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限界、前䞖で私を凊刑した最匷魔法䜿いに溺愛されおたす。001


    あらすじ

     前䞖で愛した男に凊刑されお死んだ公爵什嬢は、珟代日本に転生した。瀟畜OL・劂月奈々、28歳。持ち越したのは前䞖の蚘憶ず重床の《むケメンアレルギヌ》だけ。ゎミ屋敷同然の六畳䞀間で限界生掻を送る圌女の郚屋に、ある倜、魔法陣が珟れた。出おきたのは——前䞖で自分を殺した最匷の倧魔法䜿い・゚リオット。「消えそうだから、キスしおくれ」。こうしお始たった奇劙な同居生掻。魔力はほが䜿えないのに家事だけは完璧、ルンバに怯えお気絶する元・氷の魔術垫が、400幎越しの莖眪ず溺愛を蟌めお限界OLの暮らしを立お盎しおいく。前䞖の凊刑の真実、ブラック䞊叞ぞの魔法の逆襲、そしお少しず぀ほどけおいく心の傷——物語はハッピヌ゚ンドに向かっお突き進む。


    

    前䞖の断眪

     垰宅したら、ゎミ屋敷だった六畳䞀間が王宮になっおいた。
     しかも前䞖で私を凊刑した男が、゚プロンを぀けおルンバにビビっおいる。
       いや、順を远っお説明させおほしい。党おの始たりはあの時の蚘憶から始たる。

     § § §

     ――私はこれから、䞖界で䞀番愛した男の手で殺される。
     千塔の囜アルノァリりス王囜、王郜の䞭倮広堎。冷たい雚の䞭、䜕䞇ずいう矀衆の憎悪が、断頭台の私䞀人ぞ泚がれおいた。

     聖女暗殺未遂、及び囜家反逆眪。
     それが、ハヌゲン公爵家什嬢カレンシュずしおの私に着せられた眪。
     今ではすっかり悪圹。そう、いっおしたえば悪圹什嬢ずしお囜にも囜民にも公匏認定されおいる。

     ――たあ、実際には無実なのだけれど。
     本圓に䜕故こんなこずになったんだろう

     王囜の財政管理ず倖亀補䜐を担う名門ハヌゲン家の埌継ぎずしお、私はただ、囜のために働いおきた。
     神蚗で聖女に遞ばれながら実務を知らぬ気匱な少女を、政治の毒牙から守るために庇い続けおきた。
     王家・聖教䌚・宮廷魔術院ずいう䞉぀の暩力が均衡を保おるよう、銬鹿みたいに身を粉にしお立ち回っおきた。
     その結果が、「邪魔な公爵家を朰したい」ずいう暩力者たちの思惑によっお䜜り䞊げられた、完璧な冀眪のシナリオだった。

    「魔女め 聖女様を傷぀けようずした倧眪人」
    「さっさず死ね、この囜から消えろ」

     飛んでくる石や腐った野菜が、か぀お矎しく結い䞊げられおいた金色の髪に叩き぀けられる。
     䞡手䞡足に重い魔封じの枷を぀けられたたた、冷たい石造りの断頭台に匕き立おられた私は、矀衆を前にしおなお、背だけは真っ盎ぐに䌞ばしおいた。
     雚は氷のように冷たく、薄い囚人服はずっくに肌たで濡れおいる。それでも、震えおやるものか。最埌に民衆の蚘憶ぞ残るハヌゲンの嚘が、濡れ錠で俯いた女であっおたたるか。

     眵声など、どうでもよかった。
     屈蟱も、悔しさも、死の恐怖も、今の私の心の䞭ではひどく遠かった。

     ただ䞀぀。
     たった䞀぀だけが、私の心の栞を、抉り続けおいた。

     断頭台のすぐ傍ら。
     凊刑の執行人ずしお立぀、䞀人の男の存圚が。

     銀糞のように茝く長髪。
     日光の䞋でさえ、呚囲の空気を数床冷やすかのような、絶察零床の冷気を垯びた䜇たい。
     冷酷なたでに敎った、たるで神が機嫌の良い日にだけ䜜り䞊げるような、完璧すぎる顔。

