
#30 娘に作ったプラモ「全部同じじゃん」と言われたので、裁判を開くことにした【スピットファイア後編】
【登場人物紹介】








只今より、被告人プラともに対する
「スピットファイア不当廃棄事件」
についての裁判を開廷いたします。
皆様、静粛に。
それでは起訴状を読み上げます。
罪状:
被告人プラともは、過去10年にわたり、スピットファイアを繰り返し購入、組み立て、そして処分した疑いが持たれております。

なお原告団は、これまで被告人によって組み立てられ、そして捨てられた歴代スピットファイアたちです。
原告団は名乗ってから原告席に座ってください。
「私たち、おてんば娘です」
※前編でおさらい、スピットファイアの名前の由来はおてんば娘

裁判長。
原告第一号、前へ。
タミヤ製スピットファイアMk.I
「被告は私を組み立てた際、“さすがタミヤだな”“ほとんど接着剤いらないじゃん”と言ってくれました」


「それなのに!気がついたら部屋にエアフィックスがいたんです!」

弁護人。(ガタッ)
「異議あり!被告は最初から比較検証目的で購入しております」「いわゆる二股ではなく、比較研究です」
裁判長。
「被告人、それは本当ですか?」
被告/プラとも
「はい。本当です」
裁判長。
「ではエアフィックスを購入した理由は?」
被告/プラとも
「スピットファイアを心から愛しているからです。」
裁判長。
「比較研究とは?」
被告/ブラとも
英国と日本の「スピットファイア」は解釈がどう違うのか?
組み立てて違いを確かめたかったからです。


ざわつく、法廷内
原告第二号。
エアフィックス製スピットファイアMk14。
「被告は私を組み立てた後、“やっぱり英国メーカーのスピットファイアは雰囲気があるな”と言いました。それなのに!数ヶ月後、私も捨てられました!」

原告第三号。
エデュアルド製スピットファイアMkⅨ。
「被告は“これが決定版だな”と言いました!しかしその後、新商品が出るたびに別のスピットファイアを購入しています!」

裁判長。
「被告人、“これが決定版”という発言は何回目でしょうか」
被告/ブラとも
「覚えておりません」
裁判長。
「少なくとも十数回その発言を確認していますが?」
被告/ブラとも
「はい」
裁判長。
「反省していますか?」
被告/プラとも
「その時は本当にそう思っていたんです」

法廷内、再びざわつく。
ここで弁護側は証人喚問を請求します。
証人。
タミヤ、ハセガワ、エアフィックス、エデュアルド。
前へ。

裁判長。
「あなた方は近年、スピットファイアの新商品を発売しましたか?」
タミヤ「はい。どの取り扱い店にも必ずわが社のスピットファイアが陳列されています。」
ハセガワ「はい、飛行機のハセガワですから」
エデュアルド「もちろん、スピットファイアの箱絵に当社の社長を模した人物も描いております。」

エアフィックス「愚問ですな、わが国の飛行機ですからスピットファイアをこれかも販売することは、英国の誇りと自負しております。」
裁判長。
「今後も発売予定はありますか?」
全員。「はい」


法廷内。
ざわざわ……
被告/プラとも
「ぼ、僕は悪くない」
「僕は悪くないんです!!」
「だって次から次に出すんですよ!!」
「しかも毎回“決定版”とか言うんですよ!!」

法定内ザワザワ〜裁判長。「静粛に」
プラとも弁護人
裁判長、被告人の人格に関わる、これまでの生き様です。
「被告人は30で結婚しました!」
「31で第一子の父になりました!」
「32で第二子の父になりました!」「家も買いました!」
「同じ職場で20年働いてます!」
「管理職もやってます!」
「ちゃんと決めてきたんです!!割と。」

裁判長。
「続けてください」
被告/プラとも
「なのにスピットファイアだけは無理なんです!!」
「Mk.IXだと思ったんです!!」
「でもMk.XIIも良かったんです!!」
「6枚プロペラも魅力的だったんです!!」
「シーファイアなんて翼を畳むんですよ!?」
「そんなの買うじゃないですか!!」
そして、好きだから追い求める!次こそは理想のスピットファイアを作ると決意する!納得出来なかったら捨てる!
それが一体、何の罪になると言うのですか?
法廷内。
大きくうなずくモデラー何名か。
そして、そんな愛のない奴があるかー!怒号の声入り混じり、、、
弁護人。
「裁判長、医師の診断書を提出します」

病名:スピットファイア症候群
通称、「これじゃない病」
症状。
新しいスピットファイアを見ると冷静な判断能力を失う。
完成品を見ながら“今ならもっと上手く作れる”と思い始める。
そして処分後、新商品を購入する。
これを繰り返す。
裁判長。
「なるほど」
しばらく沈黙。
裁判長。
「判決を言い渡します。
被告人プラともを
無罪とします。」

法廷内。
裁判長。
但し、、、
現在の病状改善のリハビリとして、現在所有するスピットファイアについては完成後、納得出来なくても破棄せず、よく観察し、廃棄を極力避けること。
被告/プラとも
「そ、そんな、僕の理想のスピットファイアを追いかけてはいけないと言うのですか?それだけは勘弁してください!」
そして、置く場所が無いんです!
裁判長
「以上、これにて閉廷します。」
閉廷。

■ 編集後記
さて、あなたから見て僕は有罪でしょうか?無罪でしょうか?
作っては納得できず、また買う。
理想のスピットファイアを追い求め続ける「これじゃない病」。
本人は被害者を主張しておりますが、裁判所の判断は分かれるところです。
現在モデラー界隈では、納得の行くまで同じ種類のキットを買っては手放してしまう、通称「これじゃない病」という伝染病が流行しています。
皆様も、くれぐれもご注意ください。
以上、現場からお伝えしました。
