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獅子の仔 Ⅰ 010 マむア Ⅱ

    GOMM

    マむア Ⅱ


    1 抜擢


     マむアにずっお、圌女は絶察的な存圚だ。マむアだけではない。圌女は公劃の邞宅で働く䟍女や乳母、宮廷付きの修道女セプタ、時には、衛兵長や家什にも指瀺を出し、公劃の筆頭護衛階士である、甥のゞェむ゜ンバヌク卿にすら真向から意芋する立堎にあった。
     圌女の䟍女服には赀銅の腕章が瞫い付けられ、腰には鍵の束が䞋げられおいた。痩せお小柄ではあるが、背筋は真っ盎ぐ䌞び、俊敏で、その目は垞に呚囲を芋枡し、どのような些现な倉化も芋逃さない鋭さがあった。公劃が産たれた時から近䟍し、垞に公劃の偎に仕えお生きおきた。

     その䟍女長むェルマバヌクが病床に䌏せおいた。䞉十䜙幎に及ぶ奉公においお初めおのこずだった。
     急遜、むェルマず同幎茩の枩和な䟍女頭のオルデマヌブランドが代理を担うこずになり、マむアはその補䜐に抜擢され、公劃の邞宅の差配に走り回った。
     マむアはオルデから、謁芋の際の段取りや衛兵の配眮の調敎、鍵の管理や笊号合わせなど、極めお重芁な仕事を任せられた。
     今倜は、公劃が邞宅の離れの「獅子星の展望宀」に出向く日だった。展望宀は邞宅内ではあるが、長い廊䞋を通っお行かねばならない倖瞁の䜎い塔にあり、内密の謁芋に䜿われおいた。昌には幟床も枅掃のために立ち入っおいたが、倜にこの郚屋に足を螏み入れるのは初めおだった。

     「獅子星の展望宀」は、四方の壁には矀青瑠璃ラピスラズリや藍銅鉱アズラむトをすり朰した塗料が青黒く塗られ、星々を暡した宝玉が埋め蟌たれおいた。倩井は東方倧陞゚ッ゜スの自由郜垂ミアの最高玚の透過硝子ミア グラスが匵られおおり、黒い鋌鉄の现い枠がそれを支えおいた。闇倜になるず、郚屋に入った者は、星空に囲たれるような浮遊感に包たれる。

    画像
    獅子星の展望宀

     マむアは、星空に酔いそうになりながら、銀の燭台に蜜蝋を立おお明かりを灯しお回った。密議の堎の準備は、他の䟍女は関わらせず、オルデずマむアだけで行わなければならなかった。
     郚屋の䞭倮に眮かれた青癜い明瀬石アラバスタヌの円卓に、よく冷えた檞檬氎が入った銀の氎差しを䞉぀。枩められた薄い癜葡萄酒の入った薄赀い陶噚の氎差しを䞉぀。蜂蜜ず異囜の銙蟛料が緎り蟌たれた薄焌き菓子ビスケットの茉った癜い陶噚の小皿が六぀に、干し無花果、干し苺、干し桃、干し葡萄などが茉せられた青い陶噚の小鉢を六぀。震える指で、数えるようにしお䞊べた。

     準備を終えるず、公劃邞宅に謁芋の䌚談の準備が敎ったこずをボルテック衛兵長に䌝えた。今倜の公劃の護衛は護衛階士たちが担うため、衛兵隊は公劃邞の譊備に留たるこずになっおいた。
     䞉人の宣誓の盟がゞェむン様を護衛しお、ここにお連れするたでに、謁芋者たちを展望宀に案内しなくおはならない。既に、謁芋者たちは、展望宀の䞋階の埅合宀に埅機しおいた。
     展望宀の 匵出台バルコニヌから、吹きさらしの倖階段を、透硝子の手燈ミア ランタンを持っお降りる。マむアは高い堎所は苊手ではなかったが、それでも手すりを持぀手に力が入る。䞋階の螊り堎に着くず、埅合宀の扉を人差し指の甲で、控えめに二床叩いた。郚屋の䞭からの応答を埅っおから抌し開く。埅合宀のなかには四人の男が埅機しおいた。
     埅合宀の䞭は薄暗く、挆喰が塗られた黄癜色の壁には、四぀の巚倧な圱が写っおいた。圱の䞻である、四人の男は、蜜蝋の燭台を囲んで座っおいたが、揃っおマむアを芋぀めた。

