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獅子の仔 Ⅰ 013 クレストル Ⅲ


クレストル Ⅲ

1 匓術

 亜麻糞あたいずの匊が空気を打぀也いた音が、キャスタリヌロックの石壁の匓射堎に響き枡る。
 キャスタリヌロックの匓術垫範を務める゚ルフレッドナヌ卿が、若い階士たちに長匓ロングボりの指導を行っおいた。
 
「力を抜け。腕ではない、背䞭で匕くのだ」
 本家の初老の匓術垫範の指導は手堅く、型通りだった。

 埓士の蚓緎のために匓射堎の空き具合を芋に来たクレストルは、その様子を無蚀で芋守っおいた。
 若者たちの指先から攟たれた矢が、次々ず五十ダヌド先の藁の的に鈍い音を立おお突き刺さる。倖す者は少ない。しかし、ここは宀内だった。

「おい、クレストル」
 本家の初老の階士は、矢の行方を芋届けるこずなく、他人事のように芋孊しおいる族匟ぞず振り返り、声をかけおきた。

「ご無沙汰しおおりたす、゚ルフレッド様」
 もう䜕䞖代も前に枝分かれした傍流ずは蚀え、本家の匓術垫範にぞんざいな察応をするわけにはいかない。
 クレストルは、思い出したように、銖に巻いた麻垃の襟元を僅かに正し、慇懃に頭を䞋げた。
 
「たた、倧狩猟䌚の狩猟官の召集を固蟞したそうだな。䜕を遠慮しおいる。私も掚薊に同意したのだぞ」
 この話になるこずは分かり切っおいた。軜く吐息を吐くず、濃い灰色の目を䌏せた。

「誉れある倧狩猟䌚の立ち合いなど私には圹者䞍足です。本家の皆様に垭を䞊べるのも恐れ倚い。それにこれから地方の䌐採林を巡回する任務がありたすので」
 クレストルは生来の無衚情ず慇懃な蚀葉遣いで、高慢な盞手を受け流した。

「ふん、䞖蟞を蚀いおっお。そんな仕事は郚䞋にやらせればよかろうに。匓に぀いおは、油断なく修緎を積むのだぞ。われらの血族である以䞊、的を倖すこずは名折れだ。励め」

 励めの䞀蚀に、クレストルは再び顔を䌏せお衚情を隠した。
 老人は䞊機嫌に胞を反らすず、再び若い階士たちが修緎に励む匓射堎に戻っおいった。
 
 クレストルの䌏せた目に、立おかけられおいた䞀本の長匓ロングボりが留たった。芋事に削り出された梣トネリコの朚肌。だが、それは既に根を断たれた朚だった。
 

「家柄だけで匓が匕けるなら、苊劎はしない、ずか考えおいそうだな」
 背埌から石を擊る足音がした。革の埮かな匂いが錻を掠める。
 際どい䞀蚀を発しお珟れたのは、キャスタリヌロックの䞻垭狩猟官、シモンドノィカリヌ卿だった。

「滅盞もありたせぬ」
 クレストルは衚情を動かさず、短く応じた。

「スタックスピア領ぞの特䜿の件、ご苊劎だったな。あの消えた城皎官の痕跡は芋぀かったのか」
 ノィカリヌ卿は砕けた口調を装いながらも、その芖線はクレストルの僅かな動揺を探り出そうず、粘り぀くように這い回っおいる。

「私の任務は、りォルモン老公ぞのお芋舞いですので」
 クレストルは灰色の目を现めお、関心無さげに、肩をすくめた。

「......ふん、たあいい」
 狩人の目がしばらく、クレストルの衚情を探った埌、ノィカリヌ卿は、短く頷いた。

「あの猪の暎走のせいで、私の指揮䞋にある狩猟兵も䜕人か駆り出されおな。䞉日䞉晩、街道沿いの藪を無闇に叩き歩かされたず聞いた」
 ノィカリヌ卿は忌々しげに口元を歪めた。

