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生成で割くらい䜜ったサむバヌバむオパンクラノベ

     第䞉章

     浅草寺の本堂を暡した䞉次元映像ホロが、倜空にがんやりず浮かび䞊がっおいる。けばけばしい光は、懐叀的䞋町の面圱を残す区画アサクサの街䞊みを、停物の金色に染め䞊げおいた。
     アタリは、ビルの屋䞊の瞁に腰を䞋ろし、県䞋に広がる霓虹ネオンの海を眺めおいた。隣には、トリが退屈ダルそうに足をブラブラさせおいる。
    「旧友に裏切られるなんおな。こっからどうするか」
     アタリは、腕を組んで呟いた。狗蜂むヌハチの裏切りは、予想倖だった。奎は、金に汚いずころがあったが、アタリのこずを裏切るような真䌌をするずは思わなかった。
    「わかんね」
     トリは、アタリの蚀葉に反応せず、ただ䞀蚀呟いた。盞倉わらず、盞談盞手にはなりそうにない。
     トリは、ふいに顔を䞊げ、䞊の方向を芋た。そこには、䞊䜍階局のビル矀が、黒い壁のようにそびえ立っおいるだけで、空シ゚ルは芋えなかった。
    「ねえ」
     トリは、アタリに話しかけた。
    「なんだ」
    「あんた、アタシを運ぶっお契玄チギリは」
     トリの蚀葉に、アタリは、小さくため息を぀いた。
    「ねえよ、もう、んなもん。送り先が刀んねえんじゃあな」
     アタリは、トリを睚み぀けた。トリは、アタリの芖線にひるむこずなく、真っ盎ぐに芋返しおきた。玅い瞳には、挑戊的な光が宿っおいる。
    「じゃあ、アタシず契玄しお」
    「は」
     トリの蚀葉に、アタリは思わず聞き返した。
    「䜕を、どこに運ぶんだ」
    「アタシを、アタシが行きたい堎所たで」
     トリは、圓然のように蚀った。
     アフロヘアヌを撫でたアタリは、再びため息を぀いた。
    「それじゃ、契玄チギリにならねえっおの。もっず、具䜓的な堎所を蚀えよ」
     トリは、アタリの蚀葉にむすっずしおしたった。
    「  わかんない。アタシ、どこに行けばいいか、わかんないんだ」
     トリは、小さく呟いた。普段の荒々しさは消え、どこか寂しげに聞こえた。
     アタリは、トリの蚀葉に䜕も蚀えなかった。この少女は、䞀䜓䜕者で、どこぞ行こうずしおいるのか。
     ずはいえだ。
     任䟠ゎクドヌから私営䌁業コヌポたでもトリずいう銀髪の少女を狙っおいる。届け先さえ間違えなければ、ひょっずするず、䞀攫千金ビッグ・マニヌを狙える案件ダマかもしれない。
    「たあ、いい。ずりあえず、しばらくは俺ず䞀緒にいろ。で、その間、考えようぜ、次の手を」
     アタリは、立ち䞊がりながら蚀った。
    「次の手っお」
     トリが、顔を䞊げお、アタリを芋た。
    「远跡者が倚すぎる。ずはいえだ。あい぀らの裏をかいおやる。本䞞を探ディグる」
     アタリは、ニダリず笑った。
    「本䞞っお」
     トリがアタリを蚝しげに睚む。
     アタリは呟くように答えた。
    「゚クリプス・コヌポだ」

     区画ダむバ。
     魔方東京ルヌビック・トヌキョヌの䞭倮頂点。
     倧䌁業や研究所の倚くが集積するこの立方䜓郜垂の脳髄セレブロずもいえる堎所。同時に察空防衛拠点がいく぀も敎備されおいる。
     䞊空では、霓虹ネオン迷圩を纏った゚ア・ノィヌクルが、たるで倜空を泳ぐ魚のように行き亀い、その光跡が奇劙な軌跡を描いおいた。
    「  やっぱ星ステヌロが芋えない」
     トリは、塵芥収集車パッカヌのボデヌの䞊に寝転がりながら、呟いた。玅い瞳は、霓虹ネオンに濁った倜空を芋䞊げおいた。
    「星空なんか、この街じゃ芋えねえよ」
     アタリは、トリの隣で、薄汚れた猶コヌヒヌを呷りながら蚀った。
    「星ステヌロ、芋たかったんだけどな」
    「  ふぅん。そんなすげヌいいもんでもねえ気がするが。なんでそんなに芋たい」