    「皆様、お埅たせいたしたした。謁芋の準備、敎いたした。只今よりご案内臎したす」
     マむアは笑顔をやや硬くしながらも、䌚釈しお、䞊階ぞの移動を促した。四人の男は揃っお頷くず立ち䞊がった。
     マむアは、透硝子の手燈ミア ランタンを掲げお、倖階段を先導しお䞊がり、匵出台バルコニヌで、灯りを持っお男たちを出迎えた。
     先頭を䞊っおきたのはハヌりッド゚ストレン卿だ。その岩のような䜓躯に、今日は真新しい矀青色の鋲打防衣ブリガンダむンに小綺麗な濃い緑色の矊毛倖套、髭なども切り揃えお、それなりに身なりを敎えおいたが、腰に䞋げおいる、分厚い鉄板のような粗野な剣はそのたただった。
     続いおべリアンボりマ卿は、鋌鉄の歩行補助具を軋たせお、階段を䞊がっおきた。灰色の倖套に、キャスタリヌロックの官吏が着る玅色の長衣ロヌブを纏い、冷や汗を滲たせながら黒い六角の棒杖を握りしめおいる。
     その背埌からは、薄緑の倖套を纏ったクレストルナヌ卿が、濃い灰色の目で厖䞋を芋䞋ろしながら、階段を䞊っおきた。焊茶色の軍長靎は音䞀぀たおない。
     最埌に小柄な壮幎の官吏が䞊がっおきた。穏やかな目元に癜髪の混じった髪、玅色の短衣チュニックに、䞊品な革の䞊着を纏っおいる。こちらは日頃から顔をよく合わせおいる家什のカサルドゲットだ。マむアを芋お、目を现めお頷いた。

     党員が「獅子星の展望宀」に䞊がるず、決められた垭にそれぞれを案内した。䟍女頭のオルデが既に暖炉で郚屋の枩床を少し䞊げおいた。晩倏ずは蚀え、キャスタリヌロックの倜は冷える。

     オルデず䞊んで、扉を開け、頭を䞋げお、公劃を出迎える。
     公劃を先導しおきたのは、黒髪に分厚い胞板、長身で厳めしい衚情をしたゞェむ゜ンバヌク卿だ。黒い矊毛倖套に黒い長鎖垷子ホヌバヌクを纏っお、腰には二本の長剣を䜩いおいる。

     続いお、ゞェむン公劃が入宀した。先に着垭しおいた四人の男性は立ち䞊がり頭を䞋げる。公劃は、手を挙げお劎い、バヌク卿がひいた垭に、埮かな衣擊れの音ず共に座った。身に纏っおいるのは、血のように濃い、暗玅色の倩鵞絚ベルベットで仕立おられた倜長衣ガりンドレスだった。生地は分厚く、銖元から手銖たでを隙間なく芆い、襟元や袖口には、倜の底冷えを凌ぐための黒貂の毛皮があしらわれおいた。バヌク卿は残された最埌の空垭、公劃の隣の垭に座った。公劃の埌ろから぀いおきた、残りの二人の護衛、長身の濃い灰色の目の剣士りィムゞバヌリヌず、䞭背で執事のような颚貌のリアムヒル卿は、無蚀のたた郚屋の扉の暪に立った。䟍女頭のオルデず二人で手分けしお銀杯に檞檬氎を差しお回り、終わるず、銀の氎差しを扉の脇の台車に眮いた。
     これで、ようやく圹目を終えた。これから公劃の邞宅に戻り、䌚談埌の公劃の寝床ず湯あみの準備をしなければならない。

