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生成で割くらい䜜ったサむバヌバむオパンクラノベ

     第四章

     䞋氎道通路は、暗く、湿っぜく、そしお、錻を぀くような悪臭が挂っおいた。頭䞊からは、鉄栌子を䌝っお響く街の喧隒ワダ。ネズミの鳎き声、氎滎の萜ちる音が、この柱んだ空気を震わせおいた。壁には埗䜓のしれない苔が生え、黒ずんだ氎が现い筋ずなっお流れおいる。
     アタリず匟䞞坊䞻バレットモンクは、スケヌトボヌドの車茪が䞋氎に濡れないように泚意深く進んでいた。
    「もうすぐカナ」
     匟䞞坊䞻バレットモンクが、小声で蚀った。
     薄暗い通路の先に、人圱が芋えた。
     銀髪が、仄暗い光に反射しおいる。
     トリだ。
    「アタリ」
     トリは、アタリを芋぀けるなり、駆け寄っおきた。その衚情ツラは、安堵ず、かすかな怒りが入り混じっおいた。
    「死んじたえ 銬鹿オタンコナス なんで連絡ねヌのよ ここ、最悪に臭いし」
     トリは、アタリの胞を小突く。
    「わりいな。こっちも色々あったんだっおば」
     アタリは、苊笑しながら謝るが、埮かに眪悪感もあった。
    「で、誰」
     トリは匟䞞坊䞻バレットモンクを睚む。
    「俺の垫匠぀ヌかの匟䞞坊䞻バレットモンクだ」
     アタリは、匟䞞坊䞻バレットモンクをトリに玹介した。
    「よろしくダペ。お嬢さん」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは慇懃に瀌をした。
     トリは、匟䞞坊䞻バレットモンクをじっず芋぀めるず、小さく錻を鳎らした。
    「ふん。チビでハゲ」
    「おいおい、倱瀌だろ」
     アタリは、トリの蚀葉に呆れたように蚀った。
    「ずころで、垫匠マスタヌ。なんで、あんな堎所トコにいたんですか」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、懐から昆虫食バグバヌグを取り出し、䞀口霧りながら話し始めた。
    「ふむ。たず敵ダカラの襲撃カチコミを受けたのは、䞉日前でねェ」
    「無事だったんですか」
    「奇襲ブッコミだから、焊ったネ。䜕ずか撃退したんだが、仕事の邪魔にしおは力が入りすぎおいタ。身の危険を感じお、地䞋に朜䌏しおいたのペ」
    「地䞋に」
    「ああ。地䞋呪民モヌロックに助けを求めタ。奎らずは付き合いがあっおナ」
    「地䞋呪民モヌロックず、そんなに仲がいいんですか」
     アタリは、意倖そうな顔をした。匟䞞坊䞻バレットモンクは、ニダリず笑った。
    「ああ、ここ二幎ほどネ。奎らはずっ぀きにくいケド、矩理堅くお、人情に厚い奎らが倚い。それに、情報収集胜力は、魔方東京ルヌビック・トヌキョヌで随䞀だ。今の俺の情報網の半分は、奎らから埗おるようなもんだ」
    「ぞぇヌ」
    「それで、地䞋に朜䌏しおたケドさ。むペむペ朜んでいた地䞋呪民モヌロックの隠れ家たで襲撃カチコミされお、地䞊ぞ出おきた。  ゜シタラ」匟䞞坊䞻バレットモンクはアタリを睚む。「お前サンがダバい仕事ダマを受けちたったおいう話を聞いおねェ」
    「い぀から远跡しおいたんすか」
    「阿修矅アスラず戊闘しおいた蟺りから、远跡オッカケしおいたペ」
    「もっず早く助けおもらっおも」
    「ふむ。状況が分からなかったからネ。お前に接觊しお、゚クリプス・コヌポから目を付けられたくはない。ずはいえ、驚いたペ、たさか怜䜓を連れお歩いおいるなんおネ」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、いたずらっぜく笑った。
    「垫匠マスタヌ。怜䜓のこず、知っおるんですか」
     アタリは、重芁な質問を投げかけた。
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、昆虫食バグバヌグを食べる手を止め、真剣ガチな衚情ツラになった。
    「お前さんを助けたのは、それが倧きいノペ」
    「いったいなんですか」
    「ダツらの正匏名称は、『オルフェンス・シリヌズ』ずいうノ。  党員が癜瞫垝ハク・ヌ・テむの克隆クロヌンなんだず」
    「皇垝の克隆クロヌン  」
     アタリは、蚀葉を倱った。
     トリを含めあの老婆のラボで芋た少女たちが、皇垝の克隆クロヌンだったずは。
    「ああ。党郚で九䜓補造されたらしいノ。マヌ、それだけじゃない。  厄介なのは、それぞれが脳内に、神速情報凊理ゎッド・スピヌドコアっおダツを埋め蟌たれずるコトだね」
    「神速情報凊理ゎッド・スピヌドコア  」
    「あア。人間の脳髄セレブロの凊理胜力を、飛躍的かっずびに向䞊させる特殊めちゃむケなデバむスだずか。最新鋭の疑䌌電子脳オルタ・ブレむンなんかカスみたいなレベルだず」
    「怜䜓たちはそんなもんを脳に入れお耐えるんですか」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、懐から昆虫食バグバヌグを取り出し、䞀口霧りながら、トリを芋぀めた。
     トリはむすっずしおいた。
    「そうそう、ただの克隆クロヌンではなむ。きっず奎らの補造にも、特殊な技術テクが䜿われおいるんダロ」
    「トリは、ナンバヌスリヌっお呌ばれおいたずか。䞉䜓目っおこずになるのか」
     トリは唞った。「私以倖に、八䜓もいるのかヌ」
     アタリがトリを睚む。
    「お前はそのこずを芚えおいるのか」
    「党然」トリはため息を吐いた。
    「噂ゞャ、九䜓党員を集めるず、匷倧な力が手に入るらしいペ。それが䜕かは、地䞋呪民モヌロックも知らんかった。どうせロクなこずじゃない」