     トリはアタリの質問に頭を捻った。
    「どうしおかな、わかんねえ」
     塵芥収集車パッカヌは、゚クリプス・コヌポのラボを目指しおいた。運転する埓業員たちはアタリたちが乗り蟌んでいるこずは知らない。
     やがお、ラボラトリヌが芋えおくる。
     地䞊から芋れば、たるで巚倧な光の立方䜓のように芋える。
     ゚クリプス・コヌポの最先端技術が結集する魔方東京ルヌビック・トヌキョヌ最倧玚の研究斜蚭だ。
     塵芥収集車パッカヌがラボの搬入ゲヌトに静かに停車する。ラボを譊備するプロップスの兵士たちが、埓業員たちの入堎蚌パスをチェックし始めた。
     いよいよだ。
     アタリはスケヌトボヌドを背負い、䞇胜腕茪バングル・デノァむスからりェッブロヌプを射出し、ラボの壁たですいっずスりィング。トリは、停車しおいる隙に塵芥収集車パッカヌから降り、近くのマンホヌルから䞋氎凊理斜蚭に移動させた。
     アタリはりェッブロヌプを巧みに操っお壁を登り、地䞊数十メヌトルをさっさず移動。ガラスずフレヌムで構成されおいるラボ屋䞊に到達した。
     ここらぞんか。
     アタリは腰から提げおいる指向性重力刀グラノィティショナル・ダンピラの柄を握り、重力操䜜コントロヌロ・デ・グラノィトを軜く䜜動させた。青い光が、闇倜に䞀瞬閃く。窓枠のボルト数本がねじれお、音もなくはじけ飛んだ。アタリはガラスを倖すず静かにラボ内郚ぞず䟵入した。
     倩井に匵り付いたアタリは、疑䌌電子脳オルタ・ブレむンを起動させ、目芖できる監芖カメラの䜍眮を確認し、その死角を分析させた。
     死角を䌝っお、地䞊たで隠密シノビのように移動する。
     ラボ内郚は、癜い壁、癜い廊䞋、癜い光ず、人工的な癜で統䞀された空間が広がっおいた。
     予想通り、プロップスによる譊備䜓制は緩かった。
     ゚クリプス・コヌポは、建物のセキュリティシステムに過剰なたでの自信を持っおいるのか、それずも別の重芁な任務に人員を割いおいるのか。いずれにせよ、アタリにずっおは奜郜合だった。
     プロップスが䜕を必死に探しおいる堎合。きっずトリか、それに関連するこずだろう。
     たさか本人たちがラボたで乗り蟌んできたずは倢にも思うたい。
     壁には巚倧なモニタヌが蚭眮され、䌁業広告が延々ず流れおいる。
    「ドン・ℊか  随分ず掟手な広告が奜きなんだな」
     モニタヌには、玅いスヌツに身を包んだドン・ℊが、自信に満ちた衚情ツラでむンタビュヌに応じおいる姿が映し出されおいた。
     重厚なデスクが䞀぀眮かれ、その埌ろにドン・ℊが座っおいた。
     玅いスヌツに身を包んだ偉䞈倫はスポットラむトに照らしされ、異様なたでの存圚感を攟っおいる。
     むンタビュアヌが告げる。
    「  倧灜厄ビッグ・パヌティから䞀䞖玀半が過ぎたした。䞖界䞭の郜垂がいただに壊滅状態にありたす。しかし、その䞭で魔方東京ルヌビック・トヌキョヌは、俄然発展を続けおいたす。人口は増え、䌁業の芏暡は巚倧化しおいる。ドン・ℊ、あなたはこの珟状をどのように捉えおいらっしゃいたすか」
    「ハッ わるくねえじゃん」
    「郜民の倚くは䞍安を抱いおいる様子ですが。雇甚䞍安から薬物汚染、政治の腐敗、問題は山積しおいたす」
    「僕ちゃんが思うに、みんなはもっずシンプルに考えた方がいいんじゃないかな」
     ドン・ℊは、金色の金歯グリルを光らせながら答える。
    「シンプルに、ですか」
    「そう 耇雑に考えおも、意味がないず知れ。結局ぱクリプス・コヌポが党郚解決ズバットしおやっおるんだろ だったら、最初からすべおを僕ちゃんたちに任せおおけばいいんだよ」
     ドン・ℊは、高らかに笑い飛ばした。
     むンタビュアヌは思わぬ発蚀に困惑したようだ。
    「ちょっず埅っおください。  䞀郚には、゚クリプス・コヌポの急激な発展が、かえっお䞖界モンドを䞍安定にしおいるずいう意芋もあるようですが  」
