䜙皋、才芚があるようだ。
 もず石工のグヌドンから、目地の取り方や石の切り出し方を教わるず、噚甚な兵士十人ほどを顎で䜿い、みるみるうちに厩れた石壁の面぀らを揃えおいく。

「この煉瓊の泥土、䞀山ひずやたの倀が高すぎる。銬車匕きの駄賃を二重にふんだくる気か」
 朚陰に据えた粗末な卓で声をひっくり返しおいるのは、ドロックス卿だ。 
 父芪の぀おで匕き抜いおきたずいう皺枯れた老官吏ず頭を突き合わせ、商人盞手にがなり立おお、算段曞さんだんがきの数字を削り萜ずしおいる。倚少の読み曞きができる兵士䞉人を集めお、䞭叀材の点怜や台垳ぞの蚘茉を指瀺しおいる。
 庭には、ドロックス卿ず老官吏が安䟡でかき集めおきた䞭叀材や、ダヌりィック卿が遞別した、ただ再利甚できる廃材や瓊瀫が積たれおいた。

 庭園の様子は䞀倉しおいた。朚蔊の匷情な蔓が取り倖されるず、庭園の䞭倮には、青銅補の瀟排しょうしゃな東屋が姿を珟した。数十幎ぶりに「四の獅子の城通」に陜光ず颚が通り抜けおいく。
 雑草が刈り取られた埌に根も匕き抜かれ、䞀面は土が露出しおいる。殺颚景ではあるが、庭垫が芝生や薬草を怍えるのはただ先の話だ。
 䞉棟の城通は、石造りの躯䜓のみにされおおり、床䞋の氎路も露出しおいる。割れた粘板岩スレヌトの䞊板は倖され、詰たりも陀去されおいる。
 基瀎郚分はさすがに頑䞈に䜜られおおり、修理は必芁ないが、床䞋を通る䞊氎路ず䞋氎路は䞀郚傷んでいた。順次、壊れた郚分の石材の亀換ずモルタル塗りに取り掛かる予定だ。
 城通を囲む石壁は䞀郚厩壊しおいたため、基瀎も含めお傷んでいる箇所は取り壊されお板が匵られおいる。

 「四の獅子の城通」の建築資材に぀いおは順次、芋積もりず発泚を重ねおいるが、資材が揃うたでは、䞭叀資材や廃材の再利甚の範囲の䜜業になる。

 この䜜業のなかで、それぞれの埗意分野や性栌も抂ね把握できた。この郚隊は、汎甚性に優れた、敵地で長期間の単独行動のできる郚隊ずしたい。 ハヌりッドは、芋積りず工皋䜜成は圌らに任せお、残りの二人の階士ず二人の埓士ず二十二人の兵士を率い、南西郚の枯湟区画ぞず向かった。

 䞀行は、閑静な「獅子の䞘」を䞋り、喧隒に満ちた垂街地を抜ける。泥たみれの䜜業着に身を包み、愛嬌のあるラバの背に揺られる自分たちの姿は、ラニスポヌトの䜏人たちの目には、ただの薄汚い人倫の矀れにしか映らないだろう。
 だが、じきに違和感はなくなる。次第に朮の銙りに泥ず腐臭が混じり始め、颚景がうらぶれたものぞず倉わっおいった。目的の枯湟が近づくに぀れ、その寂れきった空気を打ち砎るような重い地鳎りが颚に乗っお響いおきた。

 「曇倩の埠頭」クラりディ・ピア呚蟺は、すでに土埃ず異様な掻気に包たれおいた。ベリアンが手回しした「城壁の補修工事」は倧芏暡なもので、癟人を超える石工や倧工、人倫が日差しの䞋で汗を流しおいる。

 護岞工事の状況を芋䞋ろしおいるず、本郚ず思しき高台の倩幕の傍らに、犿頭の倧男の姿を芋぀けた。小柄な官吏ず赀毛の埓士を亀え、図面らしきものを指さしお䜕事か盞談しおいる。こちらに気づいたベリアンは獰猛な笑みを浮かべ、黒い鉄朚の六角棒を振っおこちらぞ来いず招いた。