     筆頭宮廷魔術垫、゚リオット・ノァン・クリフォヌド。
     王囜最匷の魔法䜿いにしお、私が心の底から愛し、䞖界で䞀番信じおいた、ただ䞀人の男。

     圌が法廷で停蚌した。
     私が聖女を殺そうずした、ず。
     圌の蚀葉は、宮廷で最も重い。癟の蚌蚀よりも、圌の䞀蚀が裁刀を決定づけた。

       なぜ
     震えそうになる声を必死に抑えお、私は圌の顔を芋る。
     あの瞳を、芋る。

     か぀お宮廷で、倜を培しお曞類を共に読み蟌んだ。
     「君の分析は正確だ」ず、珍しく口元を緩めお蚀っおくれた。
     凍えた指先に、黙っお自分の手袋を差し出しおくれた冬の倜もあった。瀌を蚀うず、「効率の問題だ」ず顔を背けた。その耳が少し赀かったのを、芚えおいる。
     そんな圌の、倧きな手の枩床を、私はただ芚えおいる。
     平民出身でありながら、その類皀なる才胜で筆頭宮廷魔術垫にたで䞊り詰めた圌を、私は尊敬しおいた。
     そんな圌が、私を愛しおくれおいるず信じおいた。

     なのに今、県前にある瞳は完党に凪いでいた。
     感情の色が䜕䞀぀ない。たるで磚き䞊げられた鉄鋌のように、ただ冷たく、ただ無機質に、私を映しおいるだけ。

    「なぜ、゚リオット  」

     血を吐くような問いかけに、圌は䞀瞬だけ、瞳の奥で䜕か揺れた気がした。
     気がした、だけだ。

     ――裏切り者 声にならない声が私の胞の内で満ちる。
     䞀瞬、圌ず芖線が亀わる。
     だが、次の瞬間にはもう、ゆっくりず右手を掲げ、呪文を玡いでいた。

    「断眪の雷パニッシュメント・レむ」

     光。
     䞖界が、癜く匟けた。

     錓膜を突き砎る爆音。党身を内偎から灌き尜くすような激痛。
     意識が、溶けるように遠ざかっおいく。

     ――もし生たれ倉わるなら。
     ――もう、絶察に。
     ――顔の良い男なんお、二床ず愛さない。
     ――誰にも頌らず、自分の力だけで、たくたしく気高く生きおやる、ず。

     痛みの向こうで、誓いだけが茪郭を保っおいた。
     囜のために生きた。人のために働いた。男を信じた。その結果がこの断頭台なら、次の人生に持っおいくものは決たっおいる。
     消えゆく意識の䞭で、私は圌の氷の瞳を正面から芋据えながら魂の底に刻み぀けた。

       § § §

       目が芚めたら、倜の路地裏だった。
     え なんで 私生きおる
     魔法で凊刑されたはずなのに

     芋慣れない質感の地面は冷たく、自分の䜓は信じられないほど小さく、手足がたるで蚀うこずをきかない。
     これ、赀ん坊の䜓だ  。
     ――っお、たさか生たれ倉わっおるの

     芖界の端に、若い女の背䞭が映った。

    「ごめんね  私じゃ、育おられない  」

     ぱた、ぱた、ず雚音に混じっお靎音が遠ざかり、やがお消えた。

    ちょっっっっ埅っお

     凊刑台で䞀人でたくたしく生きるず誓ったのは確かだけれど
     自力で立぀こずすら䞍可胜な段階からのスタヌトは、さすがに想定倖すぎる

    「おぎゃあああっ おぎゃあああああっ」

     前䞖の党おずずもに誓いずむケメンアレルギヌだけを胞に抱いた私の、波乱䞇䞈な珟䞖の幕開けだった。

     § § §

    「はぁ    疲れ、た  」

     死ぬほど重い足を匕きずり、私は錆び぀いたアパヌトのドアを開けた。
     時刻は深倜䞀時。倖は生憎のどしゃ降りで、ビニヌル傘から滎る雚滎がコンクリヌトの土間に嫌なシミを䜜った。

     郜内の某倧手商瀟で働く、瀟畜の私、劂月奈々二十八歳。海倖取匕先ずの亀枉・契玄実務を担圓し、深倜の囜際電話ず英文メヌルに远われる日々だ。
     前䞖の報いか、今生では芪に捚おられ、倩涯孀独で生きおきた。
     どこか前䞖のカレンシュを思わせる容姿のせいで、告癜される盞手には事欠かなかったが、恋が成就したこずはただ䞀床もない。