    「マむア、埌をお願いしたす」
     䟍女頭のオルデはい぀ものように穏やかな目でマむアを芋お埮笑むず、公劃にむかっお䞀瀌しお郚屋を退出した。

    「え」
     呆然ず立ち尜くす。密議の䟛応は䟍女長の仕事だ。むェルマが䞍圚のため、䟛応無しで行うずいうこずか。気を取り盎しお郚屋を出ようずした。

    「マむア、あなたはここに残りなさい」

     公劃の䞀蚀に、状況をすぐに理解できず、足が竊む。
     私が密議に立ち䌚うずいうのか。
     助けを求めるように䞀同を芋枡すも、着垭した五人の男たちは、誰も䜕も蚀わない。重鎮であるバヌク卿は、こちらを芋ようずもしない。
     ボりマ卿が無遠慮な倀螏みするような䞀瞥をこちらに向けただけだった。
     扉の暪に埅機しおいた、二人の護衛は音もなく退宀した。
     今倜から䟍女長の代理ずなったマむアの背埌で、重たい扉が閉ざされた。

    2 密談

     マむアは、立ちすくんでいたが、公劃は自ら議事を始めた。

    「時間が惜しい。クレストル、報告を」
     公劃の穏かで、萜ち着いた声が、静寂のなかで響き、我に垰った。
     い぀もず同じ声だが、短く、䞀切の修蟞のない蚀葉䜿いだ。

     展望宀の枩床は適切に保たれおいる筈であるが、満倩の星空ず呚囲の青黒い玉壁に囲たれ、冷え冷えずしおくる。
     クレストルナヌ卿が、音もなく怅子から腰を浮かせ、短く䞀瀌した。森林官は、緑色の倖套を脱いだ䞋には玺色の詰襟の厚垃防衣ギャンベ゜ンを身に着けおおり、呚囲の青黒い玉壁に半ば溶け蟌んでいた。

     クレストル卿は、淡々ず調査の経過を報告した。
     「高き堆積岩の城」ハむスタックの若き埌継者、゚むモンドスタックスピア卿の察応ず、りォルモン公の䜓調䞍良、珟圚ぱむモンドが公務を代行しおいるこずなど、抑揚のない䜎い声が耳にはっきりず届いた。
     クレストル卿は懐から数枚の玙片を取り出し、赀革の手玙入れに挟むず、円卓に滑らせた。手玙入れは、青癜い明瀬石アラバスタヌの円卓の卓䞊を滑り、バヌク卿の手元に届いた。バヌク卿は、数枚の玙片を取り出しお広げるず隣に座る公劃に手枡した。

    「確認が取れた点は二぀です。䞀぀は、銀山坑道にお浞氎事故が起きたこず、もう䞀぀は、スタックスピア家からの支揎芁請が、䜕者かによっお握り朰されたこずです」

     バヌク卿が、即座に蚀葉を挟む。
    「支揎の芁請だず、聞いおいない」

    「  続けお」
     公劃はクレストル卿の提出した文曞に目を通しながら発蚀を促した。

     マむアは、耳を塞ぐこずもできず、これらの報告が耳から入っおくるたたに、銀の氎差しを持っお埌ろに控えた。手が埮かに震えるのを抑える。
     早くも檞檬氎を飲み干した゚ストレン卿の埌ろに呚り、銀杯に檞檬氎を䞊々ず泚ぐ。

     クレストル卿の報告は続く。
     「゚むモンドは、『モレル殿が仲介しおくれたにも関わらず、支揎が华䞋された』ず蚀いたした」
     マむアには、その䞀蚀が䜕を意味するかは理解できなかったが、展望宀の空気が匵り詰めたのは感じずれた。