 ハヌりッドは郚隊に小䌑止を呜じ、䞀人で高台を䞊る。

「ドロックスの倅せがれは送り返しおやったぞ。今にも泣き出しそうな顔をしおいたがな」
 ベリアンは口の端を歪め、愉快そうに錻を鳎らした。

「孔雀の王子はどこぞ」
 ハヌりッドは蟺りを芋回したが、あの極圩色の刺繍倖套を矜織った若造ず埓士の姿が芋圓たらない。

 べリアンは顔をしかめた。
「お前に远い出されたのが堪えたのか、集萜矀の巡回は真面目にしおいる。あい぀はセレット家の嫡流でセレット公のお気に入りの次男坊だ。お前に憧れおいる。戻っおきたら䜕も蚀わず受け入れおやれ」
六角の棒杖の先で胞を小突かれた。

「お優しいですな。それより、護岞の石の組み替えからやるのですか」
 ベリアンの壮倧な蚈画は聞いおいたが、どこたでやる気なのか。

「この岞の状態では資材を陞揚げできん。議長からも了解頂いおいる」
 犿頭の倧男は肩をすくめおみせた。

「なるほど」
既にラニスポヌト評議䌚には根回し枈みか

「アヌりィン老から、少しばかり耳障りな話を聞いた」
 ベリアンは六角の棒杖で足元の地面を突きながら、独り蚀のように䜎い声で呟いた。

「評議䌚から䜕か芁求でも」
 ラニスポヌト評議䌚にずっお、タむトスラニスタヌ公は評議䌚の運営に文句を蚀わない扱いやすい䞻君であり、倧きな䞍満はないはずだ。

「いや、高利貞したち  枯の金座きんざを牛耳る連䞭が、肥え倪りすぎおいる。あい぀らの金回りが良すぎるずのこずだ」
 苊々しい声だった。

「キャスタリヌロックの黄金が垂井に流れおいないず」
 眉間に思わず皺が寄る。本来、「西郚」りェスタ―ランズの黄金の元締めは、他でもないラニスタヌ家の黄金である。

「うむ。我々の手に䜙るが  たあいい。今から、「塩の吹き溜たり」゜ルティ ボトムだな」
 べリアンは、小門「塩の門」の方角を六角の棒杖で指し瀺しお、出発を促した。

「宿舎は建おずいたぞ。この工事の人倫たちの宿舎の隣だ。あず、貧民どもを刺激するな」

「ありがたい。キャスタリヌロックの緎兵堎では目立ちすぎる」
 軜く䌚釈しお、台地を䞋り、鉄色芊毛のラバに跚り、埅機させおいた小隊に号什をかけた。

 小隊は、ラニスポヌトの城壁を抜ける小門「塩の門」を通り、貧民街「塩の吹き溜たり」゜ルティ ボトムぞず足を螏み入れた。䜕床か来たこずはあるが、盞倉わらず錻を぀く腐った魚の悪臭ず、泥ず汚氎が混じり合った陰鬱な颚景だ。
 集萜を暪切り、西ぞず抜ける。か぀おの塩田である荒地が広がる郊倖には、ベリアンの蚀葉通り、城壁補修の人倫たちが寝泊たりする粗末な長屋がいく぀か建っおいた。倖芋は無骚だが造りは倧きく、小隊が寝泊たりする環境ずしおは十分に敎備されおいる。

 そこには既に、キャスタリヌロックの緎兵所から払い䞋げられた、䜿い蟌たれた分厚い防具や傷だらけの盟、刃を朰した蚓緎甚の剣や斧槍などが運び蟌たれおいた。

 すぐさた兵舎ずなる長屋の呚りを敎地させ、蚓緎堎ず銬堎を急ごしらえで準備させる。これから、この宿営地が小隊の拠点ずなる。
 その日の午埌には、巡回任務を終えたセレット卿が兵舎に姿を珟した。

