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夏の花に、終わらない約束を【4】

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      家に着く頃には辺りはもう暗くなっていた。玄関に入ると、リビングに明かりがついているのが見えた。
    「ただいま、お母さん」
     ドアを開けて声をかけると、お母さんはソファに横になっていた。
    「ああ、葵あおい。おかえり」
     笑っているけれど、顔は少し青白い気がする。

    「調子はどう?」
    「うーん、まあまあかな。今朝、起きられなくてごめんね。身体が重くて」
    「ううん、全然いいの。朝なんて準備して家を出るだけだし」
     冷蔵庫を開ける。朝、お母さんのために作っておいたサンドウィッチが、ラップをかけられたまま残っていた。私は何も言わずにお茶が入っている容器を取り出す。

    「葵、またバイトに行ってたの?」
    「え、うん。そうだけど」
    「受験生なんだから、バイトはほどほどにね」
    「……うん」
     お母さんは当たり前のように私が大学に行くと思っている。でも、その受験料や大学の学費はどうするつもりなんだろう。少し前よりは調子が良くなってきたとはいえ、パートで働き始めては体調を崩して辞めるのを繰り返している母を前に、不思議に思う。責めたいわけではなかったけれど、今の状況で大学に行くことに現実味がなかった。

    「……お母さん、あのさ」
    「なに?どうかした?」
    「私、高校を出たら働こうかと思うんだけど」
    「え?」
     お母さんの表情が固まった。
    「葵……大学に行きたくないの?」
     声は少し震えていた。

    「……だってさ、大学の学費ってすごく高いんだよ。蒼汰そうたもまだ中学生だし。私が働いたらお母さんも無理せず休めるでしょ?」
     そう言うと、お母さんは肩を震わせて泣き始めた。
    「……ごめん、お母さんが不甲斐ないばっかりに……」
    「ええ、泣かないでよ」私はお母さんの隣に座り、背中をさすった。
    「お母さんは不甲斐なくないよ。一年前は入院してたでしょ。そこから比べたら、今は家で過ごせて、起き上がれるようにもなってる。だから大丈夫だよ」
     明るく言ったつもりだった。けれどお母さんは、顔を手で覆ったまま泣いている。

    「ちょっとお茶飲もっか。あ、冷凍庫にまだアイスがあったかも。一緒に食べない?」
     私はお母さんの前にあるコップを取って立ち上がろうとした。
    「葵」
     お母さんが私の腕を掴む。
    「うん?」
     お母さんが顔を上げた。
    「もし、葵が大学に行きたくないから働くって言うんだったら、それでいいと思う。でもね、家族のためっていう理由で大学を諦めるのはやめて」
    「……お母さん」
    「葵が大学に行きたいんだったら、お母さんも働けるように病院の先生に相談してみるから。とにかく、今すぐに決めるんじゃなくて、もう少しよく考えてみて」
    「……わかった」


     ◇


     翌日、少し気まずい気持ちで学校に向かった。昨日、夏神なつがみくんに八つ当たりをしてしまったことを後悔していた。会ったらちゃんと謝ろう、そう思いながら教室に入る。
    「おはよー、葵」
     教室に入るところで後ろから優香に声をかけられた。
    「優香。おはよう」
     英語のテスト範囲見た?広くない?と優香の雑談を聞きつつ、私は夏神くんを探していた。まだ教室には来ていないみたいだ。

     少しだけほっとしたその時だった。
    「あ、陽ようくん、おはよー」
    「ああ、優香ちゃん。おはよう」
     後ろを振り返ると、夏神くんがいた。
    「あ、夏神くん……」
     夏神くんはいつもと変わらない顔で、私を見る。
    「葵ちゃんも、おはよ」
    「……おはよう」
     昨日はごめんね。
     そう続けようと思ったが、言葉が出ずに下を向いてしまった。黙っている間に夏神くんは何事もなかったかのように通り過ぎ、自分の席に座った。

     そのあとも、夏神くんと話す機会を探していた。けれど、授業の合間も昼休みも、うまく声をかけられないまま放課後になってしまった。もう今しかない。帰る支度をしている夏神くんに思い切って声をかけた。
    「夏神くん」
    「あ、葵ちゃん。どうかした?」
    「……あ、あのさ。ちょっとだけ時間あったりする?」
    そう言うと、夏神くんは、「ごめん」と手を合わせた。
    「ちょっと今から用事があるんよ」
    「......そっか、こっちこそごめん」
    「じゃあ、またな」
     夏神くんは軽く手を振って、教室を出て行った。