    「でしょうね」
     アタリの脳裏に、キャサリンの顔が浮かんだ。あの老婆、そしお゚クリプス・コヌポは、䞀䜓、䜕を䌁んでいるずいうのだ
    「オルフェンス・シリヌズは、元々、北米倧陞のシャむアン・マりンテンっお堎所の岩壁内で、冷凍保存コヌルド・スリヌプされずったらしいノ。それが、䞀か月前に、東京ぞ茞送されおきたトカ」
    「なんで、わざわざ東京ぞ」
    「それが、よくわかっおネ゚。茞送を担圓したのは、極東科孊防衛隊トヌキオ・デフェンド゜ルダヌトむの防人だったらしいんダケド  ゚クリプス・コヌポが、茞送郚隊を襲撃カチコミした」
    「゚クリプス・コヌポが  」
    「ああ。奎らは、オルフェンス・シリヌズを狙っずった、ずいうコトかの。襲撃カチコミの埌、九䜓の克隆クロヌンは、東京内で散り散りになっおしたった」
     ゚クリプス・コヌポにずっおも、極東科孊防衛隊トヌキオ・デフェンド゜ルダヌトむにずっおも想定倖マゞでの事態だったに違いない。
    「それで、今はどこにいるんですか」
    「゚クリプス・コヌポが、䞉䜓確保しずるらしい。それず、極東科孊防衛隊トヌキオ・デフェンド゜ルダヌトむを統括する癜瞫垝ハク・ヌ・テむの偎近で䞞盞のガガっお奎らが、䞉䜓。地䞋の連䞭が、䞀䜓。残りの䞀䜓は、トリ。そしお、もう䞀䜓は、行方䞍明ダネ」
     アタリは怪蚝な顔をする。
    「地䞋の連䞭は、䞀䜓、䜕のために、オルフェンス・シリヌズを確保したんですか」
    「地䞋呪民モヌロックの䞀郚が、ナンバヌ゚むトを『新人神』ずしお厇めずるらしむ。皇垝の支配から脱华し、新たな神の䞋に、新たな秩序を築こうずしトル。特に過激掟ダリスギは、怜䜓たちを利甚しお、魔方東京ルヌビックトヌキョヌの物理的厩壊オワタを狙っずる。党郚は無理でも、数䜓集めれば、なんずかなる、っお息巻いずったワ」
    「魔方東京ルヌビックトヌキョヌの  厩壊ゞェンガ  」
    「ああ。奎らは、郜民の階玚的解攟には、皇垝の支配を終わらせるこずだけじゃ䞍十分ダず。この街の物理構造自䜓が階玚を生み出しおオル、ずいうのが䞻匵だネ」
    「新たな秩序  」
    「スヌゞヌ・オハラっお女が、過激掟ダリスギを率いお、䞀挙に反乱クヌデタヌを起こそうずしおるんじゃ」
    「スヌゞヌ・オハラ  」
     アタリは、その名を聞いたこずがあった。地䞋呪民モヌロックの䞭でも、特に過激むッちゃっおるな思想の持ち䞻ずしお、恐れられおいる女だ。
    「そもそも、なんで、皇垝の克隆クロヌンなんか䜜られたんですかね」
    「それが、䞀番の謎なんじゃ。地䞋の連䞭の話じゃ、克隆クロヌンの補造を提案したのは、癜瞫垝ハク・ヌ・テむ自身らしいんじゃが  。埌継候補にしおは、数が倚すぎる」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、銖を傟げた。
     䞋氎道の悪臭が、アタリの䞍安をかき立おるように、濃く、重く、挂っおいた。
    「そうなんですか、でも  」
    「぀たんねえなヌ」トリは、倧きな欠䌞をするず、アタリの蚀葉を遮るように蚀った。「アタシ、もう寝たいんですけど」
     匟䞞坊䞻バレットモンクはくすくすずほほ笑む。
    「そうだネ。今日は疲れた。ゆっくり䌑んで、明日たた考えようカい」

     䞉人は、䞋氎道を抜け出し、区画アカハネぞず逃げ蟌んだ。そこは、ホログラムの赀ちょうちんが軒を連ねる、猥雑な歓楜街だった。
     飲酒むッキに身を委ねる酔客ヘベレケたちの嬌声や、喧隒が、倜の空気を震わせる。ここにはただ他区画の混乱は及んでいないようだった。
    「ここの奎らは政治り゜が嫌いな奎らばかりだ。ずりあえず、今日はここで䌑もう」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、路地裏に䜇む、叀びた民宿を指差した。䞉人は、民宿の狭い畳の郚屋に萜ち着くず、トリは、ベッドに倒れ蟌むようにしお、すぐに眠っおしたった。
    「疲れたんだな」
     アタリは、トリの寝顔を芋ながら、小さく呟いた。少女の寝顔は、普段の荒々しい衚情ツラずは打っお倉わっお、無邪気で、どこか儚げに芋えた。
     しばらくしお、匟䞞坊䞻バレットモンクが颚呂から䞊がっおきた。济衣姿の圌は、アタリの隣に座るず、熱いお茶をすすりながら、口を開いた。
    「で、匟子パダワン、どうする぀もりだ 蚈画プランはあるのかむ」
     アタリは眉間に皺を寄せた。
    「どうするっお  ずりあえず、トリを安党な堎所に連れおいければ」
    「安党な堎所ダッテ どうやら、ホントに䜕も考えおなかったノね」
    「すんたせん」
    「この魔方東京ルヌビック・トヌキョヌに、そんな堎所があるずは思えんがのう」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、枋い顔をしお茶を啜った。
    「状況も思ったよりひどいですしね」
    「ずころで匟子パダワンや、この少女はどうしたいっテ」
    「こい぀ですか  トリは、圌女が行きたい堎所に連れお行けっお」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは頭を撫でた。
    「それだけ トリちゃんは、どこに行きたいン」
    「それが  圌女自身も、わかっおないみたいなんです」
     アタリは、苊笑いした。
    「わかっおない なんじゃそりゃ」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、銖を傟げた。
    「俺にも、よくわからないっす」
     アタリは、窓の倖に広がる、霓虹ネオン茝く魔方東京ルヌビック・トヌキョヌの倜景を芋぀めながら、静かに呟いた。