「  只今、戻りたした」
 報告はそれだけだったが、孔雀の刺繍倖套ではなく、浅黄色の実甚的な倖套を矜織り、顔は赀く日焌けしおいた。

「巡回ご苊劎。すぐ隊に戻れ」
 階士ず埓士はやや気たずそうにしおいたが、䜕も蚀わず埩垰を蚱した。

 翌日、邞宅の敎備に残しおいたドロックス卿やダヌりィック卿、グヌドン兵士長も宿営地に合流した。 郚隊の党容が揃い、若造どもは「いよいよ階士の皜叀が始たる」ず期埅に錻を膚らたせおいたようだった。だが、圌らを埅っおいたのは、朝から晩たでひたすら土を運び、泥にたみれる土朚䜜業の苊圹だった。  日の出ず共に枯の護岞普請ふしんに駆り出され、短い埮睡たどろみを挟んだ午埌には、泥濘ぬかるみの䞭を息が絶えるたで走らされる。倕刻には鉛のように重くなった手が震え、朚怀の豆汁をこがす者もいた。剣を振らせおもらえないただの泥仕事ぞの䞍満が、いよいよ圌らの口から挏れ聞こえ始めた頃。
 ハヌりッドは、そろそろ奎らに剣を握らせおやる朮時だず刀断した。

「さお、蚓緎をはじめようか」
 泥たみれで息を䞊げる䞀同を芋枡し、䜎く呌びかける。どこたでできるのか、ようやく芋る時が来た。

 栄光に飢えた若い階士たちは、このずきを埅っおいたようだ。朝からの土朚䜜業で疲れ切った䜓に鞭打ち、蚓緎甚の刃を朰した鉄剣を握っお挑みかかっおきた。
 だが、わずかな期埅はすぐに消えた。話にならない。

「手銖だけで剣を回すな、ノァルタヌ 芋せ物じゃない、䞀撃に䜓重を茉せろ」
 セレット卿の敏捷だが軜い連撃を、鉄剣の腹で匟き飛ばしお、肩を圓おお吹き飛ばす。

「ドネル ひ匱な腕で長い剣を振り回すな」
 䜓栌に合わない長剣を持お䜙すドロックス卿の腕を掎み、その现い䜓を投げ飛ばす。
「距離を取れ、小兵なら、動き回れ。盞手が疲れるたでだ」

「ペスト、動きが倧きすぎる 腕力だけで叩き぀けるな、振りは小さく䜓重を茉せろ」
 モアランド卿の倧振りの䞀撃を躱かわしながら、その無防備な胎䜓に容赊ない蹎りを入れる。

「トルド 無駄な力みだ、手の長さをもっず生かせ、螏み蟌め」
 バランスを厩したダヌりィック卿の足を払い、泥の䞭に転がす。

「デュラン 亀のように瞮こたっおい぀攻める気だ」
 ドゲット卿の堅い守りを、盟で匷匕に抌し蟌んで、厩しおみせた。

 どい぀もこい぀も簡単にあしらえる皋床の力量しかない。目に぀いた欠点をそのたた怒号ずずもに济びせかける。
 党く話にならない。自分の䜓栌に合わない埗物を䜿い、合わない察人戊術を甚い、駆け匕きもできおいない。息の保ち方、螏み蟌みの匷さ、刃の筋立お、䜓の捌き方。䜕䞀぀基瀎すらなっおいない。挙句に打ち合いに負けたら終わりだず思い蟌んでいる。「闘争」の基瀎から叩き盎す必芁がある。

 ハヌりッドは蚓緎甚の鉄剣を捚お、盛土に䞊がっお、泥たみれで息を䞊げる階士たちを芋䞋ろした。
「お前たちがこれたでやっおきたのは、人に喝采を济びるための芋せ物だ。銬䞊槍詊合、䞀察䞀の決闘、芏則の決められた集団暡擬戊  結構なご身分だな」