     また話せなかった。溜息が出たが、私もバイトに行かなきゃと鞄を持ち直す。教室を出ようとしたところで優香に声をかけられた。
    「ねえ、葵さ。陽くんと喧嘩でもした?」
    「え?」
     一瞬固まる。さすが優香だ。何か感じ取ったのだろう。
    「いや……何もないよ。ちょっと話したいことがあっただけ」
    「話したいこと?」
    「うん……あ、大したことじゃないんだけど。昨日、ちょっと夏神くんに八つ当たりしちゃって。謝りたかっただけ」
     そう言うと、優香はきょとんとした。
    「え?葵が?夏神くんに八つ当たり?」
    「うん……」
    「そっかあ……なんか珍しいね。葵、あんまり人にあたったりしないのに」
     確かに、と思った。不満があったり、イライラすることはあるけど、それを人にぶつけないように心掛けていたつもりだった。
    黙っている私を見て、優香は少し笑った。
    「まあ、そんなこともあるんじゃない?葵にも人間らしさがあるってことで」
    「……え、人間らしさ……?」
    「うん。ずーっと誰にでも優しく、人当たり良くすることなんて無理だよ」
    「そうなのかな」
    「そうだよ。それに、多分、陽くんもそんなに気にしてなさそうだったし」
    「え、ほんと?」
    「ほんとほんと。普通に話してたじゃん」
    「まあ……そうだけど」
     優香は私を見て、ふふふ、と笑った。
    「とにかく、大丈夫だよ。話したいことは、また明日話せば」
    「そうだね」
     優香はじゃあね、と言って教室を出て行った。

     神社に着いて社務所に入ると、帰る準備をしている槙田まきたさんがいた。
    「お疲れ様です。槙田さん、今日はもう終わりですか?」
    「あ、うん。このあと友達と、ゆめの国に行くんだ」
    「え、ゆめの国って、あの遊園地の『ゆめの国』ですか?」
    「そうだよー」
     そう言って、槙田さんはチケットを見せてきた。そこには、「アフターファイブ!アトラクション乗り放題!」と書いてある。
    「ええー、いいですね、アフターファイブ。平日だから人も少なそうですし」
    「そうだよー。大学生だからね。遊んで今を楽しまなくちゃ」
     槙田さんは得意げに笑ったあと、「じゃあ行くね」と言って社務所を出て行った。

     「遊んで今を楽しむ」槙田さんの言葉が、しばらく耳に残った。
     大学生になった自分が、友人と「ゆめの国」に行くところを想像してみる。授業が終わったあと、電車に乗って、夜のパークを歩いて、閉園ぎりぎりまで笑っている。そこまで考えて、何だか少し恥ずかしい気持ちになった。
     想像した生活は、自分とは無縁なような気がした。大学に行けたとしても、きっと私は授業を受けて、空いた時間にはアルバイトをする。お母さんは進学を諦めないでと言ってくれたけど、実際にお金のことを考えると、気持ちが落ち着かなくなる。
     それに私は、まだ大学で何をしたいのかもわからない。ただ、槙田さんの「遊んで、今を楽しむ」という言葉が眩しかった。

     ふう、と息をつく。これから神様にお仕えするのに、こんな私情を持ち込んではだめだ。更衣室に入り、私はいつもより丁寧に服を着替えて、髪をきゅっときつく結んだ。

     
     仕事が終わり、着替えて外に出る。階段を降りていくと、自転車置き場のベンチに、昨日と同じように夏神くんが座っていた。
    「あれ?夏神くん?」
     私が声をかけると、彼は顔を上げた。
    「葵ちゃん」
    「どうしたの?」
    「昨日、ごめんな。無責任に、全部背負うことないとか言って」
     いつもより弱々しい声だったので、驚いてしまった。そんな風に謝られるとは思っていなかった。

    「……いや、謝るのは私の方で。私が八つ当たりしちゃっただけなの。だから夏神くんが謝ることは全然ないんだよ」
     そう言うと、夏神くんは目を丸くした。それから、ふっと吹き出す。
    「え、なんで笑うの?」
    「いや……なんか葵ちゃんらしいなあと思って」
     私は、なんで笑われているのか分からないまま、その場に立っていた。
    「……なあ、話したいことってそのことだったん?」
    「うん……そうだけど」
    「そっかあ」
     夏神くんはまた少し笑った。

    「そういえば、夏神くん、用事があったんじゃなかったの?」
    「あ、そうやった。これを渡そうと思って来たんやったわ」
     夏神くんは鞄から透明なクリアファイルを取り出し、私に差し出した。
    「これって......」
     ファイルの中には、この辺りの大学の紹介パンフレットやオープンキャンパスの案内、奨学金制度の資料が揃えて入っていた。
    「ゴンちゃんにいろいろ聞いてみたんよ。この辺りで家から通える大学とか、奨学金制度のこととか。俺、転校生やろ?この辺りの大学のこと何も知らへんから教えてくださいって言ったら、資料もくれた」
    「え?夏神くんが?」
    「うん。ゴンちゃん、感心しとったわ」
     そう言って夏神くんは笑った。
    「ありがとう......でも、なんで夏神くんが......?」
     夏神くんは大学には行かないと言っていたはずなのに。
    「俺は大学のことよく知らへんけどさ、諦める前にまずは調べてみてもええんやないかなって思ったんよ」
     黙ってパンフレットを見ている私を見て、夏神くんは明るく続ける。
    「まあ、これはただのお節介やから、拾ったもんだと思って。いらんかったら廃品回収に出してな」
    「......ううん。ちゃんと読むよ」
     私は首を振った。