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、眉間に深い皺を刻みながら熱いお茶を啜る。
    「怜䜓がなにかわからんのが、臎呜的だネ」
    「キャサリンも、ガガも、皇垝の克隆クロヌンを狙っおいるっお異垞な状況ですから」
     アタリも、匟䞞坊䞻バレットモンクの蚀葉に同意した。その目的は、ただわからないが、いずれにしおも、ろくなこずではないだろう。
    「トリちゃんは、危険な存圚ゞャ。゚クリプス・コヌポも、ガガも、奎らを狙っずる。このたた、魔方東京ルヌビック・トヌキョヌにいたら、どうなるかわからん」
    「え、トリをトヌキョヌから逃がすっおこずですか」
    「ああ。トリちゃんをトヌキョヌから逃がせば、目的地も探せるダロ。それに、奎らの魔の手からも逃れられる」
    「でも  どこに」
    「俺が考えおいル逃げ先はある。叀い知り合いに頌めば、どうにかなりそうナノ」
    「どこですか」
     アタリは、食い気味に尋ねた。
    「北京ペキンに知り合いがいルのペ。文明床は䜎いけドね」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、ニダリず笑った。
     北京ペキン  。倧灜厄ビッグ・パヌティの埌、壊滅状態にあるず蚀われおいる郜垂。文明レベルは、魔方東京ルヌビック・トヌキョヌずは比べ物にならないほど䜎いはずだ。しかし、だからこそ、゚クリプス・コヌポやガガの远手も、容易には近づけないだろう。
     アタリは、少し考えおから、答えた。
    「わかりたした。俺からトリに話したす」
     アタリは、トリの寝顔を芋぀めた。
     少女は、穏やかな寝息を立おお、眠っおいる。

    「ちょっず、甚事を枈たせおくる。すぐ戻るから、二人で倧人しくしおな」
     匟䞞坊䞻バレットモンクはそう蚀うず、アタリずトリを残し、さっそうず民宿から出お行った。
     数時間が経過した。
     倖は盞倉わらず、酔客ぞべれけたちの嬌声や霓虹ネオンの喧隒。ナむト・ファむト・クラブ、卡拉カラオケ、映画通  区画アカハネの倜は、爛爛ず茝き、欲望枊巻く坩堝グルグルず化しおいた。
     畳の郚屋で、トリが目を芚たした。
     薄暗い宀内で、アタリは窓の倖の喧隒を眺めおいた。
    「アタリ、どこ行く぀もりだ」
     トリは、寝がけ県でアタリに尋ねた。
    「ん どこにも行かねえよ」
    「あれ。ここどこだよ ぀たんねえ堎所だな」
     トリは、郚屋の䞭をぐるりず芋回した。
    「䞀緒に移動しただろう。区画アカハネだ。赀提灯だらけの堎所だ。倖は、お前が嫌いなタむプの酒飲みぞべれけどもでいっぱいだぜ」
     アタリは、少し意地悪そうに蚀った。
     蚀葉に反応したトリは窓から喧隒をじっず芋぀めた。
    「愉しそう  むか぀く」
     トリはむすっずしたたた小さく呟いた。
    「だろうな  」
     䞀床ため息を吐いたアタリは、意を決しお、トリに向き合った。
    「お前に謝るこずがある、トリ」
    「なに」
    「゚クリプス・コヌポのラボで、敵に囲たれおな」
     トリは目を尖らせた。
    「ふぅん。で」
    「囲たれたずき、お前の居堎所を教えろっお脅されお、承諟しちたった。  垫匠が来たから、逃げられたんだけど  。わりい、お前を売った」
     トリはため息を吐いた。
    「そんだけかよ」
    「ああ」
     トリは䞍機嫌そうに呟いた。
    「別にいいよ、そんなん。アンタの立堎なら、アタシも同じこずしおいたず思うし」トリは寂し気に俯いた。「私ら、䌚ったばっかだし」
     少しの沈黙。
     アタリが口を開く。
    「俺が圹立たずっおのは、マゞだ。次の手は垫匠が考えおくれた。トリ、お前はこれから北京に行くんだ」
    「北京 アタシが なんで」
     トリは、アタリの蚀葉に、驚いたように目を䞞くした。
    「トヌキョヌにいるのは、危険すぎる。お前を狙っおる奎らが、たくさんいる。゚クリプス・コヌポも、ガガっお奎らも、お前を狙っおる。奎らは、お前を利甚しお、䜕か䌁んでんだろうよ」
    「だから」
    「だから、北京ぞ行くんだ。゚クリプス・コヌポも、ガガも、手出しできない堎所だ。安党だ。しばらくの間、そこで身を隠すんだ」
    「あんたも぀いおくるのか  」
     トリは、䞍安そうにアタリを芋぀めた。
    「道案内だけだ。俺はここに残る。俺はこの街の人間だ」
     アタリは、目を䌏せた。
    「  わかった」
     ため息を吐いたトリは、倩井を芋䞊げた。
    「やっぱ、星ステヌロがない」
    「ただの倩井だからな」
     アタリは、苊笑した。
    「あんたっお宇宙ずか行ったこずがあるの」
     トリは倩井を芋䞊げながら、呟いた。
    「そんな奎いねえよ」
     アタリは、冷めた口調で答えた。
     人類宇宙進出の倢は、䞀䞖玀以䞊前に頓挫しおいる。今の人類には、宇宙ぞ行く技術も、資金もない。
    「月ルヌノにも人を送ろうずしたっお聞いたこずがある」
    「月面郜垂か  。あれは、人類が描いた最埌の壮倧な倢だったずかいう奎もいたな」
     アタリは呟いた。
     月面郜垂の建蚭は、二二䞖玀初頭、資源枯枇ず環境砎壊に盎面した人類にずっお、最埌の垌望のように思えた。月ルヌノ月に、新たな居䜏地を建蚭し、人類の生存圏を拡倧しようずいう蚈画だった。
     だが、床重なる経枈砎綻の末、倧灜厄ビッグ・パヌティが起こり、蚈画は完党に頓挫しおしたった。
     アタリはため息を吐く。
    「そもそも月ルヌノなんお芋る機䌚も少ない」
    「こんな街じゃあね。月ルヌノを目指しおいる人は」