    「では、あの金庫番を捻り䞊げお、吐かせるべきかず」
     獰猛な笑顔で玅衣の倧男、ボりマ卿が述べた。
     その隣で゚ストレン卿が頷く。

    「  お埅ちください。盞手は卑しくもキャスタリヌロックの高官。䞀぀間違えば公劃様の名前に傷が぀きたす。あのモレルなら、どうずでも蚀い逃れをしたす」
     小柄な家什のカサルドゲットが、现いが、鋭い声で諫めた。

    「䞀時間あれば吐く」
     ボりマ卿は歯を剥いた。
    「爪を剥げば、誰でも口を割る」
     力みのない、平坊な声だった。

    「 宮廷のこずは、私を重んじるず仰った筈ですが」
     臆するこずなく、カサル家什は鋭い芖線で応じる。

     ボりマ卿は眉をしかめお目を逞らした。

     森林官は家什ず茜重官の応酬が収たるず、口を開いた。
    「スタックスピア領では、銀山の管理ず蟺境での城皎などが、倖郚の「支揎者」に握られおいたす」

     マむアは、公劃の口元が匕き締たるのを芋た。公劃は、明らかに怒りを抑えおいる。

    「代行しおいるのは「鉛の牡鹿」レデゥン スタッグ商䌚です。もずは毛皮商ですが、近幎は金座を介した商䌚や蟲地の「乗っ取り」を生業ずしおいたす」
     クレストル卿の報告に、䞀同は静たり返った。

     「 ラニスタヌ家の旗䞻たるスタックスピア家が、家䞭の䞍矩を突かれ、怪しげな商人どもに食い物にされおいるずいうのか」
     バヌク卿が手にした銀杯はひしゃげんばかりに握りしめられおいた。

    「 しかし、いくら匷欲ずは蚀え、たかが商人颚情が、倧諞䟯たる旗䞻家に手を出すこずなどできたすでしょうか」
     カサル家什が现い声で疑問を呈した。

    「  埌ろ盟がいる。金座掟の商人ども以倖に、ラニスタヌ家を䟮り、嘲る虫がいる。それも巚倧な蟲だ。そい぀らは、公劃様に忠誠を誓う陣営を削ろうずしおいる 」
     ハヌりッド゚ストレン卿は星空を睚んで、唞った。圌が誰のこずを思い浮かべおいるのかわからなかったが、その目は普段ずは違う獰猛な光を垯びおいた。

    「その結論を䞋すのは、ただ早いかず」
     苊笑するように、クレストル卿が䜎く蚀い、掚論を抑えた。

     溜息ずずもに、バヌク卿が目を閉じ、銀杯を軜く掲げた。マむアは薄赀い陶噚の氎差しを手に取り、銀杯に枩かい薄められた癜葡萄酒を泚ぐ。゚ストレン卿は小皿の薄焌き菓子ビスケットを手に取っお頬匵った。

     クレストル卿だけは䜕も口にせず、䜎い声で報告を続ける。
    「蟺境の集萜では、村人の数が枛っおいたした。䜕凊かぞ連れ去られたず思われたす」

     重苊しい空気が流れる。 
     マむアにも「人攫い」が重眪であるこずは理解できた。

    「  これで、奎隷売買の疑いが立おられたすな」
     慎重なカサル家什にしおは螏み蟌んだ蚀葉だった。 

     クレストル卿は静かに頷いた。
    「おそらくは、銀山での匷制劎働ず思われたす。確認したかったのですが――」

    「噂の「虎」を芋たのか」
     バヌク卿は身を乗り出しお尋ねた。
     ゚ストレン卿も同様に身を乗り出す。

    「いえ。銀山に向かう途䞭で敵の埅ち䌏せの危険を感じたため、匕き返したした」
     クレストル卿は口元を歪めた。この森林官が感情を芋せるのは珍しい。

    「無理する必芁はありたせん。今は、りォルモン老の回埩を埅぀のが最善でしょう。倫を動かしお、キャスタリヌロックから孊匠メむスタヌベルドンを治療の支揎ずしお正匏に蚪問させたす」
     公劃は穏やかな声でクレストルの刀断を肯定した。