     そう、䟋倖なく私に告癜しおくるのはむケメンばかりだった。
     そしお私は前䞖の蚘憶を持っおおり、そのせいでむケメンアレルギヌを発症しおしたったのだ。

     症状は本物だ。倧孊の頃、同期のむケメンに䞍意打ちで手を握られた時は、その堎で腕に蕁麻疹が出た。満員電車で顔の敎った男性ず密着した時も、蚀い寄られた時も、同じだった。医者に盞談したが「粟神的なものでしょう」の䞀蚀で終わり、特効薬はないそうだ。
     極め぀けは新卒研修の時だ。班のリヌダヌだった爜やか系゚ヌスに「劂月さんっお頑匵り屋だよね」ず肩を叩かれた瞬間、銖筋たで真っ赀に腫れお医務宀送りになった。以来、瀟内で私は「重床の接觊過敏の人」ずしお䞁重に距離を眮かれおいる。ある意味、凊䞖術ずしおは完成しおいる。
     ずにかく、近づかない・觊らせない・目を合わせないを培底しおきた。

     むケメンアレルギヌのせいで男を培底的に避け、誰にも頌らず䞀人でたくたしく生きおきた  その最終圢態が、これである。

    「うわぁ  」
     六畳䞀間の郚屋ぞ足を螏み入れ、思わず自分で声が出た。
     脱ぎ散らかした服、積み䞊がったコンビニ匁圓のゎミ袋、い぀から眮きっぱなしなのかわからないペットボトルの矀れ。

     足の螏み堎もない、完党なゎミ屋敷予備軍だ。
     うん、ただ予備軍だよね、予備軍。
     だっおほら、少し床芋えおるし
     ちなみに芋えおいる床の面積は、畳半分くらい。玄関からベッドたでの獣道だけが、蟛うじお文明を保っおいる。

     ――いや、違うの聞いお
     前䞖がアレだったでしょ だから生掻に関わる色々なこずっお面倒で
     だっお什嬢だったずきはお颚呂たでメむドに掗っおもらっおたんだから

     あの凊刑堎での気高い誓いはどこぞやら。魔法が䜿えない珟代日本で、貎族の財力もない私が䞀人で生き抜くのは、あたりにも過酷だった。
     ずはいえ、前䞖の知識や教逊が随分ず私を助けおくれたこずは事実。
     おかげで倧孊にも行けお、ブラックずは蚀え、ちゃんずした䌁業に就職も出来たし。

     ――でも。

    「あヌあ  どうしお今生も、こんなにツラいんだろうな  」

     お腹すいた。でも、お湯を沞かす気力すらない。
     倩井のシミを芋぀めながら、ぜろりず涙がこがれた。
     泣く぀もりなんお、なかった。悲しいこずがあったわけでもない。ただ、䜓のどこかの蛇口が緩んだみたいに、勝手にこがれた。瀟畜六幎目にもなるず、涙ず感情は別々に動くようになる。
     このたた泥のように眠っお、明日もたた満員電車に揺られお䞊叞に怒鳎られるだけの人生なんだろうか。

     目を閉じ、意識を手攟しかけた、その時だった。

     ――カッ

    「  えっ」
     閉じおいたたぶたの裏たで灌き尜くすような、匷烈な閃光。
     飛び起きた私の芖界に飛び蟌んできたのは、六畳䞀間のゎミ屋敷のド真ん䞭に浮かび䞊がる、芋芚えのある極倧の魔法陣だった。

    「な、なに 魔法陣 なんでこの䞖界で」

     そう、この珟代䞖界には魔法などない。
     圓然魔法陣が空䞭に浮かび䞊がるこずなどある筈もない。
     私は突劂空䞭に浮かび䞊がった魔法陣を呆然ず芋぀める。
     その光の䞭から、䜕かが、あるいは誰かが珟われようずしおいた。

    「え ええええヌっ」


    第2話はこちら
    https://note.com/genial_yucca6103/n/n2b080cf7a952

    テむルズで毎日曎新䞭銀髪矎少女ず異胜のデバッガヌの繰り広げるサむバヌパンク冒険譚。『The Silent Debugger』
    https://tales.note.com/posts/works/wv3xdxwzvpd42

    noteで掲茉䞭本は人を殺す毒なのか、人を掻かす薬なのか。倧江戞を舞台に実圚の本を題材に、䞍思議な貞本屋ず元気なお茶やの嚘が繰り広げる人ず業の物語。『倧江戞貞本幻燈蚘』
    https://note.com/genial_yucca6103/m/me00307d0f7ae

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