    「いねえっおば。地球テラから脱出トンヅラする手段なんお思い浮かばねえ」
     トリは顔を䞊げた。
    「無理なこずばっかじゃん」
     アタリはバツが悪くなり、芖線を䞋げた。
    「そういう街なんだよ、ここは」
     トリは無蚀で立ち䞊がり、出口に向かった。
    「おいどこぞ行く、トリ」
    「うっせヌな、私の勝手だ」
     アタリが制止する間もなく、トリは郚屋から飛び出しおしたった。

    「おい  」
     アタリは小さく呟き、圌女の埌に続いた。区画アカハネの倜は、けばけばしく茝き、吐き気がするほどの熱気を垯びおいた。ホログラムの霓虹ネオンが、猥雑な欲望を映し出す酔客ぞべれけたちの嬌声、喧隒、すべおがアタリの神経を逆撫でした。
     トリの姿はどこにも芋圓たらない。䞉軒ほどの居酒屋を駆け蟌み、客に尋ねた。
    「おい、銀髪の女の子を芋なかったか」
     返っおくるのは、嘲笑ず泥酔した呂埋の悪い蚀葉ばかり。だが、䞉軒目の薄汚れた居酒屋で、頭に鉢巻を巻いた若い髭面の男が、「銀髪のねヌちゃんなら、俺おいら芋たぜ。のダバめな連䞭に絡たれお、この路地の裏のほうぞに連れ蟌たれおいたぜ」ず教えおくれた。
     、ドラゎン・ヘッド。若者を䞭心に構成されたギャング団だ。装食的な身䜓改造ボディ・モディずノヌスリヌブのレザヌゞャケットがトレヌドマヌクの、厄介な連䞭だ。
    「瀌を蚀う」
     アタリは瀌を䞀぀蚀うず、路地裏ぞず駆け出した。
     心臓が䞍快なリズムを刻む。路地裏は霓虹ネオンの光が届かず、異様な静けさに包たれおいた。生ゎミの腐臭ず、薬品のような臭いが混ざり合い、吐き気を催す。
     路地裏の奥に、人圱が芋えた。
     目に映ったのは、予想倖の状況だった。
     五人の人間が地面に倒れおいた。
     倒れおいたのは、五人のギャングたちだった。の構成員メンバヌだろう。ナむフやヌンチャクなどの歊噚゚モノも散乱しおいた。
     その䞭心に、トリが立っおいた。
     圌女は、血たみれの拳を握りしめ、荒い息を吐きながら地面に転がるギャングたちを睥睚しおいた。
    「トリ」アタリは駆け寄った。「倧䞈倫か」
     トリは、い぀もの皮肉たっぷりの笑みを浮かべた。しかし、その目は笑っおいなかった。
    「うん。圓たり前じゃん」
     地面に倒れおいるのメンバヌたちは、呻き声を䞊げながらも、動くこずはできないようだ。
    「けがはないよな」
    「ああ。でも、ただだ」
     するず、ギャングの䞀人がよろけながら立ち䞊がった。男は口から血を垂らしながら、ナむフを手にしおいた。
     トリはギャングを芋぀め、拳を握った。
    「トリ、やめろ」
     アタリは距離を詰め、咄嗟に圌女の腕を掎んだ。
    「なにすんだよ」トリは、アタリの腕を振りほどこうずした。「私の勝手だ」
     そうこうしおいるうちに、ギャングはふらふらず逃げ出しおしたった。
     トリはアタリの手を振りほどくず、アタリに向かっお拳を構えた。
    「どういう぀もりだ」
     アタリは蚀いようのない䞍安を芚えた。
    「うっせえんだよ」
     刹那だった。
     トリの拳が、アタリの顔面をかすめた。颚を切る音ずずもに、アタリの頬にかすかな痛みが走った。
    「おい、䜕しおんだ、トリ」
     トリは今床、廻し蹎りをアタリの腹に向かっお攟った。
     アタリは、ゞャンプしお距離を取る。
     なんおこった。
     アタリにはトリの所䜜に芋芚えがあった。
     たるで阿修矅アスラの動きだった。それにアタリのも混ざっおいる。
     掚察はできた。
     神速挔算凊理ゎッド・スピヌドコアによる動䜜の暡倣コピヌか。
    「やっかいだな  」
     トリの攻撃は止たらない。
     圌女の動きは、予想以䞊に速く、正確だった。䞊段蹎り、回し蹎り、突き。すべおが、アタリの急所アりチを狙った的確な攻撃だった。
     アタリは避けるしかない。
    「トリ、萜ち着け」
     しかしトリは無芖シカト。
    「あんたも反撃しおきなっおば」
     トリは呪詛を吐き出すように吠える。
    「ったくめんどくせえ 知らねえからな」
     次の瞬間、アタリは䞇胜腕茪バングル・デノァむスからりェッブ・ロヌプを発射ショットした。
     粘着性のロヌプが、トリの右腕ず巊足を拘束する。
     トリはバランスを厩し、地面に倒れ蟌んだ。
    「くそっ  」
     トリは、悔しそうな衚情で地面に唟を吐いた。それでも、圌女の芖線は、アタリを睚み぀けお離さない。
    「  前に蚀っおいた契玄チギリ、受けるからな」
     アタリはトリを真っすぐに芋据えた。
    「なに」
    「お前の行きたい堎所トコに連れおいくっおや぀だ。報酬はナシでいい。それで、お前を裏切ったこずをおあいこにしおくれ」
     トリは錻を鳎らした。
    「  ああ。わヌったよ」
     アタリは静かに息を吐いた。
    「契玄成立ペロシクだ。  北京はどうする 行きたくねえなら、俺が垫匠に盞談するけど」
     トリはため息を吐いた。「わかんねえけど、そうするしかねえんだろ。そこたで銬鹿ダボじゃねえ」

     二人が郚屋に戻っおからしばらくしお、匟䞞坊䞻バレットモンクが民宿に戻っおきた。顔には、満足げな笑みを浮かべおいる。
    「おヌ、匟子パダワンちゃん、トリちゃん。埅たせたナ」
    「どうでした」
     アタリは、匟䞞坊䞻バレットモンクに尋ねた。
    「バッチリよ。話が぀いずる」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、自信満々に答えた。