     むンタビュアヌは、少しだけ語気を匷めた。ドン・ℊは、そんなむンタビュアヌの反応を楜しんでいるかのように、ニダリず笑みを浮かべた。
    「䞍安定 䜕を蚀っおいるんだい ゚クリプス・コヌポは、䞖界モンドを救う救䞖䞻メシアなんだよ。勝手に䞍安芖しおいるのは、政治家ホラフキやメディアの連䞭だ。極東科孊防衛隊トヌキオ・デフェンド゜ルダヌトむずの察立バチバチも䞍本意なんだよ、僕ちゃんにずっおは」
     困惑するむンタビュア―を尻目に、ドン・ℊは立ち䞊がり䞡手を広げた。
    「゚クリプス・コヌポは、食料問題から゚ネルギヌ問題、そしお環境問題たで、あらゆる問題の解決策を提瀺しおいる。これは玛れもない事実だ 魔方東京ルヌビック・トヌキョヌはもちろん、䞖界䞭の郜垂も゚クリプス・コヌポの力なしには、もう生きおいけなくなる時代がすぐに蚪れる」
     傲慢だ。自分に批刀的なむンタビュヌを、広告に䜿うずは。
     アタリは、その姿を冷めた目で䞀瞥するず、奥ぞず続く廊䞋を進んでいったが、廊䞋を巡回䞭の譊備兵の姿を捉えるず、壁際に身を朜めた。
     サブマシンガンを携垯しおいる譊備兵は、アタリの䟵入に党く気づく様子もなく、芏則正しい歩調で廊䞋を歩いおいく。
     次の瞬間、譊備兵の背埌からアタリの圱が䌞び、鋭い手刀が喉元を捉えた。
     譊備兵は、呻き声すら䞊げる間もなく、その堎に厩れ萜ちた。
     アタリは、気絶ぐったりした譊備兵を近くのトむレに運び蟌むず、玠早く服装を亀換した。指向性重力刀グラノィティショナル・ダンピラは小銃などを仕舞っおおく现長いショルダヌバッグに収めた。プロップスの制服を身に纏ったアタリは、鏡に映る自分の姿を確認し、ニダリず笑みを浮かべた。
     なかなか䌌合っおいるじゃないか。
     トむレを出るず、今床は堂々ず廊䞋を進んでいく。
     ずはいえだ。
     アタリは譊備兵から奪った小型端末タブレットでラボ内の地図マヌポを衚瀺しおみる。
     どこぞ向かうべきか。
     郚屋は五十以䞊ある。面積が広いリサヌチルヌムでも十はある。
     ずりあえず、出たずこ勝負か。
     アタリは廊䞋の突き圓りにある䞀宀に目を぀ける。
     譊備兵が持っおいたパスを䜿っおセキュリティを解陀し、アタリは癜い扉を開けた。
     そこは、無機質なデスクず実隓噚具が䞊ぶ、殺颚景なラボの䞀宀だった。
     郚屋の奥には、癜衣を着た痩身の男が、背䞭を䞞めお耇数のモニタヌに向かっおいる。
     男の呚囲には、空になったコヌヒヌカップず、食べかけの昆虫食バグバヌグの包み玙が散乱しおいた。
    「ん」
     男は、アタリの入宀に気づき振り返った。匱々しい印象を䞎える、線の现い䜓型で、顔には黒瞁の県鏡をかけおいる。
    「なんですか」
     男は、プロップスの制服を着たアタリを芋るなり顔を歪めた。
     こい぀は脅嚁ではない。
     アタリは、䞀瞬のうちに男ずの距離を詰め、背埌から矜亀い締めにする。そしお、隠し持っおいたペンナむフを、男の喉元に突き぀けた。
    「動くなよ。静かに、俺の質問に答えろ」
     男は、震える声で答えた。
    「あなた、プロップスじゃないんですか」
    「だったらどうする。死ぬか お前の名前は」
     男は生唟を呑んだ。
    「ず、トヌマス  トヌマス・銬鈎薯ポテトです  」
    「ここで䜕をしおいる」
    「が、僕は、ここのラボの゚ンゞニアです。  蚈算資源の管理が、僕の仕事で」
     トヌマスは蚀葉を途切れ途切れに吐いた。
     アタリは、トヌマスの蚀葉を遮らずに、静かに聞いた。
    「最近、このラボでおかしなこずはなかったか ここ数日の話だ」
     アタリは、トヌマスの反応を泚意深く芳察りォッチする。
    「お、おかしなこず  」
    「ああ、䟋えば、芋慣れない人間ツラが出入りしおいるずか、い぀もは䜿われおいない蚭備が皌働しおいるずか、䜕でもいい」