    「でもね、本当に迷っている理由は、家の事情だけじゃないんだ」
     そう言うと、夏神くんは「そうなん?」と首を傾げた。
    「お母さんもね、家のことで大学を諦めないでって言ってくれてるんだ。奨学金っていう方法があるのも分かってはいる。......でもね、私、やりたいことがわからないの」
     自分の声は思ったよりも頼りなかった。
    「優香や透とおるくんみたいに、やりたいことが何もない。だから大学に行っても、ただただ時間とお金を無駄にしちゃうんじゃないかなって」
    「うーん……」
     夏神くんが少し考える。

    「大学生になったことがないからわからんけどさ、やりたいことが今すぐなくてもええんやない?」
    「え?」
    「みんながみんな、最初からやりたいことが決まっとるわけでもないと思うし。それを探しに行くために大学に行っても、ええと思う」
     夏神くんは私が持っているパンフレットに視線を落とした。
    「ゴンちゃんも言っとった。大学は勉強も大事だけど、それ以上にいろんな経験ができるって。だからオープンキャンパスでは、その大学にいる生徒の雰囲気も見てくるといいって」
    「……」
     私は、さっき槙田さんが見せてくれたチケットのことを思い浮かべた。
     遊んで、今を楽しむ。そんな未来を、ほんの少しだけ想像しかける。黙っている私を見て、夏神くんは少し微笑んだ。
    「俺な、前も言ったことあるけど、高校卒業したら家業を継ぐことになってん」
    「うん、言ってたね」
    「それが嫌だって訳ではないんやけど、行けるなら行ってみたいなって思うよ、大学」
     夏神くんの言葉を聞いて、私ははっとした。行きたくても行けないのに、大学のことを調べてもらって、悩みを聞いてもらっている。
     急に申し訳なくなって下を向くと、夏神くんの手が伸びてきた。
     頭に触れる。
     顔を上げると、夏神くんは少し笑っていた。
    「そんな申し訳ない顔せんでええって」
     そのまま髪をわしゃわしゃ撫でてきた。わあ、と私は声をあげる。
    「ちょっと、髪ぐしゃぐしゃになるんだけど」
    「大丈夫やで」
    「え、どこが?」
     髪のことかと思い、不満げな声になってしまった。夏神くんはそんな私を楽しそうに見ている。
    「そうじゃなくて。葵ちゃんは、きっと大学で楽しく過ごせる。そのうちに好きなことも、やりたいこともきっと見つかるよ」
     根拠など何もないはずなのに、夏神くんの言葉を聞くと、何だか本当にそうなるような気がした。
    「……うん。ありがとう」
     私はクリアファイルを胸に抱え直した。

    「そういえばさ、夏神くんのお家ってなんのお仕事をやってるの?さっき、家業を継ぐって言ってたけど」
     そう聞くと、夏神くんは少しだけ目を泳がせた。
    「あー......なんて言えばええんやろ。あえて言うとしたら、季節に関わる仕事、かな」
    「季節?」
    「うん。まあ、実家の方では昔からやっとる仕事やねん」
     夏神くんは困ったように笑った。
    「ふうん」
     夏神くんの言い方に何となく引っかかりを覚えたが、それ以上は聞かなかった。


     ◇


     七月に入り、期末テスト期間が始まった。ちょうどその数日前から、夏神くんが学校に来なくなった。

     どんよりとした天気の日が続いていた。天気予報によると、南の海で台風が発生して、ゆっくり進路を変えながら近づいてきているらしい。まだ雨は降っていなかったが、空気が妙に重たく、風だけが時々強く吹いていた。

    「陽くん、大丈夫かなあ」
     その日のテストが終わって、透くんと優香と学校近くのファミレスで勉強をしていたとき、透くんがぽつりと呟いた。
    「そうだね、もう一週間近く来ていないよね」
    「えーテストが嫌なんじゃない?陽くんって意外とそういうところあるじゃん」
     優香は何でもないことのように言った。
    「そうかなあ。でも、体調崩してたりしたら心配だなあ」
     透くんが不安そうに言う。

     多分、体調を崩すことはない……はずだ。夏神くんは自分で「風邪ひかない」って言ってたし。家業が忙しかったりするのかな。それとも、何も言わずにまた引っ越しをしてしまったとか。