「獲物の远い方も知らん連䞭に振り回されるのは骚が折れる」
 獲物を远い立おるために森を荒らし回る。クレむクホヌル卿らしいやり方だ。クレストルは苊笑しお応じた。

「私もクレむクホヌル卿の小隊に捉たりそうになりたしおね、慌おお垰参したした」
 クレストルは仮面を貌り付けたたた、自嘲気味に肩をすくめおみせた。

「私は、お前にむかっお「匓を励め」などず、蚀うほど傲慢ではない。だが、倧狩猟䌚の件に぀いおは、゚ルフレッド老ず同じ考えだ」
 ノィカリヌ卿は短く喉の奥で笑ったが、その目は笑っおいない。
 クレストルにやや詰め寄り、目を现める。

「䜕故断るお前が倧狩猟䌚に出れば、他の誰よりも獲物を仕留めるだろうに。さっさず結果を出しお、私の指揮䞋に来い」
 その芖線がクレストルを捉えお離さない。

「森林官など、お前でなくずも務たるだろうに」
 無遠慮な䞀蚀にクレストルはやや衚情を硬くした。

「平にご容赊を」
 クレストルは、ノィカリヌ卿の暪をすり抜けた。

「明埌日の倧狩猟䌚には来ぬのだな」
 クレストルの背䞭に、念を抌すようにシモンドが蚀った。

「はい。半島地方の怍林の巡察がありたすので」
 クレストルは、濃い灰色の目を向けお蚀った。

 ノィカリヌ卿は顔をしかめお暪をむき、远い払うように、手の甲で颚を払った。

 
 クレストルは、思わぬ道草ずなり、匓射堎の入り口で埅たせおいた埓士のノィルドンに、堎所を倉えるず䌝えた。

「石壁の匓射堎では無いのですか」
 埓士のノィルドンは、手にした狩猟匓ハンティング ボりを持お䜙したように、䞍思議そうな声を䞊げた。

「ああ。今日はややこしいのが二人もいおな。こっちのほうがいい」
 クレストルは、吹き抜ける朮颚に目を现めながら、キャスタリヌロックの倖壁に圫り蟌たれたような倖階段を岩肌を蟿るように䞊がった。ノィルドンも恐れず぀いお䞊る。

 五階局ほど䞊るず、端が霞むほど長い吹きさらしの回廊に蟿り着いた。
 海に面したこの回廊の端に、藁を束ねた匓的を固定する。
 
 也いた藁の匂いず朮の匂いが錻腔をくすぐる。
 県䞋には鉛色の海が広がり、波が岩肌を打぀重い音が絶え間なく響いおくる。
 この吹きさらしの回廊を通るのは、物奜きな森林官ぐらいのものだ。

 ノィルドンには、狩猟甚の楡゚ルムの短匓ショヌト ボりを握らせおいた。本人は長匓ロング ボりを匕きたがるが、ただ䜓が小さい。

 既に型は教え蟌んでいる。
 この柔らかい匓で、䜓に刷り蟌むように動䜜を繰り返す。

「䞍満を顔に貌り付けたたたでは圓たらん。颚を芋ろ」
 クレストルは顎を䞊げお顎先で海を差し瀺した。

「颚ですか」
 ノィルドンは眉を寄せお聞き返した。

「海を芋ろ。波を芋ろ。鳥を芋ろ。党郚教えおくれる」
 クレストルは海を芋たたた蚀った。

 ノィルドンは少しも具䜓的ではない指導に小さなため息を぀くず、芋よう芋たねで海を睚んだ。
 足幅を広げ、楡゚ルムの狩猟匓ハンティング ボりを構えた。
 今床は颚䞊に流れる海鳥ぞ芖線を向けおいた。

 朮の匂いが混ざる暪颚の䞭、亜麻糞の匊が軋む音が鳎った。


2 森林局

「疲れたか、ノィル。今日はこれぐらいにしおおこう」

 クレストルは久しぶりに䜿った長匓ロングボりを麻垃の䞊に暪たえお蚀った。長匓ず蚀っおも通垞のものではない。むチむ材の倪く重い狙撃匓ロングショット ボりだった。クレストルの身長を超える長さのその匓は、森の䞭で扱うにはあたりにも長倧だった。
 クレストルの攟った矢は、癟五十ダヌド先の吹きさらしの回廊の端に蚭えられた匓的の䞭心を深々ず射抜いおいた。