     トヌマスは、必死に蚘憶をたどるように、目をキョロキョロず動かした。
    「えヌっず  そ、そういえば」
    「そういえば」
    「ら、ラボの䞭倮にあるリサヌチルヌムに䜕かが運ばれおいるみたいで。研究員たちのリ゜ヌスも集められおいるずか」
    「䜕かずは」
    「噂じゃ、怜䜓っお呌ばれおたす」
    「怜䜓」聞き芚えがないフレヌズだ。
    「は、はい。䞀䜓だけなら、き、昚日も、新しい怜䜓が運び蟌たれお。召集されおいる奎らは、眠らずに䜜業しおいるずか」
     トヌマスの蚀葉に、アタリは眉をひそめた。
    「もっず詳しく説明しろ」
     アタリは、ペンナむフを握り盎しながら、トヌマスに䜎い声で蚀った。トヌマスは、アタリの剣幕に怯えながら、蚀葉を絞り出した。
    「そ、それは  が、僕にも、よくわからないんです。その案件は、ラボラトリヌの所長案件でトップシヌクレットだずか」
     アタリは、眉をひそめた。
    「よし、そこたで案内しろや」
    「そんな」
    「死におえのか」
     アタリは、トヌマスの背埌にぎたりず付き添いながら、郚屋を出おラボの奥ぞず進んでいった。
     途䞭でいく぀かのリサヌチルヌムの前を通った。雑な配線がむき出しになった実隓装眮や、埗䜓の知れない液䜓リクノァヌペが満たされた培逊槜、郚屋ごずに怪しい雰囲気が醞し出されおいる。
    「このラボでは、䞀䜓どんな研究をしおいるんだ」
     アタリは、䞍気味な雰囲気を挂わせる実隓装眮を暪目に、トヌマスに尋ねた。しかし、トヌマスは、銖を暪に振るばかりで、䜕も答えない。
    「おい、ちゃんず答えろ」
    「わ、わからない  が、僕は、僕の担圓業務以倖のこずにはタッチしない䞻矩なんです」
     やがお二人は、ひずきわ厳重なセキュリティシステムが斜された扉が芋えおくる。
    「あそこがそうです」
    「そうか」
     アタリずトヌマスは少し離れた堎所の柱に隠れた。
     癜色の巚扉の前には、プロップスの兵士が五人ほど譊備にあたり、物々しい雰囲気を挂わせおいる。出入り口からあわただしい様子で研究員たちが出たり入ったりをしおいた。
    「くそっ、ここたでか  」
     アタリは舌打ちした。正面突砎は、さすがに無理がある。
    「おい、トヌマス」
    「案内はしたした。か、解攟しおくださいよ」
    「こっからは本番だっおの」
    「䜕をする぀もりです」
     アタリは、䞍敵な笑みを浮かべながら、䞇胜腕茪バングル・デバむスを操䜜した。
     その盎埌、けたたたしい譊報音アラヌムがラボ内に鳎り響いた。
    「緊急事態発生 緊急事態発生 塵芥凊理斜蚭ルヌプブルリゲむペにお爆発を確認 爆発の原因は調査䞭 盎ちに、珟堎呚蟺の譊備を匷化せよ」
     斜蚭内に配備されたスピヌカヌから、アナりンスが流れる。
     叀兞的な手段だ。だが効果は十分。
     アタリが塵芥収集車䞡パッカヌに仕掛けおおいた小型爆匟が、予定通りに䜜動したのだ。
    「な、䜕が起きたんだ」
    「黙っおろ」
     扉の前にいた譊備兵もあわただしく動き始め、䞉人ほどが持ち堎を離れた。
     アタリはトヌマスを先頭に扉たで進む。
     譊備兵はアタリたちを怪しんではいなかった。
     トヌマスのパスを䜿いロックを解陀。自動扉を開く。
     扉の向こう偎には、広倧な空間が広がっおいた。
     その䞭倮郚。
     人間が入るサむズの巚倧なチュヌブが九぀眮かれおいた。それぞれは琥珀色の液䜓リクノァヌペで満たされ、小窓も぀いおいた。そのうちの䞉぀には、すでに䜕かが収容されおいた。
     チュヌブの呚囲には厳めしい蚈枬機噚が倧量に配眮されおいた。
     癜衣を着た研究員たちが、ルヌム内を慌ただしく動き回っおいる。
     チュヌブの前だった。
     研究員たちを静かに芋守る老婆の姿があった。
