メインコンテンツへスキップ
見出し画像

宝箱|あの日のわたしに会いに行く

    ほうこ

    喜びと背中合わせに、いつも悲しみがくっついてる。
    だから、思い出という宝箱は、封を閉じたままだ。

    その宝箱をそっと覗いてみた。
    懐かしくあたたかい匂いがした。

    ひとつ、またひとつ、そっと取り出してみた。

    喜びに染みついてしまった染みは、
    少し色あせていて、
    もうわたしを苦しめる力はないみたいだった。

    それよりも、あのときの喜びが
    じんわりと解凍され、わたしを包みこむ。

    そのあたたかさとともに、
    見守ってくれていたひとの笑顔があった。

    ずっと閉じ込めていたけれど、
    宝箱をひっくりかえしてみることにする。

    あの頃とは違った景色が広がって、
    熟成されたしあわせがわたしを包む。

    忘れていた声が、聴こえてきた。

    「大したことないものを大きくとらえてしまっていたね」

    ああ、そういうことだったのか。

    あのとき消化しきれなかった想いが、
    今になってすっとほどけていく。

    ずっと光の中にいたのに、
    闇に向かって歩いていたのはわたしだった。


    もしよろしければ、こちらもあわせて読んでいただけたらうれしいです。
    ▶ 50歳を過ぎても、中2病
    ▶ 振り回した最初の男
    ▶ わたしの北極星
    ▶ 足踏みミシン

    そして、これらを書き上げたその翌日に起きた出来事を書きました。
    ▶ 北極星と子犬



     
     
     
    50代おひとりさま。ポンコツ街道まっしぐら。 小さなおうちで、シンプルな暮らしと庭時間を楽しんでいます。 過去の自分に会いに行くエッセイ「あの日のわたしに会いに行く」、人生の後半戦を綴る「おひとりさまの老後」を中心に、暮らしや心の記録、くすっと笑える短編エッセイを綴っています。

    あなたへのおすすめ