    「葵さん……?」
     気がついたら、ぐるぐると考え込んでいる私を透くんが心配そうに見ていた。
    「あ、ごめん。ちょっとぼーっとしてた」
     そう言うと、優香がふふ、と笑った。
    「葵も陽くんが心配なんだね」
    「え?うーん、まあ......そうかも」
     曖昧に答えると、優香は私をじっと見た。
    「葵ってさ、やっぱり陽くんのこと好きでしょ」
    「え!?」
     先に声を上げたのは、なぜか透くんだった。
    「そ……そうなの?葵さんが?」
     透くんが、私と優香の顔を交互に見比べる。
    「どうなの?葵」
     優香は神妙な顔をしている。
    「えっと……うーん、どうなんだろう」
     私はやはり曖昧な答えしかできなかった。実際、夏神くんのことは好きだとは思う。けれど、それが恋心なのかはわからなかった。同じように優香のことも、透くんのことも好きだと思っている。
     そう正直に言うと、優香は長いため息をつき、透くんは「うーん」と考え込んだ。

    「葵って、しっかりしてるのに、そういうところは案外鈍いよね」
    「そうかな……?逆に、なんで私が夏神くんのことを好きだと思ったの?」
    「そ、そうだよ。優香ちゃん。葵ちゃん、見ていて全然そんな感じないよ」透くんも続く。
    「えー......なんというか、葵が夏神くんには素を見せてる感じがあるんだよね」
    「素......?」
     優香は少し考えてから続ける。
    「なんかさ、葵ってあんまり負の感情をまわりに見せないでしょ。いつもにこにこしているし、頼まれごとをしても嫌な顔をしないし。でも陽くんの前では、ちょっと違う気がする」
    「違う?」
    「うん。ほら、この前も陽くんに八つ当たりしちゃったって言ってたじゃん」
    「あー......うん」
     帰り道で言ってしまった、「夏神くんには分かんないよ」という言葉を思い出す。
    「だからさ、葵にとって陽くんは、自分を取り繕わなくてもいい人なんじゃない?それが恋愛感情になのかわは、わからないけど」
     私は夏神くんの顔を思い浮かべてみた。確かに偶然とは言え、夏神くんにはバイトのことも、家のことも話してしまった。彼の前では、もう何を言っても大丈夫な気がしていた。

    「でもさ」
     透くんが遠慮がちに口を開く。
    「葵ちゃんって、ひとりだけ陽くんのことを苗字で呼ぶよね。ハイキングのときにみんなで名前呼びにしようって言ったのに」
    「あ、確かに」
     優香が頷く。
    「なんで?」
    「......なんでだろう。あんまり意識していなかったかも」
    「ええ、無意識だったの?」
     優香が笑い、
    「じゃあさ、今度から、陽くんって呼んでみなよ」と続けた。
     頭の中で、夏神くんのことを「陽くん」と呼んでいる自分を想像する。別に何でもない気がした。
    「うん、そうしてみる」
     私はそう答えた。

     ファミレスを出ると、雨が降っていた。私たちはそこで別れ、それぞれの帰路に着いた。私は傘を片手に、自転車を押しながら歩く。
     こんな雨の日に、ずぶ濡れになりながらひとりで立っていた夏神くんの姿を思い出した。
     あのとき、夏神くんのことをきれいだと思った。
     男の人を「きれいだ」と思ったのは初めてだったかもしれない。雨に濡れた髪も、どこか物憂げな表情も、私を見とめた時の澄んだグレーの目も。思わず見とれてしまうくらいだった。
     あのときから、私はもう、夏神くんのことを特別に見ていたのだろうか。

     そう考えると、優香に言われた「夏神くんには素を見せている」という言葉も、あながち間違いではない気がしてきた。思い返してみると、私は夏神くんには助けてもらってばかりだった。ハイキングのときも、進路のことも。アルバイトのことも、家のことも。弱いところばかり見られていた。
     それなのに、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。

     誰かに弱いところを見せるのが、ずっと怖かった。頼ってしまったあとで、やっぱり大丈夫じゃなかったと後悔したくなかった。だったら最初から、自分で何とかした方がいいと思っていた。
     でも夏神くんは、私が隠そうとしたものを、いつも簡単に見つけてしまう。怪我をしていることも、無理をしていることも。本当は大学のことを考えないようにしていたことも。
     そして、見つけたあとで、何でもないみたいに手を差し伸べてくれる。それがあまりにも自然だったから、私はいつの間にか、夏神くんになら頼ってもいいと思うようになっていたのかもしれない。

     なんだか泣きそうだった。これが恋なのかわからないけれど、夏神くんが私にとって大事な人になっていたことだけは、もう分かってしまった。

     顔をあげると、いつの間にか雨が止んでいた。夕方の空の端に、小さく虹色に光る雲が見えた。


     
     
    小説を書きます お手柔らかに

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