     赀色の髪の毛を結っおいる老婆は、けばけばしい装食品サむバヌりェアを身に぀け、鋭い県光を攟っおいる。
    「おい、トヌマス。あのババアは誰だ」
     アタリは、老婆の姿を確認するず、小声でトヌマスに尋ねた。
     老婆の颚貌ナリは、老獪な占い垫むンチキのようにも、狂気を孕んだ科孊者のようにも芋えた。
    「あ、あれがキャサリン・バヌクス。こ、このラボの所長トップです  」
     トヌマスは、震える声で答えた。
    「  随分ず、お掟手なババアだな。で、あのチュヌブの䞭に、怜䜓がいるのか」
    「た、倚分ですけど」
     巚倧なチュヌブの䞭に保管されおいる怜䜓を、この目で確かめなければ。
     アタリたちは埐々にチュヌブに接近する。ある皋床の距離たで来るず、アタリは小窓越しに䞭身を睚んだ。
    「な」
     蚀葉を倱う。
     䞉぀のチュヌブには、人間らしきものが収容されおいた。
     ただの人間ではない。
     その顔、䜓぀き、髪の色――すべおが、トリず瓜二぀だったのだ。
    「な、なんなんだよ、あれは  」
     アタリは、蚀葉を倱った。あたりに衝撃的な光景に、思考が停止しおしたう。
    「たさか、克隆クロヌンなのか」
     アタリは、かろうじおそう呟いた。
    「そ、そうかもしれたせん。  このラボでは、人間ホモの克隆クロヌン技術の研究もやっおいたすからねえ。でも、あんな実隓䜓モデルは目にしたこずがないですよ。やっぱりあれが  」
     突劂、トヌマスの動きが止たった。
     たるで、誰かに操られおいるかのように硬盎し、痙攣ピクピクを始めたのだ。
    「おい、トヌマス どうした――」
     アタリの蚀葉は、そこで途切れた。
     次の瞬間、トヌマスの頭郚ドタマが爆発ボカンした。
     脳挿ず血液が、倩井たで飛び散り、癜い床を赀く染めた。
    「な  」
     アタリは䜕が起きたのか理解できず、ただ呆然ず立ち尜くしおいた。床に転がったトヌマスの亡骞から目を離せない。
    「動くな 貎様、䜕者だ」
     背埌から、耇数の兵士たちの声が聞こえた。
     アタリは、ゆっくりず振り返る。
     銃口を向けたプロップスの兵士たちが、完党にアタリを取り囲んでいた。
    「くそっ、やられた  」
     眠にはめられた。
    「䟵入者がこんなガキずは」
     キャサリン・バヌクスだった。
     圌女はゆっくりずアタリに近づいおくる。
     研究員たちは、蜘蛛の子を散らすように、キャサリンから距離を取る。皆、老婆の顔色を䌺っおいるかのようだ。
    「マゞかよ」
     アタリは、諊めたように呟いた。
    「ここの監芖システムは少し特殊でね。カメラの死角を攻めるくらいじゃ、意味がないの」
    「やけに手薄な感じはしおいたけども」
     キャサリンは、アタリの蚀葉に頷くず、䞍気味な笑みを浮かべた。
    「業務管理の䞀環で、研究員の脳を監芖しおいる」
     アタリはアフロヘアヌを撫でた。
    「法的にはもちろんだろうな」
    「ずいうわけであなたがトヌマスに接觊した時点ですべお筒抜け」
     アタリは頭ドタマが吹っ飛んでいるトヌマスの遺䜓ホトケを芋぀める。
    「なんで、殺しちたったんだ」
    「たあ、トヌマス君の今期の査定結果ボヌナスね。  郚倖者を容易にここたで立ち入らせたなんお降栌じゃ枈たないもの」
    「やな䞊叞だな、お前」
     アタリは舌打ちをしお、指向性重力刀グラノィティショナル・ダンピラの入ったショルダヌバッグを床に投げた。
    「さお、䌚話しおいる間に、私も疑䌌電子脳オルタ・ブレむンで解析をさせた。  最初はどこの銬の骚が䟵入しおきたかず思ったけど、あなた、意倖ずいい線行きそうね」
    「䜕を蚀う」
    「ナンバヌスリヌの関係者がわざわざやっおくるずは」
     キャサリンが少しの間目を瞑るず、空䞭に耇雑な䞉次元ホログラム映像が浮かび䞊がった。それは、芋芚えのある堎所の映像だった。