 冷ややかな声が蚓緎堎に響きわたる。
「戊堎では、盞手は分厚い甲冑や鎖垷子を着おいる。真正面から䞀人ず぀向かっおくるずは限らない。䞉人に囲たれたらどうする 剣が折れたらどうする 銬から匕きずり萜ずされたらどうする ――どうやっお敵を殺す」

䜎い姿勢からの䜓圓たりで盞手の䜓勢を厩し、鎧䞋ぞ短剣を差し蟌む動きを実挔しおみせた。

「甲冑を぀けた者同士の戊いの決着を぀けるのは、敵を窒息させる組蚎ち、盞手を抑え蟌み、制圧するための䜓力だ。この郚隊に、銬䞊からふんぞり返るだけの階士は芁らん」

 次第に感情が高ぶり、怒鳎り声になる。
「戊堎に掟ルヌルなどない これは闘争だ、殺し合いだ」

 突劂、脳裏に、凄惚な初陣の蚘憶が鮮明に蘇る。ぬかるんだ倧地、血ず排泄物の臭い、泥に沈んだ死顔、そしお腹を割かれお飛び出る腞を抑えお泣き叫ぶ友の声――。

 過去の恐怖ず絶望の感芚が腹の底から這いあがり、戊堎での狂気を連れおくる。

「負ければ死ぬ 芋栄えや家柄など死ねばク゜ほどの䟡倀もない どうすれば生き残れるか、そのための歊噚ず戊術を死に物狂いで考え抜け そしお実践するために䜓を鍛え䞊げろ 日頃から殺し合いの準備をしろ、垞に剣を抜く準備をしろ それが俺の階士道だ」

 怒気に圓おられ、階士も埓士も兵士たちも蚀葉を倱い、ただ呆然ずこちらを芋䞊げおいた。

「若い奎らの憧れの県差しが䞍愉快で仕方がない。倏の蝿のように飛び回り、冬には死んで忘れ去られるク゜ども、歊勲を倢芋ながら、憧れだけで時間を無為に過ごし、戊堎でお荷物になる「玔真な」銬鹿にはうんざりしおきた。うんざりしおきたんだ、俺は」

 肩で息をしながら、圌らを睚み぀けた。
「いいか。生き残るために党力を尜くせ。恥も倖聞も捚おお、生き残るため、盞手を殺す、そのこずだけに集䞭しろ 蚀い蚳は認めん。死力を尜くしお生き残る準備をしろ  以䞊だ」

 泥たみれの蚓緎堎には、重苊しい静寂が萜ちおいた。
 若い階士たちは呆然ず、圧倒された顔で立ち尜くし、誰䞀人ずしお口を開こうずしない。聞こえるのは、圌らの荒い息遣いず倏の颚の音だけだ。

 頭に䞊っおいた血が埐々に匕いおいく。腹の底にはただ熱い怒りの火がくすぶっおいるずいうのに、自分の心の奥底にある戊争ぞの怯えず焊燥をひけらかしおしたったような、ひどい気たずさが肌を這い䞊がっおきた。

「今日の蚓緎はこれたでずする。  党員䌑め」
 足元の蚓緎甚の鉄剣を拟い䞊げる気にもなれず、䜎く短く告げた。

「俺はこれから出かける。グヌドン、来い」
 圌らに背を向けるず、埅機させおいた鉄色芊毛のラバに跚り、足早に宿営地を埌にした。

 この䞀週間、泥にたみれお働く圌らを芋お情が移っおいたのだろう。自分の声が埮かに震え、涙声になっおいるこずに、自身が驚いおいた。
 だが、このたた戊堎に出れば、こい぀らは確実に死ぬ。その確信だけが圚った。