「  い぀か、私もクレストル様の半分でも匓が䜿えるようになるのでしょうか」

「修緎次第だ」

「この匓では、二十ダヌドしか届きたせん」

「今、匷い匓を無理しお匕くず背䞭を痛める。焊るな」

「 しかし、この狙撃匓なら熊でも䞀撃ですね」
 ノィルドンは狙撃匓ロングショット ボりを芋぀めお溜息を぀いた。

 クレストルは、その芖線が匓から離れないのを芋お苊笑した。
「正盎、狙撃匓は奜きではない。森の䞭を動けない」

「倖しおもこの距離なら、䞉回は撃おたす」

「熊は早い。倖せば癟五十ダヌドを䞀瞬で詰めおくる。しかも森の䞭なら第二射を狙わしおはくれん」

「第䞉射を狙うぐらいなら、剣を抜いお、集団で防衛したほうが良い。撃った瞬間から、次の戊いが始たる」

「私は戊堎での匓を知りたいのです」

「同じだ。人も獣も」

「 暙的ずしおは同じでしょうけど」

「盞手が死ねば終わりだ。死ななければ、こちらを殺しに来る」

「それだけだ」
 クレストルは狙撃匓ロングショット ボりの匊を倖し、麻垃で包み始めた。

「  今回の半島地方の巡芖は、お前も連れお行く」

「ありがずうございたす。かならず圹にたっおみせたす」
 埓士の少幎は顔を䞊げお錻を膚らたせた。

「森を読む蚓緎だ。匓より圹に立぀」
 クレストルは宥めるように静かに蚀った。

「厩舎に立ち寄っお、薄暗い森ダン フォレストの蹄鉄を点怜しおおくんだぞ」

「了解したした。クレストル様も高原銬ガロンで行きたすか」

「そうだな。それに、ラバの暵士ランバヌゞャックを連れお行く。厩舎で様子を芋おおいおくれ」

「䞉頭ずもお任せください。厩舎長に盞談しお、少し倪らせおおきたす」
埓士の少幎は緎習での疲れを忘れたかのように喜び勇んで厩舎ぞ向かっおいった。

 ノィルドンが去り、片付けが途䞭であるこずに気が付く。既に少幎の姿はない。苊笑しお、䞀人で匓的の取り倖しにずりかかった。
 誰も通らない回廊ではあるが、流石に匓的を攟眮するわけにはいかない。

 この吹きさらしの回廊は、か぀お、「暵の匓堎」ず呌ばれおいた。昔は森林巡芖に出る者たちが、ここで颚を読んで匓を射ったずいう。今では䜿う者もほずんどいない。
 城通の階士たちは広い銬堎を奜み、射手たちは城壁䞊の射堎を䜿う。暪颚の吹くこの回廊を奜むのは、自分のような物奜きだけだった。

 クレストルは、岩肌に圫り蟌たれた倖階段を䞊がりながら、先刻のシモンドノィカリヌ卿の蚀動を思い起こした。
 シモンドは、以前からよく絡んでくる。今回もい぀もの挑発なのか、それずもスタックスピア領ぞ赎いた「特䜿」の内実を探ろうずしおいたのか刀然ずはしなかった。
 しかし、ノィカリヌ家はレむン家の旗䞻家であり、シモンドは、ロゞャヌレむン公の盎臣でもある。

べリアンのように、そろそろ家族のこずも考えおおかねばならんな

 くさぐさ考えおいるうちに、森林局の本郚の倖庭に蟿り着いた。
 芋慣れた「本郚」は、城の倖壁に匵り付くように築かれた朚造の質玠な建物だった。
 倖階段から、藁の匓的ず長匓を背負っお、登っお来たクレストルに、倖庭でく぀ろいでいた初老の男が驚いおのけぞった。

「いきなりだな、クレストルか。たた、「暵の匓堎」で匓の緎習か」
 灰色の髪ず髭に、苔のような緑色の長衣ロヌブを着た初老の森林官が眉根を䞊げた。

「オトル老、これは倱瀌したした」
 クレストルは笑いもせず慇懃に䌚釈した。

 このキャスタリヌロックの䞭腹に匵り出した倖庭には、各地から集められた苗朚が䞊んでいる。
 森林局の本郚ずいっおも、倖庭に面した朚造の執務宀に十人ほどの官吏が詰めるだけで、森林官の倧半は各地を巡回しおいた。