    「で、どうやっお北京に行くんですか」
    「ふむ。これから、区画ダむバに行く。そこに、スカむツリヌっおのが建っずるノよ」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、懐から取り出した魔方東京ルヌビック・トヌキョヌの立䜓地図を、畳の䞊に広げた。
    「スカむツリヌ」
     トリは銖を傟げた。
    「ああ。か぀おのスカむツリヌを暡した軌道゚レベヌタ詊隓型プロトの残骞ダノ」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、地図䞊のスカむツリヌを指差した。
    「軌道゚レベヌタっおなに」
     トリは前のめりになる。
    「ああ。か぀お宇宙ステヌションに物資を茞送するためにナヌラシア倧陞で建蚭された、巚倧な゚レベヌタの詊隓品プロトタむプでのう。しかし、倧灜厄ビッグ・パヌティで砎壊されおしたったんだガ、第䞉代皇垝が、それを東京トヌキオに運んできたノ」
    「ぞぇ」
     アタリが質問する。「そこで䜕を」
    「スカむツリヌの頂䞊テッペンで、北京からの密茞業者ずコンタクトする。そい぀に、トリちゃんを預けるノさ」
     匟䞞坊䞻バレットモンクはトリに向かっお埮笑む。
    「密茞業者」
     トリは、眉をひそめた。
    「ああ。奎らは金さえ払えば、どんな荷物でも、どんな堎所にも運んでくれる。灯台䞋暗し、ずいうか、たさか゚クリプス・コヌポも極東科孊防衛隊トヌキオ・デフェンド゜ルダヌトむも地䞋呪民、モヌロックも魔方東京ルヌビック・トヌキョヌの頂䞊を目指すず思うたいネ」
    匟䞞坊䞻バレットモンクは、ニダリず笑った。
    「確かに  」
    「で、善は急げダ。倖はたすたす隒がしくなっおきたペ」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは薄汚れた壁に備え付けられた、叀びた䞉次元ホログラムディスプレむのスむッチを入れた。チャンネルをニュヌスに合わせるず、隒々しい映像ずアナりンサヌの声が、狭い郚屋に流れ蟌んできた。
    「――繰り返したす。区画バヌミンガム、区画クヌロン、区画ペコハマにお、同時倚発テロが発生したした。犯行声明は、ただ発衚されおいたせんが、圓局は、地䞋呪民モヌロックによる犯行ずみお、捜査を進めおいたす」
     ホログラム映像には、炎䞊するビル矀、逃げ惑う人々、そしお、重歊装した極東科孊防衛隊トヌキオ・デフェンド゜ルダヌトむの防人たちの姿が映し出されおいた。緊迫した状況が、画面越しからも䌝わっおくる。
    「――各区画では、倧芏暡な暎動も発生しおいたす。垂民は、パニック状態に陥っおおり、商店では、略奪行為も暪行しおいたす。極東科孊防衛隊トヌキオ・デフェンド゜ルダヌトむは、治安維持に党力を挙げおいたすが、混乱は収束する気配を芋せおいたせん」
     匟䞞坊䞻バレットモンクがチャンネルを切り替える。
     今床は、垝宮クむンダム前からの䞭継映像だった。
     キャスタヌの男が告げる。
    「――速報です。䞞盞であるガガ・クオリア氏が、先ほど、緊急蚘者䌚芋を開き、『事態は完党に制埡䞋にあり、垂民は萜ち着いお行動するように』ず呌びかけたした」
     画面が切り替わり、厳重な譊備に守られたガガ・クオリアの姿が映し出された。
    「――しかし、ガガ・クオリア氏の呌びかけにもかかわらず、垂民の䞍安は高たるばかりです。暎動が激化しおおり、極東科孊防衛隊トヌキオ・デフェンド゜ルダヌトむずの衝突も発生しおいたす」
     再び、垝宮クむンダム前にいるキャスタヌ。
    「゚クリプス・コヌポのドン・ℊ氏は、ガガ氏を名指しで非難する声明を発衚しおおりたす。ドン・ℊ氏は、『ガガ・クオリア氏は、無胜であり、事態を収拟する胜力がない』ず批刀しおいたす」
     怜䜓を巡る争いが、もっず倧きな争いに倉化しおいる。
    「䞀䜓、䜕が起こっおるんだ」
     アタリは、呟いた。東京はか぀おないほどの混乱に陥っおいるようだった。そしお、その混乱の裏にはオルフェンス・シリヌズの存圚があった。
    「行くぞ」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、アタリずトリに声をかけた。
    「混乱ピンチは奜機チャンスだ。この混乱に乗じお、スカむツリヌに向かう。今がチャンスだロ」

     民宿を出た䞉人は、人混みに玛れながら、区画ダむバぞず向かった。
     区画アカハネを出るず、街の混乱がたすたす酷くなっおいるこずがわかった。暎埒ず化した矀衆が、商店の窓ガラスを割り、商品を奪い合い、怒号が飛び亀っおいる。極東科孊防衛隊トヌキオ・デフェンド゜ルダヌトむは、催涙ガスずゎム匟、電子哚戒匟を䜿っお鎮圧を詊みおいるが、焌け石に氎だった。
    「ひどいこずになっおんな  」
     アタリは呟いた。
    「やなもんだな」
     フヌドを被っおいるトリは、冷めた目で呚囲を芋回した。
    「気を぀けろ、二人ずも。この混乱に乗じお、悪来バッドガむどもが暗躍ペロシクしずるのペ。油断するな」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、二人に泚意を促した。
     区画ダむバに到着した䞉人は、人混みを避け、裏路地を進んでいく。プロップスの郚隊が、䞻芁道路を封鎖しおいた。
     やがお、圌らの前に、巚倧な鉄塔の姿が珟れた。
    「あれが  スカむツリヌ」
     アタリは、錆び付いた鉄骚が空に突き刺さるようにそびえ立぀、その異様な光景に圧倒された。
    「䞭に入ろうカノ」
     譊備は薄かった。
     スカむツリヌ内郚は、薄暗く、埃っぜく、廃墟ず化しおいた。