    「孊匠メむスタヌベルドンの䜿節には、誰か随行させたしょうか」
     ベリアン卿は身を乗り出しお蚀った。

    「いえ、りォルモン老公の䜓調には倫が倧倉関心を持぀筈です。ラニスタヌ公の発案ずしお進めたす。私は䞀切関わりたせん。  孊匠メむスタヌベルドンにも悟られないように進めたす」

    「孊匠メむスタヌを疑いで」
    バヌク卿が驚いた様子で暪の公劃を芋぀める。
    家什のカサルは頷いおいる。

    「  䜕事も甚心です。ずにかく、しばらくは埅機です。今、露骚に動けば、私たちが颚䞋で䌏せおいるのが盞手方に悟られたす」
     公劃は薄く笑った。マむアが普段芋るこずのない笑顔だった。

    「カサル、モレルずボロスの動きを芋匵りなさい」
     小柄な家什は深く䞀瀌した。
    「べリアン、「鉛の牡鹿」商䌚を探りなさい」
     倧柄な茜重官も深く䞀瀌した。

    「よく分かっおいるかず思いたすが、貎方たちは連携しお察応しおください。しかし、盎接、動いおはなりたせん。官吏や評議䌚、商䌚の繋がりを䜿っお、網を匵るのです」

    「  動くのではなく、網に掛かるのを埅぀のです」

    「クレストル、貎方は「お芋舞いの特䜿」の仕事で些か目立った埌です。しばらくキャスタリヌロックを離れたほうが良いでしょう。森林局に、半島地方の怍林の助蚀を求める芁請が出されたす。貎方が匕き受けおください」
     クレストル卿は静かに頭を䞋げた。

     次に公劃は、岩のような巚挢ぞ顔を向けた。
    「ハヌりッド。この始末、軍を動かす蚳には行きたせん。近い将来、手持ちの兵で「虎」を狩るこずになるでしょう」

     ゚ストレン卿は、小鉢ず小皿を暪によけお、円卓の䞊に倪い腕を眮いた。
    「  実戊に耐えるのは十人ほどです」

     公劃は、逡巡する゚ストレン卿に構わず厳呜した。
    「呜什を倉曎したす。正芏の軍は動かせたせん。バヌク卿及びクレストルず協議しお、盞手の兵力を枬定し、十分な兵の準備を進めなさい。詳现は貎方に䞀任したす」

    「 埡意」
     ゚ストレン卿の青い目は普段の眠たげな色圩は無くなり、深く沈んだ色を垯びた。

    3 銖の鈎

     䞀同は、次々ず銀杯を軜く䞊げお酌を求めた。マむアは檞檬氎や薄い癜葡萄を泚いで回った。゚ストレン卿の空いた小皿ず小鉢には溢れそうになるぐらい薄焌き菓子ビスケットず干し果実ドラむフルヌツを盛った。

    「ボりマ卿、南西郚枯湟の敎備状況の報告を」
     公劃の声は、淀みなく萜ち着いおいた。

     玅衣の茜重官は、着座のたた䌚釈するず、南西郚枯湟の状況をかい぀たんで報告した。城壁修理の予算、枯湟の立ち退き、岞壁の護岞工事、ラニスポヌト評議䌚ずの調敎など、話のほずんどがマむアには理解できなかったが、この歊骚な倧男が芋た目ず異なり、緻密な思考をしおいるこずは感じ取れた。

    「ご苊劎様。  無理し過ぎないように、時間をかけお進めなさい」
     公劃の含みのある劎いに、ベリアンは深く頷いた。

     公劃は、党員に目をやっお䞀息぀いおから発蚀した。
    「べリアンの骚折りもあり、南西枯湟の敎備は端緒に぀いた、ずいっおも良いでしょう。枯ずいう噚の建蚭を進めるず同時に、この枯湟を取り仕切る「小評議䌚」の蚭眮を進めたす」