「クレストル。お前の半島地方の巡芖蚈画曞を芋たぞ、わしも行く」
 この初老の森林官は䞻垭森林官を務めおいた「森の読み手」だ。

「  それは䜕よりです」
 倧幹郚の唐突な同行の申し出に困惑しながら、オトルがその理由を蚀うのを埅った。

「半島地方はわしの「叀傷」でな」
 オトル老は、倪い眉毛を䞊げお笑った。

オトル老の「報告曞」か
 「本郚」の奥の坑道の曞庫には、歎代の森林官が残した森林図や調査報告曞が収められおいる。
 そしお、そのかなりの棚を占領しおいるのがオトル老だった。
 森林、氎源、狩猟、朚炭、怍林。
 量でも内容でも、他の森林官を圧倒しおいた。

「このたた䌐採を続ければ、山は痩せる」
ず結ばれたオトルの半島地方の調査報告は、圓時ほずんど顧みられなかった。

「半島諞䟯は鉱山局の蚀うこずばかり聞いお、目先の鉱石に目がくらんだ」
 倖庭の苗朚を匄りながら、苊々し気に呟いた。

「 今回、半島諞䟯より、氎源確保に぀いお諮問がされおいたす」

「そんなこずは、䞉十幎前に譊告したのだがな」

「   」
 クレストルは黙っお続きを埅った。

 オトル老は肩を竊めた。
「鉱山が儲かっおおったからな」

「  状況はさらに悪くなっおいたす」

 オトルは頷いお、目を閉じお蚀った。

「鉄で腹はふくれん」
「麊は氎無しで実らん」
「氎は森無しでは貯たらん」
「森が無い土地は飢える」

「  半島の諞䟯も遅ればせながら、貯氎池や貯氎林の敎備に乗り出すようです」

 クレストルの蚀葉にオトルは意地悪そうに錻を鳎らした。
「今こそ、行くべき時だな」

 オトル老はしばらく苗朚を眺めおいた。
「巡芖の経路には目をずおした。立ち寄り先は、なかなか面癜い」

 オトルは暪目でクレストルを芋䞊げた。

「.........」

「氎源調査にしおはな」

「   」

「うるさいこずは蚀わん、だが、森林官の本分は忘れるなよ」

「無論です」
 クレストルは灰色の目で小柄なオトルを芋返した。

「わしがいれば、狩猟兵を䞉人ほど連れお行っおも自然だろうお」

「ありがずうございたす」

オトル老は芗き蟌むように笑った。
「獣より、人間のほうが厄介だからな」

クレストルは深く頭を䞋げた。


3 朚の行方

 倕暮れのなか、クレストルは、ラニスポヌトの城壁の倖、筏の川ラフトりォヌタヌの東岞に広がる貯朚堎にいた。
 ここは西郚りェスタ―ランズ最倧の貯朚堎であり、河川の氎流を匕き蟌んだ貯朚池がいく぀もある。

 クレストルは、薄墚色の高原銬ガロンに跚っお、貯朚池や干堎を巊右に芋枡し、い぀もの巡回をしおいた。
 この時間になるず、荷揚げをするずきのような掻気は倱せお、静たり返り、人圱も少ない。

 氎に浞された䞞倪の湿った銙りが錻をくすぐる。
 泥ず藻の匂いが混じるものの、朚の銙りがその䞍快さを抑えおくれおいた。

 前方には、櫓やぐらのような朚造の建物が立っおいた。森林局の貯朚池分所だ。
 その櫓の䞊から、苔のような緑色の長衣ロヌブを着た小柄な男がこちらを芋おいる。この分所の責任者、森林官のバヌナンだろう。

「ナヌ森林官、ご苊劎様です」
 クレストルはほずんど着るこずはないが、森林局の官吏は苔のような緑色の長衣ロヌブを官衣ナニフォヌムにしおいる。その官衣を着た小柄な䞭幎の男が銬䞊のクレストルを芋䞋ろしお、声をかけおきた。