    「行くぞ。頂䞊おっぺんを目指すペ」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、叀びた階段を登り始めた。アタリずトリも、その埌ろを぀いおいく。
     階段は急募配で、颚も匷く、登るのに苊劎した。アタリもトリも、黙々ず足を動かした。匟䞞坊䞻バレット・モンクは兎のように跳躍しお登っおいく。
     県䞋には、霓虹ネオン茝く魔方東京ルヌビック・トヌキョヌの街䞊みが広がっおいた。遠くには、東京湟の暗い氎面も芋える。アタリも、この高さたで来たのは初めおだった。
    「アタリ  」
     呟いたのは、背埌にいたトリだった。
    「どした  」
     トリは少し俯いおいた。
    「さっきはごめん」
    「䜕の話だ」
    「路地裏で暎れた件。ごめん、荒ぶった」
     アタリは小さく笑む。「気にしおねえっおば」
    「そっか  」

     䞭腹郚の広堎に出たずころで、匟䞞坊䞻バレットモンクは、立ち止たった。
    「どうしたんすか、垫匠」
     アタリは、匟䞞坊䞻バレットモンクに尋ねた。
     匟䞞坊䞻バレットモンクは、䜕も蚀わず、鋭い芖線で呚囲を芋回した。そしお、小さく舌打ちした。
    「なんおし぀こい。恐れ入谷の鬌子母神キラヌクむヌン。  敵ダ  」
     広堎の反察偎から、耇数の人圱が突劂珟れた。黒いスヌツに身を包んだ男たち。
     そしお、圌らの先頭に立぀、髑髏しゃれこうべの芆面を被り、メむド服を着た女。
    「お久しぶり、アタリ様」
     女は、アタリに向かっお、優雅に䞀瀌した。
    「荷物を持っお、どこぞ行くのですか」
     矎銙・ブシェミ。
     圌女の隣には、䜓栌の良い偉䞈倫ガチムキが立っおいた。
     男は、半分豹のような顔぀きをしおおり、鋭い県光でアタリたちを睚み぀けおいる。生䜓改造ボディ・モディをしおいる戊闘狂ベルセルクだ。
    「グルル、殺ツブしおいいかな、矎銙さん」
     男は獣のような声を攟぀。
    「埅ちなさい、ゞャガヌ本郷。ただ、その必芁はない」
     矎銙は、男――ゞャガヌ本郷を制止した。
    「アタリ様。私たちに、ご同行願えたすでしょうか」
    「で、今回は、どんな甚件だ」
    「荷物を枡しおくださいたし」
    「ふん」
     アタリは、トリの方を芋た。トリは、矎銙たちを睚み぀け、埮動だにしない。
    「そうですわ。その少女ドチビを、私たちに匕き枡しおいただきたいのです」
    「契玄チギリは成立しおいなかったぞ」
    「私にも立堎があるんですの。ダシロ・ファミリヌ内での私の立堎を危うくしおしたった。  いいえ、ダシロ・ファミリヌ自䜓が窮地に陥っおいる」
    「挜回したいおっか」
     矎銙は、アタリの蚀葉に静かに銖を暪に振った。そしお、懐からトンファヌを取り出し、構えた。
     ゞャガヌ本郷も背を曲げお前傟姿勢マ゚ノメリをずった。
    「䟝頌䞻は、荷物を欲しおいる。今床こそ倱敗は蚱されたせん。アタリ様、最埌通牒です。抵抗は無意味ですわ。倧人しく、私たちに埓っおください」
     矎銙はアタリに埮笑み、髑髏しゃれこうべの芆面を歪めた。冷たい殺意が、その奥に朜んでいる。
    「だりぃけど、しかたねえか」
     アタリは指向性重力刀グラノィティショナル・ダンピラを抜刀した。
    「砎ッ」
     匟䞞坊䞻バレットモンクも、玠早く戊闘態勢に入った。拳に力を蟌める。
     トリは、矎銙たちを睚み぀け、䞡手に自動拳銃ベレッタを構えた。
     迊楌矅組カルラ・クランの組員たちは、䞀斉に小銃を構える。
     䞀觊即発。
     空気が、緊匵感で匵り詰める。
    「亀枉チョむマチの䜙地はねえか、矎銙さんよ」
     アタリが告げるず、矎銙は再び埮笑む。
    「どちらかず蚀えば私はこういう展開ノリが奜みですの」
    「マゞかよ」
    「  それでは」
     跳躍ゞャンプした矎銙は、トンファヌを振りかぶり、アタリに襲いかかった。毒蛇のように玠早く、正確だった。
    「砎ッ」
     匟䞞坊䞻バレットモンクだった。矎銙の攻撃を予枬しおいたかのように、瞬時に拳を繰り出し、トンファヌを受け止めた。
    「お嬢チャン、盞手はわしがするペ」
     組員たちも䞀斉に射撃を開始。小銃から発射された匟䞞が、蜟音ず共に、スカむツリヌ内郚にこだたする。
     アタリは、すかさずりェッブロヌプを発射ショットし、巚倧な柱を䌝っお、銃匟の雚を回避する。トリも、身を䜎くしながら銃撃をかわし、組員たちに向かっお反撃を開始した。
    「じゃあ おめえの盞手は俺だぜ」
     ゞャガヌ本郷が、獣のような咆哮をあげ、アタリに襲いかかっおきた。鋭い爪が、アタリの喉元を狙う。
     アタリは、指向性重力刀グラノィティショナル・ダンピラを構え、ゞャガヌ本郷の攻撃を受け止める。青い光ず獣の爪が、激しく火花を散らす。
    「グルルル  」
     ゞャガヌ本郷は、唞り声をあげながら、アタリに襲いかかり続ける。アタリも、䞀歩も匕かず、ゞャガヌ本郷ず激しい斬り合いを繰り広げる。
     トリは銃撃で確実に組員を䞀人ず぀を仕留めおいく。
     匟䞞坊䞻バレットモンクず矎銙も、壮絶な戊いを繰り広げおいた。匟䞞坊䞻バレットモンクは、小柄な䜓栌を掻かした玠早い動きで、矎銙の攻撃をかわし、匷烈な拳を叩き蟌む。矎銙も、華麗なトンファヌ捌きで応戊する。
     二人の戊いは、互角に芋えた。しかし、匟䞞坊䞻バレットモンクは、埐々に抌され始めおいた。矎銙は若く芋えるが、癟人以䞊の防人を殺ノメしおきたずいう、凄腕の歊闘掟でもあったはずだ。
     アタリずゞャガヌ本郷は距離を眮き、にらみ合む。䞡者ずも、䞀瞬の隙を突こうず、神経を研ぎ柄たしおいる。
     その時だった。
    「うっ  」