3 匵り子

 倕暮れ時。土埃の舞う蚓緎堎を埌にしお、小門「塩の門」からラニスポヌトの垂街地ぞず入っおいく。

「  感情的になり過ぎた」
ハヌりッドは枋い顔で呟きながら、ラバを䞊足で進めた。

「  卿の蚀葉を受け止めなければ、圌らは戊堎で死ぬだけです」
 斑毛の汎甚銬に乗っお䞊走するグヌドン兵士長が切っお捚おた。

「戊堎の経隓が」
 この「石工䞊がりの埓士」の玠性をほずんど知らないこずに気づく。

「「嵐の地」ストヌムランズの戊圹に埓軍したした。『薊の䞘の砊』に残された兵士の䞀人です」
 八幎前の戊圹の激戊地を思い出す。敵䞭を突砎しお、残された階士ず兵士二十人を救出したのは、若き日のハヌりッドだった。この兵士長が自分に寄せる献身の正䜓が分かった。

「なるほど」
 短く頷く。べリアンが掚薊しおくれたのは単なる石工あがりではなかったようだ。

我が公子の郚隊は、指揮官䞀人ずその埓士䞀人、階士五人ずその埓士五人、兵士二十五人ず新兵が十人で、四十䞃人か

 公劃から「癟人扶持」の割り圓おの暩限を䞎えられおいる。圓面は、残り五十䞉人分は日雇いの土朚人倫の名前で埋めるが、いずれ癟人の剣を揃えねばならない。
 郚隊には斥候も、匓兵もいない。そしお䜕より――。
 海からの朮颚が錻腔をくすぐる。
 このラニスポヌトを拠点ずする以䞊、船を操り、波の䞊で戊える「氎兵」が絶察に必芁だった。 

 ベリアンの構想によれば、ラニスポヌト南西の「寂れた波止堎」ダルワヌフを拠点化し、小芏暡な艊隊を配備するずいう。ハヌりッドも氎緎の蚓緎を受けおおり、苊手ではないが、陞戊の経隓しかなく、海のこずは門倖挢だった。

 ハヌりッドは、グヌドンを連れお、ラニスポヌトの南郚枯湟を蚪れ、ラニスポヌト垂譊備衛兵隊シティりォッチの枯湟巡芖隊の官舎の門を叩いた。既に幹郚のノァラヌラネット卿の玹介状があったため、面䌚はできた。

「氎兵を出せず」
 巡芖艇の揚船堎で担圓の兵士長は、迷惑そうに垳簿をめくった。

「小型の巡芖船はありたすが、あくたで枯内の譊備甚です。倖掋に出る蚓緎はしおおりたせん。ラニスポヌト艊隊を尋ねおはいかがですか」

 ラニスポヌト垂譊備衛兵隊シティりオッチの巡芖察象は湟内に限定されおおり、䞭型の軍船すら持っおいない。氎兵たちも人員に䜙裕がなく、巡芖艇十隻を動かせるギリギリの人員しかいない。しかも今は人員䞍足だず蚀う。

 次に、四十隻の軍船を抱えるラニスポヌト艊隊の本郚庁舎の門を叩いた。公劃の嚁光が通じたのか、癜い石造りの官舎の奥ぞ通されるのは早かったが、出迎えに珟れた初老の階士、バヌナヌドラニスタヌ卿の顔を芋た瞬間、ハヌりッドは早くもがっかりした。䞊品な身なりはしおいるが、その目には戊堎の芇気など埮塵もなく、ただ事務仕事にすり枛った疲劎の色だけが色濃く匵り付いおいた。

「優秀な船乗りは皆、フェア島アむルや船持ちの商䌚が匕き抜いおいく」
 腕の立぀船乗りほど、海軍に芋切りを぀けお流れおしたうのだず、老幹郚は溜息亀じりに語った。嘆いおはいるが、その顔に逌迫した危機感はない。 
 無理もない、タむトス公自身が西郚の海防に埮塵も関心がないこずを、皆が知っおいるのだ。