「バヌナン、今日も倉わりないか」
 クレストルは、高原銬ガロンから降りお、その銖を撫でた。櫓のような分所を芋䞊げお、小柄な官吏に近況を蚊ねた。
 この貯朚堎は、河川で運ばれおきた朚材などを貯めお眮く貯朚池がいく぀もあり、森林局の分局、朚材を也燥させるための也燥堎、朚工所、暜堎がある。この分所はそれらを芋匵る圹割もある。

「盞倉わらず、茜重郚の玅衣どもが朚材買い付けにうろ぀いおいたすが、その他は倉わりはありたせん」
 バヌナンは、身軜に分所から降りおきお、面癜くもなさそうに答えた。

「垳簿ず材朚の数は䞀臎しおいるか」

「ええ、数えるのだけは埗意なので。茜重郚の奎らがくすねたらすぐわかりたす」
 苊笑いしお、この官吏の背䞭を叩く。

「氎運の状況はどうだ」

「スタックスピアからは盞倉わらず朚材が入らんですな。それずどこかの䞋手な暵が流したのか、時折、暹皮が流れお来るくらいです。たあ、氎質に圱響が出るほどじゃありたせん」

「そうか、少し、東の貯朚池を巡回しおくる」

「東の䞀番は、五十五本、東の二番は、四十六本、東の䞉番は、六十䞃本だ。賭けおもいい」
 苔色の官衣の森林官は、クレストルの背䞭にむかっお蚀った。

「それは賭けにならないな」
 バヌナンに別れを告げお、貯朚池を巡芖するために銬を曳いお向かった。

 東の二番の貯朚池は他より奥たっおいた。
 氎路から少し倖れた䜍眮にあり、呚囲を材朚眮堎ず也燥棚に囲たれおいる。也燥棚は高さがクレストルの身長以䞊もあり、材朚の壁に囲たれおいるようだ。朚の匂いの充満する迷路を歩いお、東の二番の貯朚池の瞁に蟿り着く。
 ここは、「燃える森」商䌚が借り切っおいる区画だった。
バヌナンの蚀う通り、東の二番の貯朚池に浮かんでいる䞞倪は、四十六本だった。だが、䞞倪を数えるためにこの奥たった貯朚池を芋に来たのではない。

 貯朚池の岞で、数人の狩人のようないで立ちの男が立っおいた。その䞀人に䌚いに来た。スタックスピア領からの垰り道で今埌の調査を盞談しおいたが、ラニスポヌトに戻っおからは䞀床も䌚っおいなかった。

「クレストル様、お埅ちしおおりたした」
 その男は、䞭肉䞭背に黒灰色の髪、短衣チュニックの䞊に焊茶色の革胎着を纏っおた。腰には短剣ず鉈刀を差しおいる。「燃える森」商䌚の商䌚長、ペむルシャヌりッドだ。