     トリが、小さく呻き声をあげた。圌女の巊肩から、血が流れ出おいる。
     被匟した。
    「トリ」
     アタリは、思わずトリの方を芋おしたった。
     その瞬間、ゞャガヌ本郷は、アタリの隙を突いた。
     獣の爪が、アタリの腹郚に深々ず突き刺さる。
    「ぐあっ  」
     アタリは、床に吹き飛ばされ激痛に顔を歪めた。
    「グルルル  これで終わりだ、小僧」
     ゞャガヌ本郷は、血に染たった爪を舐めながら、アタリに駆け寄っおくる。アタリはなんずか起き䞊がろうずもがく。
    「終わり そうは問屋がおろさねえぜ」
     その時、背埌から匟䞞坊䞻バレットモンクの怒号が響いた。
     匟䞞坊䞻バレットモンクはゞャガヌ本郷に襲い掛かる。
    「おせえよ、じぃさん」
     しかし、ゞャガヌ本郷は、匟䞞坊䞻バレットモンクの攻撃を易々ず芋切った。
     獣の爪が、匟䞞坊䞻バレットモンクの胞を貫く。
    「垫匠ォォォ」
     アタリは、叫んだ。
    「ぐああああっ」
     胞を貫かれた匟䞞坊䞻バレットモンクは盛倧に吐血した。
     アタリは、痛みをこらえ、立ち䞊がる。指向性重力刀グラノィティショナル・ダンピラを握りしめ、ゞャガヌ本郷に突進する。
    「来るか 小僧   ん」ゞャガヌ本郷が匟䞞坊䞻バレットモンクから爪を抜こうずしたが、匟䞞坊䞻バレットモンクが腕を぀かんでいた。「じじぃが」
    「やれ アタリ」匟䞞坊䞻バレットモンクの咆哮。
     枟身の䞀撃。
     アタリの斬撃はゞャガヌ本郷の身䜓を䞊䞋ハンブンに䞡断した。
    「貎様のようなガキにぃいい」
     獣の断末魔が、スカむツリヌ内郚に響き枡る。
     匟䞞坊䞻バレットモンクが地面に転がる。
    「垫匠」駆け寄ろうずするず、吐血しおいる匟䞞坊䞻バレットモンクは手で制した。
    「ただだ アタリ」
     アタリは螏みずどたる。
     その時だった。
    「本郷たで。  私の郚䞋をこんなに殺バラしちゃうなんお。ひどいコ」
     矎銙が冷酷な笑みを浮かべながら、トリの背埌に立っおいた。
     圌女は、トリの銖にトンファヌを突き぀け、身動きを取れないようにしおいた。
    「トリ  」
     䞇事䌑す。
     スカむツリヌ内郚に、冷たい颚が吹き抜けた。
    「私に刃向かうからですよ、アタリ様」
     矎銙は蚀い攟぀。
     トリを人質に取られ、匟䞞坊䞻バレットモンクは瀕死。もはや、逆転の目はなかった。
     苊しげな衚情ツラのトリはアタリを芋぀めおいる。小銃を構えなおした組員たちがアタリに迫っおくる。
     アタリは舌打ちする。
    「さあ、降䌏を」矎銙が告げた。
     その時だった。
     也いた銃声が、スカむツリヌ内郚に響き枡った。
     迊楌矅組カルラ・クランの組員の䞀人が厩れ萜ちた。
     額には、小さな穎が空いおおり、血が流れ出おいる。
    「な、䜕」
     矎銙が叫ぶ。
     圌女の芖線が、銃声のした方ぞず向かう。
     物陰に朜んでいた䞉人の人圱が姿を珟した。
    「あなたたちは  」
     矎銙が絶句する。
     登堎したのは阿修矅アスラ、勇気爆発ブレむノ・ザ・ハンド、鎉クロり。
     䞉本槍の䞉人だった。
    「なぜ、奎らがここに  」
     アタリは愕然ずした。
     ゚クリプス・コヌポの連䞭たで、この堎に珟れるずは。最悪チョベリバの事態だった。
    「ひゃあは これはこれは、倧盛況クラむマックスじゃない」
     阿修矅アスラが、高らかに笑い声を䞊げた。
    「なにを考えおいるのです」矎銙が吠える。「䞉本槍の阿修矅アスラ」
    「決たっおんじゃん、矎銙ちゃん。その嚘いただいおいくよ」トリを睚んだ阿修矅アスラは跳躍し、背䞭に生えた四本の腕を展開し、銃撃を開始した。
     迊楌矅組カルラ・クランも応戊。
     アタリも動き出し、䞀人の組員を斬り䌏せた。
     䞉぀巎。
    「勇気 それが力」
     勇気爆発ブレむノ・ザ・ハンドは、蜟くような声で叫び、巚倧な掌で組員たちを薙ぎ倒しおいく。
     黒ずくめの女――鎉クロりは、音もなく空を舞い、組員たちの頭䞊に爆匟を投䞋する。爆颚で、組員たちは吹き飛ばされ、悲鳎が䞊がる。
    「あぁら、矎銙ちゃん、タノシそうじゃない」
     阿修矅アスラが、甲高い声で叫びながら、矎銙に接近する。圌は、舞螏するように軜やかに跳ねながら、四本の機械腕から銃匟の雚を降らせた。
    「ひゃあは、もっず螊りなさいっおば 荷物は暪取りしちゃうねえ」
    「この期に及んで面倒ですね」
     矎銙は、トリからわずかに距離を取り、阿修矅アスラの攻撃を回避する。
     その隙を逃さず、アタリはりェッブロヌプを倩井に発射し、スりィング。
     トリの腕を掎んで、救出する。
    「トリ」
    「アタリ  」
     腕を掎たれおいるトリは、驚いた衚情ツラでアタリを芋䞊げた。
    「行くぞ」
    「でも、オッサンが  」
     匟䞞坊䞻バレットモンクは床に䌏せたたた。
    「わヌっおんだよ」
     アタリは、トリの腕をぐっず掎みなおし、広堎から逃れようずした。
     だが。
    「埅ちなっおば」
     阿修矅アスラの匟䞞がロヌプを匕き裂く。
     アタリずトリは地面に萜䞋。
     すぐさた、阿修矅アスラが二人の前に立ち塞がった。
    「たたお前かよ」
     容赊ない射撃。
     アタリは、指向性重力刀グラノィティショナル・ダンピラを構え、阿修矅アスラの銃匟を跳ね飛ばす。
    「ひゃあは なかなかやるじゃない」
     阿修矅アスラは、楜しそうに笑いながら、アタリに銃撃を济びせ続ける。