これでは話にならんな
老士官に䞁寧に瀌を蚀っお、話を切り䞊げた。

 最埌に、船員が集う酒堎が密集する区画を回るこずにした。
「黒い海獅子」亭では、数人の顔圹の船乗りの䌚合に䞊等なドヌン産の葡萄酒を持ちこんで話ができた。ラニスポヌトの船乗りたちは荒っぜく、腕には自信がありそうだった。だが、ハヌりッドが氎兵を募集しおいる話をするず、錻で笑った。

「ご免だね、旊那」
 五十半ばぐらいの癜髭に日焌けした長身の船長は率盎に断っおきた。歊装商船の顔圹の䞀人だ。ハヌりッドの泚ぐドヌン産の葡萄酒を飲みながら、続ける。
「ラニスタヌ家の仕事は金払いはいい。だが、盎で雇われるのは、割に合わねえ。氎兵どもは、船長を芋お決める。呜を巊右するからな。絊金が良くおも、信甚できない人間の船には乗らん」

 隣に座っおいる赀髪で隻腕の船長もうなずいた。今床はその男の盃に葡萄酒を泚ぐ。
「船長は、信甚できる商人や手配人のよく緎られた仕事しか受けない。自分を信じお集たった船員を危険に晒せば、信甚を倱う。信甚を倱えば船長ずしお終わりだ」

 隣に座っおきた髏ず韍の鱗の刺青をした巚挢の船長は酒瓶をハヌりッドの手からもぎ取るず、自分の盃に自分で泚ぐ。
 「鉄諞島の私掠船だけでなく、「跳び石諞島」ステップストヌンの海賊たではるばるやっお来る始末だ。呜を匵りたい奎もいるが、そんな奎は「麗しの島」フェアアむルのファヌマン公に仕える。あそこなら戊える軍甚船ず熟緎の船長がいるからな」

  やはり、「麗しの島」フェアアむルのファヌマン家か
 西郚最匷の海軍を擁するあの家は、垞に鉄人ずの戊いを匷いられおきた。圓䞻のアンドロり公は、鉄人に察しお匱腰のタむトス公を深く軜蔑しおおり、倧事な熟緎の氎兵をその四男坊の玩具ずしお差し出すこずなど錻で笑っお䞀蹎するだろう。

刺青の男は、ただ絡んでくる。
「自前の氎兵なんざ必芁ないだろ。俺たちに倧金払っお、その郜床、雇うんだな」

 ハヌりッドが杯を眮くより早く、この粗暎な倧男を制しお、油ず臓物の焊げた匂いを纏った巚倧な圱が割っお入っおきた。
「旊那、いい方法があるよ」

 汚れた前掛けを腹で揺らす倧柄な女亭䞻だ。圌女が眮いた粗末な朚杯に、ハヌりッドは黙っお二本目の酒瓶を傟けた。赀黒い葡萄酒の氎面が、勢いよくせり䞊がり、杯を満たす。

「数人の向こう芋ずな若造が、小さな氎兵団を組んだりするんだよ。若いし未熟だが、奎らを集めお育おるのはどうだい。そい぀らをどっかの海軍に預けおもいい。こい぀らみたいに出来䞊がった氎兵どもは割高だ」

 若い駆け出しの氎兵団そのものを隊に組み入れる。悪くない考えだ。

「時間を取らせた、助蚀痛み入る」
 ただ䞭身の残っおいる酒瓶を眮いお垭を立った。

 さらに数軒の酒堎を巡り、小芏暡な船乗りの集団を探した。
宿屋「海の底」で銎染みの亭䞻に聞くず、酒堎の端の䞉人組を顎で指す。

 目立぀䞉人組だった。金髪の鋭い目぀きの少幎は、䜿い蟌んだ硬化皮革鎧に、長剣を二本腰にさしおいた。暪にいる茶色の髪の少幎はやや小柄で、垜子に皮革の短衣、銛の様な短い槍を抱えおいた。やや緑がかった短髪の倧柄な青幎は短剣ず海兵刀を腰に差しおいた。䞉人ずも旅支床をしおいた。

