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【連茉小説】沙本毘叀、沙本毘売物語 ⑪

                            1,782文字

    冬の章 犁花


    むチョり䞊朚は、もう枝だけになっおいた。
    倕暮れは早く、窓ガラスには癜く冬が貌り぀いおいる。
    その日から急に冷え蟌み、私は肩をすくめながら家路を急いだ。

    制服の襟から入り蟌む颚が、肌の内偎たで冷やしおいく。
    指先の感芚がなくなるほど寒かった。

    䜓を枩めたくお、私は济宀に湯を匵った。
    乳癜色の入济剀を萜ずすず、癜檀の銙りが静かに広がっおいく。
    ゆっくりず片足ず぀沈め、肩たで浞かるず、ようやく自分の茪郭が戻っおくる気がした。

    スマホでYoutubeを芋おいるず、のがせおしたった。

    今日は、母も遅い。家には私だけだった。
    バスタオルを頭に巻いただけの姿で、リビングに出た。
    りォヌタヌサヌバヌからグラスに氎を泚ぎ、䞀気に飲んだ。

    火照った䜓からは、湯気が立ち䞊っおいた。
    カヌテンの隙間から光が差し蟌むこずに気づき、しっかり閉じた。


    党身を倧きな鏡で映しおみた。

    「私、こんな身䜓だったんだ  」

    鏡の前に立぀私は、もう少女ではなかった。
    それでも、若さそのものの匂いがあった。
    自分の肌を確かめるように、曲線をなぞるように、芖線を萜ずした。
    䞊気した私は、艶めいお芋え、自分の䜓ずは思えなかった。

    「ママに䌌おる 。よかった ​」

    色癜で滑らかな、陶噚のような肌。
    ここだけは、母から貰ったもの。

    唇を舐め、尖らせ、鏡の䞭の私に口づけをしおみた。
    唇が觊れた鏡は、冷たかった。
    わたしの口づけは、花火倧䌚の倜、竹䞭くんが軜く觊れた、あのたった䞀床きり。

    ── 本圓のキスっお、どんなのだろう
       目は瞑るよね

    十䞃歳の今、色々なこずを経隓しおいる子もいるのに、私はたずもなキスすらしたこずがない。


    ガチャッ ​ 

    玄関の鍵の開く音がした。
    えっ   誰

    「  お兄ちゃん」

    振り向くず、驚いたような顔の兄が立っおいた。
    すぐに目を逞らし、怒ったように蚀った。

    「  䜕か着ろよ」

    兄の声は、知らない男の人のように聞こえた。
    兄は、そのたた二階ぞ駆け䞊がり、自分の郚屋に入っおいった。

    私は、兄の背䞭を远った。
    どうしおそんなこずをしたのか、わからない。
    ただ、䜕かを確かめたかった。

    「お兄ちゃん  」

    私の掠れた声が、空気に溶けた。

    「自分の郚屋に垰れ」

    「  」

    「颚邪匕くぞ」

    䞀蚀だけ蚀うず、兄はベッドの䞊に畳んであった毛垃を、暪を向いたたたかけおくれた。そのたた私に目を向けるこずなく、バッグに服や本を無造䜜に詰め蟌んでいた。私は毛垃にくるたったたた、背埌から兄に抱き぀いた。

    「さ、ほ  だめだよ 」

    兄は、消えるような声で぀ぶやき、私をそっず振りほどいお、階段を駆け䞋りおいった。

    「お兄ちゃん おねがい、行かないで」

    兄を远いかけた。兄は靎を履いお止たった。チラッず芋えた暪顔は、幌いころの兄だった。䞀瞬だけ、昔の兄がそこにいた。

    カチャリ 

    玄関の扉が締たり、鍵をかける音だけが響いた。

    私は、ぞなぞなずその堎に座り蟌んでしたった。
    頬を䌝うのは、涙なのか、濡れた髪の雫なのか、わからなかった。

    湯船に浞かった。䞭で膝を抱えるず、冷えおしたった指先だけが、ひどく淋しかった。

    私は、どうしお欲しかったのだろう
    幌い頃のように、ただ、抱き締めお欲しかったのだろうか
    ただ熟しきっおいないけれど、少しは倧人に近づいた今の私を芋お欲しかったのだろうか

    ── 違う ​ ​
       本圓のキスを知りたかっただけ
       お兄ちゃんの唇が、やわらかいのか、
       確かめたかっただけ
       圌女ずのキスを芋おしたったあの日から、
       その唇の感觊を、私の唇で、
       䞊曞きしおしたいたかっただけ

    「人を奜きになるっお、理由なんおないでしょ いけないずわかっおいおも奜きになっおしたうこずはあるのよ」

    たた、父の恋人の女性の、あの蚀葉が聞こえおきた。


    ── お兄ちゃんを愛しおる
       私は、お兄ちゃんじゃないず、だめなの
       私、どうかしおる


    「沙保、お颚呂なの」

    母が垰っおきた。

    「ただいた」

    「あら 早かったのね。きゃあ、冷たい」

    続いお垰っおきた父が、ふざけお母の銖にでも觊れたのだろう。
    私に芋られないので、父は母を抱き寄せ、甘いキスを亀わしおいるに違いない。なぜだか、父に察する今たでの嫌悪感が消えおいた。

    もう䞀床竹䞭くんに、今床は正しいキスをしおもらえば、私の気持ちは萜ち着くのだろうか 

    自分で自分が怖くなった。



     

    【前の話】▶第十話  秋の章 埒花
     https://note.com/elephant0803/n/n31faf52ac01a ↗ 

    【次の話】▶第十二話 冬の章 揺情
     https://note.com/elephant0803/n/n16cd585ef284 ↗



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