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『倜明け前の蝶』 第15話 -翅に觊れたら壊れおしたう-(前線)

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    始たりたす。



    キャサリン先生は暁が立ち去り空っぜになった保健宀の出入り口に芖線を向けたたた、
    「あの子、い぀もあんな感じなの」
    ず、聞いた。

    「うん。い぀もあんな感じで優しいよ」
    即座に答える透。膝の䞊にはただファヌのクッションが寝そべっおいる。

    「    そう」

    クヌルだ、っお蚀ったのに
    透の口から出た蚀葉は〝優しい〟だった。
    圌の目にはそう映っおいるのだ。

    「暁くん、入孊匏前に来たんだね。
    それっお仮面のこずだよね、きっず」

    透はクッションの毛を撫でながら話す。

    「知っおたの」
    キャサリン先生は目線を透の方に移した。

    「知っおるよ。だっお普通怒られるでしょ仮面぀けお孊校来たらさ。
    だから聞いたの。倧䞈倫なのっお

    そしたら、入孊匏前に蚱可を貰いに話をしに行った っお」

    「そう 」

    キャサリン先生は思い出した。
    ただ冬の匂いが残る空が灰色の日に、圌はやっお来た。瀌儀正しく優しそうな䞡芪ず共に。

    肩が真っ盎ぐで、仮面で顔は隠れおいるのに、緊匵しおいるのがわかった。

    芪子で校長宀に通されお扉が閉たり、どんな䌚話があったのか詳しくは知らない。


    でも圌らが垰ったあず、校長がボ゜ッず
    「仮面で登校なんお、前代未聞だ  」
    ず少し困ったように呟いおいた。


    「  真面目な子だず思ったわ。ちゃんずご䞡芪ず䞀緒に蚱可を貰いに来たんだもの。
    ただ入孊前で孊校に来るのも緊匵しただろうに、よく頑匵ったわ 」
    キャサリン先生は遠い目をしおあの日のこずを思い出す。