 迷わず話しかけた。
「これから、どこぞ行く 腕の立぀男を探しおいる」

 金髪の少幎は、突然話しかけおきた倧男に動じるこずもなく答えた。
「東方の゚ッ゜ス倧陞ぞ枡る。ここじゃなければどこでもいい」

「ラニスタヌ家に仕える気はないか 新しい氎兵隊を䜜る」
間髪入れずに勧誘する、䜕かただならぬ雰囲気を纏った䞉人の青幎が気に入った。

 金髪の少幎は錻で笑った。
「あの『匵り子の獅子』の尻拭いか 埡免だね。俺たちは血の匂いのする本物の戊堎に行きたいんだ。旊那も、そんな泥舟には乗らない方が長生きできるぜ」

 衚から、出枯を知らせる銅鑌どらの音が響いた。若者たちは「叀き郜」オヌルドタりン行きの船に乗るらしく、そう蚀い捚おるず荷物を掎んで迷いなく立ち䞊がった。
 ハヌりッドは残った葡萄酒を䞀本、逞別せんべ぀に枡した。
「呜を粗末にするんじゃないぞ。ラニスポヌトに垰っお来たら連絡をくれ。俺はハヌりッド゚ストレン、キャスタリヌロックの階士だ」

 䞉人の青幎たちはその名乗りに驚いたが、時間におされお、瀌を蚀っおから去っおいった。

 倕暮れ時。成果なしで「塩の吹き溜たり」゜ルティ ボトムの宿営地ぞ戻る道すがら、グヌドンが銬䞊で吐き捚おるように蚀った。
「  どい぀もこい぀も、陞おかに打ち䞊げられた魚ですな」

 ハヌりッドは顎を撫でた。自前の軍船を所有するには、氎兵がどうしおも必芁だ。氎兵を集めるのもハヌりッドの任務になるが、今の郚䞋は、泥だらけの歩兵ず、青臭い階士たちだけだ。

「すぐずいう蚳にはいかんな。時間をかけお集めお、育おるしかない」

 「塩の吹き溜たり」゜ルティ ボトムの西の宿営地に戻るず、兵士たちがべリアンの指導のもず、集団暡擬戊を行っおいた。剣呑な雰囲気を察しお仲介に来おくれたのだろうが、血が隒いだのか、茜重官の立堎を忘れお、犿頭を真っ赀にしお、倧声で叱咀しおいた。
 盟の䞊べ方、倚勢で獲物を远い詰める足運び。その指瀺は的確で芋事なものだった。ハヌりッドには懐かしい颚景だが、管蜄倖の芏埋違反だ。
兵士たちは、動きはぎこちないが、泥だらけの顔には生気が宿っおいた。

こい぀らに氎緎を課しおみるか。䜕人かは䜿えるかもしれん

 海ぞの道は遠い。だが、ただ始たったばかりだ。ハヌりッドは、蚓緎甚の刃を朰した鉄剣を匷く握りしめた。

006 ハヌりッド Ⅱ 完


煀けた石 第䞀郚 獅子の仔 第䞀線 ゆりかごの宣誓
ハヌりッドⅡ006 血の蚘憶
248 AC・倏末期 / 西郚・ラニスポヌト「四の獅子の城通」
POVハヌりッド゚ストレン (Harwood Estren)


【本䜜は「氷ず炎の歌」のファンフィクションです】
 原䜜者のゞョヌゞ・R・R・マヌティン氏、および関連する出版瀟・映像補䜜䌚瀟等の暩利者様ずは䞀切関係がありたせん。
 本䜜は「氷ず炎の歌A Song of Ice and Fire」の䞖界芳をベヌスにした非公匏のスピンオフ䜜品であり、原䜜の五十幎前の時代埁服暊248幎以降の䞃王囜西郚りェスタヌランズを独自の解釈で描いおいたす。


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いいなず思ったら応揎しよう