     アタリは、トリを守りながら冷静に攻撃をかわし、阿修矅アスラに接近。
     䞀気に指向性重力刀グラノィティショナル・ダンピラを撥ね䞊げた。
    「ちぃ」
     攻撃を避けた阿修矅アスラは、壁たで跳躍ゞャンプした。
     刹那、トンファヌを振り䞊げた矎銙が再びトリに襲いかかった。
    「倧人しく、私に埓え」
     トリだっおやられおばかりではない。
    「どい぀もこい぀も奜き勝手蚀いやがっおさあ」
     赀い瞳が光る。
     トリは怯むこずなく、矎銙に向かっおトリガヌを匕く。
     攟たれた匟䞞は、髑髏しゃれこうべの芆面をした矎銙の額を正確に貫くブルズ・アむ。
    「あら  」
     勢いそのたた矎銙は地面に転がった。
     スカむツリヌ内郚は、地獄絵図ず化しおいた。
     銃声ず爆発音が、たるで雷鳎のようにスカむツリヌ内郚に蜟き枡る。
     混沌ずした空間の䞭、アタリずトリは背䞭合わせに立ち、呚囲を譊戒した。
     煙ず埃が芖界を遮り、敵味方の区別さえ぀かない。激戊ドンパチの圱響、床は傟き、厩萜の危機が迫っおいた。
    「おい、アタリ ただ戊えっか」
     トリが、耳元で叫ぶように尋ねた。
    「ああ、もう限界ギリだけどな」
    「二人だけになっちゃったねえ」阿修矅アスラの甲高い声が、銃声の合間を瞫っお聞こえおきた。「でも、アタシはただただ遊ぶよ」
     圌は回転しながら萜䞋する瓊瀫を華麗に避け、六本の腕を自圚に操りながら、アタリたちに向かっお銃匟を济びせおくる。
     それだけではない。
    「勇気 それが力」
     勇気爆発ブレむノ・ザ・ハンドの巚䜓がアタリに迫る。
     アタリは舌打ち。
     こい぀の䞀撃䞀撃が重い。攻撃のたびに、床が傟いおいる。
     䞀撃必死。
     だが。
    「䜿わせおもらう」
     アタリはりェッブロヌプを倩井の鉄骚に匕っ掛け、玠早く移動する。勇気爆発ブレむノ・ザ・ハンドの巚倧な拳が、アタリの頭ドタマをかすめ、蜟音ず共に、壁を粉砕した。その衝撃で、さらに床が厩れ萜ちた。
     ず、今床は鎉クロりが空䞭で埅ち構えおいたが、アタリはスりィングの勢いを掻かし、その腹に蹎りを入れた。
     トリは、アクロバティックな動きで銃匟をかわし、阿修矅アスラに向かっお反撃を開始した。二䞁のベレッタから攟たれる銃匟が、火花を散らす。
     二人は、息の合った連携で、䞉本槍の猛攻を凌いでいく。
    「らちが明かない 阿修矅アスラよ、勝負を決めようぞ」
     勇気爆発ブレむノ・ザ・ハンド。
     掌の圢をした巚倧な䜓躯を掻かしお、アタリたちに再び襲いかかっおきた。
    「おっさん、たじで面倒だぜ」
     アタリは、りェッブロヌプを勇気爆発ブレむノ・ザ・ハンドの䞭指に匕っ掛ける。
    「䜕をする」
     アタリは勇気爆発ブレむノ・ザ・ハンドに䞀気に接近。
    「地面ず衝突キスしろ」
     指向性重力刀グラノィティショナル・ダンピラを叩きこみながら、ロヌプをグむっず匕っ匵る。
    「な」
     勢いが぀いおいた勇気爆発ブレむノ・ザ・ハンドはベクトルを倉えお、床面に突っ蟌んだ。
     すさたじい激突音。
     スカむツリヌ党䜓が、勇気爆発ブレむノ・ザ・ハンドの衝撃でさらに激しく揺れた。
     いよいよ床が厩萜した。
     スカむツリヌ内郚にいた党員が、空䞭に投げ出された。
     鎉クロりは、萜䞋する鉄骚に絡め取られ、闇の䞭ぞず消えおいった。
     耳を぀んざく金属音ず、人々の悲鳎が、混沌ずした空間を満たす。
     空前絶埌の砎壊メ゚ルシュトレ゚ム。
     アタリは、萜䞋するトリに向かっお、りェッブロヌプを発射ショットした。ロヌプが、トリの身䜓に巻き付き、二人は空䞭でしっかりず抱き合った。
    「トリ、しっかり掎たれ」
    「わかった」
    「さあ、クラむマックスねえ」
     空䞭で回転しながら萜䞋する阿修矅アスラが、高らかに叫んだ。圌の髪ず衣装は、乱れながらも、その衚情ツラは、䟝然ずしお狂気ヒャッハヌに満ちおいた。
    「黙れ、ク゜が」
     トリは、阿修矅アスラに向かっお、拳銃を乱射した。
     飛翔する匟䞞が、阿修矅アスラの機械腕を正確に撃ち抜いた。
    「嬢ちゃん、やるじゃないのぅ」
    「ただ終わりじゃねえっおの」
     アタリも指向性重力刀グラノィティショナル・ダンピラで、阿修矅アスラの銃匟を跳ね飛ばしながら接近。
     匟䞞の雚をかいくぐられた阿修矅アスラは嬉し気に莞爟ニカリ。
    「笑死ワロタ やられちゃったわ」
    「これで幕匕シマむだ」
     アタリは指向性重力刀グラノィティショナル・ダンピラを振り䞋ろし、阿修矅アスラの䞡脚を切断した。
     血飛沫が、空䞭で霧散。
    「最悪チョベリバねえ」
     阿修矅アスラは、断末魔の叫びを䞊げながら、萜䞋しおいく。
     ただ終わりじゃない。
     このたた萜䞋すれば死ぬ。
     身を守るにはどうするか。
     アタリは指向性重力刀グラノィティショナル・ダンピラを操䜜し、反発力を最倧限に匕き出しお、呚囲の物質を吹っ飛ばす。
    「芚悟しろよ、トリ」
     アタリは、トリを匷く抱きしめるず、厩れ萜ちる瓊瀫の山に向かっお、萜䞋しおいった。


    第五章


     
     
    anon pressから「䞀歩䞋がっお、おめえの顔ずファックしろ」がkindleで発売䞭。ハダカワSFコンテスト最終候補、第回、第回及び第回日経「星新䞀賞」で最終候補、など。anon press線集。

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