
宝箱|あの日のわたしに会いに行く
喜びと背中合わせに、いつも悲しみがくっついてる。
だから、思い出という宝箱は、封を閉じたままだ。
その宝箱をそっと覗いてみた。
懐かしくあたたかい匂いがした。
ひとつ、またひとつ、そっと取り出してみた。
喜びに染みついてしまった染みは、
少し色あせていて、
もうわたしを苦しめる力はないみたいだった。
それよりも、あのときの喜びが
じんわりと解凍され、わたしを包みこむ。
そのあたたかさとともに、
見守ってくれていたひとの笑顔があった。
ずっと閉じ込めていたけれど、
宝箱をひっくりかえしてみることにする。
あの頃とは違った景色が広がって、
熟成されたしあわせがわたしを包む。
忘れていた声が、聴こえてきた。
「大したことないものを大きくとらえてしまっていたね」
ああ、そういうことだったのか。
あのとき消化しきれなかった想いが、
今になってすっとほどけていく。
ずっと光の中にいたのに、
闇に向かって歩いていたのはわたしだった。
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