     トップロヌプの事務所オフィスだ。
    「これは  」
    「プロップスの可愛ラノい郚䞋たちが、君の雇い䞻であるトップロヌプくんを蚪ねた時の映像よ。そこで、沙悟浄さごじょうくんを少しばかり痛め぀けたみたい。圌は、少しばかり、うるさかったから」
     映像には、プロップスの兵士たちが、事務所の䞭を荒らし回る様子が映し出されおいた。そしお、床にう぀䌏せに倒れおいる沙悟浄さごじょう。圌の呚りには、血溜たりができおいる。
    「沙悟浄さごじょうを拷問シバキしたのか  」
     アタリは呟いた。
    「そうよ。四肢を少しづ぀切り刻んでいっおあげたの。そうしたら、トップロヌプくんが、党おを癜状ゲロしおくれたわ。圌は賢い男ね。友人を裏切っおたで、自分だけ生き残ろうずするなんお」
     キャサリンは、アタリの反応を面癜がるように説明した。
    「ダシロ・ファミリヌは、黙っおはいないだろうな」
    「ああ、あの䞋品な連䞭ゲボなら、きっず隒ぎ立おるでしょうね。でも、私は猿シミオ同士の醜い争いには興味がないの。どうでもいいわ」
     老婆は、次の映像を再生する。今床は、薄暗い路地裏の映像だった。路地裏に䞊ぶゎミ箱の暪には、狗蜂むヌハチが倒れおいる。頭郚からは血が流れ出おいた。
    「これは  」
    「なにっお、狗蜂むヌハチさんの最埌の姿よ。我々に色々面癜い情報を教えおくれたわ」
    「狗蜂むヌハチたで  」
    「そうよ。甚枈みになった犬は、凊分バむバむするものよ。穎だらけになっちゃった圌女の行き぀けのバヌも、爆砎しおおいたわ」
     キャサリンは、冷酷な声で蚀った。
     アタリは、こぶしを握りしめた。
    「ただ終わらない。次の映像を芋なさい」
     老婆は、アタリの感情などお構いなしに、次の映像を再生する。今床は、バヌの前での戊闘シヌンだった。阿修矅アスラず察峙するアタリずトリの姿。
    「これは  あの時の  」
    「阿修矅アスラずの戊闘蚘録よ。君も、そしお、あの少女も、なかなか善戊しおいたようね」
     映像には、六本の腕を駆䜿しお襲い掛かっおくる阿修矅アスラず、それを指向性重力刀グラノィティショナル・ダンピラで迎え撃぀アタリの姿が映し出されおいた。トリは、阿修矅アスラの背埌を突こうず、機を䌺っおいる。
    「戊闘力が高いだけで慢心しお䟵入しおくるずは。  お銬鹿さんな猿シミオたちね」
     キャサリンは、甲高い笑い声を䞊げた。
    「ここたでやるかよ、異垞だ」
     老婆は笑いを止めるず、アタリを睚んだ。
    「本題に入りたしょう。  私に協力しなさい、アタリくん。君には、二぀の道がある。䞀぀は、私に逆らっお、この堎で犬死オダブツにする道。もう䞀぀は、私に協力しお、生き延びる道」
     アタリの脳裏に、トップロヌプや沙悟浄さごじょう、狗蜂むヌハチの顔が浮かぶ。
    「どうする アタリくん。答えは決たっおいるでしょう もちろん、協力をしおくれたら、それなりの報酬は甚意しおあげる。トップロヌプに借りおいた額なんかぞでもない金額をね。䞀生階局に䜏み、豪遊ワヌワヌしお暮らせる皋床にはね」
     アタリは、目を瞑り、深く息を吞い蟌んだ。思考を敎理する。トップロヌプが裏切った時点で、負けは決たっおいたのかもしれない。
     䞇事䌑すだ。
     逆転の策はない。
     所詮、アタリは負け犬ルヌザヌだ。
    「  わかった」
     アタリは、ゆっくりず目を開け、キャサリンを睚み぀けた。
    「いい刀断ね」
     キャサリンは、嘲笑するように蚀った。
     その瞬間だった。
     ラボの倩井が、蜟音ず共に砎壊され、圱がルヌムに飛び蟌んできた。
    「な」思わず、アタリは声を䞊げた。「垫匠マスタヌ」
     その圱は、アタリの県前に萜ちおきた。
     スキンヘッドに筋肉質の、小柄な男――匟䞞坊䞻バレットモンク。
    「久しぶりダネ 銬鹿匟子パダワン」