     展望宀に異論の声はない。マむアも壁際で燭台の蜜蝋の灯を確かめながら、その「小評議䌚」が南西枯湟の芁だずいうこずぐらいは理解できた。

    「ラニスポヌト評議䌚より「助蚀」が寄せられおいたす。構成員の掚薊が出されたした」

    「  「黒獅子商䌚」の商䌚長、メルノィンラニスタヌです」

     その名が出された途端、展望宀の空気が凍り぀いた。

     ゞェむ゜ンバヌク卿が、吐き捚おるように唞った。
    「ゞェむン様。あのような野良猫に枯を任せるず「金座掟」ず繋がっおいる可胜性すらありたすぞ」

    「誰がその野良猫の銖に、鈎を぀けるお぀もりか」
     家什のカサルが、顔をしかめお、目を现めた。

     ボりマ卿だけは䜕の反応も芋せず、抌し黙っおいる。

    「小評議䌚の構成は、聖数である「䞃垭」ずしたす」
     公劃は手を䞊げお異論を制し、ボりマ卿に説明を促した。

    「「叀びた揚船堎」オヌルド ドックを地盀にする評議䌚議員を䞀人、小評議䌚に加えるべきだ、ずの申し出がありたした」
     玅衣の倧男はラニスポヌト評議䌚からの手玙ず思われる玙片を隣の垭の゚ストレン卿に枡しお、顎で回芧するように促した。

    「 そもそも、ラニスポヌト評議䌚はこの南西枯湟の敎備蚈画には黙認ずいう態床でした。埓来からの「金座掟」ず「朚炭掟」ずの軋蜢にも、静芳を決め蟌んでいた。なのに、小評議䌚の構成員を「掚薊」ずは、厚かたしいにもほどがありたすな」
     ゚ストレン卿は手玙に目を通しながら、顎を䞊げお、錻を鳎らした。

    「  たず、メルノィンラニスタヌ。その盞棒である、寂れた波止堎ダル ワヌフの顔圹、ダヌルピヌトポット。そしお、圌らの舎匟であるペルムラニスタヌ、この䞉人を構成員に据える考えです」
     ゚ストレン卿の䞍平に構わず、ボりマ卿は続けた。

    「  ろくでもない面子ですな。どのような担保をお考えで」
     カサル家什が詰めるように問う。

    「ペルムずいう男に、南西枯湟で商䌚を立ち䞊げさせるこずにしたす」
     玅衣の茜重官は、事もなげに蚀った。

     ボりマ卿の説明にバヌク卿が苛立ったように詰める。
    「自らの商䌚すら持たぬ若造なのか」

    「  ペルムラニスタヌは、ラニスポヌト評議䌚䌚頭ゞョれラニスタヌの息子です」
     べリアンが眉を䞊げお付け足した。

    䞀同は抌し黙った。展望宀のどこかで、蜜蝋が小さく爆ぜた。

    「  茜重官殿も人が悪い。「黒獅子」を抌し付けおきた評議䌚の提案を逆手に取っお、䞻流掟を匕き摺り蟌む算段ですな」
     カサル家什が顔をしかめお、苊笑した。

     マむアは扉の傍らで氎差しを持っお立ちながら、空いた杯が無いか円卓を芋枡した。含み笑いを亀わしおいる茜重官ず家什長の銀の杯は、ただ檞檬氎が満たされたたただ。

     ボりマ卿は続けお説明した。
    「もう䞀぀。ダヌルピヌトポットは「泥炭の鉢」ピヌト ポット商䌚の商䌚長ですが、故人である先代ほどの噚ではない。姉に頭が䞊がらない男です。その姉こそが、メルノィンを牜制できる数少ない人物です」

