メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

限界、前䞖で私を凊刑した最匷魔法䜿いに溺愛されおたす。043

    第1話から読む
    https://note.com/genial_yucca6103/n/n7f845e5747a2

    ───

     魅了の厩壊

     䞀週間が経った。

     私は毎日、昌䌑みにチヌムメンバヌの垭を回った。
     ゚リオットの匁圓を差し入れ、業務の盞談に乗り、困っおいる案件を䞀緒に考える。前䞖で培った人心掌握術ず、ブラック䌁業仕蟌みの珟堎の根回し。二぀の歊噚を静かに、でも確実に振るっおいた。

     ――しみじみず思う。䜕故前の䌚瀟でこれが出来なかったのか、私は。
     远い詰められ、限界たで疲匊した毎日は本来の力さえ発揮できなくする。今の私なら、もしかしたら、䌚瀟を倉えられたのかもしれない。そう思うず少しだけ悔しい気持ちも湧いおきたけど、もう過去の䌚瀟のこずは氎に流す

     火曜日。経産省の䜐々朚さんに、物流コストの分析方法を教えた。「劂月さんのやり方、目から鱗です」ず感謝された。

     氎曜日。囜亀省の鈎朚さんが行き詰たっおいた法改正の玠案を、前䞖の囜家財政管理のノりハりで敎理しおあげた。「どうしおこんな耇雑な法䜓系をスラスラ読み解けるんですか」ず驚かれた。前䞖で䌌たようなのを癟本は読んだからだよ、ずは蚀えないけれど。

     朚曜日。コンサルの朚村さんに、海倖政府ずの亀枉テクニックをアドバむスした。「この提案曞、盞手囜の文化的なプロトコルに合わせた方がいいですよ。向こうではたず䞖間話から入るのが瀌儀なので」朚村さんは翌日の䌚議でそのアドバむスを䜿い、倧成功した。

     䞀人、たた䞀人。
     私の誠実なサポヌトが、聖女の魅了に薄い亀裂を入れおいく。
     ゚リオットの匁圓が、埮かな粟神安定のバフで、圌らの刀断力を正垞域に匕き戻す。

     § § §

     金曜日の午埌。
     䌚議䞭に、小さな異倉が起きた。

     癜峰さんが提出した進捗報告曞に぀いお、議論する堎面。

    「癜峰さんの報告曞、少し楜芳的な数字が入っおいたせんか」

     発蚀したのは、山本さんだった。先週たで癜峰さんの意芋に無条件で埓っおいた、あの財務省の山本さん。

     䌚議宀が䞀瞬、静たった。
     癜峰さんがゆっくりず山本さんの方を向いた。

    「え どの郚分ですかぁ」

     癜峰さんの声はい぀も通り柔らかい。だが私には、その柔らかさの䞋に走った緊匵が芋えた。

    「䞉四半期の茞出予枬倀です。前提条件に楜芳シナリオしか含たれおいない。リスクシナリオを入れるず、この数字は十五パヌセントほど䞋がるはずです」

     䜐々朚さんが頷いた。「僕もそう思いたす。先日劂月さんに教えおもらった分析方法で蚈算し盎したら、山本さんず同じ結論になりたした」

     癜峰さんの笑顔が、ほんの䞀瞬だけ固たった。

    「  あ、そうなんですねぇ。じゃあ修正したすぅ」

     笑っお応じた。い぀ものゆるふわ。
     私は芋た。癜峰さんがペンを握る指先が、わずかに癜くなっおいたのを。

     § § §

     䌚議埌。
     廊䞋で、鈎朚さんが私に声をかけおきた。

    「劂月さん、ちょっずいいですか」

    「はい、どうしたした」

     鈎朚さんは呚囲を確認しおから、小声で蚀った。

    「あの  癜峰さんのこずなんですが。最近、なんか違和感があっお」

     私の心臓が跳ねた。顔には出さない。

    「違和感」

    「うたく蚀えないんですけど  癜峰さんの提案っお、なんか最初からそう思っおた気がしおたんです。でも冷静に考えるず、僕の本来の意芋ず党然違っおお。なんでだろうっお」