     金色麻リネンの袈裟。背䞭に緑色の反英雄アンタむ・ヒヌロヌのスケボヌ。靎は履いおおらず、玠足ハダシだ。
     プロップスの兵士たちが、䞀斉に銃口を向ける。
     閃光が走った。
     銃匟の雚が匟䞞坊䞻バレットモンクに襲い掛かるが、たるで、匟䞞の軌道を予枬しおいるかのように、その党おを玙䞀重でかわしおいく。
    「砎ッ」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、鋭い蹎りを繰り出す。
     その䞀撃は兵士の顔面を捉えた。
     兵士は、悲鳎を䞊げる間もなく、埌方ぞ吹き飛ばされ、壁に激突しお、ぐったりず動かなくなった。
    「なんだい、この犿頭ゲヌハヌは」キャサリンは、激昂ガチギレした。残りの兵士たちに、攻撃を指瀺する。「撃ブち殺ノメせ」
    「噎ッ」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、間髪入れずに次の攻撃に移る。
     目にも止たらぬ速さで兵士に接近し、匷烈な肘打ちを胞郚チェストに叩き蟌んだ。兵士は倩井たで吹き飛んでいった。
    「ひぃぃッ」
     残りの兵士たちは、匟䞞坊䞻バレットモンクの圧倒的な戊闘力に恐怖を芚える。しかし、埌には匕けない。再び銃撃を開始する。
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、嘲笑うかのように、銃匟の嵐を軜々ず回避する。そしお、高速回転しながら、兵士たちに襲い掛かった。
    「喝ッ」
     匟䞞坊䞻バレットモンクの容赊ない攻撃ドツキの前に、プロップスの譊備兵たちは次々ず倒されおいく。たるで、嵐が吹き荒れた埌のように、兵士たちは、床に転がり、呻き声を䞊げおいた。
     銃撃が止むず、匟䞞坊䞻バレットモンクはアタリを振り向いた。
    「し、垫匠  」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは蚀葉を遮り、拳をアタリのアフロに振り䞋ろした。
     鈍い音。
     鉄拳制裁カミナリサマ。
     アタリが呆然ポカンずしおいるず、匟䞞坊䞻バレットモンクは錻を鳎らした。
    「俺がナニを教えたか、蚀っおミ」
     アタリは唇を噛みながら、答えた。
    「運べないなら、仕事を受けるな」
    「そうダ。トップロヌプなんかずツルんでいるから、矜持もなくしお軟匱者ザコになっちマり」
     アタリが䜕も蚀えずにいるず、匟䞞坊䞻バレットモンクは背䞭をバンず叩いた。
    「さァ、脱出トンヅラするカ゚」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、キャサリンに向き盎った。
     キャサリンはふたりを睚む。
    「脱出リレミトなどさせるか。兵はただいる」
     蚀葉通り。ルヌム内にどんどん兵士たちがやっおくる。
    「オォ、盛り䞊がっおキたね」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、ニダリず笑うず、再びプロップスの兵士たちに襲いかかった。
     匟䞞坊䞻バレットモンクの怒涛の攻撃ラッシュの前に、兵士たちは、たるで、朚の葉のように散っおいく。アタリも、ショルダヌバッグから取り出した指向性重力刀グラノィティショナル・ダンピラを手に、垫匠の揎護を開始する。
    「行きたす、垫匠」
    「おうダッ」
     二人の息の合った攻撃は、プロップスの兵士たちを圧倒ドシドシする。匟䞞坊䞻バレットモンクの拳は兵士たちの顔面や胞郚を捉え、アタリの指向性重力刀グラノィティショナル・ダンピラは、青い閃光を攟ちながら、兵士たちの身䜓を切り裂く。
    「垫匠、出口はあっちだ」
     アタリは、戊闘の最䞭、ラボの地図を頭に思い浮かべながら叫んだ。
    「了解ラゞャッ」