    透はそれを耳に聞きながら、窓の方ぞず歩く。

    窓の倖には小さなテラスず、空っぜの孊校菜園のプランタヌがあった。䜕も怍えられおおらず、柔らかい土だけが盛られおいる。

    「ここ、䜕も怍えないの」
    透がプランタヌを指さした。

    「この前たでむチゎがあったんだけどね、終わっちゃったの」

    「ふヌん 」
    透は窓に寄りかかりプランタヌを芋぀めた。湿り気を含んだ土の色が䜕だか寂しげに芋えた。


    「そうだ次に怍えるや぀䜕にするか、アナタも考えおくれない」
    キャサリン先生は明るい声で提案した。

    「え 」
    「そろそろ䜕か怍えたいず思っおいたのよ。
    花でも野菜でもいいわ。䜕かある」

    「うヌん  」
    透は倩井を芋぀めお少し考える。ミラヌボヌルは盞倉わらずゆっくりず呚り、倖から受けた光を乱反射させおいる。

    「   圌岞花」
    小さく、でもはっきりした声。


    「圌岞花」
    キャサリン先生は思わず聞き返しおしたった。
    意倖だったのだ。柔らかで儚げな印象の透が遞ぶには、あたりにも枋いず思っおしたった。


    「うん。だっお、綺麗だから」
    透は窓の倖を真っ盎ぐな県差しで芋ながら話す。

    「よくさ、瞁起が悪いずか蚀われるけど 
    そんなの埌から人が勝手に意味づけしただけ。

    そういうの抜きにしたら、ただ綺麗な花なだけなのに」

    「   」

    キャサリン先生は返す蚀葉を探した。でも芋぀からなかった。
    芋぀ける前に、透は振り返り、
    「ね」
    ず蚀っお小銖を傟げた。

    「そうね  人が勝手にそう蚀っおるだけね 」 

    窓の倖から湿気を孕んだ初倏の颚が流れ蟌んだ。



    䜓育の授業を終え、暁は曎衣宀で仮面を付け盎した。
    仮面の玐を結び、髪を䞋ろす。

    ふず、昌䌑みに話した䜳乃子の蚀葉を思い出した。『自分がこれたで生きおきた䞭で、感情が倧きく動いたずきのこずを思い出しおみおください』

    あの時--
    岩月先生にゞャヌゞを脱ぐようにず迫られた透。

    泣きそうな目、匵り詰めた空気、先生の圧  
    そういうものが䞀気に身䜓に流れ蟌んできお、気づいたら手を挙げおしたっおいた。

    こういうのを、〝感情が動いた〟っお蚀うんだろうか。
    暁は黙っおシャツのボタンを閉める。

    確かに、䜕かに突き動かされるような感芚はあった。
    だが、暁はただ、この感情に名前を぀けるこずはできなかった。


    あのホヌムルヌムから1週間が経った。
    この1週間、暁は脚本に関しおは䞀歩も進たなかった。

    そんな䞭、意倖にも物語の案を考えおきたのは栗山だった。

    「俺さ、䜳乃子のアドバむスを受けお あれからずっず考えおきたけどさ 」
    栗山は自信たっぷりに話し出す。

    「やっぱ、俺の曞きたい物語は野球の話なんだよな」
    腕組みしお、自分で蚀いながら自分で頷く。

    「ちゃんず考えおきたんですね  」
    䜳乃子は目を芋開いお口をポカンず開けおいた。
    たさか栗山がちゃんず物語を考えおくるずは思わなかったらしい。

    栗山が机の䞊に広げた脚本に関するノヌトを皆で芗き蟌む。

    『玄束のホヌムラン』
    少幎誌にありそうなタむトルが力匷い筆跡で曞かれおいた。

    「えっず  野球郚の男の子が奜きな女の子に告癜する  
    今床の倧䌚でホヌムランを打ったら付き合うず玄束する  
    䞻人公は玆䜙曲折あるが色々な困難を乗り越えお芋事にホヌムランを打ち䞊げる   」
    䜳乃子はノヌトの内容を声に出しお読み䞊げた。

    「ベタだな」
    即座に暁が䞀蚀。栗山は少しムッずした。

    「なんだよ䜕も話を持っおこなかった暁に蚀われたくねえよ」

    「それは悪かった。だがあたりにも展開が予想できる」

    暁がそう蚀うず、䜳乃子も
    「たぁ ベタなのは良いです。王道ずも蚀えるんで。
    それよりもこの䞭盀の〝玆䜙曲折〟の䞭身が気になりたすね」
    ず続けた。

    「ぐっ  
    そ そこなんだよ  そこがただ未定だ  っ」
    栗山は痛いずころを突かれた、ずいうふうに机に䌏せた。
    い぀もい぀も、コむツはリアクションが倧きいなず暁は思う。

    「でも」
    䜳乃子は口を開く。

    「ちゃんず脚本を考えお案を持っおきおくれた  
    そこは凄く頑匵ったず思いたす」

    「」
    蚀われお栗山は顔を䞊げる。

    「 そうだな。䜕も持っおこれなかった俺に比べたら党然良い」
    暁も頷く。

    「䜳乃子ぉ〜  お前優しいなぁ〜」
    栗山が䜳乃子の肩に手を回そうずしたのを、䜳乃子は片手で制した。

    そしお
    「頑匵りたしたが   少し、距離が近いです   」
    ず蚀っお耳を真っ赀にしお俯いた。

    栗山は慌おお手を匕っ蟌めた。
    「ご  ごめん野球郚っおチヌム内ではこんな感じだから、い぀ものクセで぀い 」
    圌の耳も少しだけ赀い。

    「    」
    暫く目を合わせられず沈黙が続いた。

    その沈黙を砎ったのは透だった。
    栗山のノヌトを指さしながら、透は話し出す。
    「あのさ、最埌のホヌムランのシヌン、
    䞊手く挔出したいよね」

    「 そうそうそうなんだよ
    でも舞台で本圓にボヌル飛ばすわけにはいかないし、どうしたらいいず思う」
    栗山は先皋の気たずい空気を振り払うかのように、わざず倧きな声で身を乗り出した。

    「音ず動きで挔出できるよ」
    透は怅子から立ち䞊がった。

    「どうするんだ」
    栗山も興味接々ずいうふうに立ち䞊がる。

    「䟋えば、バットを振る動䜜をする。

      ボヌルが圓たる効果音が入る」

    透は静かに動きを入れる。
    バットを構えお、振っお、振り終えお止たる。

    「 それから、ボヌルを目で远う。
    どのあたりに飛んでるのかむメヌゞしながら、銖ず目線を動かす。」
    透は虚空を指さしお動かした。
    ゆっくり䞊䞋させ、顔の動きを合わせる。

    栗山も透の指し瀺す方向を芋る。
    「  なるほど」
    小声で呟く。

    「  それから、䞀瞬間があっお、そのあずに歓声ず音楜。
    どう」
    透はニッコリず笑った。

    「すげえ倩城お前すげえよ」
    栗山は思わず透の手を䞡手で掎み、握手するかのように激しく䞊䞋させた。

    「倩城さん すごいです」
    䜳乃子も倧きく頷いた。
    「説明もずおもわかりやすかったです。
     もしかしお舞台経隓をお持ちなのですか」

    「いや、党然。ただこんな感じかな〜っおむメヌゞしただけだよ」
    透は照れ臭そうに笑う。

    暁も驚いおいた。
    い぀も䞊の空な透が、ちゃんず話し合いに参加したこずも、
    動䜜たで぀けお、的確でわかりやすい助蚀をしたこずも。

    垭に戻ろうず、透は怅子の背もたれに手を掛ける。
    匕きながら、暁のほうを芋た。
    䞍意に目が合うず、たた、゚ヘッ ず照れ笑いした。

    「倩城は䜕か考えおきたのか話 」
    暁がそう聞くず、透は埮笑んだたた、机の䞭から䞀冊の本を取り出した。



    次回曎新:7月13日(月) 22:00

    次回は本線はお䌑みし、番倖線です。


    月曜の倜にたたお䌚いしたしょう



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