    芚醒が始たっおいる

     私は静かに頷いた。

    「鈎朚さん、自分の盎感は倧事にしおください。デヌタに基づいお、自分の頭で考えた結論が䞀番信頌できたす」

    「ですよね  。ありがずうございたす、劂月さん」

     鈎朚さんが去った埌、私は廊䞋の窓から空を芋䞊げた。
     味方が増えおいる。䞀人ず぀、確実に。

     ――そう思った、その時だった。

     廊䞋の突き圓たりに、癜峰さんが立っおいた。
     こちらを芋おいる。い぀ものゆるふわの笑顔で。完璧な、人畜無害な埌茩の顔で。

     なのに、背骚を冷たい指が䞀本ず぀撫でおいった。着任初日のあの悪寒が、今たでで䞀番はっきりず戻っおくる。
     笑っおいるのに、その目は䜕も映しおいない。勝ち負けも、焊りも、もうそこにはなかった。䜕かを通り越しお凪いでしたった、人の目だ。

     前䞖で、䞀床だけ芋たこずがある。
     もう倱うものは䜕もないず決めた人間が、最埌にする顔だ。

      たずい

     魂が、譊報を鳎らしおいた。この子は小现工をやめた。やめお、もっず別の堎所ぞ行こうずしおいる。
     でも、それがどこなのか――今の私には、ただ芋えなかった。

     癜峰さんが、ぺこりず頭を䞋げお、螵を返した。
     廊䞋の角の向こうに、その背䞭が消えおいく。埌に残ったのは、冷たい予感だけだった。

     § § §

     わたくしは、空いた䌚議宀に䞀人で座っおいたした。
     手垳を開き、今日の蚘録を曞こうずしお、ペンが止たりたした。

     山本さんが反論した。䜐々朚さんが同調した。鈎朚さんが疑問を持ち始めおいる。
     ――わたくしの魅了が、解け始めおいる

     䞀察䞀で人の心を掎む力なら、わたくしにも自信がありたした。神の奇跡を背景にした魅了は匷力です。普通なら、これほど短期間で解けるはずがないのに。きっずあの魔法䜿いの力で――。

     いいえ、お姉様は奇跡や魔法の力では戊っおいない。
     幟蚱かの力添えはあるかも知れない。けれど、匁圓を差し入れ、䞀緒に悩み、的確なアドバむスをし、盞手の実力を認めお䌞ばす。そんな誰にでも出来る普通の行動で、私の魅了を解いおいく。
     「この人のために頑匵りたい」ず思わせる、生身の人間ずしおの魅力。

     それは、前䞖でも同じでした。
     カレンシュは、宮廷の党おの官僚から愛されおいた。聖女わたくしの奇跡で買った忠誠は、カレンシュのたった䞀蚀の感謝に敵わなかった。

    たた  たたお姉様に負けるの

     手垳に、ぎりぎりずペンを抌し぀けたした。むンクが滲んで、ペヌゞに黒い染みが広がっおいく。

    もう、小现工は通じない。デヌタも、人も、蚀葉も。お姉様はい぀も目が芚めたみたいに茝いおいお、わたくしになんか芋向きもしない

     胞の奥で、䜕かが軋みたした。最埌の理性を繋ぎ止めおいた糞が、ぎりぎりず。

    なら――

     手垳を閉じたした。

    もう、わたくしを止められないずころたで行くしかない

    ───

    前の話はこちら
    https://note.com/genial_yucca6103/n/nb2889fab2c86

    第44話はこちら
    https://note.com/genial_yucca6103/n/ne92414daf675

    テむルズで毎日曎新䞭銀髪矎少女ず異胜のデバッガヌの繰り広げるサむバヌパンク冒険譚。『The Silent Debugger』
    https://tales.note.com/posts/works/wv3xdxwzvpd42

    noteで掲茉䞭本は人を殺す毒なのか、人を掻かす薬なのか。倧江戞を舞台に実圚の本を題材に、䞍思議な貞本屋ず元気なお茶やの嚘が繰り広げる人ず業の物語。『倧江戞貞本幻燈蚘』
    https://note.com/genial_yucca6103/m/me00307d0f7ae

    あなたぞのおすすめ