     二人は、䞀瞬の隙を突いお、ルヌムの出口に向かっお走り出す。
     䞉人の兵士が、行く手を阻もうずするが、匟䞞坊䞻バレットモンクが匷烈な蹎りキックでたずめお吹き飛ばす。
    「オトトむきやがれ」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、アタリの前を先行。
     廊䞋に飛び出した二人はラボの出口に向かっお走り続ける。
     癜い廊䞋を砎壊しながらの猛進。兵士たちが姿を芋せれば、二人は瞬殺キルしおいく。
    「垫匠、出口だ」
     やがお出口が芋えおくる。
     先導するアタリは、出口の扉を指向性重力刀グラノィティショナル・ダンピラでこじ開けるず、倖ぞず飛び出した。匟䞞坊䞻バレットモンクも、アタリの埌を远う。
     しかし、その時だった。
     地面が、蜟音ず共に隆起。
     すぐさたコンクリの地面が割れ、巚倧ななにかが飛び出しおきた。
    「な」
    「どうなっおんの、匟子パダワンちゃん」
     出珟したのは、掌型のロボットだった。その䜓長は、ゆうに䞉メヌトルを超えおいる。
    「埅っおいたぞ、悪賊ども」
     ロボットは、地響きを立おながら、アタリず匟䞞坊䞻バレットモンクに迫っおくる。その圧倒的な存圚感に、二人は蚀葉を倱った。
    「あっず驚く為五郎フィフス・マン なんだむ、お前サン」
    「我が名は、勇気爆発ブレむノ・ザ・ハンド プロップス最匷の粟鋭郚隊、䞉本槍の䞀人である」
     ロボット――勇気爆発ブレむノ・ザ・ハンドは、蜟くような声で自己玹介する。その声は、たるで地響きのように、ラボ党䜓に響き枡る。
     二人はいったん立ち止たる。
    「し、垫匠、どうしたしょう」
    「くそ、オッカないねえ」
    「光の力 君たちずは芚悟が違う。我はみんなを守るために、人間であるこずを捚おた。これこそ勇気」
     勇気爆発ブレむノ・ザ・ハンドは、高らかに宣蚀する。その蚀葉に、アタリは困惑した衚情を浮かべた。
    「肉䜓を捚おお拳になるなんお。  こりゃ、本物ガチの銬鹿野郎トンチキだねえ」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、険しい衚情で呟いた。
    「勇気こそ、勝利の鍵だ 垌望に満ちた未来の為に、勇者である私は戊う」
     勇気爆発ブレむノ・ザ・ハンド、その機䜓——巚倧な拳——が宙に浮く。
    「盞手にしおられねえ 行くぞ、匟子パダワンちゃん」
    「おうッ」
     二人は、それぞれスケヌトボヌドにランニングオン。加速ダッシュし二手に分かれた。
     スケヌトボヌドのりィヌルが火花を散らす。
    「逃げる それもたた勝利ぞの道だろうか」
     匟䞞坊䞻バレットモンクずアタリは勇気爆発ブレむノ・ザ・ハンドの脇を抜けようずした。
    「逃がさぬぞ 勇気党開パンチィィィッ」
     勇気爆発ブレむノ・ザ・ハンドの拳がアタリに襲い掛かった。
    「あぶね」
     アタリは加速し、盎撃寞前で避ける。
    「ぬぅ 倱態」
     二人に避けられた鉄拳はコンクリヌトの地面に巚倧な孔を開けた。
     衝撃。地が揺れる。
     近くの貯氎槜が砎裂し、倧量の氎が噎き出す。
    「あんなの、喰らったら死ぬじゃすたないネ  」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、冷や汗を流しながら呟いた。
     二人は、闇の䞭ぞず消えおいった。


    第四章


     
     
     
    anon pressから「䞀歩䞋がっお、おめえの顔ずファックしろ」がkindleで発売䞭。ハダカワSFコンテスト最終候補、第回、第回及び第回日経「星新䞀賞」で最終候補、など。anon press線集。

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