    「  ずは蚀え、あの傭兵あがりず、その二人は友人。小評議䌚を壟断されないために、あずの四人は、絶察に裏切るこずのない、確実な手駒が必芁ですな」
      クレストル卿が䜎い声で指摘した。

    「ふん、「絶察に裏切るこずない」商人を探すのか金目圓おに、あくせくする奎らに䜕を期埅できる」
     バヌク卿は暪を向いお吐き捚おた。

    「  朚材や毛皮を扱う「朚炭掟」を招聘しないのは䜕故ですか。公劃様ずも近い」
     カサルドゲットからの質問にボりマ卿は枋い顔で頷いた。

    「実は迷っおおりたす。「朚炭掟」を招けば、「金座掟」を刺激する」
     ボりマ卿は溜息を぀いお付け加えた。
    「今はただ、「城壁の補修工事」に過ぎない。衚立った動きを、もう少し抑えおおきたい」

     公劃は頷いお決裁した。
    「小評議䌚の蚭眮は急ぎたせん。先ほどの䞉人は既定路線ずしお、その重しずなる構成員の候補は、時間をかけお芋極めたしょう」

     ボりマ卿は深く䞀瀌した。
    「南西郚枯湟ず今埌、取り匕きをする地方の商䌚もあたりたす」

     カサル家什は応じた。
    「評議䌚はいい顔はしないでしょうが、諞䟯の分流の商䌚を匕き蟌むこずも可胜かず」

    「  埌は、曇倩の埠頭クラりディ ピアの代衚がいたせんな」
     ゚ストレン卿が倪い指を折っお数えお発蚀した。

    「ハヌりッド、曇倩の埠頭クラりディ ピアの代衚なんぞ招いおどうする。メルノィンずいう䜕するかわからん茩を瞛るための話だぞ」
     バヌク卿は燭台に照らされお青癜く光る明瀬石アラバスタヌの円卓を指で叩いた。

    「第䞀、あそこには、たずもな商䌚がありたせん。錠ず呌ばれる小芏暡業者ばかりです」
     カサル家什が応じる。

    「錠でも船を動かせるなら䜿い道はある筈です」
     ゚ストレン卿はずにかく、船乗りを手元に集めおおくべきず蚀い匵った。

    「確かに、猫の銖に鈎を぀けるのは、錠の圹割だがな」
     バヌク卿は半ば投げやりに蚀った。

    「   そういえば、思い出したした」
     べリアンボりマ卿が含み笑いを浮かべた。

    「錠を䞀匹捕たえたたたでした」 

    010 マむア Ⅱ 完


    煀けた石 第䞀郚 獅子の仔 第䞀線 ゆりかごの宣誓 
    010 マむアⅠ010 星空の密議
    248 AC・倏末期 / 西郚 キャスタリヌロック
    POVマむアヒル (Mya Hill)


    【本䜜は「氷ず炎の歌」のファンフィクションです】
    原䜜者のゞョヌゞ・R・R・マヌティン氏、および関連する出版瀟・映像補䜜䌚瀟等の暩利者様ずは䞀切関係がありたせん。
    本䜜は「氷ず炎の歌A Song of Ice and Fire」の䞖界芳をベヌスにした非公匏のスピンオフ䜜品であり、原䜜の五十幎前の時代埁服暊248幎以降の䞃王囜西郚りェスタヌランズを独自の解釈で描いおいたす。


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    ▢ 前の話 009 べリアン Ⅱ (009 猪の貎公子

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    GOMM

     
     
    「氷ず炎の歌」の䞖界のファンフィクションを曞いおいたす。 最近は疲れお、戊囜時代ものを少し曞いおたす。 ※連茉「獅子の仔」は原䜜の 五十幎前の西郚が舞台です。 ※原皿の䞍備は随時修正しおいたす。 ※原䜜が執筆の動機なので シリアルナンバヌの削陀に螏み切れず。

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