 ペむルは、偎にいた男たちに䜕事か指瀺をしお、人払いをした。
 二人しお、貯朚池に浮かぶ䞞倪の䞊を飛び移り、䞭州のような岩地たで移動する。

「......やはり、スタックスピアからの材朚は来ないですな」
 ペむルは貯朚池に浮かぶ䞞倪を足で抌した。

「この「筏の川」ラフトりォヌタヌを䜿わずに運ぶのは割に合わない。どこかで匕き䞊げおいるな」
 クレストルが頷いお、応える。

「はい。少し調べたしたが、仰るずおりでした」

「芋぀かったのか」

ペむルは頷いた。
「ここから少し䞊流の浅瀬の川湊で確認が取れたした。荷銬車に積み倉えお西ぞ運んでいたす」

 クレストルは溜息を぀いた。
「そのあたりから西ずなるず、朚材を捌ける堎所は限られる」

「おそらく、塩の吹き溜たり゜ルティ ボトム南郚でしょう」

 クレストルは黙り蟌んだ。
 森林官ずしお介入できるずころではない。

「朚材だけか」

 ペむルは目を现めお応えた。
「確認はずれたせんでした。だが、朚材が運べるなら、同じ道で他のものも運べるこずになりたす」

「他の森林資源、毛皮や堅果類なども正芏の流れでは入っおきおいない」

 ペむルは足元に無造䜜に積たれた暹皮の束を怜分しながら、蚀った。
「もう䞀぀、城皎官の護衛だった傭兵の身元も分かりたした」

「ギャレスずかいう男だったな」
 クレストルは䞞倪を足で転がしながら蚀った。

 商䌚長は頷いた。
「塩の吹き溜たり゜ルティ ボトムの「穎熊」の連䞭だず刀明したした」

「穎熊」
 クレストルも知らない傭兵隊だった。

「荷護衛や船荷の譊備を請け負う傭兵厩れの集たりです」

 クレストルは眉をひそめた。
「たずもな連䞭か」

「腕の立぀連䞭はもっず良いずころぞ行きたす。「穎熊」に流れるのは借金持ちや酒癖の悪い奎、喧嘩で銖になった連䞭ばかりです」

「  そい぀も、死んだず考えるべきだろうな」

「はい、死䜓が芋぀かるずすれば、二぀になる筈です」

「  こちらも、塩の吹き溜たり゜ルティ ボトムか」

ベリアンのずころにいた運び屋がいたな

「よくやっおくれた。だが、この件はここたでにしおおこうか」
䞞倪池の氎面を眺めながらクレストルは蚀った。

 ペむルは眉をひそめる。
「私どもずしたしおも、スタックスピアの物流は死掻問題です」

「わかっおいる」
 クレストルは短く答えた。

「だが、スタックスピア領に入っおから劙な芖線を感じる」

「  」

「身分は䌏せお同行しおもらったが、お前も芋匵られおいるず考えるべきだろう」

 ペむルは抌し黙った。自らも感じるずころがあるのだろう。

「朚材の流れは分かった、塩の吹き溜たり゜ルティ ボトムぞ流れおいるこずもな。だが、これ以䞊の深入りは危険だ。こちらの意図を悟られずに動くこずはできない」

 ペむルはしばらく考えた埌、小さく頷いた。
「 実は、「西郚」りェスタ―ランズ南西郚ぞ材朚の買い付けの隊商を掟遣したす」

「それに加わっお、ラニスポヌトから圓面、離れるずいい。隊商は䜕人だ」

「五人です」

「商䌚長が率いるなら十人でもいいだろう。街道を必ず通るようにしろ」
ペむルは頷いた。

「私は公劃様の手配で、半島地方の怍林巡芖に行くこずになった」

「半島地方の氎源問題ですね。積幎の課題ずは蚀え、この時期ずは」
ペむルは苊笑した。

「森林官らしい仕事だ。こっちが本業だからな」
クレストルの盞槌に二人は短く笑った。

 貯朚池の氎面を颚が枡る。通垞の巡回ずの名目で萜ち合える時間はそろそろ限界だろう。

「いずれ、決着を぀ける。ただ、今はただその時ではない。自重しおくれ」

「わかりたした。私も甚心し぀぀、本業に専念臎したす。ご歊運を」

 クレストルは貯氎池に浮かぶ䞞倪の䞊を飛び移っお、戻るず、匕いおきた高原銬ガロンに跚った。あたりは既に暗くなり始めおいた。

たた、キャスタリヌロックの頂䞊に行かねばならんな

 今倜の䌚合は長くなりそうだ。クレストルは北西の方角を芋䞊げた。
 巚倧な岩山は薄暗くなった空に黒々ず聳え、その岩肌には各所に明かりが灯っおいた。

013 クレストル Ⅲ 完


煀けた石 第䞀郚 獅子の仔 第䞀線 ゆりかごの宣誓
クレストルⅡ013 森林の官吏
248 AC・倏末期 / 西郚・キャスタリヌロックラニスポヌト
POVクレストルナヌ (Crestel Yew)


【本䜜は「氷ず炎の歌」のファンフィクションです】
原䜜者のゞョヌゞ・R・R・マヌティン氏、および関連する出版瀟・映像補䜜䌚瀟等の暩利者様ずは䞀切関係がありたせん。
本䜜は「氷ず炎の歌A Song of Ice and Fire」の䞖界芳をベヌスにした非公匏のスピンオフ䜜品であり、原䜜の五十幎前の時代埁服暊248幎以降の䞃王囜西郚りェスタヌランズを独自の解釈で描いおいたす。


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▢ 前の話 012 ハヌりッド Ⅲ (012 玅の倢)

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